コーポレートガバナンス・コードのポイントと 企業実務における対応のヒント 【第4回】 「取締役会等の責務①」 ~独立社外取締役の独立性判断基準について(4-9)~ あらた監査法人 ディレクター 井坂 久仁子 〔取締役会等の責務〕 2015年3月5日に確定した「コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために~」(以下「CGコード」)では、5つの基本原則の中でも、基本原則4「取締役会等の責務」に最も多くのスペースが割かれている。 基本原則4は、上場会社の取締役が果たすべき役割と責務として、 等を示した上で、原則4-7において独立社外取締役の役割・責務、原則4-8では独立社外取締役の有効な活用、そして、原則4-9では、独立社外取締役の独立性判断基準および資質について、より具体的に規定している。 特に、原則4-8では、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであると最終決定された点について国内メディアで大きく取り上げられ話題となった。本稿では、CGコードの主に原則4-9について説明し、実務上のヒントを提供することを目的とする。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。 〔社外性・独立性の要件〕(原則4-9) 独立社外取締役という言葉には、「独立」、「社外」、「取締役」という3つの要素が含まれる。このうち、「社外」かどうか、という点は、会社法によって規定されている。 社外性の要件は、平成26年改正会社法によって厳格化が図られ、例えば、株式会社の親会社等の関係者および兄弟会社の業務執行者や、株式会社の一定の業務執行者等の近親者については、当該株式会社の社外取締役となることができないこととなった(※1)。その他の厳格化等の詳細については割愛するが、この改正会社法の施行日は、2015年5月1日であることから、3月期決算会社の会社が6月の定時株主総会で役員を選任する際には、この改正された要件に基づき社外性が判断されることになる。 (※1) 平成26年改正会社法第2条15号。 一方、「独立」しているかどうかは、東京証券取引所(以下「東証」)により、「一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役」を独立役員とする、とされ、具体的な独立性基準の詳細が、「上場管理等に関するガイドライン」(Ⅲ 5.(3)の2)によって規定されており、次のaからeは、「一般株主と利益相反の生じるおそれがない者」には該当しない可能性が高い事由、すなわち、「独立性なし」とみなされる場合を示している。 図1 独立社外取締役のイメージ(筆者作成) なお、CGコード原案の確定を受けた上場制度の整備案(※2)では、従来、独立役員制度における「開示加重要件」(独立役員として指定する者が、過去に独立性基準に抵触していた場合又は上場会社の主要株主である場合等、特定の事由)に該当する場合に、その旨及びそれを踏まえてもなお独立役員として指定する理由の記載をガバナンス報告書及び独立役員届出書に求めてきたものが廃止された。これは、CGコードの原則4-9に基づき企業が自社の独立性判断基準をより柔軟に策定することを支援するものとされている。 (※2) 2015年2月24日、東証により公表され、同年5月上旬に最終的な改正規則として公表される予定。 〈議決権行使助言会社による独立性の考え方〉 多くの上場会社は、証券取引所の独立性基準を、そのまま自社の独立性判断基準とすることを検討していると思われるが、さらに、機関投資家への影響が大きい議決権行使助言会社による独自の独立性要件を考慮することも考えられる。例えば、ある議決権行使助言会社(※3)の独立性の基本的な考え方は「会社と社外取締役や社外監査役の間に、社外取締役や社外監査役として選任される以外に関係がないこと」としており、独立していないと判断される場合が多いケースとして以下を列挙している。 (※3) ここでは、ISS(Institutional Shareholder Services)によって2015年1月7日公表の「2015年版日本向け議決権行使助言基準」から抜粋している。 取引所による独立性基準を満たしていても、上記の議決権行使助言会社の独立性要件を満たさない場合も少なからずあり、企業は、自社の独立性要件を策定する際に、取引所の独立性基準に加えて、必要に応じて、議決権行使助言会社等の独立性要件を考慮することも考えられる。 