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《速報解説》金融庁、内部統制基準等の改訂を受け、財務計算書類等の適正性確保のための体制に関する内部統制府令(案)等を公表

《速報解説》 金融庁、内部統制基準等の改訂を受け、 財務計算書類等の適正性確保のための体制に関する内部統制府令(案)等を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和2年1月10日、金融庁は、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、令和元年12月に、企業会計審議会から公表された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を受けたものである。 意見募集期間は令和2年2月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりである(内部統制府令6条関係)。 関連する内部統制府令ガイドライン21-1及び「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条(臨時報告書の記載内容等)も一部改正する。 内部統制監査報告書には、次に掲げる事項を簡潔明瞭に記載する(下記は主な内容について記載している)。   Ⅲ 適用時期等 公布の日から施行する予定である。 経過措置に注意が必要である。 (了)

#No. 351(掲載号)
#阿部 光成
2020/01/14

《速報解説》 配偶者居住権及び配偶者敷地権が消滅した場合の譲渡所得の計算~令和2年度税制改正大綱~

 《速報解説》 配偶者居住権及び配偶者敷地権が消滅した場合の譲渡所得の計算 ~令和2年度税制改正大綱~   税理士法人トゥモローズ 代表社員 税理士 大塚 英司   1 はじめに 令和元年税制改正において新たに規定された配偶者居住権に関しては、譲渡所得の取扱いについて専門家の間でも注目が集まっていたところであるが、令和2年度税制改正大綱では、配偶者居住権及び配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供されている土地等を配偶者居住権に基づき使用する権利(以下「配偶者敷地利用権」)が消滅等した場合及び配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地の用に供されている土地等(以下「居住建物等」)をその所有者が譲渡した場合における取得費の取扱いが示された。 配偶者は、配偶者居住権及び配偶者敷地利用権自体を譲渡することはできないが、当該配偶者居住権等の合意解除や放棄をした場合において、当該権利が消滅等したときの譲渡所得に係る取得費や、相続により居住建物等を取得した相続人が当該権利の消滅等前に当該居住建物等を譲渡した場合における取得費の取扱いについて、本大綱により明らかにされた。   2 改正の背景 配偶者居住権は、前述のとおり、その設定期間中に配偶者が放棄することや、居住建物等の所有者との間の合意による解除を行うことができる。また、所有者は、配偶者が民法に定める用法遵守義務違反を行った場合には配偶者居住権を消滅させることもできる。このような場合には、居住建物等の所有者は、配偶者居住権の期間満了を待つことなく、その対象となった土地建物に関する使用収益の享受が可能となる。 この場合において、居住建物等の所有者が配偶者から当該使用収益に相当する対価の支払いを受けなかったときの取扱いについては、先の基本通達の改正により「配偶者居住権の価額に相当する利益又は土地を配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額」の贈与とする取り扱いが明らかにされたところである(相続税法基本通達9-13の2)。 これに対して、本大綱の中では、対価の支払いがあった際には譲渡所得として課税されるものとして、その取得費の取扱いについて言及された内容となっている。   3 令和元年度改正の確認 民法(相続法)の改正に伴い、残された配偶者が住み慣れた住居で継続して生活できるよう、また、遺産分割において配偶者のその後の生活資金を確保することができるよう、配偶者居住権が創設された。 この配偶者居住権は、配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人の財産である建物につき、終身又は一定の期間、配偶者にその建物の使用及び収益を認める権利であり、賃借権類似の法定債権である。 実際に適用される典型例としては、建物所有権は子に相続させ、配偶者が配偶者居住権を相続する場合であろう。被相続人亡き後の配偶者の居住の安定を図りつつ、配偶者居住権は所有権に比べ低く評価されることで、建物所有権を配偶者が取得する場合に比べ、金融資産を配偶者に多めに寄せることができることとなる。 令和元年度の税制改正では下記のとおり、配偶者居住権に係る相続財産の評価方法が規定された。 【建物】 イ 配偶者居住権 ロ 居住建物の所有権 建物の相続税評価額 - 配偶者居住権の価額(上記イ) 【土地】 ハ 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用権に関する権利 土地等の相続税評価額 - 土地等の相続税評価額 × 残存年数に応じた民法の法定利率による福利現価率 ニ 居住建物の敷地の所有権等 土地等の相続税評価額 - 敷地の利用に関する権利の価額(上記ハ) ※1 建物又は土地等の相続税評価額とは、それぞれ配偶者居住権が設定されていない場合の相続税評価額とする。 ※2 残存耐用年数:所得税法に基づく耐用年数(住宅用)×1.5-築後経過年数 ※3 残存年数:(イ)又は(ロ)の年数 (イ) 配偶者居住権の残存期間が配偶者の終身の間である場合:配偶者の平均余命年数 (ロ) (イ)以外の場合:遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の残存期間の年数(上記(イ)を上限とする。) ※4 残存耐用年数又は残存耐用年数-残存年数がマイナスとなる場合にはゼロとする。   4 令和2年税制改正大綱の内容 (1) 配偶者居住権等が消滅等をし、配偶者がその消滅等の対価として支払いを受ける金額がある場合の取得費の取扱い 取得費 = 居住建物等の取得費(※1)× 配偶者居住権等割合(※2)- 減価の額(※3) (※1) ・被相続人に係る居住建物等の取得費 ・建物については、取得の日から配偶者居住権設定時(注)までの減価の額を控除 (注) 自由民主党・公明党より公表の大綱(与党大綱)においては「その取得の日からその消滅等の日までの期間」と記載されているのに対し、閣議決定後に財務省より公表された大綱においては「その取得の日からその設定の日までの期間」と記載されているが、ロジックとして後者が正しいものと考えられる。 (※2) 配偶者居住権等割合とは、その配偶者居住権の設定時における (※3) 配偶者居住権設定時から消滅等までの期間に係る減価の額 (2) 居住建物等を取得した相続人が、配偶者居住権等の消滅前に相続により居住建物等を譲渡した場合の取得費の取扱い 取得費 = 居住建物等の取得費 - 配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費((1)の取得費) 設例 〈前提〉 ① 被相続人から引き継いだ取得費 ・建物:600(減価の額 取得日~設定日:300) ・土地:1,500 ② 建物評価額 ・配偶者居住権:100(減価の額 設定日~消滅日:50) ・建物所有権:200(減価の額 設定日~消滅日:100) ③ 土地評価額 ・配偶者敷地利用権:1,000 ・敷地所有権:2,000 ※配偶者居住権の設定時における評価金額 〈取得費〉 ① 配偶者の譲渡所得計算上の取得費 ⅰ 配偶者居住権 ⅱ 配偶者敷地利用権 ② 相続により居住用建物等を取得した相続人の取得費 ⅰ 建物所有権 600 -(300 + 50 + 100)-50(A)= 100 ⅱ 敷地所有権 1,500 - 500(B)= 1,000 (3) 適用時期 大綱上に明記はないが、配偶者居住権等の適用開始時期である令和2年4月1日と合わせて適用開始とされると考えられる。   5 収用、換地等の特例の見直し (1) 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 居住建物等が収用等された場合において、配偶者居住権等が消滅等をし、一定の補償金を取得したときは、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用ができることとなった。 (2) 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の適用対象に、第一種市街地再開事業等が施行された場合において、居住建物等に係る権利変換により施設建築物の一部等に配偶者居住権が与えられたときが加えられた。   6 今後の留意点 (1) 消滅等を対価なしで行った場合の贈与税課税 前述のとおり相続税法基本通達9-13の2における対価の支払いがない場合には、配偶者から居住建物等の所有者に対する贈与として扱われるため、居住建物等の売却時など対価を設定するか否かを含めて検討する必要がある。 (2) マイホームの3,000万円控除の適用可否 配偶者居住権等の譲渡所得の計算の中で、居住用財産の3,000万円控除をはじめとする居住用の特例の適用が可能となるか否か、今後の動向に注視する必要がある。 (了)

