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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例47(法人税)】 「国庫補助金等の圧縮記帳を行ったが、経理処理を誤ったため、損金経理がされていないとして税務調査で否認された事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例47(法人税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳(法法42~44) 法人が、固定資産の取得に充てるための国庫補助金等の交付を受け、当該事業年度においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得をした場合、圧縮記帳をすることができる。 圧縮記帳は、法人税法上、その取得に充てた国庫補助金等の額に相当する金額(以下「圧縮限度額」という)の範囲内でその帳簿価額を以下のいずれかの方法により経理処理した場合に認められる。 ① 損金経理により帳簿価額を直接減額する方法 ② 当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法 ③ 決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法 そして上記方法①②③いずれかの方法により減額し又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる。 さらに、圧縮記帳は別表13(1)「国庫補助金等、工事負担金及び賦課金で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」の記載がある場合に限り適用すると規定されているが、この明細については、 その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、圧縮記帳の適用が可能となっている。       (了)

#No. 207(掲載号)
#齋藤 和助
2017/02/23

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第26回】「まとめ」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第26回】 (最終回)  「まとめ」   公認会計士 佐藤 信祐   前回まで、会社法及び租税法の観点から、裁判例、裁決例を分析してきた。 最終回となる本稿では、今までの裁判例、裁決例を踏まえたうえで、実務上の留意事項について解説を行う。   1 会社法の観点からの評価 【第2回】から【第10回】までは、募集株式の発行等における公正な払込金額について検討を行った。その結果、引受人が支配株主になる場合には、支配株主にとっての株式価値により評価され、引受人が少数株主になる場合には、少数株主にとっての株式価値により評価されていることが分かった。さらに、アートネイチャー事件にあるように、取締役の損害賠償責任が問われる場合には、外部専門家による鑑定評価を事前に入手しておくことにより、結果として、払込金額が実際の時価よりも安かったとしても、責任が問われない可能性が高いことが分かった。 【第11回】から【第14回】までは、譲渡制限株式の譲渡における売買価格について検討を行った。その結果、経営権の移動に準ずる場合には支配株主にとっての株式価値により評価され、少数株主間の譲渡の場合には少数株主にとっての株式価値により評価されていることが分かった。さらに、買主が支配株主であり、売主が少数株主である場合には、支配株主にとっての株式価値と少数株主にとっての株式価値を折衷することにより評価がなされている。 さらに、【第15回】から【第16回】までは、組織再編における反対株主の株式買取請求に対する公正な価格について検討を行った。その結果、マイノリティ・ディスカウント、非流動性ディスカウントが認められない可能性が高いことが分かった。このことは、株式併合、株式等売渡請求によるスクイズアウトにおいても同様の結論になる可能性が高いと思われる。 学説の傾向を見ても、組織再編、スクイズアウトにおける公正な価格では、マイノリティ・ディスカウント、非流動性ディスカウントを認めるべきではないとする傾向が強いように思われる。これに対し、募集株式の発行等、譲渡制限株式の譲渡では、統一的な見解は存在しないと思われる。そのため、募集株式の発行等、譲渡制限株式の譲渡では、今後、異なる裁判例が出てくる可能性があるという点にご留意されたい。   2 租税法の観点からの評価 【第17回】から【第25回】までは租税法の観点からの裁判例、裁決例の検討を行った。財産評価基本通達が改正される前の事件や、実務家の見解が統一される前の事件も多かったため、今になってみれば、実務家の見解を裏付けるものもあったと思われる。 とりわけご留意されたいのは、実務において、「第三者間取引だから」という理由で、時価とかけ離れた評価をしてしまうという点である。 第三者間取引は、利害の対立する第三者間の取引を意味するため、本来はその範囲は狭いはずである。とりわけ、非上場株式については、その株式を欲しがる人はほとんどいない。M&Aのような分かりやすい事案でもない限りは、本当に第三者間取引であるかどうかについて、慎重な判断が必要になると思われる。 さらに、実務でも議論がなされるのは、財産評価基本通達と異なる評価方法が採用されてしまう可能性である。 実際に税務調査で議論になった経験は無いが、筆者の専門が組織再編であることから、組織再編を利用して相続税評価額を引き下げるというコンサルティングは数多く行っている。その際に、経済合理性や事業目的からは説明ができない手法を選択した場合には、税務調査において、財産評価基本通達と異なる評価方法が採用される可能性があるということは指摘している。結果として、経済合理性や事業目的から十分に説明できる手法を採用しているため、そのような否認リスクはほとんどないと自負しているが、それでは、否認されない限界値はどこなのかという点は、誰も説明できないと思われる。 本誌における別の連載(包括的租税回避防止規定の理論と解釈)でも解説しているが、租税回避に対する否認は、解釈論の範疇では限界がきており、今後、立法論で対応される可能性もある。これに対し、財産評価基本通達はそもそも法律ではないため、解釈論により否認を受ける可能性もあることから、より慎重な対応が求められると考えられる。   3 まとめ このように、実務上は、会社法の観点からの分析と租税法の観点からの分析の両方が必要になると考えられる。 蛇足ではあるが、租税法の観点から、会社法上の裁判例の傾向と異なる結論になるかどうかについて分析したい。まず、募集株式の発行等については、株主において受贈益が生じるかどうかが問題となる。そのため、引受人が支配株主になる場合には、支配株主にとっての株式価値により評価され、引受人が少数株主になる場合には、少数株主にとっての株式価値により評価されるという裁判例の傾向は、租税法の観点からも受け入れやすい。 しかし、譲渡制限株式の譲渡については、買主が支配株主であり、売主が少数株主である場合は異なる結論になる可能性が高い。租税法上は、一物二価を認めることに差し支えはないため、買主の受贈益については支配株主にとっての株式価値、売主のみなし譲渡益については少数株主にとっての株式価値により評価がなされる可能性が高いと思われる。 そして、組織再編、スクイズアウトについても、支配株主の観点からすれば、マイノリティ・ディスカウントを認めるべきではないという裁判例の傾向は整合的であると考えられる。さらに、非適格組織再編に該当する場合における合併法人等の受入処理、被合併法人等の譲渡損益の計算においても、株主レベルでのディスカウントを反映させるべきではないため、同様の結論になると考えられる。 このように、会社法の結論がそのまま租税法も容認されるわけではないため、別々に検討が必要になってくる。 今回まで26回にわたり、会社法と租税法の両方の観点からの裁判例、裁決例の検討を行った。税務専門家の立場からすると、会社法上の時価を意識することは多くはないかもしれないが、公認会計士、税理士が会社法を意識しないで株式評価を行った結果、裁判で問題になった事案も存在する。そのため、本来であれば、会社法の観点からの分析も必要になろう。 本連載は、ここで終了させていただくが、いずれ機会を見ながら、新たな情報発信をしていきたい。本連載が、皆さまの実務のお役に立てれば幸いである。 (連載了)