PwC米国の2014年調査によると、独立性の要件は米国の大手機関投資家が取締役の選任議案において最も重視する項目であり、独立性に懸念がある場合には反対票を投じるとする機関投資家が、約94%存在したという(※4)。そのため、外国人投資家比率の高い企業においては、一定の考慮が必要であろう。 (※4) PwC米国「投資家の視点:投資家はいかに今日そして明日の取締役会のあり方を変えていくのか」(英語版発行:2014年10月、日本語版発行:2015年3月) 〈諸外国における独立性要件〉 さらに、会社の状況次第では、諸外国のコーポレートガバナンス・コード等における取締役の独立性要件を考慮することも有用かもしれない。諸外国のコードには、日本の取引所が規定する独立性基準には含まれない独立性要件もあるが、各国の独立性要件の記述ぶりは多様であり必ずしも万国共通というわけではない。 例えば、英国やフランスのコーポレートガバナンス・コード(※5)では、継続して一定の年数(フランス12年間、英国9年間)以上取締役を務めている場合には、独立していないと判断されうることが示唆されているが、米国には、そのようなルールはない。また、フランスのコーポレートガバナンス・コードでは、取締役への相互就任(※6)が、独立していない例に含まれている。 (※5) 本稿では、英国のコーポレートガバナンス・コードとは、2014年9月改訂版の財務報告評議会(FRC)が公表したコーポレートガバナンス・コード(The UK Corporate Governance Code, September 2014)を指す。また、フランスのコーポレートガバナンス・コードとは、2013年6月改訂のフランス私企業協会(Afep)およびフランス企業連盟(Medef)が公表する上場会社コーポレートガバナンス・コード(Corporate Governance Code of Listed Corporations, June 2013)を指す。 (※6) フランスのコード(9.4)では、以下の場合、会社Aの業務執行取締役であるX氏を会社Bの独立取締役とすることはできない、とされる。 ▷ 会社Bが会社Aの取締役職を直接的、または子会社を通じて(間接的に)占めている場合。 ▷ 会社Bがその従業員を会社Aの取締役に任命する場合。 ▷ 会社Bの業務執行取締役(現職か過去5年間に同職を担当していたこと)が会社Aの取締役である場合。 英国やフランスは、いずれも、日本同様、コンプライ・オア・エクスプレインの手法を採用するコーポレートガバナンス・コードを適用しているため、各コードの独立性要件の例示を満たさない場合であって会社が独立していると判断する取締役については、個別にその理由をエクスプレインしている。 日本の上場会社においても、原則4-9の趣旨を考慮し、取引所の独立性基準をベースに、各社がそれぞれの状況を踏まえて、自社にとって最も適切な独立性判断基準を柔軟に策定することが望まれる。 図2 独立性判断基準の考え方イメージ(筆者作成) * * * 次回は原則4-8、4-7について説明を行う。 (了)
現代金融用語の基礎知識 【第17回】 「税務に関するコーポレートガバナンス」 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 税務に関するコーポレートガバナンスとは 「税務に関するコーポレートガバナンス」は、国税庁がその取組みにおいて用い始めた言葉なのだが、国税庁自体はこの言葉に対して明確な定義付けを行っていない。しかし、国税庁による取組みの内容から国税庁の意図を推測し、あえて定義付けを行うとするならば、「税務に関するコーポレートガバナンス」とは、適切な納税が行われるために企業の内部に整備される体制といえるのではないかと思われる。 2 国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンス」の充実に向けた取組み 「税務に関するコーポレートガバナンス」という言葉が用いられるようになった、国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンス」の充実に向けた取組みとは、全国の国税局調査部の特別国税調査官所掌法人のうち、「税務に関するコーポレートガバナンス」の状況が良好で税務調査の必要度が低いと認められる企業に対しては、税務調査の間隔を延長するというものである。国税庁はこの取組みを平成23年から行っている。 具体的には、特別国税調査官所掌法人の税務調査の機会に、「税務に関するコーポレートガバナンス」の状況を「確認票」に記載してもらい、それに基づき「税務に関するコーポレートガバナンス」の状況が良好か否かについて判定される。 