#No. 350(掲載号)
#大塚 英司
2020/01/09

プロフェッションジャーナル No.351が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年1月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.351を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/01/09

monthly TAX views -No.84-「マイナポイントを軽減税率廃止につなげよう」

monthly TAX views -No.84- 「マイナポイントを軽減税率廃止につなげよう」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   東京オリンピック後の経済活性策・消費喚起策として、マイナンバーカードを取得しキャッシュレス決済で買い物した場合に、一定額のポイントが付与される「マイナポイント制度」が始まる。 カードを取得し民間のキャッシュレス決済を申し込めば、2万円の支払に対して5,000円のポイントがカードのICチップに付与されるという。 この制度の真の狙いはマイナンバーカードの取得促進だ。マイナンバー制度が導入されカードが交付されてから5年になるが、発行枚数は1,850万枚、国民の2割にも満たない状況である。政府はデジタル・ガバメントを提唱しているが、このようなカード普及率では絵に描いた餅になる。 カード普及のためには、2020年度から開始が予定されている健康保険証としての利用などカード利用のメリットを作り国民に訴えることが王道だろう。 *  *  * マイナポイント制度の導入で筆者が思い出すのは、「日本型軽減税率」である。もう忘れた方も多いと思われるが、2015年9月、財務省が提言した消費税逆進性対策である。 この案は、「買い物時に消費者は10%を支払うが、一定所得以下の者の飲食料支出には後から2%分を払い戻す」という内容で、軽減税率の代案である。 会計の際にマイナンバーカードを店舗の端末にかざし、カードに記載されたICチップを読み取り本人確認をしてポイントを還付、後日現金に変えて本人の口座に振り込む。マイナンバーカードを所得情報と結びつけることができるので、対象者を一定の所得以下に絞り、還付金額も一定額の範囲内にすることができる。高所得者にまで適用となる軽減税率より財源面ではるかに効果的だ。実際、低所得者に限定する財務省案の財源規模は、現行の軽減税率(1兆円の減収)に比べて3分の1程度といわれていた。 現行の消費税軽減税率は、卸段階も含めあらゆる取引段階で区分が必要だが、この案では消費段階だけなので、事業者のコスト負担ははるかに少ない。外食サービスも対象に含めていたので、イートインやテイクアウトの相違に伴う混乱は生じない。 当時は、マイナンバーカードの普及が十分ではないことや、カードをかざすとマイナンバーが漏れる可能性があるという国民のプライバシー上の不安(番号を使うわけではないのでこれは誤解)などから反対があったが、新聞業界が「還付制度では新聞は買わない」と反対したことなども、つぶれた原因だ。 *  *  * 今回のキャッシュレス・ポイント還元で、多くの小売店はレジを高度化した。加えて国民一人一人が持つマイナンバーと紐づけたカードにポイントを付与する制度も出来上がる。 カードが普及すれば、事業者・消費者に多大なコストをかけている軽減税率を廃止して、低所得者だけにポイントを付与する、逆進性対策が可能になる。 (了)

