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《速報解説》 会計士協会、これまでの施策を総括した「監査強化の取組について」報告書を公表~監査の透明性・実効性向上等に関する施策を取りまとめ~

《速報解説》 会計士協会、これまでの施策を総括した「監査強化の取組について」報告書を公表 ~監査の透明性・実効性向上等に関する施策を取りまとめ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年7月16日付(ホームページ掲載日は2019年7月22日)で、日本公認会計士協会は、「日本公認会計士協会の監査強化の取組について」を公表した。 これは、日本公認会計士協会の現執行部の任期を1つの区切りとして、これまでの施策を総括し、今後の展望を整理したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 報告書では、次の4つについて記載している。 ① 監査の透明性向上 ② 監査の実効性向上 ③ 自主規制機能の向上 ④ 社会との対話の促進 1 監査の透明性向上 次の事項について取り組んだとのことである。 2 監査の実効性向上 次の事項について取り組んだとのことである。 3 自主規制機能の向上 次の事項について取り組んだとのことである。 4 社会との対話の促進 記者会見を定期的に開催するなどを行ったとのことである。 今後も、社会に対し日本公認会計士協会の活動や業界の考え方等を様々な方法で積極的に情報発信し、公認会計士が、会計・監査の専門家として国民経済の健全な発展に寄与していることを社会に対し説明していくことが重要であるとのことである。 (了)

#No. 327(掲載号)
#阿部 光成
2019/07/23

《速報解説》 「監査報告書に係るQ&A」が正式に公表される~監査上の主要な検討事項(KAM)等に関し27問のQ&Aで解説~

《速報解説》 「監査報告書に係るQ&A」が正式に公表される ~監査上の主要な検討事項(KAM)等に関し27問のQ&Aで解説~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年7月18日付(ホームページ掲載日は2019年7月22日)で、日本公認会計士協会は、「監査報告書に係るQ&A」(監査基準委員会研究報告第6号)を公表した。これにより、2019年6月14日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(2018年7月5日、企業会計審議会)において、監査人の監査報告書に「監査上の主要な検討事項」(国際監査基準のKey Audit Matters(KAM)に相当する)を記載するという新しい実務が行われることに対応するためのものであり、監査報告書全般に関するQ&Aも記載されている。 公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されているので、研究報告の理解に資するものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 研究報告の主な項目は次のとおりである。 研究報告は、目次を含めて60ページに及ぶものなので、以下では主な内容について解説する。 【監査報告書全般】 【監査上の主要な検討事項関係】 1 背景 監査報告書の記載内容の見直しに関する背景として、次のことが述べられている。 2 監査上の主要な検討事項の個数及び記載量(Q2-7) 監査上の主要な検討事項は、監査役等にコミュニケーションを行った項目の中の相対的な重要性によって決定されることになるため、個数についての目安は設けられていない。 その記載に当たっては、記載量に関する制限はないものの、想定される財務諸表の利用者が理解できるように、詳細さと簡潔さのバランスを保つことが重要となるとのことである。 重要であると判断した事項の決定は、その数も含め、職業的専門家の判断によるものであり、特に重要であると判断した事項は、個々の監査業務における相対的な重要性を考慮して決定され、同業他社等との比較において重要であるかどうか考慮する必要はないとのことである(Q2-2の解説の(2))。 3 監査上の主要な検討事項と内部統制の重要な不備(Q2-4) 監査上の主要な検討事項は、内部統制の重要な不備を報告することを目的とするものではない。 監査上の主要な検討事項は、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項であり、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から選定されるものであり、内部統制の重要な不備は、監査役等にコミュニケーションを行うことが求められていることから、監査上の主要な検討事項を選定する際の母集団に含まれることになる。 ただし、監査上の主要な検討事項は、内部統制の重要な不備を報告することを目的とするものではないので、内部統制の重要な不備の存在そのものが監査上の主要な検討事項となるわけではない。 監査上の主要な検討事項として選定した理由又は監査上の対応の記述において、内部統制に関する記述が含まれることはある。 4 監査上の主要な検討事項と未修正の虚偽表示(Q2-5) 未修正の虚偽表示は、監査上の主要な検討事項となることも、ならないこともある。 監査上の主要な検討事項は、監査役等とコミュニケーションを行った事項から決定するものであるので、未修正の虚偽表示は監査上の主要な検討事項を検討する母集団に含まれる。 未修正の虚偽表示が監査上の主要な検討事項に該当するかどうかの検討に際しては、監査人は、監査の過程で虚偽表示が識別され、修正されたかどうかの事実に着目するのではなく、虚偽表示の内容や発生状況が当期の監査において特に注意を払った事項に該当するかどうかを検討し、他に識別している事項との相対的重要性に基づき監査上の主要な検討事項の決定を行うことになる。 したがって、監査の過程で識別された未修正の虚偽表示が監査上の主要な検討事項に関連することもあるが、すべての未修正の虚偽表示が、必ず監査上の主要な検討事項になるというものではない。 監査の過程で識別された重要な虚偽表示について、会社(経営者及び必要に応じて監査役等)と監査人との間で協議を行い、期末の財務諸表に適切に修正が反映される場合がある。そのような事項でも、当期の監査において監査人が特に注意を払った事項に該当し、最終的に監査上の主要な検討事項となることもある。 したがって 、修正されたかどうか自体が監査上の主要な検討事項の決定要因というわけでもない。 5 会社に対する財務諸表における注記の拡充の要請(Q2-14) 企業に関する情報を開示する責任は経営者にあるため、監査人による監査上の主要な検討事項の記載は、経営者による開示を代替するものではない。 経営者は、適用される財務報告の枠組みにより求められる財務諸表の表示及び注記事項、又は適正表示を達成するために必要な財務諸表の追加的な注記事項を開示する責任を有している。 経営者が財務諸表に追加情報の注記は必要ないと判断した場合、監査人は財務報告の枠組みに照らして、追加情報の注記がなくとも財務諸表が適正表示を達成しているかどうかを判断しなければならないが、適正表示を達成していると判断したときは、経営者に対して、監査上の主要な検討事項を監査報告書に記載することを理由として注記の拡充を強要することはできない。 6 監査スケジュールや監査役等とのコミュニケーションにおける留意点(Q2-18) 監査上の主要な検討事項は監査報告書の記載事項であるが、監査の最終段階を待って、監査の過程で監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から監査上の主要な検討事項の決定に着手することが想定されているわけではない。 監査の早い段階で、監査上の主要な検討事項の候補の提示及び協議、草案の検討等を行うおおよその時期について、経営者及び監査役等と協議しておくことが重要となる。 7 株主総会における対応(Q2-19) 株主総会において、株主から、監査上の主要な検討事項に関する質問が出ることが想定される場合、想定される質問の内容について事前に会社との間で、監査人が回答すべき事項と会社側が回答すべき事項の区分について十分に協議しておくことが適切であるとのことである。 会社法の規定に従って株主総会において監査人の出席の決議があった場合は、監査人は株主総会に出席し、株主からの質問の趣旨を踏まえて議長から指名を受けて監査人は回答することとなる。 8 監査上の主要な検討事項の監査人の法的責任に及ぼす影響(Q2-20) 監査人が、監査契約に基づいて、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査上の主要な検討事項を選定し監査報告書に記載している限り、監査上の主要な検討事項の記載が、会社又は第三者に対する監査人の法的責任(損害賠償責任)の帰結に大きな変更をもたらすものではないと考えられる。 監査人は監査基準に準拠して正当な注意義務を払って監査を実施していた場合には責任を負わないという点は、監査上の主要な検討事項が適用される以前からも同じであり、この意味で、監査上の主要な検討事項は、監査人の法的責任(損害賠償責任)の帰結に大きな違いをもたらすものではないと考えられる。 監査人の法的責任は、最終的には個々の事案ごとに裁判所が判断することになる(法規委員会研究報告第1号「公認会計士等の法的責任について」(最終改正2016年7月25日)も参照)。 (了)