#No. 207(掲載号)
#佐藤 信祐
2017/02/23

平成29年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

平成29年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋     Ⅱ 税効果会計の改正   平成27年12月28日に企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、「回収適用指針」という)」が公表された。   「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の主な改正点 回収適用指針では、以下の実務指針について、基本的にその内容を引き継いだ上で、必要と考えられる見直しが行われている。 本解説では、以下の主な改正点について解説する。 【主な改正点】 (1) 企業の分類 監委66号において、企業を5つに分類することが求められていた。回収適用指針においても基本的に踏襲した上で一部必要な見直しが行われている。 繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、回収適用指針第16項から第32項に従って、要件に基づき企業を「分類1」~「分類5」に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定する(回収適用指針15)。 「分類1」~「分類5」の要件は、監委66号と回収適用指針で以下のように異なる(回収適用指針15、17、19、22、26、30)。ポイントは将来の状況が要件に入っていること、及び会計上の指標である利益要件から税務上の指標である課税所得要件へ変更されていることである。 (※1) 営業損益項目に係る益金及び損金は通常の事業活動から生じたものであることから、原則として、「臨時的な原因により生じたもの」に該当しないと考えられる。一方、営業外損益項目及び特別損益項目に係る益金及び損金のうち、企業が置かれた状況等に基づいて検討した場合に将来において頻繁に生じることが見込まれないものは「臨時的な原因により生じたもの」に該当することが考えられる。 また、営業外損益項目に係る益金及び損金は毎期生じるものが多く、通常は「臨時的な原因により生じたもの」に該当しないと考えられるが、項目の性質によっては「臨時的な原因により生じたもの」に該当するものが含まれることがあると考えられる。 一方、特別損益項目に係る益金及び損金であっても必ずしも「臨時的な原因により生じたもの」に該当するとは限らず、企業が置かれた状況や項目の性質等を勘案し、将来において頻繁に生じることが見込まれるかどうかを個々に項目ごとに判断することになると考えられる(回収適用指針71)。 (※2) 課税所得から臨時的な原因により生じたものを除いた数値は、負の場合となる場合を含む(回収適用指針22)。 (※3) 一時差異等加減算前課税所得とは、将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額及び当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額を除いた額をいう(回収適用指針3(9))。 なお、上記の「分類1」~「分類5」に示された要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得(上記(※3))の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する(回収適用指針16)。回収適用指針において、この判断は、各分類の要件からの乖離度合いを定量的に検討することを意図していない(回収適用指針65)。ポイントは、過去、当期、将来の情報から総合的に判断することである。 (2) 「分類2」に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 監委66号では、「分類2」に該当する企業でスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとされていた。一方、回収適用指針では、取扱いが以下のように変更されている。 「分類2」に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、原則として、回収可能性がない。 ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性がある(回収適用指針21)。 例えば、スケジューリング不能な株式の減損損失、役員退職慰労引当金について、将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、繰延税金資産を計上できる(回収適用指針75、106)。 なお、役員退職慰労引当金の場合、将来のいずれかの時点で解消されるものであるため、この点について説明は不要と考えられるが、将来減算一時差異の残高と課税所得の水準との関係から回収できることについては合理的な根拠をもって説明することが求められると考えられる(企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」に対する主なコメントの概要とその対応47)。 (3) 「分類3」に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間 監委66号では、「分類3」に該当する企業では、課税所得の見積期間がおおむね5年とされていた。しかし、実務上はおおむね5年ではなく、一律5年を限度として課税所得の見積りを行うことが多かったと考えられる。このような硬直的な運用では、企業の実態を反映しない可能性もあるため、回収適用指針では以下のように見直されている。 「分類3」に該当する企業は、合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、繰延税金資産の回収可能性を検討する(回収適用指針23)。 ただし、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画(回収適用指針では、おおむね3年から5年を想定)、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする(回収適用指針24)。 (4) 「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類2」又は「分類3」に該当する場合 上記(1)の「分類4」の要件を満たす企業で、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積り、以下の①に該当する場合は「分類2」に、②に該当する場合は「分類3」に該当するものとして取り扱う。 ① 「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類2」に該当する場合 臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画(回収適用指針では、おおむね3年から5年を想定)、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは、「分類2」に該当するものとして取り扱う(回収適用指針28)。 この場合、スケジューリング可能な一時差異等に係る繰延税金資産は回収可能性がある(回収適用指針20)。さらに、上記(2)のとおり、スケジューリング不能な一時差異等に係る繰延税金資産も回収可能性ありと判断する場合がある(回収適用指針21)。 例えば、過去において「分類2」に該当していた企業が、当期において災害による損失により重要な税務上の欠損金が生じる見込みであることから「分類4」に係る分類の要件を満たしたが、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積った場合に、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときが該当する(回収適用指針91)。 ② 「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類3」に該当する場合 臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画(回収適用指針では、おおむね3年から5年を想定)、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは、「分類3」に該当するものとして取り扱う(回収適用指針29)。この場合、合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、繰延税金資産の回収可能性を検討する(回収適用指針23)。 これは、監委66号における例示区分「4ただし書」に該当する。 例えば、過去において業績の悪化に伴い重要な税務上の欠損金が生じており「分類4」に該当していた企業が、当期に代替的な原材料が開発されたことにより、業績の回復が見込まれ、その状況が将来も継続することが見込まれる場合に、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときが該当する(回収適用指針92)。 なお、「分類4」の要件を満たす企業で「分類3」に該当する企業には、上記(3)のただし書の部分については、適用されない(回収適用指針89)。 また、「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類2」に該当するケースは、「分類3」に該当するものとして取り扱われるケースに比べて多くはないものと考えられる(回収適用指針89)。 (5) 会計方針の変更 回収適用指針の適用にあたり、すべての企業が会計方針の変更に該当するわけではない。回収適用指針の適用初年度の期首(下記(6)参照)において、以下の①~③の項目を適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(回収適用指針49(3))。 ① 「分類2」に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い(上記(2)ただし書参照。回収適用指針21ただし書) ② 「分類3」に該当する企業において、おおむね5年を明らかに超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い(上記(3)ただし書参照。回収適用指針24) ⇒ 単純に5年を超える場合ではなく、おおむね5年を明らかに超える場合には、会計方針の変更に該当する。 ③ 「分類4」の要件に該当する企業であっても、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には「分類2」に該当するものとする取扱い(上記(4)①参照。回収適用指針28)   《適用初年度の取扱い》 上記のとおり、回収適用指針を適用するにあたり、①~③の項目を適用することとなった場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われる。 なお、遡及適用は認められず(回収適用指針123)、回収適用指針の適用初年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金又はその他の包括利益累計額(評価・換算差額等)に加減する(回収適用指針49(4))。 《注記》 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更のため、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(以下、「遡及基準」という)」10項に従って注記を行う(下記(ⅰ)~(ⅲ)参照)。 ただし、表示する過去の財務諸表に対する影響額については、遡及基準第10項(5)ただし書の規定にかかわらず、下記(ⅳ)~(ⅵ)の事項のみを注記する(回収適用指針49(5)、125)。 連結財務諸表作成会社においては、子会社についても影響額を算出する必要がある。 (注) 遡及基準10項ではこの他にも注記事項が定められているが、今回の回収適用指針の適用に当たっては、ここに記載していない注記事項は不要であると考えられる。 会社計算規則でも、会計方針の変更に関する注記の定め(会社計算規則102の2)はあるが、上記と同一の注記内容の規定はない。しかし、会計基準等の改正による会計方針の変更に関する注記であることを考慮すれば、計算書類においても同様の注記を行うことになると考えられる。 また、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しない場合、会計方針の変更の注記は不要であるが、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しなくても、回収適用指針を適用していることには変わりはない。そのため、追加情報で回収適用指針を適用している旨について注記することが考えられる(財務諸表等規則8の5、連結財務諸表規則15、会社計算規則116)。 【会計上方針の変更の注記例】 【追加情報の注記例】 (6) 適用時期 回収適用指針は、平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる(回収適用指針49(1))。   Ⅲ 減価償却方法の変更   (1) 税制改正 平成28年度税制改正において、平成28年4月1日以後「取得」(※)する建物附属設備、構築物、鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物に限る)について定率法が廃止された。 (※) 「事業供用日」ではなく、「取得日」で判断する。 (2) 会計上の取扱い 上記(1)の改正に伴い、平成28年6月17日に実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(以下、「実報32」という)」が公表された。 ① 会計処理 従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業において、建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法について定率法を採用している場合、平成28年4月1日以後に取得する当該すべての資産に係る減価償却方法を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(※)(実報32.2)。この場合、以下の事項を注記する(実報32.4)。 (ⅰ) 会計方針の変更の内容として、法人税法の改正に伴い、実報32を適用し、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨 (ⅱ) 会計方針の変更による当期への影響額   また、上記注記事項は、建物附属設備又は構築物を実報32の適用初年度に取得したかどうかにかかわらず、平成28年度税制改正に合わせて減価償却方法を定額法に変更する場合に、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことを意図しているため、建物附属設備又は構築物を取得していない場合も記載する(実報32.18)。 また、事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法を前年度に採用した方法から変更した場合に該当するため、変更の旨、変更の理由及び当該セグメント情報に与えている影響を開示する(企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」24(5)) (※) 実報32による会計基準等の改正に伴う会計方針の変更「以外」の減価償却方法の変更については、今までと同様に、正当な理由に基づき自発的に行う会計方針の変更として取り扱う(実報32.3)。 【会計上方針の変更の注記例】 ② 適用時期 実報32は、平成28年度税制改正に係る減価償却方法の改正に「限定」して緊急に対応したものであり、今回に限られたものである(実報32.16)。 したがって、実報32は、公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する。ただし、平成28年4月1日以後最初に終了する事業年度が実報32の公表日前に終了している場合には、当該事業年度に適用することができる。   Ⅳ 法人税等に関する会計基準の改正   平成28年11月9日に企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計上基準(案)(以下、「公開草案59」という)」が公表されている。 (1) 内容 公開草案59では、監査・保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計上処理及び表示に係る監査上の取扱い(以下、「監査保証実務指針63」という)及び会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」における税金の会計処理及び開示に関する部分のほか、実務対応報告第12号「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い(以下「実務対応報告12」という)」に定められていた事業税(付加価値割及び資本割)の開示について、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行っている(公開草案59.23)。 そのため、実質的な内容は今までと変更がない(公開草案59.38)。したがって、本解説では、詳細に解説していない。 (2) 適用時期 公開草案59が会計基準として公表された日以後から適用される(公開草案59.18)。 公開草案59の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しない(公開草案59.19)。 公開草案59が会計基準として公表されることに伴い、実務対応報告12は廃止される(公開草案59.20)。また、企業会計基準委員会は、日本公認会計士協会に、監査保証実務指針63の改廃を検討することを依頼することになっている(公開草案59.21)。 (了)