#No. 351(掲載号)
#森信 茂樹
2020/01/09

令和元年分 確定申告実務の留意点 【第2回】「注意しておきたい最近の改正事項②」

令和元年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「注意しておきたい最近の改正事項②」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   前回に引き続き、最近の改正事項のうち確定申告実務に影響のある主要な項目を取り上げる。      【1】 住宅借入金等特別控除の改正(令和元年10月以後居住開始分) 消費税率引上げによる税負担の増加を緩和するため、住宅を取得等して令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住の用に供した場合には、住宅借入金等特別控除の控除期間が3年延長され13年間となる(措法41⑬~⑰)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 改正内容の詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。 なお、下記国税庁ホームページに、新しい住宅借入金等特別控除額の計算明細書の様式や記載例が掲載されているので、参考にされたい。   【2】 居住用財産(空き家)の譲渡特例の拡充(平成31年4月以後譲渡分) 相続又は遺贈により取得した被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合、一定の要件を満たしていれば譲渡所得の特別控除(居住用財産の3,000万円控除の特例、以下「特例」という)の適用を受けることができる(措法35①③)。 改正前は、譲渡された空き家が、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていたことが要件とされていた。よって、被相続人が老人ホーム等に入所したまま相続が発生した場合には、特例の適用を受けることができなかった。 しかし、令和元年度税制改正により、平成31年4月1日以後の譲渡については、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入居していた場合(相続開始直前に居住していなかった場合)も、特例の対象とされた(措法35③④⑤、措令23⑥、R1改正法附則34⑥)。 ただし、老人ホーム等に入居中、次の要件を満たしていなければならない(措令23⑦)。 なお、特例の適用を受ける場合には、空き家の所在地を管轄する市区町村長から、上記①、②をはじめとする一定の要件を満たすことを証した「被相続人居住用家屋等確認書」(下記、国土交通省ホームページ参照)の交付を受け、申告書に添付する必要がある(措規18の2②二イ(3))。   【3】 仮想通貨に係る措置(令和元年分以後) 仮想通貨に係る税務上の取扱いが規定された。 (1) 評価の方法及びその選定 仮想通貨につき事業所得又は雑所得の計算上必要経費に算入する金額の算定において、算定の基礎となるその年12月31日において有する仮想通貨の価額は、仮想通貨について選定した評価の方法(「総平均法」又は「移動平均法」、評価方法を選定しなかった場合には「総平均法」)により評価した金額とされた(所法48の2①、所令119の2①、119の5①)。 評価の方法は、仮想通貨の種類ごと(例:ビットコイン、イーサリアム等)に選定しなければならない(所令119の3①)。また、評価の方法を選定する場合には、仮想通貨を新たに取得した日の属する年分の確定申告期限までに「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」を所轄税務署長に提出することとされている(所令119の3②)。 なお、上記の取扱いを定める法律の施行日は平成31年4月1日であり、同日の前から仮想通貨を有している場合には、令和元年分の確定申告期限(令和2年3月16日)までに届出書を提出する必要がある。 〇所得税の仮想通貨の評価方法の届出書の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (出典) 国税庁ホームページ「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和元年12月20日)」 (2) 5%概算取得費の容認 売却した仮想通貨の取得価額が不明な場合等には、売却価額の5%相当額を取得価額として事業所得又は雑所得の金額を計算できることとされた(所基通48の2-4)。   【4】 控除証明書等の電子的交付(平成30年分以後) 平成30年分以後の確定申告で生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除の適用を受ける場合には、書面により交付を受けた控除証明書や受領証だけでなく電磁的記録印刷書面(※)(QRコード付控除証明書等)を申告書に添付又は提示することができる(所法120③一、所令262①四~六・②、所規47の2④)。 (※) 保険会社や寄附先等から電磁的方法により交付された控除証明書や受領証を、国税庁長官の定める方法によって出力することにより作成した書面。 なお、確定申告書をe-Taxで送信する場合には、保険会社や寄附先等から電磁的方法により交付された控除証明書等を添付して提出(送信)することができる。   【5】 確定申告書の記載事項の見直し、添付書類の簡素化 (1) 確定申告書の記載事項の見直し(令和元年分以後) 年末調整を受けた納税者が確定申告書を提出する場合、年末調整で適用を受けた所得控除については、以下のとおり記載事項が見直し(簡素化)された(所法120①、122③、125④、127④、所令263①、所規47①②④、48②)。 なお、見直しに伴い、確定申告書Bの様式が一部変更されている(所得控除の部分)。 (2) 確定申告書の添付書類の簡素化 平成31年4月1日以後に確定申告書を提出する場合、次の書類は申告書に添付又は提示することを要しないこととされた(旧所法120③四、旧所令262⑤、旧措令4の2⑨⑪、25の9⑭⑮、25の11の2⑳、25の12の2㉔)。   【6】 スマートフォン等からのe-Tax送信(令和2年1月31日以後) 令和2年1月31日から、スマートフォンやタブレット(マイナンバーカード対応のもの)とマイナンバーカードを用い、確定申告書をスマートフォンやタブレットからe-Taxにより送信できるようになる。 詳細は、国税庁の下記ホームページをご参照いただきたい。 *  *  * 次回(最終回)は、人的控除を中心に確定申告実務において判断に迷う事項をQ&A形式でまとめる予定である。 (了)   