「確認票」には、次の5分野(合計27項目)の実施状況が記載される(例えば、「1.トップマネジメントの関与・指導」には、「税務コンプライアンスの維持・向上に関する事項の社訓、コンプライアンス指針等への掲載」などの項目がある)。 【税務に関するコーポレートガバナンス確認表の構成】 3 税務に関する内部統制では? ここまでの説明を読んで、少し違和感を持った方がいるかもしれない。「税務に関するコーポレートガバナンス」では、「コーポレートガバナンス」という言葉が、本連載【第12回】「日本版コーポレートガバナンス・コード」で説明したような一般的な意味の「コーポレートガバナンス」とは異なる意味で用いられているのである。国税庁が用いる「税務に関するコーポレートガバナンス」の内容は、税務に関する「コーポレートガバナンス」というよりは、税務に関する「内部統制」といえるようなものなのである。 4 国税庁による取組みの今後 国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンス」の充実に向けた取組みは、現在のところ一部の大企業のみが対象である。しかし、この取組みが上手くいけば、その対象が広げられていくだろう。現に国税庁は、国税庁調査課所管法人のうち一般部門所掌法人(特別国税調査官所掌法人以外)に対して、平成27年3月期以降の決算期を対象に「申告書の自主点検と税務上の自主監査」を促進する取組み(「申告書確認表」と「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」を用いるもの)を行うことにしたところである(ただし、現在のところ、その取組みにおいて税務調査間隔の延長はない)。 そうした変化に企業が対応するに当たって活躍が期待されるのは、やはり税理士だろう。しかし、税理士の方の多くは、税務には詳しくても、「コーポレートガバナンス」や「内部統制」には疎いのではないだろうか。今後は、税理士の方も、「税務に関するコーポレートガバナンス」重視の時代に備えて、「税務に関するコーポレートガバナンス」、そして、その理解のために必要な「コーポレートガバナンス」や「内部統制」について学んでおく必要があるだろう。 なお、筆者編著の『税務コンプライアンスの実務』(清文社より近日発刊)は、「税務に関するコーポレートガバナンス」だけでなく、その理解のために必要な「コーポレートガバナンス」や「内部統制」についても基礎的なことから解説しているため、特に税理士の方に購読をお勧めしたい。 (了)
《速報解説》 金融庁、「IFRS適用レポート」を公表~ ~任意適用企業69社から移行に伴うメリット、移行準備や移行コストなどをヒアリング~ 公認会計士 松橋 香里 2015年4月15日に金融庁から「IFRS適用レポート」が公表された。本レポートについて、要点を解説する。 Ⅰ 本レポートの位置付け 本レポートは、2014年6月に閣議決定された『日本再興戦略』改訂2014に基づき、金融庁がIFRS任意適用企業の実態を調査した結果をとりまとめたものである。『日本再興戦略』では、IFRS任意適用の拡大促進のための施策の一つとして本レポートを位置付けており、移行に際しての課題への対応やメリット等を示すことによって、今後IFRSへの移行を検討している企業に資することが期待されている。 調査対象は2015年2月28日現在、IFRSの任意適用を公表した企業(適用予定を含む)69社であり、調査はアンケート及び直接のヒアリングにより行われている。 Ⅱ 概要 任意適用が認められた2010年3月期以降、IFRSに移行した企業数は確実に増加している。業種別にみると、電気機器、医薬品、卸売業等が多く、“業種の中で時価総額の大きい企業が任意適用すると、他にも任意適用する企業が増加する傾向がみられる”点が調査結果から明らかになっている。 本編の主な内容は、任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリット、移行プロセスと社内体制、移行コスト、会計項目への対応と監査対応・人材育成という構成であり、主に移行に伴うメリット、デメリットの視点から整理することができる。 1 任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリット IFRS適用のメリットとして最も多かったのが“経営管理への寄与”、次いで“比較可能性の向上”という結果が得られた。 