#No. 207(掲載号)
#西田 友洋
2017/02/23

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第16回】「金融商品の時価情報で記載漏れしやすい事項」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第16回】 「金融商品の時価情報で記載漏れしやすい事項」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例16-1】 金融商品の時価情報の表に記載漏れの項目がある。 【事例16-1】は、連結計算書類のうち連結貸借対照表と金融商品の時価情報の注記を一部抜き出して掲載したものです。 これらのうち時価情報の方に、間違いと思われる点が1ヶ所あります。 どこだかわかりますか? 実は、何かが記載漏れになっている可能性があるのです。 何が記載漏れになっているかは、時価情報の表を連結貸借対照表と見比べてみるとわかるかもしれません。   2 連結貸借対照表と時価情報の突き合せの結果 ではさっそく、答えを見てみましょう。 記載漏れとなっていたのは、「電子記録債権」でした。 この科目について、時価情報の表に掲載することを忘れてしまったようです。 時価情報の表には、連結貸借対照表に計上されている資産負債の各項目のうち、金融資産・金融負債である科目について、時価等を掲載するのが通例です(重要性の乏しいものを除きます)。 したがって、時価情報で掲載されている科目と連結貸借対照表に計上されている金融資産・金融負債の科目とを突き合わせれば、記載漏れとなっている科目を見つけることができます。 この事例でそうやって見つかったのが、電子記録債権です。 電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿に電子記録することを発生・譲渡の要件とする金銭債権です。金融資産なので、時価情報の記載対象科目です。この科目の金額について、重要性が乏しいと認められる場合を除き、基本的には時価情報の表に掲載することになります。   3 電子記録債権だからこそ記載漏れになった 時価情報の表に電子記録債権を載せ忘れてしまったのは、単なるミスではありません。しかるべき理由があります。 結論から言うと、電子記録債権だからこそ、載せ忘れてしまったのです。 以下、順に説明しましょう。 まず、時価情報の表の作成プロセスを確認します。この表は、初めて作成する会社でない限り、前年度に作成した同じ表のデータを使って、そのデータに上書きしながら作成していくはずです。【事例16-1】の会社でも、おそらくそうやって作成したことでしょう。 そうすると、前年度に記載されていた科目については今年度も同じように記載されますが、今年度から新たに発生した科目については、書き加えない限り、記載漏れとなってしまうのです。 時価情報の表に掲載する科目は、たいていの場合、毎年同じ科目です。会社が同じビジネスを同じように継続している以上、結果的に同じ科目が発生するので、時価情報の記載対象も同じになることが多いのです。 ところが、100%そうだと思い込んでいると、失敗します。 これまでなかった科目(金融資産・金融負債の科目)が、今年度から新たに発生するということも当然あるからです。 【事例16-1】の場合、電子記録債権がまさにそれでした。 電子記録債権は、電子記録債権法(2008年12月施行)により創設された、比較的新しいタイプの金銭債権です。会社によっては、まだ利用実績がないというところもあるでしょう。 そのような会社で、たとえば、新たな取引先と取引が始まったことから電子記録債権が発生する、ということもあるのです。 【事例16-1】の会社については、そのあたりの事情はわかりませんが、前年度の連結貸借対照表を調べてみると、そこには電子記録債権が見当たらず、当期からそれが発生したと見られます。 その結果、上で述べたような作業プロセスを原因として、電子記録債権を時価情報から漏らしてしまったと考えられます。   4 類似パターンの事例 今回のミスは、パターンで言えば、『リサイクル・ミス』か『ファーストタイム・ミス』ということになります。 今年初めてこの連載をお読みになった方、もう忘れてしまった(悲)という方は、『リサイクル・ミス』については【第1回】を、『ファーストタイム・ミス』については【第13回】を、それぞれご参照ください。 「前年度の注記フォームを使いまわす」という作業プロセスに着目すれば、リサイクル・ミスと言えるでしょう。 参考までに、典型的な事例を紹介しておきましょう。 【事例16-2】 増減がないにもかかわらず、増減説明の注がある。 また、新たに発生した事項に関して起きたミスという側面に着目すれば、今回のミスはファーストタイム・ミスです。最近では、前回取り上げた「非支配株主に帰属する当期純損失」という科目に、関連するミスが散見されています。 【事例16-3】 損失について「利益と表示してマイナス数値で計上する」方法によっている。   〈今回のまとめ〉 金融商品の時価情報の表については、表に記載した科目を連結貸借対照表と突き合わせてみることで、記載漏れを防ぐことができます。 (了)

#No. 207(掲載号)
#石王丸 周夫
2017/02/23

〈業種別〉会計不正の傾向と防止策 【第7回】「地方公共団体」

〈業種別〉 会計不正の傾向と防止策 【第7回】 (最終回) 「地方公共団体」   公認会計士・税理士 中谷 敏久   どのような業種業態か? 地方公共団体とは、地方自治法により人格を認められた公法人で、都道府県及び市町村の普通地方公共団体と、特別区、財産区などの特別地方公共団体がある。住民の福祉を増進するために必要とされる事務(自治事務)のほか、本来国の役割に係る事務(法定受託事務)を処理している。 自治事務として、団体の組織・財務・自治立法に関する事務、学校・保育所・市場・授産所・と畜場などの設置管理、埋火葬、ゴミ・し尿処理、バス・地下鉄、ガス事業などを行う。一方、法定受託事務としては、国道や一級河川の管理、生活保護などがある。 戦前は官僚的中央集権制の下、国の出先機関の感が強かったが、戦後は地方分権制による団体自治と住民自治が強化され、それぞれの自治体が独自の事業を展開し特色を出している。情報公開法の施行後は、住民が監視する体制も整い、また、1999年からは包括外部監査制度も導入されている。 なお、議会で承認された政策事業を首長が執行し、監査委員等がチェックするという、いわゆるPLAN-DO-SEEの自己完結型の組織が形成されているものの、国からの全面的な税源移譲が先送りされており、真の意味での地方分権は実現されていない。   どのような不正が起こりやすいか? 予算単年度主義の考え方から、職員には、その年度に計上された予算はすべて使い切ることが求められる。仮に予算の未消化が発生した場合、それは議会で承認された事業が適切に実施されなかったことを意味し、翌年度以降の予算を減らされる恐れがある。 これを避けるために、職員は以下のような不正を起こしやすい。   事例検証 平成21年9月9日に公表された千葉県の事例を紹介する。「千葉県経理問題特別調査結果報告書」によると、平成15年度から平成19年度の5年間で、約30億円の不適正な経理が組織的に行われたことが確認された。 内訳としては①預け:18億円、②一括払:4億円、③差替:1億円、④翌年度納入:2億円、⑤前年度納入:0.1億円、⑥先払い:0.1億円であり、①預けにより業者にプールされた公金は4億円にのぼった。   不正の防止策 地方公共団体の職員は公金を取り扱うことから、規則規定が詳細に定められており、また、内部牽制が有効に働くよう組織も整備されている。さらに、職員の知的レベルも高い。 にもかかわらず、先に挙げたような不正が発生するのは、職員のコンプライアンス意識や倫理観が欠如しているからに他ならない。 公務員倫理研修の充実強化が最大の防止策である。   同様の不正が起こりうる業種業態は? 大学法人において、教授等が公的研究費、民間との共同研究費、寄付金などを財源として同様の不正が起こりうる。 (連載了)