#No. 351(掲載号)
#篠藤 敦子
2020/01/09

相続空き家の特例 [一問一答] 【第45回】「第一次相続が未分割のままで第二次相続が発生しその相続人が1人の場合」-第一次相続が未分割のままで第二次相続が発生した場合-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第45回】 「第一次相続が未分割のままで第二次相続が発生しその相続人が1人の場合」 -第一次相続が未分割のままで第二次相続が発生した場合-   税理士 大久保 昭佳   Q 本年1月にY(父)が死亡し、その際の相続人は、Z(母)及びX(子)の計2名でしたが、Yに遺言はなく、遺産分割協議を行う前、同年3月にZが続いて死亡しました。 Zが自己の居住の用に供していた家屋(昭和56年5月31日以前に建築)及びその敷地は、その全部がY名義のままでした。 この度、Zの死亡に伴い、Xは、その家屋を取り壊して更地にし、その敷地を売却することを考えています。 Zの相続開始直前までは、その家屋にZが一人で暮らしていました。この場合、Xは、「相続空き家の特例(措法35③)」を受けることができるでしょうか。 A Xはその譲渡所得のうち、Zの法定相続分である2分の1について、「相続空き家の特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 被相続人の配偶者は、常に相続人となるとされ(民法第890条)、被相続人と最も深いつながりがある立場としてその相続権は尊重されることとなっています。ただ、配偶者は、通常、被相続人と年齢が近いことが多いことなどから、被相続人に係る遺産分割協議を行う前にその配偶者が死亡される場合もよくあります。 相続が発生して、相続人が複数いる場合は、遺言があれば遺言どおりに、遺言がなければ遺産分割協議によってその遺産を配分することとなりますが、その協議を行う前の遺産は、民法上、相続人全員の共有となっていて、これを「共同相続」といいます。 この「共同相続」は過渡的なものですが、遺産分割協議によりその配分が確定するまでは、その遺産の共有状態が続くこととなります。 本事例の場合にあてはめると、Yの遺産に係る分割協議が行われる前に、Zが死亡しているため、Y名義の家屋及び敷地は、ZとXの法定相続分(Zの持分:2分の1、Xの持分:2分の1)による共有による所有となります。そして、Zの死亡後に、改めてZの相続分をXが相続により取得したこととなります。 したがって、Xは、その家屋及びその敷地のうち、Yの死亡後に一人暮らしとなったZの法定相続分である2分の1について、他の要件を満たす場合には、本特例の適用を受けることができることとなります。 (了)