#No. 327(掲載号)
#阿部 光成
2019/07/23

《速報解説》 国税庁、働き方改革の推進に資する減価償却資産の中小企業経営強化税制の適用に関する質疑応答事例を公表~大綱では「特定経営力向上設備等の範囲の明確化」と記載~

《速報解説》 国税庁、働き方改革の推進に資する減価償却資産の中小企業経営強化税制の適用に関する質疑応答事例を公表 ~大綱では「特定経営力向上設備等の範囲の明確化」と記載~   Profession Journal編集部   今年度の税制改正で適用期限が2021年3月31日まで延長された「中小企業経営強化税制」(措法42の12の4)は、税制改正大綱において「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行う」旨が明記されていた。 このうち「適正化」については既報のとおり、発電した電気の一部を販売することを目的とした発電設備の導入について一定の制約を設ける中小企業等経営強化法の改正省令及び関連告示がパブコメを経て3月29日に公布、4月1日から施行されている。 さらに「明確化」については、経済産業省資料において、「働き方改革に資する設備(休憩室に設置される冷暖房設備や作業場に設置されるテレワーク用PC等)も本税制措置の適用対象であることをQ&A集等を通じて明確化。」と記載されていたところ、国税庁は7月11日付で、関連する下記の質疑応答事例を公表した。 (※1) 中小企業庁の「中小企業経営強化税制、固定資産税特例に関するQ&A集」は7月16日付で更新され、固定資産税特例の適用終了や上記売電に係る記載の見直しが行われている。 公表された事例では、中小企業者等が、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて「働き方改革の推進に資する減価償却資産」を取得し指定事業の用に供した場合に、これらの減価償却資産が租税特別措置法第42条の12の4に定める生産等設備を構成する減価償却資産に該当するか(※2)という照会に対し、これらの減価償却資産は、生産等設備を構成する減価償却資産に該当する旨の回答を行っている。 (※2) 中小企業経営強化税制の適用要件である一定の金額要件及び販売時期要件を満たしていることを前提。 この事例における「働き方改革の推進に資する減価償却資産」の例として、次のようなものが挙げられている。 なお「生産等設備」については、下記の租税特別措置法関係通達42の12の4-2にある通り「生産等活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているもの」である必要があり、上記の「減価償却資産の例」でも1・2共に「生産等活動の用に直接供される」という条件が付されている。 このため本事例でも「同一敷地内にある食堂棟、検診施設など工場、店舗、作業場等の建物とは独立した福利厚生施設(建物)の中に設置される建物附属設備や器具及び備品等については、その福利厚生施設(建物)は一般に生産等設備には該当しませんので、その中に設置される器具及び備品等自体が生産等設備に該当する場合を除き、生産等設備を構成する減価償却資産には該当しないと考えられます。」との注意事項がある。 また中小企業経営強化税制の適用に当たっては、生産等設備を構成するものであることの他にも、対象設備ごとの金額要件(例:建物附属設備の場合・・・60万円以上)や一定以上の生産性(A型)又は投資利益率(B型)が求められることから、上記の「働き方改革の推進に資する減価償却資産」の例に該当するものがすべて適用対象となるわけではない点にも留意したい。 なお、中小企業等経営強化法の施行(2016.7.1)から3年が経過したことを受け、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等のうち計画の実施期間が満了する中小企業者等が実施期間の延長や再度新規申請を行う場合の取扱いについて、中小企業庁は下記の通り注意喚起を行っている。 (了)