#No. 207(掲載号)
#中谷 敏久
2017/02/23

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第7回】「よくある質問・留意点②」-家族信託を設定した場合の相続財産への影響-

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第7回】 「よくある質問・留意点②」 -家族信託を設定した場合の相続財産への影響-   弁護士 荒木 俊和   - 質 問 - 保有する財産に家族信託を設定した場合、その財産は相続財産から外れるのか。 家族信託を設定した後、委託者兼受益者が死亡した場合には、どのような取扱いがなされるのか。   1 問題の所在 ある財産に対して家族信託を設定した場合、その所有権は委託者から受託者に移転することとなる。このため、委託者の相続財産からその財産が単純に外れるように見えるが、そのような考え方が正しいのか。 以下では、信託契約上の定め方で場合分けして解説する。   2 家族信託設定時の財産の転換 家族信託を設定する場合、委託者と当初受益者を同一の者とし、委託者の財産管理の困難を回避することが多く行われているため、以下はそのケースを前提とする。 この場合、信託契約の締結により委託者から受託者に信託財産の所有権が移転し、それと同時に委託者が受託者に対する受益権を保有することとなり、受益者としての地位を兼ねることとなる。 このとき、委託者が所有していた財産が受託者に対する債権である受益権に転換することとなり、これ以降、委託者兼受益者が保有する財産権は受益権となる。 このため、委託者が所有していた財産そのものは相続財産から外れ、代わって受益権が相続財産となることが原則である。 受益権が相続財産となることから、遺言の定めがない限り、受益権は委託者兼受益者の相続人による遺産分割協議によって分割されることとなる。   3 委託者兼受益者の死亡時に関する信託契約上の場合分け (1) 信託契約上の定め方 2に対し、信託契約上で委託者兼受益者の死亡時に、原則と異なる定めを置くことも可能である。 例としては、 が考えられる。 (2) 委託者兼受益者の死亡時に信託を終了させる定め 信託の終了原因は信託法第163条各号に列挙されているものの他、信託契約において定めることができる。 このため信託契約において「委託者兼受益者の死亡」を「信託の終了原因」とすることができる。 これは、家族信託が「委託者の資産管理」のみを目的として定められたものであるなどの事由から、委託者が死亡した場合には家族信託の必要性が消滅するといったケースにおいて用いられる。 この場合、帰属権利者として誰かに信託財産を取得させる旨を信託契約において指定しておくこともできるし、信託財産を委託者兼受益者の相続財産として持ち戻し、遺産分割協議の対象とすることも可能であると解される。 このため委託者兼受益者が死亡した場合に、信託契約において一旦は相続財産から外れた財産を戻すこともできるし、逆に遺贈と同様に、第三者に財産を取得させることも可能である。 なお、帰属権利者の定めを置く場合、帰属権利者が適正な対価を負担しないときには、税務上も遺贈の場合と同じく相続税の課税対象となる。 (3) 委託者兼受益者の死亡時に新受益者に対して受益権を取得させる定め また、信託契約において、委託者兼受益者の死亡時に、別の者が受益権を取得する定めを置く場合もある。 いわゆる「受益者連続型信託」と呼ばれる方式である。 このような新受益者の定めを置くことによって、遺言による遺贈と類似する効果を生じさせることができる。 また、遺言の機能に加え、新受益者の次以降も受益者を定めておくことができるため、遺言ではできるか明確ではない、いわゆる「後継ぎ遺贈」に代わるものとして、二代先以降の相続対策においても有効であるとされる(詳細は【第3回】参照)。 この場合、委託者兼受益者の死亡によっても受益権自体はなくならないが(ただし厳密に言うと、当初受益者から新受益者に対して受益権が移る場合、当初受益者のもとでの受益権が消滅し、同時に新受益者のもとに受益権が発生すると考えられている)、委託者兼受益者の相続財産から信託財産が外れているのはもとより、受益権も死亡によって相続財産から外れることになる。 なお、この場合にも新受益者は委託者兼受益者から遺贈によって受益権を取得したものとみなされるため、新受益者が適正な対価を負担するものでない限り相続税の課税対象となる。   4 付随する問題点 このように家族信託を設定することにより、相続財産の性質が変わるということ、信託が遺言代用機能を持つことにより信託財産も受益権自体も相続財産から除くことができるといえる。 一方で、委託者兼受益者の死亡によって受益権又は信託財産が第三者に移るということになると、委託者兼受益者の相続人の相続に対する期待を裏切ることになる場合がある。 法律的には、相続人に保障されている遺留分を侵害するという立論が可能か問題となる。 この問題自体が大きい論点であることから、詳細については別稿に譲るが、少なくとも相続人間の公平を害する恐れがあるということについてはご留意いただきたい。 (了)