#No. 351(掲載号)
#大久保 昭佳
2020/01/09

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例13】「従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例13】 「従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は九州地方の政令指定都市で、食品の製造販売を行っている資本金5億円の株式会社Aで総務部長兼経理部長を務めております。わが社は一昨年に創業50周年を迎え、ここ数年は業績も堅調であったことから、昨年3月の決算期前の週末に、全従業員(子会社を含め概ね500名程度)を対象に大分県の温泉旅館を貸し切って一泊2日の「感謝の夕べ」を開催しました。 当該「感謝の夕べ」においては、「従業員こそわが社の最大の資産」という現社長の考えから、日ごろの従業員の労苦に報いるとともに、リフレッシュして翌期以後の更なる業績向上につなげる目的で、バスをチャーターして温泉旅館を訪れ、温泉につかったあと夜は山海の珍味に舌鼓を打ちながらプロの芸人によるコントやものまねのショーが執り行われました。また、翌日は旅館で朝食をとった後、バスで会社に戻り解散するというスケジュールとなりました。当日の参加者は全従業員の9割を超え、帰社後にとったアンケートの回答の多くは「仕事へのモチベーション向上につながった」と肯定的なものであったため、福利厚生を担当する総務部長としても、今回の「感謝の夕べ」は大成功であったと自負しております。 わが社においては、昨年3月期の法人税の申告に関し、上記「感謝の夕べ」に要した諸費用をすべて福利厚生費として損金算入しておりました。ところが、先日受けた税務調査で調査官は、従業員は租税特別措置法第61条の4第4項にいう「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当し、かつ、その金額が総額約1,200万円と高額であることから、同条第3項の「通常要する費用」の範囲を超えているため、交際費等に該当するとして、全額損金不算入となる旨言い渡されました。 私は入社以来経理一筋で30年のキャリアがありますが、これまでの経験と同業者との勉強会等で得た知識から、わが社が行うような全従業員を対象とした慰安目的の「感謝の夕べ」は、まさに福利厚生費そのものであり、交際費と解する余地はないものと認識しております。また、金額が高額であることを問題としているようですが、総額は確かに1,200万円と目立つ支出といえますが、参加者1人当たりに直せば約24,000円に過ぎず、交通費を含めた一泊旅行としては比較的リーズナブルといえます。したがって、当該支出は「通常要する費用」の観点からも交際費には該当しないものと考えられますが、いかがでしょうか。   【A】 租税特別措置法第61条の4で損金算入が制限されている交際費は、従来からその隣接費用との区別が問題となってきましたが、本件のように「感謝の夕べ」のような行事に関する交際費と福利厚生費との区分を判断する際には、法人の規模や事業内容等を踏まえた上で、社会通念上福利厚生費として認められるかどうか、行事の目的、参加者の構成、規模や内容、効果、参加者1人当たりの費用等を総合的に勘案して判断することとなります。 当該基準を本件に当てはめると、従業員全体を対象に、日頃の労苦に報いるとともに、リフレッシュして翌期以後の更なる業績向上につなげる目的で行った当該行事は「専ら従業員の慰安のために行われるもの」と認定すべきものであり、また、参加者1人当たり約24,000円という金額も「通常要する費用」を超えているとは言い難いことから、「感謝の夕べ」にかかる費用は福利厚生費と解するのが妥当であると考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 交際費の意義 法人税の税務調査において、調査官と企業の担当者・税理士との間でしばしば議論となるのは、交際費と隣接費用との区分の問題である。ここではまず交際費の意義についてみておく。 法人税法(実際には租税特別措置法に規定がある)上の交際費とは、交際費・接待費・機密費その他の費用で、法人がその得意先・仕入先その他事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう(措法61の4④)。交際費は企業会計上、費用となるのであるが、法人の課税所得計算において、仮にその損金算入を無制限に認めると、いたずらに法人の冗費・濫費を増大・助長させる恐れがあるため、租税特別措置法で、資本金が1億円を超える法人について、原則として全額損金不算入としている(措法61の4②)。 法人における交際費の損金不算入規定は、昭和29年度の税制改正で導入された制度であるが、平成18年度の税制改正で中小法人(資本金1億円以下の一定の法人)に係る定額控除限度額制度(当初600万円が平成25年度の改正で800万円に引上げ)により要件が相当程度緩和され(措法61の4②)、さらに平成26年度の税制改正で接待飲食費の額の50%相当額までは損金に算入されることとなった(措法61の4①)(※1)。 (※1) 令和2年度税制改正では、接待飲食費の額の損金算入特例の対象法人から資本金の額等が100億円を超える法人が除外される予定である。 なお、上記接待飲食費は、専ら法人の役員、従業員又はそれらの親族に対する接待等のために支出するものは除かれるため(措法61の4④)、本件のように従業員を対象とする宿泊付きの宴会等は対象外となる。   (2) 交際費と福利厚生費との区分を巡る裁判例 交際費と隣接費用との区分を巡る問題については、これまで議論を尽くされてきた論点であり、解釈の基準も確立されているためもはや新しい論点はないとされがちであるが、最近の裁判例を見てみると必ずしもそうとはいないものもある。 そこで、以下でその内容を確認していきたい(福岡地裁平成29年4月25日判決・税資257号順号13015、TAINSコード:Z267-13015、確定)。 ① 事案の概要 本件は、養鶏事業、食肉等食料品の販売事業等を営んでいる原告が、平成20年3月期から平成24年3月期の5事業年度分の法人税に関して、 1)従業員等に対する「感謝の集い」と名付けられた行事に係る費用の一部、及び、 2)原告の工場内の下請企業の従業員に対して支給した「表彰金」と名付けられた金員に係る費用 を損金の額に算入した上で確定申告をしたところ、処分行政庁が、上記各費用につき、いずれも租税特別措置法第61条の4第3項に規定する「交際費等」に当たり、損金の額に算入することはできないとの判断に基づき、平成25年5月27日付けで平成20年3月期から平成24年3月期の5事業年度分の法人税の更正処分(再更正を含む)及び過少申告加算税の賦課決定処分を行い、さらに、平成25年9月9日付けで平成21年3月期から平成24年3月期の4事業年度の法人税の再更正処分(再々更正を含む)及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことから、原告が本件各更正処分等の取消しを求める事案である。 なお、処分行政庁は、本件訴訟の提起後、平成28年1月27日付けで、原告に対し、本件各事業年度の「表彰金」に係る費用を「原告の工場内等において原告の「従業員とともに経常的に従事している協力会社の従業員に対する支払であること」などから、「交際費等」には該当しないと認められるとして」、それぞれ損金の額に算入するとともに、関連する事業税等の金額を調整し、所得金額及び納付すべき税額を減額する再更正処分(再々更正及び再々々更正を含む)並びに過少申告加算税を減額する変更決定処分を行っている(※2)。 (※2) なお、本件訴訟代理人の判例評釈によれば、当該減額更正の理由は、原告の主張した理由をそっくり是認したものだということから、課税庁側の課税処分が慎重さに欠けるものだったということが推認される。山本洋一郎「措置法61の4(交際費等の損金不算入)の適用の限界」『税法学』578号196頁参照。 ② 本裁判例の争点 本件各福利厚生費は租税特別措置法第61条の4第1項の「交際費等」に該当するのか。具体的には、 の2点である。 ③ 裁判所の判断 〈交際費課税の趣旨〉 〈交際費と福利厚生費との区別〉 〈「感謝の集い」の損金性〉   (3) 福利厚生費と交際費の区分を巡る学説 福利厚生費と交際費の区分については、交際費等から除外される、、、、、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」の解釈が問題となるが、特に交際費等の支出の相手方に自社の従業員が含まれるかどうか(「除外規定」の解釈)を巡る学説としては、2つの見解がある。 1つは、役員や一部の従業員に対してのみ行った支出を交際費等とし、全従業員を対象とした慰安費用は福利厚生費として交際費等には該当しないというものである(確認的規定説(※3))。もう1つは、支出の相手方には従業員を含み、従業員に対する慰安費用は交際費等に該当する可能性があることに照らし、除外規定は、当該支出が通常要する費用であれば、交際費等から除外されることを定めた創設的規定であるとするものである(創設的規定説(※4))。 (※3) 宮本十至子「従業員等に対する「感謝の集い」の交際費等該当性」『最新租税基本判例70』(日本税務研究センター・2019年)157頁。 (※4) 宮本前掲(※3)評釈157頁。 上記(2)の裁判例で裁判所は、「措置法61条の4第3項が、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」について、損金不算入の取扱いを受ける「交際費等」から除外したのは(中略)、従業員も「事業に関係のある者等」に含まれ、交際費の支出の相手方となるものの、専ら従業員の慰労のために行われる諸活動のために「通常要する費用」は、従業員の福利厚生費として法人が負担するのが相当であり、その全額につき損金算入を認めても法人の冗費・濫費抑制等の目的に反しないからであると解される」と判示しており、支出の相手方には従業員を含む「創設的規定説」を採用しているものと考えられる。これは、例えば措置法通達61の4(1)-22で交際費等の支出の相手方には「当該法人の役員、従業員、株主等も含むことに留意する」としている課税実務とも整合的である。   (4) 裁判例の評価 その上で、当該「感謝の集い」に係る費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度(通常要する費用)を超えて交際費等に該当するか否かについて、裁判所は、「交際費等の損金不算入制度の趣旨及び目的に鑑み、当該法人の規模や事業状況等を踏まえた上で、当該行事の目的、参加者の構成(すなわち、従業員の全員参加を予定したものか否か)、開催頻度、規模及び内容、効果、参加者1人当たりの費用額等を総合して判断するのが相当である」という判断基準を示している。すなわち、「通常要する費用」は社会通念で判断され、それは社会的経済的情勢の変化とともに変わり得る(※5)ことを意味すると考えられる。 (※5) 交際費課税に係る近年の税制改正は、交際費課税の消費抑制的効果を緩和するものであり、その意味でも本件裁判例は改正動向と整合的であると評価できる。宮本前掲(※3)評釈157頁参照。 本裁判例の場合、以下のように各要素を精緻に検討して福利厚生費に該当すると判断したことになる。 〇福岡地裁平成29年4月25日判決の判断要素とその内容 上記①~⑥のいずれの要素をとってみても、社会通念上、「通常要する費用」の範囲を超えるものはないことから、交際費等ではなく福利厚生費として損金算入されるべき支出と判断されたこととなる。今後の実務においても個別事例の解釈例として(※6)参考になる裁判例といえよう。 (※6) 宮本前掲(※3)評釈157頁。   (5) 本件への当てはめ 上記(4)の判断要素を本件に適用してみると以下の表の通りとなり、いずれの要素をとってみても、社会通念上、「通常要する費用」の範囲を超えるものはないことから、交際費等ではなく福利厚生費として損金算入されるべき支出と判断されるだろう。 〇本件の判断要素とその内容 本件の「感謝の夕べ」のような行事に関する交際費と福利厚生費との区分を判断する際には、法人の規模や事業内容等を踏まえた上で、社会通念上福利厚生費として認められるかどうか、行事の目的、参加者の構成、規模や内容、効果、参加者1人当たりの費用等を総合的に勘案して判断することとなる。 当該基準を本件に当てはめると、従業員全体を対象に、日頃の労苦に報いるとともに、リフレッシュして翌期以後の更なる業績向上につなげる目的で行った当該行事は「専ら従業員の慰安のために行われるもの」と認定すべきものであり、また、参加者1人当たり約24,000円という金額も「通常要する費用」を超えているとは言い難いことから、「感謝の夕べ」にかかる費用は福利厚生費と解するのが妥当であると考えられる。 (了)