#No. 327(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/07/22

プロフェッションジャーナル No.327が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年7月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.327を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/07/18

日本の企業税制 【第69回】「政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」」-第4回会合資料(2019.6.26)から-

日本の企業税制 【第69回】 「政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」」 -第4回会合資料(2019.6.26)から-   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   6月26日、政府税制調査会の連結納税制度に関する専門家会合の第4回会合が開かれた。今回の課題は主に、税額控除や損金計算における連結調整計算の見直しと新制度への移行措置であった。   〇連結調整計算の見直し 今回の連結納税制度の見直しに向けた大きな柱として、個別の連結法人ごとに申告納税義務の主体となるという点がある。このことから、現行の連結納税制度の下で、連結グループ全体を一のものとして計算をする(連結調整計算)いくつかの制度について、単体ベースの計算にすべきかどうかが検討の対象とされた。 財務省が提出した資料によると、それぞれの連結調整計算を維持するのか単体計算に戻すのかという選択のほかに、第三の道として、現行の連結調整計算を100%グループ税制として単体納税にも取り入れるという方向も提示されている。 この「第三の道」をとる場合、今回の見直しは、単体納税の法人においても他人事ではなくなるので注意が必要である。 (1) 受取配当等の益金不算入制度 現行の連結納税制度では、連結グループ内の各連結法人が受け取った配当等を「完全子法人株式等(100%)」「関連法人株式等(3分の1超)」「非支配目的株式等(5%以下)」「それ以外の株式等(5%超3分の1以下)」に区分し、それぞれについて連結納税制度における益金不算入額を計算することとされている。 これらの株式等に係るそれぞれの益金不算入額の計算方法は単体納税と同じであるが、次の3点については、連結グループを1つの納税単位として計算を行うため、連結調整計算を行っている。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、①については、単体納税制度で適用される100%グループ税制においても連結調整計算と同様に、連結ベースで計算を行うことが示されている。一方、②については、単体ベースで判定することが提案されている。また、③については、簡素化の観点から概算計算の導入が示され、これについては単体納税においても同様に採用することが提案されている。 (2) 貸倒引当金 連結納税制度においては、個別評価金銭債権、一括評価金銭債権の計算上、連結グループ内法人に対して有する金銭債権は除外されている。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、単体納税制度で適用される100%グループ税制においても連結調整計算と同様に、100%グループ内法人に対して有する金銭債権を除外することが提案されている。 (3) 寄附金 連結納税制度における寄附金の取扱いのうち、寄附金の範囲及び基本的な仕組みは単体納税制度と同様である。ただし、100%グループ外の法人に対して支出される寄附金の損金算入限度額は、連結法人ごとではなく、連結グループ全体を1つとして計算される。つまり、連結親法人の資本金等の額と連結事業年度の連結所得金額を基礎として計算することとされている。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、単体ベースで計算することが示される一方、純粋持株会社のような場合、寄附金の支出が連結親法人に集中している実態をどう見るかという議論もある。 (4) 研究開発税制 租税特別措置法に定める特別償却制度は、連結法人ごとに個別に適用判定を行い、個別に計算をしていることから、単体納税と変わりがない。一方、税額控除制度については、控除可能額(法人税額基準額)について、連結グループ全体の連結税額(調整前連結税額)や連結所得を考慮して計算する必要がある。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、単体ベースで計算することが示される一方、グループ経営の中で、特定の連結法人に研究開発機能を集中させているような実態をどう見るかという議論もある。 (5) 外国税額控除 連結納税制度における外国税額控除の適用に当たっては、次の3点において単体納税制度とは異なる調整計算が必要である。 このうち②については、単体ベースで株式保有割合を判定する方向が示されており、連結調整計算はなくなるものとみられる。   〇新制度への移行措置 今回の資料では、新制度への移行期間として、改正法施行後1年ないし2年を提示している。すでに連結納税制度を適用している連結グループは、この移行期間終了時において、新たな連結納税制度を適用するか、連結納税制度の適用を終了するかの選択を迫られることとなる。 新制度に移行する場合には、そのためのシステム改修等の準備に時間を要することから、果たして1~2年で十分な期間といえるのかどうか吟味する必要がある。また、現行制度では個別帰属税額の実際のやり取りは不要であるが、新制度では、各連結法人が損益通算後のそれぞれの所得をベースに申告納税義務を負うことが検討されていることから、新制度移行にあたり従前精算されてこなかった個別帰属税額の処理をどのようにするかが課題となろう。一方、新制度開始に伴い連結納税制度の適用をやめる場合には、投資簿価修正等の現行の連結納税制度適用終了の規定が適用されることになるのか検討する必要がある。 この移行期間中は、現行の連結納税制度のみが適用され、新制度は移行期間終了後に適用が開始する。したがって、現行制度と新制度とが併存することはない。 また、この移行期間中に、現行制度のもとで連結納税制度の適用を開始することも可能とされている。一方、新制度の開始とタイミングを合わせて連結納税制度の適用を開始する企業については、移行期間中に、新制度に基づく連結納税開始の申請を受け付けることとされている。 【参考】 (※) 「財務省説明資料(連結納税制度)」P21より (了)