#No. 207(掲載号)
#荒木 俊和
2017/02/23

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例12】株式会社デジタルデザイン「臨時株主総会の開催日並びに基準日の変更に関するお知らせ」(2017.1.6)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例12】 株式会社デジタルデザイン 「臨時株主総会の開催日並びに基準日の変更に関するお知らせ」 (2017.1.6)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社デジタルデザイン(以下「デジタルデザイン」という)が平成29年1月6日に開示した「臨時株主総会の開催日並びに基準日の変更に関するお知らせ」である。平成28年12月21日に開示した「臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」において示された臨時株主総会の開催日と基準日を変更するという内容なのだが、次のような記載が含まれている。 平成28年12月29日開催の取締役会で決議しているため、本来は同日に開示すべきであったが、平成29年1月6日に開示しており、遅延開示である。しかも、1日や2日ではなく、年をまたいで1週間以上の遅延である。おそらく12月30日から1月3日までお正月休みだったのだろう。「明日から休みだし、正月が終わってから考えようか」と思ったのだろうか。   2 混乱のなか デジタルデザインはずっと業績が低迷し、不安定な状態にあったのだが、平成28年7月26日に、同社の代表取締役社長の経費利用に不適切な処理があったとする「当社代表取締役社長の経費利用に関する不適切処理について」を開示した後、目まぐるしい混乱が続いている。 数が多いので、全てに触れることはできないが、経費利用の不適切な処理の責任をとって代表取締役社長を辞任した者から、取締役の解任などを目的とする臨時株主総会の招集を請求されたり(平成28年11月14日に「株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ」を開示。これも遅延開示)、第三者割当増資を行おうとしたのに(平成28年12月21日に「資本業務提携並びに第三者割当により発行される新株式及び新株予約権の募集及び主要株主の異動に関するお知らせ」を開示)、それを中止せざるを得なくなったり(平成29年1月6日に「第三者割当による新株式及び新株予約権発行(平成29年1月6日払込期日分)中止等に関するお知らせ」を開示。これも遅延開示)、といった具合である。 そうした混乱のなか、「明日から休みだし、正月が終わってから考えようか」と本当に思っていたのだとしたら、いささか呑気過ぎるといえるだろう。   3 上場会社なのか? デジタルデザインは、この遅延開示などを理由として、東京証券取引所から公表措置及び改善報告書の徴求がなされている。東京証券取引所による通知には、次のように記載されている。 上場会社であるにもかかわらず、適時開示を行える体制が整備されていなかったのである。率直に言って、上場会社としての体をなしていない。当然、財務報告に係る内部統制も有効であるはずがなく、財務報告に係る内部統制を有効と評価した過年度の内部統制報告書を訂正している(平成28年10月14日に「内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ」を開示)。   4 会計基準に対しては 【事例5】で取り上げた株式会社小僧寿しも公益財団法人財務会計基準機構(FASF)に加入していなかったが、デジタルデザインも加入していない。平成28年5月9日に「公益財団法人財務会計基準機構への加入状況および加入に関する考え方等に関するお知らせ」を開示しているのだが、その「2.会計基準等の内容の適切な把握、会計基準等の変更等への的確な対応体制の整備状況」には、次のように記載されている。 「知識の習得に努めており、会計基準等の変更等につき適切に対応できている」状態にあるとは、とても思えないのだが。   【追 記】   本稿執筆後、デジタルデザインは、平成29年2月8日、東京証券取引所に対して改善報告書を提出した。その中で、今回の遅延開示の理由として次のように記載している。 お正月休みは、12月30日から1月3日までではなく、12月26日から1月5日までだったようだが、やはり上場会社としての体は全くなしていなかったようである。そもそも経営陣に適時開示の重要性に関する認識が全くない。 同社は、今回の遅延開示を含めた過去の不適正開示の原因として、①社内開示体制の不備、②適時開示業務フローの不明確、③経営陣および開示担当者の適時開示等に関する理解の欠如、④内部監査の未設置および開示業務に対する監査の未実施、をあげて、それらを改善するとしているが、最も重大なのは「経営陣および開示担当者の適時開示等に関する理解の欠如」である。いくら体制を整備し、業務フローを明確にしても、適時開示に関する理解が伴わなければ、それらは絵に描いた餅になるだけである。 「経営陣および開示担当者の適時開示等に関する理解の欠如」を改善する措置として、外部講師を招聘した研修の実施や、外部セミナーへの参加などを計画しているとのことだが、それらが形だけで終わることがないようにして頂きたい。 (了)