#No. 351(掲載号)
#安部 和彦
2020/01/09

《相続専門税理士 木下勇人が教える》一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第8回】「社長貸付金の解消問題に関する本質論(ビジネス的視点)」

《相続専門税理士 木下勇人が教える》 一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第8回】 「社長貸付金の解消問題に関する本質論(ビジネス的視点)」   公認会計士・税理士 木下 勇人   社長貸付金の解消問題は相続税対策でしばしば取り上げられるが、その解決の一手法としてDES(債務の株式化)が存在する。しかし、DES(債務の株式化)の本来の目的は「財務の健全化」にあり、相続税対策だけがフォーカスされることには違和感を覚えてしまう。 そこで本稿では、DES(債務の株式化)を実行する原因となる社長貸付金そのものに焦点を当て、社長貸付金の解消問題に関する本質論をビジネス的視点を中心に検証する。   1 社長貸付金が増加する原因と投下資金の回収という視点 社長貸付金が増加する原因としては、主に次の場合が考えられる。 ただし、上記だけでは表面的な増加の原因を探れたに過ぎず、不十分である。貸付を受けた法人側では、当該資金を「運転資金」「設備資金」として資金投下、つまり、売上獲得のための資金投下となる。そのように考えた場合、投下資金の回収が図れたか否かが重要な視点となる。   2 業績の良い会社のケース 業績の良い会社が金融機関からの借入手続の煩雑さから解放されるために、社長からの借入を実行するのであれば、投下資金の回収を図れる可能性は高いといえる。つまり、投下資金を事業運用することで最終的には社長が回収可能な状態となる。また、社長が回収をせずに、会社が次の投資へそのまま投下資金を回すというのも選択肢の1つとなる。   3 業績の悪い会社のケース これに対して、業績の悪い会社の場合、金融機関からの融資が厳しく社長からの借入に頼るしかない状況となる。社長に余剰資金があれば、社長からの借入が「いつまでも」続くが、この場合の投下資金は、あっという間に底をついてしまう。つまり、「事業運用をして回収」というプロセスを構築できていない会社にいくら資金を投下しても、欠損金を生じさせる結果となってしまう。 ビジネスの視点からいえば、傷が深くなる前にビジネスそのものを再度見直すか、会社の廃業を検討すべきである。回収できる状況ではないが、資金は何とか回っている会社であっても変化の激しい昨今の社会情勢を鑑みた場合、現状維持では将来に不安を感じたほうが正常な状態といえる。   4 今後の税理士としてあるべき姿の検証 会社の将来性を考えた結果、これ以上の展開が望めないのであれば、今後は税理士としてもビジネスへのアドバイスをすべき時代である。もしくは、税理士がアドバイスしないまでも適切な専門家とアライアンスをしなければ、会社のビジネスそのものを破綻させてしまう可能性がある。ある意味、会計事務所そのもののビジネス構造とも似ているといえる。   5 「回収」という視点からの社長貸付金の検証 (1) 事業運用した上での資金回収 回収した資金を費消せずに保有したまま相続が発生すると、保有資金に対する相続税負担が生じるが、納税資金や遺産分割の調整資金となりうる。 (2) 債務免除(個人からは債権放棄) 債務免除は、資金を回収することなく債権そのものを消滅させるため、相続財産を構成することはない。ただし、法人側での出口戦略(繰越欠損金との相殺、みなし贈与課税)を検討する必要がある。 (3) DES(債務の株式化)の実行 DES(債務の株式化)を行うことで、債権が自社株に変換されるため、原則、額面評価(評基通204)から自社株評価(評基通178以降)へ変換される。そのため、類似業種比準方式の採用余地があり、一般的には相続税の圧縮効果があるといえる。ただし、回収という側面で考えた場合、会社法の各種手続(特定の株主からの自己株式買取手続や分配可能額確保等)や課税問題(原則、みなし配当課税)をクリアする必要があるため、リスク検証をして臨む必要がある。 今後は、社長貸付金の解消問題には税務論点だけでなく、「回収」という視点の出口戦略が求められる時代となる。なぜならば、時代の変化に応じ社長が検討する対策の方向性も変化するからである。そのため、常に「対策の流動性」を視野に入れたスキームの実行が、これからの税理士には求められると考える。 (了)