#No. 327(掲載号)
#小畑 良晴
2019/07/18

定期保険及び第三分野保険に係る改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第3回】「改正前後の対策効果の検証」

定期保険及び第三分野保険に係る 改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第3回】 (最終回) 「改正前後の対策効果の検証」   税理士 三輪 厚二   今回は、通達改正前後における保険加入対策の効果を見てみることとする。 前回解説の通り、最高解約返戻率が85%を超えると資産計上割合が高くなってしまい対策効果がほとんどなくなってしまうので、以下では、最高解約返戻率が85%のケ-スを前提に検証を行う。 前提条件は、次のとおりとする。 ▷パターンA ※出口対策ありの場合で、当期利益が5,000万円、2期目以降利益が毎期1,200万円見込まれ、5期目に役員退職金を5,100万円支給する。 ① 保険加入なし 保険未加入の場合は、5年間の法人税等の税額が総額で2,838万円、手残り額が1,862万円となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② 改正前の対策効果 改正前の通達において保険に加入した場合は、5年間の税額が総額で1,254万円、手残り額が2,546万円となり、節税額が1,584万円(2,838万円-1,254万円)、手残り額が+684万円(2,546万円-1,862万円)となる。これが、最も対策効果のある典型的なケ-スである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ③ 改正後の対策効果(その1) 通達改正後に同じ保険に加入した場合は、税額が総額で2,204.4万円、手残り額が1,595.6万円となり、節税額が633.6万円(2,838万円-2,204.4万円)、手残り額が▲266.4万円(1,595.6万円-1,862万円)となる。改正前と比べると節税額も小さく、2期目以後の資金が持ち出しとなって、最終の手残り額もマイナスになってしまう。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ④ 改正後の対策効果(その2:保険料を3,000万円にして節税額を同額にした場合) ③と同様、通達改正後に同じ保険に加入した場合で、保険料を1,200万円ではなく3,000万円に増やし節税額を同額になるようにした場合は、税額が総額で1,254万円、手残り額が1,196万円となり、節税額は同額でも手残り額がかなり目減り▲666万円(1,196万円-1,862万円)してしまうことになる。また、2期目以後の資金の持ち出しが大きく、資金繰りを考えるとなかなか対策として活用するのは厳しいと言わざるを得ない。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   ▷パターンB ※出口対策(5年後の役員退職金支給)なしで、当期利益が5,000万円、2期目以降利益が毎期1,200万円見込まれる。 ⑤ 保険加入なし 保険未加入の場合は、税金の総額が3,234万円、手残り額が6,566万円となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ⑥ 改正前の対策効果 改正前の通達において保険に加入した場合は、5年間の税金が総額で2,937万円、手残り額が5,963万円となり、節税額が297万円(3,234万円-2,937万円)、手残り額が▲603万円(5,963万円-6,566万円)となる。 対策年度の節税額は大きいが、出口での課税があるので、結果として保険料の総額(6,000万円)と解約返戻金(5,100万円)の差額(900万円)に対する税額(297万円)分だけが少なくなった(900万円×33%)ということに過ぎず、言い換えるなら、900万円の掛け捨ての保険に加入したのと同じことになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ⑦ 改正後の対策効果 通達改正後に同じ保険に加入した場合は、税金が総額で2,937万円、手残り額が5,963万円となり、節税額が297万円(3,234万円-2,937万円)、手残り額が▲603万円(5,963万円-6,566万円)となる。 結果は改正前も改正後も同じだが、内容を見ると、(ⅰ)改正前は対策年度の節税額が大きい、(ⅱ)改正後は資金の持ち出しがある等の差があり、対策的には使いづらいものとなったといえよう。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   ▷総括 上記の検証を踏まえ、通達の改正前と改正後の対策効果をまとめると、次のようになる。 ◆節税効率がかなり悪くなった。 ◆最高解約返戻率になるまでの期間、資金の持ち出しがある。 ◆出口対策のない場合は、節税の観点からすると、保険料の総額と解約返戻金との差額の掛け捨ての保険に加入したのと同じ結果になる。資金効率や保障から考えると単純にこの掛け捨ての保険に加入した方がよい(ニ-ズがあればの話だが)かもしれない。 ◆出口対策がある場合は、改正前に比べると節税効果は小さくなったものの、税金の先送りということからすると若干のメリットはある。ただし、資金の持ち出しがある。 (連載了)