#No. 207(掲載号)
#鈴木 広樹
2017/02/23

顧客との面談が“ちょっと”苦手な税理士のための面談術 【第6回】「相手の心を開かせる『傾聴』にトライしましょう」

顧客との面談が“ちょっと”苦手な 税理士のための面談術 【第6回】 「相手の心を開かせる『傾聴』にトライしましょう」   有限会社コーディアル 代表取締役 坪田 まり子   皆さん、こんにちは。坪田まり子です。 前回は「雑談」の有用性についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。 私の連載を有効にご活用いただくためには、「読む」だけで納得するのではなく、「すぐに試してみる」ことにあると思います。雑談が上手にできるようになるかどうかは、まずは勇気、次はその場に慣れていくことが大切だからです。 試した結果、うまくいった場合には自分を誇らしく嬉しく感じるものですが、それ以上に、相手も嬉しくなるはずです。「この先生に逢えてよかった!」と思ってもらえることこそ、ビジネスチャンス拡大につながります。 ぜひ私の連載内容は、頭の中の知識にとどめるだけでなく、実際にご活用いただくことをお勧めいたします! ◆  ◆  ◆ さあ今回は、その雑談時や本論に入った際の「聞き方」についてお話します。 「話す」という行為以上に、「聞く」という行為は大切だと考えています。なぜならば、皆さんが切り出す話題がどんなに良い内容でも、それが上手に展開されるかどうか(相手が十分に情報を開示してくれるかどうか)は、相手がちゃんと話してくれなければ意味がないからです。 そしてそれは、皆さんの「聞き方」如何にかかっています。相手の要望をしっかりと全部聞き出すためには、傾聴の良し悪しが大きな違いを生み出します。 皆さんは、「傾聴」は得意でしょうか? 話すことも苦手だし、前回の雑談も。。。とおっしゃる方もいらっしゃることでしょう。 大丈夫です! 自分から話をすることや雑談に自信がない方こそ、傾聴を得意にすることで、上手に会話が弾むようになるはずだからです。 安心して、今回も先を読み進めてくださいませ。 ◆  ◆  ◆ まずは傾聴の意義からお話します。傾聴の姿勢を示すことが、相手とのより良いコミュニケーションの始まりです。皆さんが相手のニーズをしっかりつかんでこそ、的確なアドバイスができるはずです。 相手は税務のプロではありません。プロではないからこそ、税理士である皆さんに依頼をしようとしているのです。ということは、的確なアドバイスをするためには、まずは相手の心を開かせ、上手に相手の話を全部聞き出すことが大切です。 漢字で書き表すと、「聞く」ではなく、「聴く」ことが、相手と良好な関係づくりに必要です。 「聞く」とは、端的に言えば、相手の話を耳だけで聞いているような状態です。国会中継をみると、寝ている??と思えるような国会議員たちがいますが、あれは好感を与える聞き方ではありません。単に相手の話を耳で捉えるだけでは不充分で、何よりも感じが悪いからです。 それに対し「聴く」は、耳だけでなく、目(視線)と心までを相手に傾けて、一生懸命に相手の話を理解しようという姿勢が見受けられます。士業者である皆さんの場合には、相手があってこその実務ですから、相談者にしっかりとご要望を話してもらうためにも、この「聴く」という傾聴の仕方がポイントになるのです。 相手の真意を言葉尻だけでなく、相手の表情や口調から捉えてみてください。相手の言葉を一言も聞き洩らさないためには、必死にメモをとることも重要ですが、相手の表情を見ないままメモを完全にとったとしても、それこそ国会中継時の速記者と同じで、ただ、書き取ったということにしかなりません。 相談者はなぜ、税理士に業務を依頼するのでしょうか。 独立して初めてその必要性があることを知ったからという依頼者もいれば、以前お願いしていた税理士が良くないために変えたいという方もいるはずです。後者のような依頼者は、これまでに依頼していた税理士に大いなる不満を持っていますから、次にお願いする税理士に対しては、無意識に厳しいチェックをするのではないでしょうか。 このチェックポイントは、やはり、この連載でずっと一貫してお話してきた皆さんの「人となり」、「存在感」の良し悪しに、大いに関係があります。実務ができるのは当たり前であり、そんな税理士の誰を選ぶかは、お客様側が自由に決めることだからです。 税理士という専門家だからこそ、「話す=アドバイスが的確である」ことは当たり前。だから差別化を図るのは前回お話した雑談や、今回の傾聴する姿勢にあるのです。「なんて誠意のない税理士なんだ。。。」とがっかりされないためにも、税理士や士業者の皆さんこそ、傾聴を本気で得意にする必要性があると考えています。 話がそれてしまいましたが、相手の言葉尻だけでなく真意をしっかり受けとめるためには、相手の表情と口調から判断できるはずです。相談者が特に皆さんに伝えたい、分かってほしいと思うところでは、おそらく表情や口調が多少変わるはずだからです。 言葉そのものも何度も同じ言葉が出てくるかもしれません。相手が一息ついたタイミングで、皆さんの方からそのキーワードを使って質問したり、相手の協調する言葉をオウム返しのように言葉にしてみましょう。 まさしく相手の伝えたいキーワードや相手の感情をしっかりと理解した士業者に対しては、話をする側である相談者こそ、直感で この先生はしっかりと自分の話を聞いてくれている。言葉だけなく、感情も理解してくれようとしている。 と感じるはずです。 だからこそ、そんな税理士に対しては、 隠し立てするのではなく、素直に情報を開示しよう。 と心を開いてくれるはずです。 相手にたくさん情報を開示してもらうためには、相手に「話したい!」という気持ちにさせなければなりません。そうでなければ、『訊く』ことになってしまいます。この「訊く」は、尋問時に使う聞き方で、良好な関係を築かなければならない面談シーンでは一番ふさわしくないものです。 ポイントは、相づちを上手に打つこと。 例えば、道路の信号が壊れていると考えてください。交通量の多い場所では、自分の目だけで左右を見ても、怖くて道路を横断することがなかなかできないかもしれません。