#No. 351(掲載号)
#木下 勇人
2020/01/09

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第76回】「継続的取引の基本となる契約書⑦(リベート支払に関する覚書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第76回】 「継続的取引の基本となる契約書⑦ (リベート支払に関する覚書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は商社です。下記の文書は販売先との間で締結した、商品売買基本契約に基づき、別途リベート支払について定める文書です。 この文書は、印紙税法上の課税文書に該当しますか。 当事者間において対象商品「〇〇〇〇」の仕入予定金額を定めており、令第26条第1号に規定する取引条件のうち、「取扱数量(取扱金額)」を定めた文書に該当することから、第7号文書に該当する。   [検討1] リベート対象商品「〇〇〇〇」は、令第26条第1号における「目的物の種類」を定める文書に該当するか リベート対象商品「〇〇〇〇」は、あくまでも、リベートの対象となる商品を定めたものであり、令第26条第1号に定める目的物の種類を定める文書に該当しない。 [検討2] 甲へのリベート支払日として売掛金と相殺すると定めている部分については「対価の支払方法」に該当しないか リベートの支払時期については、「甲へのリベート支払日とし、売掛金と相殺する」と定めていても、これはリベートの支払時期、支払方法を定めたものであり、令第26条第1号でいう継続的取引の基本となる売買における対価の支払方法を定める文書に該当しない。 [検討3] 仕入予定金額は、令第26条第1号で定める「取扱数量」を定める文書に該当するか 仕入予定金額について、令第26条第1号における、「取扱数量」を定める文書に該当するかどうかは、当事者間において、一定期間における取扱予定金額を定めるものであり、令第26条第1号の重要事項である取扱数量(取扱金額を含む)に該当する。   ▷まとめ 令第26条第1号に定める第7号文書の要件は、売買に関する2以上の取引を継続して行われるため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法等、売買に関する2以上の取引に共通するものであり、仕入予定金額は売買に関する取扱数量を定めるといえるが、リベートの対象商品、支払時期については、リベートに係るものであり、第7号文書の要件の目的物の種類、対価の支払方法を定める文書には該当しない。   (了)