#No. 327(掲載号)
#三輪 厚二
2019/07/18

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第4回】「事前交付型リストリクテッド・ストック概説」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第4回】 「事前交付型リストリクテッド・ストック概説」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 概要 経済産業省は、『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』(以下、単に「手引き」という)にて、株式報酬の類型を示している。 手引きに倣うと、株式報酬は事前交付型リストリクテッド・ストック、事後交付型リストリクテッド・ストック、パフォーマンス・シェアなどに分類できるが、株式報酬の類型の中で最もシンプルなケースは、事前交付型リストリクテッド・ストックである。 この事前交付型リストリクテッド・ストックは、会社が役員に金銭債権報酬を付与し、当該金銭債権を現物出資する形で株式交付を行うという仕組みである(※1)。この役員が取得する金銭債権報酬と引き換えに交付されるということは、損金算入要件の1つでもある。 (※1) 会社法199条1項2号により株式の無償発行はできず、同法同条3号により労務出資は認められないという考えが通説であったところ、経済産業省解釈指針によりこのような形態が示されたことによる。 当該株式には譲渡制限が設定され、一定期間経過後に譲渡制限が解除されることとなる。 (出典) 経済産業省「「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-(2019年5月時点版)」P15   (2) 損金算入要件 このリストリクテッド・ストックに係る給与は、事前確定届出給与として損金算入することができる。対象となる「特定譲渡制限付株式」の定義を確認すると、まず、以下①、②に該当した株式を「譲渡制限付株式」という。 この譲渡制限付株式のうち、役務提供の対価として役員等に生ずる債権の給付と引き換えに交付し、役務提供を受ける法人又はその関連法人であった場合に、「特定譲渡制限付株式」となり、特定譲渡制限付株式による給与額が事前の定めに基づくものとして損金算入される。 ① 一定期間の譲渡制限があること 株式の譲渡(担保権の設定などを含む)が制限されており、その期間が設けられていることが必要とされている(法令111の2①一)。譲渡制限の設定は、いわゆる種類株式を用いる方法や、交付を受ける役員との合意契約により設定する方法もあるだろう。 また、譲渡制限期間については、中期経営計画の対象期間のサイクルと一致させて3~5年といった期間を設定すること等が考えられる。この場合、実際の譲渡制限解除日は、役員の退任日など外形的な事由に基づくことも想定されている(この点については以下(3)参照)。 ② 法人により無償取得(没収)される事由として勤務条件又は業績条件が達成されないこと等が定められている株式であること 役員から役務提供を受ける法人が、当該役員から株式を無償取得できる事由としては、役員の役務提供期間に応じるものとして、勤務状況のみに限られている(法法34①二・⑤)。すなわち、業績連動型に該当してしまった場合、事前確定届出給与には該当せず、損金算入が認められない。 ③ 事前確定届出給与が届出不要となるケース 「届出が不要となる事前確定届出給与」の要件は、スケジュールを順守することにある。すなわち、報酬決議及び特定譲渡制限付株式の交付に係る期限が存在し、職務の執行の開始の日から1月を経過する日までに、株主総会等の決議により取締役個人別の確定額報酬又は確定数の株式についての定めがされ、その定めに従って交付されることが要件とされている(法令69③一)。 なお、株主総会等の決議日から1月を経過する日までに、当該役員に生ずる債権の額に相当する特定譲渡制限付株式又は確定数の株式を交付する旨の定めがある場合に限る。   (3) 損金算入時期 法人の損金算入時期については、所得税の課税時期に触れた上で解説したい。 法人の役員が、本件のような譲渡制限付株式を役務提供の対価として支給された場合、所得税の課税時期は譲渡制限解除日とされている(所令84①)。株式交付日をもって課税時期とされないのは、譲渡制限期間中に当該特定譲渡制限付株式の処分ができないこと等を鑑みたものである。 これに対して、法人税の損金算入時期は、上記の所得税の課税時期として給与等課税額が生ずることが確定した日に法人が役務提供を受けたものと解釈され、同日の属する事業年度において損金の額に算入される(法法54①)。 ここで、譲渡制限の解除日を「役員の退任日」とし、具体的に「〇年〇月〇日」と定めなかった場合においては、損金算入時期とその支給の性質についてどのような取扱いとなるかが問題となる。この点、法人税法上、特定譲渡制限付株式に該当すると示し、役務提供に係る費用の額は退任日の属する事業年度において、退職給与として損金算入されるとした文書回答事例が2019年7月3日に公表された。 このような場合において、支給が退職給与となる可能性については、当該文書回答事例公表以前より指摘されていた(※2)。役員報酬制度については企業側がセンシティブになっていると予測され、当該文書回答事例も企業からの事前確認を受けて公表されたと思われる。 (※2) 高田剛『実務家のための役員報酬の手引き(第2版)』(商事法務、2017)268頁。 今回の文書回答事例の公表によって、リストリクテッド・ストックによる株式報酬制度は、事実上の役員退職金制度として機能し得るという一端が示されたと言えよう。 (了)