だからこそ信号があるのです。赤なら止まれ、黄色ならちょっと待て、そして青になるから、安心して道路を横断することができるのです。 会話も同じで、だんまり・むっつりして相談者の話を聞いている実務家の姿は、「壊れた信号機」と同じ状態です。 「まだ話し続けてもいいの? それともこの話はやめた方がいいの?」と相手に感じさせてしまうようでは、相手の心を開き上手に自己開示をさせることの真逆の効果しか生まれません。 相づちを打つことにより、話し手には、税理士である皆さんが自分の話をちゃんと聞いてくれていることが分かり、安心して話を続けることができます。 傾聴姿勢の重要性は、こんなふうに相手の心理状態に大きく絡んでくるものなのです。 ◆  ◆  ◆ 効果的な相づちのポイントをまとめてみます。 大切なことですから一つひとつ解説しましょう。 1つ目の「適切なタイミング」とは、相手の話の区切りということです。文章でいえば、句読点のところで相づちを打つということ。相手がどんなに早口でも、しっかり聞き取って、話の切れ間や区切りで相づちを打ちましょう。そうでないと、相手は話がしづらくなるからです。 2つ目の「相手に分かるようにはっきりと相づちを打つ」とは、青信号の役割を果たすためにも、相づちを打っていることが相手に分からなければ意味がないということです。 そのためにも、首を縦にはっきりと振ることをお勧めします。横に振るとそれは“いやいや”という否定を表してしまうからです。慣れないうちは、首が痛く感じるくらい(苦笑)、ぶんぶん首を縦に大きく振ってみましょう。 3つ目の、「相手の話の内容に合わせて表情豊かに聞くこと」とは、表情こそ互いに見えるものであり、その結果、何かを感じ合うことにつながる場面だからです。 例えば、相手が事業に失敗したというような話をしたとき、笑って聞いていたら相手はムッとすることでしょう。真顔で多少、眉毛をへの字にして、「それは大変でしたね」という感情が分かるような表情が必要です。 そして、「でも、おかげさまで持ち直しまして・・・」という場面に切り替わったら、表情や眉毛もへの字状態ではなく、ホッとしたような温かい笑顔に、瞬時に変わることが大切です。 まるで小学生の頃、理科の実験で活用したリトマス紙のように、聞き手の表情が話し手にとって表情豊かで分かりやすいということが、傾聴のためには一番大切なことと言っても過言ではありません。 士業者の皆さんのお仕事では、ときにポーカーフェイスで依頼者のために相手方と交渉をすることもあるかもしれません。そんなときは相手方に真意を見抜かれないよう表情を隠すことも必要ですが、この連載の趣旨は、『相手と良好な関係を築くこと』に重きを置いています。この点、どうぞ誤解をなさいませんように。 最後の「ときどき声を発する」とは、相づちの際に、適切な声を出すということです。首を縦に振る相づちは、相手にはっきりと見えますが、表情に合わせた適切な声音で「えー」「はあ」「それは大変でしたねえ」というように、効果的なタイミンングで声を出すことも大切です。 相手が話し、皆さんが聴くだけの場面であっても、効果的な相づちのための声出しがあれば、それは会話として適切に成立していることをも意味しています。 声を出すときには、相づち例として様々なバリエーションがあります。 下記をご覧くださいませ。 まずは声を出して読んでみてくださいますか? 次は、鏡を見ながら、感情を表情と声音にのせて、口に出してみましょう。 無表情と表情豊かに声を出すことの両方を、鏡を見ながらお客様目線で試してみてください。 その重要性に、きっと気づいていただけるはずです。 ◆  ◆  ◆ 次は、一通り相手の話を聞き終えたあとにやるべきことについてお話します。それは適宜、相手の話を要約して確認することが必要です。税理士としての実務に絡む数字や業績面を的確に復唱することはもちろんのこと、相手の感情も適宜、言葉にして確認してあげるようにします。 例えば その点はさぞかし大変だっただろうと拝察します。 よく乗り越えられましたね。素晴らしいです。 など。 相手にはそれだけで、「この税理士にお話してよかった!」と、心の中で大きな安堵感と満足感が生まれるはずです。 私は思います。相手は税務の素人で、皆さんは税務のプロ。どんなに相手のために良かれと思うアドバイスも、相手がそれを良しとしなければ、依頼にはつながらないのではないかと。 何度もお話してきましたが、仕事ができることは当たり前のことなのです。そのたくさんいらっしゃる税理士の中から、どなたに依頼するかは、紹介のあるなしにかかわらず、相談者の自由な感情にかかってきます。 だからこそ、相談に対し、プロとして答えてやっているという姿勢が一瞬見えただけで、相手は心を閉ざしてしまう。そこまで意識をしていただけないでしょうか。 それが相手に満足感を与えることにつながる、皆さんのプロ意識だと私は思いますが、言いすぎでしょうか? ◆  ◆  ◆ 最後にまとめをしておきましょう。 ▷税理士と依頼者の関係であっても、良好な関係を築くためのポイントは、雑談や一般の面談と同じです。相手の感情を逆なですることなく、上手に自己開示をしてもらうためにも、傾聴姿勢が大切です。 ▷上手な相づちが信号=シグナルの役割を果たし、話し手である相手が安心して話ができる環境をつくることができます。 そのためにも、傾聴時、決してやってはいけないことは、無表情で、足を組み、腕を組んで相手の話を聞くような皆さんのお姿です。お客様の立場で想像してみてください。そんな姿は、絶対に相手に見せたくない、ゾッとするような雰囲気ですよね。 傾聴時は、少し前傾姿勢で、背筋をまっすぐに伸ばし、相手の感情に添った柔らかい表情で、首を縦に上手なタイミングで振りながら、丁寧に聞くこと。 こんなイメージトレーニングをぜひ一度はなさってみてくださいませ。 うっとりするほど、丁寧で且つ誠実、そして凛とした税理士の姿を目指しましょう! *  *  * 次回は、「論理的な話し方・伝え方」についてお話します。 早いものでこの連載も、残り2回となってしまいました。 皆さんのお役に立てるよう引き続き頑張ります! どうぞ次回もお楽しみに。 (続く)