ここで、経営管理への寄与とは、具体的に何を指すのだろうか。 レポートでは、共通の「モノサシ」という単語が頻出しており、子会社管理における業績評価を共通の基準で行うことができる点が挙げられている。 また、アンケート結果から、“会計基準の変更という意味付けのみならず、企業の経営管理の高度化によって我が国企業の「競争力の強化としてアベノミクスの『稼ぐ力』の向上に資する」というような大局的な視点から、検討を進めることが重要であると認識している企業が多く存在している”と分析、強調されている点が特徴的といえる。 比較可能性の向上、については企業がIFRS任意適用を公表する際に、適用理由として挙がることが多いため、一番に挙がらなかった事を意外に思われる方もおられるだろう。 ここで、比較可能性は2つの意味で捉えられている。すなわち、投資家に対する適正かつ有用な情報の提供のみならず、自社にとっても国内外の同業他社と比較する際に有用な情報が得られる旨が挙げられている点に留意すべきと考える。 このことは、“業種の中で、時価総額の大きい企業が任意適用すると、他にも任意適用する企業が増加する傾向がみられる”というアンケート結果とも整合しているといえるだろう。 原則主義にもとづくIFRSにおいて、開示内容は企業ごとに区々であり、いわゆる雛形のようなものは存在しない。比較可能性を形式的に捉えた場合、同じフォーマットで記載されていないことをもって、かえってIFRSにより比較可能性が害されるという結論が導かれ出されかねない。しかしながら、経営者の主張を含む各社の特徴が開示を通して明確になるという点に注目すれば、IFRSの適用によって企業ごとの特徴が明確になるという意味で、比較可能性が高まると考えることができる。 また、筆者の経験では、特にM&Aを活発に行う企業において、IFRS移行の理由として、のれんの非償却(償却により財務が圧迫されることを回避)を挙げる企業も相当程度存在すると考えられるが、この点はレポート上では明記されていなかった。 2 移行プロセスと社内体制 IFRSへの移行を提案した主体が経営陣であれ、経理部を中心とした現場であれ、移行には全社的な取組みが重要である点が示されている。 具体的には、経理部門のみならず、事業部門や子会社を含めて一体としてプロジェクトを進めることの重要性が強調されている。 3 移行コスト IFRSへの移行を検討する企業が躊躇する要因として、多額のコストがかかる懸念が想定される。アンケート結果では、導入に要したコスト総額は1億円以上5億円未満、及び5,000万円未満の企業が多いとの結果が得られている。また、売上高1,000億円未満の比較的小規模な企業においては、5,000万円未満のコストで済むことが多いという結果を示すことによってコスト増というデメリットに対する懸念の払拭を試みている。 さらに、規模が相対的に小さくかつ単一事業である場合には金額的にも少数で対応できることを示し、移行コストは“何に重点を置くかにより様々である”として、コストをかけずとも移行が可能であることが強調されている。 4 会計項目への対応と監査対応・人材育成 監査法人の対応に対しては、質問への回答が遅いこと、IFRSに対応できる人材が不足しており、法人内のマニュアルに縛られた判断が行われていること、日本で主体的に判断する体制が確立されていないことが指摘され、当該問題点の改善を求める声が挙げられている。 他方、企業側の課題として、IFRSを理解できる人材確保の必要性が認識されているとの結果が示されている。その上で、こうした課題は事例の増加等により、改善していくであろうとの方向性が示されている。 まとめ 本レポートを通じ、任意適用を促進しようという政府及び金融庁の積極的な姿勢を読み取ることができる。同時に実務の現場からの問題提起がなされていることも特徴といえるだろう。 今後、IFRSの任意適用を検討する企業はもちろん、監査法人・公認会計士等の関係者にとっても有用であると思われるため、ご一読をお勧めしたい。 (了)