#No. 351(掲載号)
#山端 美德
2020/01/09

改めて確認したいJ-SOX 【第9回】「内部統制に不備があった場合の対応とその手順」

改めて確認したいJ-SOX 【第9回】 「内部統制に不備があった場合の対応とその手順」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   〈J-SOXに関する基準及び実施基準の改訂について〉 令和元年12月13日に金融庁の企業会計審議会から、財務報告に係る内部統制基準・実施基準の改訂が公表されています。 この改訂の概要は、内部統制監査報告書の記載に関する改正が中心で、財務報告に係る内部統制の評価の実務的な作業には影響がないと考えられます。 なお、この改正後の基準及び実施基準は、令和2(2020)年3月31 日以後終了する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用されます。 前回まで、財務報告に係る内部統制をどのように評価するのかといった評価の手順に焦点を当てて説明してきました。 どのような企業であっても、人の行う作業が介入するため、どれだけ立派な内部統制が構築されていたとしても、何かしらの不備が出てくるものです。 そこで今回は、内部統制に不備があった場合に、どのように対応しなければならないのかを説明します。   1 全体的な対応の流れ 財務報告に係る内部統制基準では、不備の評価について、次のようなことが規定されています。 そのため、この不備の評価作業は必ず行わなければなりませんが、実務的な手順として、内部統制に不備があった場合、まずは、不備を発見した者がその上位の管理者等適切な者に対して、不備があったということを速やかに報告することが大事だと考えられます。 最終的には、不備の内容、財務報告全体に及ぼす影響金額、不備の対応策、その他有用と思われる情報を取りまとめる必要がありますが、通常、財務報告全体に及ぼす影響金額や対応策は検討に時間を要することが多いと考えられます。そのため、内部統制の評価実務にまだ慣れていない場合はなおさら、まずは不備があったという事実を報告し、そこから上位者等の指示や助言を受けながら、影響額や対応策などを検討するのがよいでしょう。 発見された不備が開示すべき重要な不備に該当する場合には、経営者、取締役会、監査役等(監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会)及び会計監査人に報告しなければならないため留意が必要です。 なお、J-SOXでは、あくまで期末日時点の財務報告に係る内部統制の有効性を評価するため、期中に不備が発見され、それが期末日までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効と評価することができます。   2 それぞれの内部統制の不備への対応 内部統制に不備があった場合、それが財務報告に重要な影響を及ぼす可能性を検討しなければなりませんが、どの内部統制に不備があったかによって財務報告に与える影響も変わってきます。 そこで、ここからは内部統制の種類ごとに不備をどのように評価するかを説明します。 (1) 全社的な内部統制に不備がある場合 ① 不備の評価 【第4回】でも説明しましたが、全社的な内部統制は企業全体に広く影響を及ぼし、企業全体を対象とする内部統制です。そのため、全社的な内部統制に不備があるということは、業務プロセスに係る内部統制の有効な整備及び運用を支援できておらず、企業における内部統制全般を適切に構築できていないということになります。 一方で、全社的な内部統制は財務報告に直接的には関わらないことが多いため、仮に全社的な内部統制に不備があったとしても、それがダイレクトに開示すべき重要な不備になることは通常なく、業務プロセスに係る内部統制が単独で有効に機能することもあり得ます。 しかし、先ほど述べたように、全社的な内部統制に不備があるという状況は、基本的な内部統制の整備に不備があることを意味しているため、全社的な内部統制に不備がある状況で財務報告に係る内部統制が有効と評価されることは稀であるとされています。 したがって、全社的な内部統制に不備がある場合には、どの内部統制にどのような影響を及ぼすかを検討し、財務報告に重要な虚偽記載をもたらす可能性について慎重に評価する必要があります。 ② 不備の例示 財務報告に係る内部統制の実施基準において、開示すべき重要な不備となる全社的な内部統制の不備が例示されているため、参考として以下に記載します。 〈開示すべき重要な不備となる全社的な内部統制の不備の例〉 (2) 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合 ① 不備の評価 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、虚偽記載が発生する可能性のある勘定科目等を特定し、影響度と発生可能性を考慮して具体的な影響額を推定して金額的重要性を評価し、さらに質的な重要性を評価して、開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断します。 大まかにいうと、このような手順となりますが、いくつか補足事項もあるため、以下で詳細に説明していきます。 ② 詳細な対応手順 (a) 影響範囲の推定 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、当該業務プロセスで作られる勘定科目等の数値に虚偽記載が発生する可能性があります。そのため、業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、どの勘定科目等に虚偽記載が発生するかを推定します。 (b) 重要性の判断 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、どの勘定科目等にどの程度の金額の虚偽記載が発生する可能性があるかを推定し、これの金額的及び質的な重要性を評価して、不備が開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断します。 このとき、内部統制の不備が複数存在する場合には、不備ごとに単独に重要性を評価するだけではなく、同じ勘定科目に関係する不備はすべて合わせて虚偽記載の影響額に重要性が認められるか否かを評価します。 例えば、売掛金勘定の残高は、販売業務プロセスでの信用販売と入金業務プロセスの代金回収の影響を受けますが、この両方の業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合は、それぞれの不備がもたらす影響を合わせて、売掛金勘定の残高に及ぼす影響を評価しなければなりません。 〈不備が複数ある場合の影響額の評価イメージ〉 開示すべき重要な不備とは、内部統制の不備のうち、一定の金額を上回る虚偽記載、又は質的に重要な虚偽記載をもたらす可能性が高いものをいうため、上記のイメージを例に挙げると、売掛金勘定の残高に与える不備の影響額200や売上高に与える不備の影響額100に金額的重要性が認められるか、また、質的に重要な虚偽記載をもたらしていないかを評価して、内部統制の不備が開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断します。 金額的重要性は、連結総資産、連結売上高、連結税引前利益などに対する比率で判断することが一般的で、実施基準では連結税引前利益については概ねその5%程度と例示されています。 質的重要性は、上場廃止基準や財務制限条項に関わる記載事項など投資判断に与える影響の程度や、関連当事者との取引や大株主の状況に関する記載事項など財務報告の信頼性に与える影響の程度で判断すると実施基準に定められています。 (c) 補完統制の検討 内部統制の不備による影響額を推定する際は、どの程度の金額の虚偽記載がどのくらいの発生確率(発生可能性)で起こるかを検討する必要があります。その際に気を付けなければならないのが補完統制の存在です。 特定の内部統制に不備があったとしても、他の統制で十分に虚偽記載が発生するリスクを低減できているということは実務上よくあります。このときの他の統制が補完統制です。 〈補完統制のイメージ〉 そのため、不備の影響額を推定する際は、当該不備だけで判断するのではなく、補完統制の有無、また、補完統制がある場合は、どの程度その勘定科目等の虚偽記載の発生可能性・金額的影響を低減しているかを考慮しなければなりません。 (3) ITに係る内部統制に不備がある場合 ITに係る内部統制に不備がある場合の対応については、【第8回】で説明しているため、ここでは説明を省略します。 *  *  * 今回までで、財務報告に係る内部統制の有効性をどのように評価するかを説明してきました。連載最終回となる次回は、評価した結果の報告をどのようにするか、すなわち、内部統制報告書の記載内容、記載文書の作成方法等を説明します。 (了)

#No. 351(掲載号)
#竹本 泰明
2020/01/09
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