#No. 327(掲載号)
#中尾 隼大
2019/07/18

相続税の実務問答 【第37回】「遺留分減殺請求に対し価額弁償が行われた場合の相続税の課税価格の計算」

相続税の実務問答 【第37回】 「遺留分減殺請求に対し価額弁償が行われた場合の相続税の課税価格の計算」   税理士 梶野 研二   [答] あなたの相続税の課税価格の計算上、妹さんと弟さんに支払った価額弁償金を控除しますが、控除する金額は、実際に支払った5,000万円ではなく、4,000万円となります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 遺留分減殺請求 遺留分権利者(兄弟姉妹以外の相続人)は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈又は一定の贈与の減殺を請求することができるとされ(平成30年改正前民法1031)、遺留分権利者が遺留分の減殺請求権を行使した場合には、その遺留分の範囲内で遺贈又は贈与の効力が否定され、当該遺贈又は贈与の対象となっていた財産は、遺留分権利者に帰属することとなると解されています。 ただし、遺留分義務者(被相続人から遺贈又は贈与を受けた者)は、これらの財産の現物の返還に代えて、価額弁償を選択することができることとされています(平成30年改正前民法1041①)。遺留分義務者が居住の用に供している不動産や同族会社の株式など現物の返還をするとその者の生活の基盤が失われることとなったり、会社経営に支障をきたすおそれがあるような場合に、遺留分義務者が価額弁償を選択することは珍しいことではありません。 (注) 平成30年の民法(相続法)の改正により、令和元年7月1日以降に開始した相続において遺留分の侵害があった場合には、遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対して、現物返還ではなく、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができることとされました(平成30年改正後民法1046①)。 遺留分は、被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額を基に、これに一定の贈与財産の価額を加算し、債務の額を控除して算定します(平成30年改正前民法1029①)が、相続開始後、実際に現物の返還や価額の弁償による解決が図られるまでの間に相当の期間を要することから、それまでの間に被相続人が有していた財産の価額に増減が生じることがあり得ます。 また、相続税の課税価格の計算の基となる財産の価額は、財産評価基本通達等の定めにより評価されたいわゆる相続税評価額(路線価等は、公示価格と同水準の価額の80%相当額で評定されています)ですが、遺留分減殺請求における財産の価額は、相続税評価額を基とするわけではありません。   2 価額による弁償が行われた場合の相続税の課税価格 (1) 価額弁償金を支払った遺留分義務者の価額弁償金相当額の控除 相続税の課税価格の計算上、「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」は控除することができます(相法13①一)が、遺留分減殺請求により遺留分権利者である相続人に支払った価額弁償金は、これには該当しません。しかしながら、遺留分義務者である受遺者が遺贈により取得した財産の現物の返還に代えて価額を弁償した場合に、当該弁償金額を遺留分義務者の相続税の課税上考慮しないのは合理的ではありません。 遺留分減殺請求に対して価額による弁償が行われた場合の相続税の課税価格の計算方法について、法令に特段の規定は設けられていません。相続税法基本通達にも直接的な定めはありませんが、類似のケースとして、代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算方法についての取扱いが示されています(相基通11の2-9)。 この取扱いは、代償分割の方法により相続財産の全部又は一部の分割が行われた場合、①代償財産を交付することとなった相続人については、相続により取得した現物の財産の価額から交付をした代償財産の価額を控除した金額を相続税の課税価格とし、②代償財産の交付を受けた相続人については、交付を受けた代償財産の価額を相続税の課税価格に加えるとするものです。 価額弁償金は、遺産の現物の取得者からその現物に代わるものとして遺留分権利者が受けるものであり、経済的実質から見た場合に遺産分割の一方法である代償分割における代償財産と同じ性質を有するものであるといえることから、相続税の課税価格の計算上も、代償分割における代償財産の交付があった場合の取扱いに準じて取り扱うことが相当であると考えられます(平成25年8月29日裁決・裁決事例集No.92)。 (2) 相続税の課税価格を計算する場合の価額弁償金相当額の調整計算 上記(1)による課税価格の計算は、遺留分義務者が遺留分権利者である相続人に対して支払った価額弁償金の額により行うこととなります。 しかしながら、相続税の課税価格の計算は、相続開始の時における財産の時価(実務上は、財産評価基本通達等に従って求められた、いわゆる相続税評価額)により行うこととされていることから、相続開始後、実際に現物の返還や価額の弁償による解決が図られるまでの間に遺贈等の対象となった財産の価額に増減が生じたり、その相続税評価額と当事者が価額弁償金の額の計算の基とした価額(通常の取引価額を基にしていることが多いと思われます)に開差があることから、実際に支払った価額弁償金の額により上記(1)の計算をすることは、当事者間の公平性を欠く結果となる場合があります。 そこで、代償分割が行われた場合の代償財産の額の調整計算を定めた相続税法基本通達11の2-10に準じて、次のような調整計算を行うことが相当であると考えられます(上記裁決参照)。 〇 相続税法基本通達11の2-10に準じた調整計算 価額弁償金の額が、価額弁償金の額の決定の時における遺贈財産の通常の取引価額を基として決定されている場合には、次の算式により調整計算を行う。 (注1) 算式中の符号は、次のとおりである。 Aは、価額弁償金の額 Bは、価額弁償金の額の決定の基となった遺贈財産に係る価額弁償金の額の決定の時における価額 Cは、価額弁償金の額の決定の基となった遺贈財産の相続開始の時における価額(いわゆる相続税評価額) (注2) 当事者間の協議に基づいて価額弁償金の額を上記算式に準じた方法又は他の合理的と認められる方法によって調整計算をすることも認められるものと考えられる。 (注) 代償分割における代償金に係る相続税の課税価格の計算については、【第10回】「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」を参照してください。   3 ご質問の場合 ご質問の場合、あなたは、妹さん及び弟さんから遺留分減殺請求を受け、現物の返還に代えて、価額弁償金を支払いましたので、当該価額弁償金に相当する金額を控除して相続税の課税価格の計算を行い、相続税の更正の請求をすることができます。 ただし、ご質問の場合、価額弁償金の額は、価額弁償金の額を決定した時のM市の建物及びその敷地の価額を基に算出されたものですから、次のように相続開始時のその建物及び敷地の価額(相続税評価額)を基に引き直した額によって、相続税の課税価格の計算をすることが相当であると考えられます。 ① 価額弁償金の金額の調整計算 (ⅰ) 乙に支払った価額弁償金 (ⅱ) 丙に支払った価額弁償金 ⅰに同じ。 ② あなたの相続税の課税価格 ③ 乙及び丙の相続税の課税価格 (ⅰ) 乙の課税価格:2,000万円 (ⅱ) 丙の課税価格:2,000万円 (注) 土地建物以外の財産はないものとして計算しました。 (了)