《速報解説》 特定空家等の判定に当たって 必要となる指針をまとめた「ガイドライン」がパブコメへ 税理士 島田 晃一 はじめに 平成27年度の税制改正により、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に定める特定空家等について、市町村長から取り壊しや修繕等をするよう勧告が行われたときは、その空家等に係る土地に係る固定資産税及び都市計画税については住宅用地の特例措置の対象から除外されることになった(地方税法第349条3の2)。 具体的に「特定空家等」とは、次に定める建物等をいう。 建物等がこられの状態にあるか否かについては、立入調査等が行われ個別に判定されるが、この判定にあたって4月13日付けで、国土交通省から「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)の案が提示され、パブリックコメントの募集が行われている。 当該案の中には、特定空家等に該当するか否かの例示がされており、実際の判定の際の重要な要素になると思われるので、その中の一部について紹介する。 例えば、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる状態」、「そのまま放置すれば倒壊等著しく衛生上有害となる状態」に該当するか否かについて、次のように例示されている。 1 そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる状態 「建物が著しく保安上危険となるおそれがある」又は「擁壁が老朽化し危険とるおそれがある」に該当するか否かにより判断される(将来そのような状態になることが予見される場合を含む)。 「建物が著しく保安上危険となるおそれがある」に該当するか否かは、次の(1)又は(2)に掲げる状態に該当するどうかによって判定される。 (1) 建築物が倒壊等するおそれがある 次のイ又はロに掲げる事項に該当するか否かにより判定される。 イ 建築物の著しい傾斜 ロ 構築物の構造耐力上主要な部分の損傷 (イ) 基礎及び土台 (ロ) 柱、はり、筋かい、柱とはりの接合等 (2) 屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがある イ 屋根ふき材、ひさし又は軒 ロ 外壁 ハ 看板、給湯設備、屋上水槽等 ニ 屋外階段又はバルコニー 一方、「擁壁が老朽化し危険となるおそれがある状態」に該当するか否かの例示は次のとおりである。 2 そのまま放置すれば倒壊等著しく衛生上有害となる状態 「そのまま放置すれば倒壊等著しく衛生上有害となる状態」とは次の(1)又は(2)に掲げる状態(将来そのような状態になることが予見される場合を含む)に該当するか否かにより判断される。 (1) 建築物又は設備等の破損等が原因で以下の状態にある。 (2) ゴミ等の放置又は不法投棄が原因で以下の状態にある。 立入調査等の結果、上記の要件に該当し特定空家等であると判定された場合、市町村長はその特定空家等の所有者に対し除却、修繕、立竹木の伐採その他生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう「助言又は指導」、「勧告」及び「命令」と段階を経て手続きが進行する(勧告の段階で住宅用地の特例の対象から外される)。 なお、上記の行政指導に至るには、特定空家等に該当する建築物が、周辺建築物や通行人に悪影響を及ぼすおそれがある可能性や危険の切迫性の高低など、その建築物の立地やその地域の気象条件等を勘案し総合的に判断されることになるため、特定空家等であると判定された場合、必ずこれら行政指導が行われるとは限らないことにも留意したい。 (了)
《速報解説》 会計士協会より 「マイナンバー導入後の監査人の留意事項」を示した通達が公表 ~特定個人情報の入手等に適切・慎重な対応を求める~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月22日付で、日本公認会計士協会は、自主規制・業務本部 平成27年審理通達第2号「マイナンバー導入後の監査人の留意事項」を公表した。 平成25年5月31日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号。以下「番号法」という)が公布されている。 平成27年審理通達第2号は、マイナンバー導入に際しての公認会計士又は監査法人の対応について示したものである。 会計監査を受ける事業会社においても参考になると思われるので、ぜひ、お読みいただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ マイナンバーの概要 番号法に基づき、平成28年1月以降、社会保障、税及び災害対策の分野のうち、同法で定められた事務について個人番号(いわゆるマイナンバー)の利用等を開始する予定である。 また、平成27年10月を目途に住民票を有するすべての者へ個人番号が通知される予定である。 具体的な内容については、内閣官房の「マイナンバー 社会保障・税番号制度」をお読みいただきたい(下記リンク参照)。 Ⅲ 監査人の留意事項 公認会計士法2条1項の業務(以下「監査業務」という)を行う公認会計士又は監査法人(以下「監査人」という)は、被監査会社から番号法2条8項に規定する「特定個人情報」の提供を受けるに当たり、同法19条及び20条の提供、収集又は保管の制限を受けることはなく、監査業務において特定個人情報の入手が可能であるとのことである。 (出所:特定個人情報保護委員会「「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」 に関するQ&A」) 平成27年審理通達第2号では、次のことが述べられている。 (了)