#No. 207(掲載号)
#坪田 まり子
2017/02/23

《速報解説》 経団連より「のれんの会計処理に関するアンケート結果の整理」が公表~回答企業の多くが償却処理の再導入を支持~

《速報解説》 経団連より「のれんの会計処理に関するアンケート結果の整理」が公表 ~回答企業の多くが償却処理の再導入を支持~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2017(平成29)年2月20日、(一社)日本経済団体連合会 金融・資本市場委員会 企業会計部会は、「のれんの会計処理に関するアンケート結果の整理」(以下「アンケート結果」)を公表した。 経団連は、これまでIFRS・米国基準でも、のれんの償却を復活させるべきと主張してきたが、今回、経団連の会員企業の意見を確認するために、のれんの会計処理(償却処理が必要かどうか)等についてアンケートを実施し、その結果を公表するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 アンケートの送付先と回答 下記のように、回答企業のほとんどが、のれんに関する償却処理の再導入を支持している。 (出所) アンケート結果p8より 2 アンケートの内容 次の事項についてアンケートを行っている。 のれんの償却を支持する理由には、①M&A後の適切な業績把握を可能にする、②企業経営を安定させ、企業経営の適切な規律付けを行うことができる、③のれんの経年での減価を財務諸表に適切に反映することができ、自己創設のれんの計上を回避できることなどがあげられている。 また、のれんの「減損のみ」を支持する理由には、①のれんの消費パターンの見積りが難しい、②のれんの中には、減価しないものも含まれていると考えられ、のれんのすべてを償却するのは理論的ではないことなどがあげられている。 日本基準とIFRSの相違点として、IFRSにおけるのれんの非償却があげられることが多い。 この点について、アンケート結果では、多くの企業がIFRS適用時に、のれんの非償却よる影響を議論したが、IFRS適用による全体的なメリット(国際的な比較可能性の確保等)を踏まえ、IFRS適用の判断を行ったと述べられている(アンケート結果p14)。 (了)

#No. 206(掲載号)
#阿部 光成
2017/02/21

プロフェッションジャーナル No.206が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年2月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.206を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/02/16
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