#No. 327(掲載号)
#梶野 研二
2019/07/18

平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第4回】「研究開発税制の見直し(その4:特別試験研究費の税額控除制度の見直し)」

平成31年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第4回】 「研究開発税制の見直し(その4:特別試験研究費の税額控除制度の見直し)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (5) 特別試験研究費に係る税額控除制度について、特別試験研究費の対象範囲を拡充するとともに、控除上限を10%に引き上げる。また、研究開発型ベンチャーとの共同研究・委託研究の税額控除割合を25%とする。 特別試験研究費に係る税額控除制度について、改正前後の取扱いは以下のとおりとなる。 【特別試験研究費に係る税額控除制度】 ▷根拠条文 改正前:旧措法68の9⑥ 改正後:措法68の9⑦ ▷対象法人 改正前:連結法人のすべて 改正後:同上 ▷税額控除限度額 ▷控除限度となる法人税額基準額 ▷繰越控除 改正前:限度超過額の繰越制度はない。 改正後:同上。 ▷税額控除額の個別帰属額の計算方法 ▷地方法人税における税額控除 ▷住民税における税額控除 連結納税における特別試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法は、次のとおりとなる。 A 改正前(旧措法68の9⑬二・五、旧措令39の39㉒五) [特別試験研究費に係る税額控除額(一号)の個別帰属額の計算方法] (注1) 分子の特別試験研究費の額は、試験研究費の総額に係る税額控除制度又は中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [特別試験研究費に係る税額控除額(二号)の個別帰属額の計算方法] (注2) 分子の特別試験研究費の額は、試験研究費の総額に係る税額控除制度又は中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 B 改正後(措法68の9⑬二・五、措令39の39㉗八) [特別試験研究費に係る税額控除額(一号)の個別帰属額の計算方法] (注1) 分子の特別試験研究費の額は、試験研究費の総額に係る税額控除制度又は中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [特別試験研究費に係る税額控除額(二号)の個別帰属額の計算方法] (注2) 分子の特別試験研究費の額は、試験研究費の総額に係る税額控除制度又は中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [特別試験研究費に係る税額控除額(三号)の個別帰属額の計算方法] (注3) 分子の特別試験研究費の額は、試験研究費の総額に係る税額控除制度又は中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。   (了)

