公開日: 2020/01/09 (掲載号:No.351)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例13】「従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例13】

「従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は九州地方の政令指定都市で、食品の製造販売を行っている資本金5億円の株式会社Aで総務部長兼経理部長を務めております。わが社は一昨年に創業50周年を迎え、ここ数年は業績も堅調であったことから、昨年3月の決算期前の週末に、全従業員(子会社を含め概ね500名程度)を対象に大分県の温泉旅館を貸し切って一泊2日の「感謝の夕べ」を開催しました。

当該「感謝の夕べ」においては、「従業員こそわが社の最大の資産」という現社長の考えから、日ごろの従業員の労苦に報いるとともに、リフレッシュして翌期以後の更なる業績向上につなげる目的で、バスをチャーターして温泉旅館を訪れ、温泉につかったあと夜は山海の珍味に舌鼓を打ちながらプロの芸人によるコントやものまねのショーが執り行われました。また、翌日は旅館で朝食をとった後、バスで会社に戻り解散するというスケジュールとなりました。当日の参加者は全従業員の9割を超え、帰社後にとったアンケートの回答の多くは「仕事へのモチベーション向上につながった」と肯定的なものであったため、福利厚生を担当する総務部長としても、今回の「感謝の夕べ」は大成功であったと自負しております。

わが社においては、昨年3月期の法人税の申告に関し、上記「感謝の夕べ」に要した諸費用をすべて福利厚生費として損金算入しておりました。ところが、先日受けた税務調査で調査官は、従業員は租税特別措置法第61条の4第4項にいう「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当し、かつ、その金額が総額約1,200万円と高額であることから、同条第3項の「通常要する費用」の範囲を超えているため、交際費等に該当するとして、全額損金不算入となる旨言い渡されました。

私は入社以来経理一筋で30年のキャリアがありますが、これまでの経験と同業者との勉強会等で得た知識から、わが社が行うような全従業員を対象とした慰安目的の「感謝の夕べ」は、まさに福利厚生費そのものであり、交際費と解する余地はないものと認識しております。また、金額が高額であることを問題としているようですが、総額は確かに1,200万円と目立つ支出といえますが、参加者1人当たりに直せば約24,000円に過ぎず、交通費を含めた一泊旅行としては比較的リーズナブルといえます。したがって、当該支出は「通常要する費用」の観点からも交際費には該当しないものと考えられますが、いかがでしょうか。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例13】

「従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は九州地方の政令指定都市で、食品の製造販売を行っている資本金5億円の株式会社Aで総務部長兼経理部長を務めております。わが社は一昨年に創業50周年を迎え、ここ数年は業績も堅調であったことから、昨年3月の決算期前の週末に、全従業員(子会社を含め概ね500名程度)を対象に大分県の温泉旅館を貸し切って一泊2日の「感謝の夕べ」を開催しました。

当該「感謝の夕べ」においては、「従業員こそわが社の最大の資産」という現社長の考えから、日ごろの従業員の労苦に報いるとともに、リフレッシュして翌期以後の更なる業績向上につなげる目的で、バスをチャーターして温泉旅館を訪れ、温泉につかったあと夜は山海の珍味に舌鼓を打ちながらプロの芸人によるコントやものまねのショーが執り行われました。また、翌日は旅館で朝食をとった後、バスで会社に戻り解散するというスケジュールとなりました。当日の参加者は全従業員の9割を超え、帰社後にとったアンケートの回答の多くは「仕事へのモチベーション向上につながった」と肯定的なものであったため、福利厚生を担当する総務部長としても、今回の「感謝の夕べ」は大成功であったと自負しております。

わが社においては、昨年3月期の法人税の申告に関し、上記「感謝の夕べ」に要した諸費用をすべて福利厚生費として損金算入しておりました。ところが、先日受けた税務調査で調査官は、従業員は租税特別措置法第61条の4第4項にいう「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当し、かつ、その金額が総額約1,200万円と高額であることから、同条第3項の「通常要する費用」の範囲を超えているため、交際費等に該当するとして、全額損金不算入となる旨言い渡されました。

私は入社以来経理一筋で30年のキャリアがありますが、これまでの経験と同業者との勉強会等で得た知識から、わが社が行うような全従業員を対象とした慰安目的の「感謝の夕べ」は、まさに福利厚生費そのものであり、交際費と解する余地はないものと認識しております。また、金額が高額であることを問題としているようですが、総額は確かに1,200万円と目立つ支出といえますが、参加者1人当たりに直せば約24,000円に過ぎず、交通費を含めた一泊旅行としては比較的リーズナブルといえます。したがって、当該支出は「通常要する費用」の観点からも交際費には該当しないものと考えられますが、いかがでしょうか。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
国際医療福祉大学大学院教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。

【主要著書】
・『消費税 インボイス制度導入の実務』(清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ 消費税の判定誤りと実務対応』(清文社)
・『新版 医療・福祉施設における消費税の実務』(清文社)
・『【第三版】税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与実務Q&A』(清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税Q&A』(清文社)
・『Q&A 医療法人の事業承継ガイドブック』(清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(清文社)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(税務経理協会)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(税務経理協会)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(中央経済社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(清文社)

【主要論文】
・「わが国企業の海外事業展開とタックスヘイブン対策税制について」(『国際税務』2001年12月号)
・「タックスヘイブン対策税制の適用範囲-キャドバリー・シュウェップス事件の欧州裁判所判決等を手がかりにして-」『税務弘報』(2007年10月号)
など
            

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