#No. 327(掲載号)
#足立 好幸
2019/07/18

基礎から身につく組織再編税制 【第6回】「適格合併(完全支配関係)」

基礎から身につく組織再編税制 【第6回】 「適格合併(完全支配関係)」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   適格組織再編成には、100%グループ内での組織再編成(完全支配関係がある場合の組織再編成)、50%超100%未満のグループ内の組織再編成(支配関係がある場合の組織再編成)、共同事業を行うための組織再編成がありますが、今回は完全支配関係がある場合の適格合併の要件について解説します。 完全支配関係及び支配関係の定義については、それぞれ本連載の【第2回】及び【第3回】を参照して下さい。   1 完全支配関係がある場合の適格合併の要件 完全支配関係がある場合の適格合併の要件は次の2つです。   2 金銭等不交付要件 「金銭等不交付要件」とは、被合併法人の株主に合併法人株式以外の資産が交付されないことをいいます(法法2十二の八)。 ただし、次の①から④を交付しても、金銭等不交付要件には抵触しません。 以下で1つずつ確認していきましょう。 ① 剰余金の配当としての金銭 剰余金の配当として金銭その他の資産を株主に交付しても、金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 ② 反対株主の買取請求に基づく対価としての金銭 買取請求に基づく対価として金銭その他の資産を合併に反対する株主に交付しても、金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 ③ 1株未満の端株相当の金銭 合併で交付する合併法人株式に1株未満の端数が生じたために、その1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し、又は買い取った代金として交付されたときは、1株未満の株式に相当する株式を株主に交付したこととなりますが、金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 ただし、交付された金銭が、交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的にその株主に対して支払う合併の対価であると認められるときは、合併の対価として金銭が交付されたものとして取り扱います(法基通1-4-2)。 ④ 合併親法人株式 被合併法人の株主に合併親法人株式(※)を交付しても、金銭等不交付要件に抵触しないとされています。 (※) 「合併親法人株式」とは、合併の直前に合併法人と合併法人以外の法人との間にその法人による直接完全支配関係があり、かつ、合併後に合併法人とその法人(親法人)との間にその親法人による直接完全支配関係が継続することが見込まれている場合におけるその親法人の株式をいいます。平成31年度税制改正前は直接保有に限定されていましたが、改正後は間接保有の合併親法人株式を対価として交付する場合についても適格合併となります(法令4の3①)。 なお、下図のように合併親法人株式を交付する合併を「三角合併」といいますが、合併親法人株式の1株未満の端数相当の金銭についても④と同様に取り扱います(法令139の3の2①)。   3 完全支配関係継続要件 「完全支配関係継続要件」とは、完全支配関係がある法人同士の合併の場合に、再編後においても完全支配関係が継続する見込みがあることをいいます(法令4の3②二)。 ① 当事者間の完全支配関係 下図のように、当事者間の完全支配関係があるときは、被合併法人が合併により消滅するため、完全支配関係の継続は求められていません。 ② 同一の者による完全支配関係 下図のように、合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があるときには、合併後に同一の者と合併法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続する見込みがあることが求められています(法令4の3②二)。 当初の合併後に次の合併が予定されている場合の完全支配関係継続要件 ① 次の合併で当初の合併法人が被合併法人となる場合 当初の合併後に合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当初の合併の時からその適格合併の直前の時まで完全支配関係が継続する見込みがあることが求められています(法令4の3②二)。 ② 次の合併で同一の者が被合併法人となる場合 当初の合併後に同一の者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人を同一の者とみなして完全支配関係を継続する見込みがあることが求められています(法令4の3㉕一)。   4 具体例 〔前提〕 〔金銭等不交付要件〕 対価としてA社にB社の株式のみ交付されるため、金銭等不交付要件は満たしています。 〔完全支配関係継続要件〕 A社がB社とC社の発行済株式の全てを保有しており、同一の者による完全支配関係があるため、完全支配関係継続要件が求められます。 合併後にB社を他社に売却することを予定しているため、完全支配関係継続要件は満たしません。 〔結論〕 完全支配関係継続要件を満たさないため、非適格合併に該当します。   ◆完全支配関係がある場合の適格合併の要件のポイント◆ 金銭等不交付要件において、原則として株式以外の対価を交付しないことが求められています。 完全支配関係継続要件は同一の者による完全支配関係がある場合に求められ、当事者間の完全支配関係がある場合には求められていません。 合併後に次の合併が見込まれている場合には留意が必要です。   (了)

#No. 327(掲載号)
#川瀬 裕太
2019/07/18
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