《速報解説》 会計士協会、財務諸表の表示・開示に関する会計基準の 必要性について検討を開始 ~研究資料及び現時点の考察内容を公表、意見募集へ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月16日付で、日本公認会計士協会・会計制度委員会は次のものを公表し、意見募集を行っている。 国内外において、企業の情報開示に関する議論が活発に行われている中で、日本公認会計士協会は、財務諸表の表示・開示についての会計基準を検討する時機が来ているのではないかと考え、我が国における会計基準の必要性の検討を行うこととしたと述べている。 意見募集期間は、平成27年6月17日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 我が国の財務諸表の表示・開示に関する検討について 調査・研究を進めていく中で、我が国の財務諸表の表示・開示の会計基準を検討する場合には、日本公認会計士協会としては、次の事項について優先すべきであると現時点では考えているとのことである。 「質問事項」として、下記の事項を踏まえて、コメントが求められている。 2 我が国の財務諸表の表示・開示に関する調査・研究 IFRSを参考にして、日本基準とIFRSの開示規定を比較し、比較の結果、重要な差異として把握された事項について、IFRSを任意適用している日本企業が財務諸表利用者に対してどのような情報を開示しているのかについて検討したとのことである。 日本基準とIFRSの表示及び開示規定の比較、開示事例等に基づく分析、開示に関する議論の国際的動向などについて、調査が行われている。 (了)
《速報解説》 税理士業務が「個人番号関係事務実施者」から外れるケースあるも、 税理士法上で縛り ~「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック」で言及 Profession Journal編集部 来年1月より運用が開始されるマイナンバー制度では、従業員等の個人番号を給与所得の源泉徴収票、支払調書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の書類に記載して、行政機関等及び健康保険組合等に提出する事務を行う「個人番号関係事務実施者」について定められている。 「個人番号関係事務実施者」は、個人番号及び特定個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止等、特定個人情報の管理のために、必要かつ適切な安全管理措置を講じなければならない。 税理士は、まさに「個人番号関係事務実施者」に該当すると考えられるが、先に日税連が公表した「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック」(以下「ガイドブック」という)により、税理士が行う業務の内容によっては、この「個人番号関係事務実施者」から外れるケースがあることが判明した。 税理士は、次の事務を行う場合には、「個人番号関係事務実施者」に該当することとなる(ガイドブック5頁)。 ① 税理士等が自らの事務所の従業員等の給与所得に係る源泉徴収票等の作成、健康保険・厚生年金事務及び労働保険事務を行うために、従業員等(従業員等の扶養親族を含む。)の個人番号を取得し、源泉徴収票等に当該個人番号を記載し行政機関等及び健康保険組合等に提出する場合。 ② 税理士等が業務委嘱契約等に基づき顧問先の給与所得に係る源泉徴収票等の作成事務を行うために、当該顧問先の従業員等(従業員等の扶養親族を含む。)の個人番号を取得し、源泉徴収票等に当該個人番号を記載し行政機関等に提出する場合。 ③ 税理士等が業務委嘱契約等に基づき顧問先の所得税の確定申告書を作成するために、顧問先及び顧問先の扶養親族に係る個人番号を取得し、当該申告書に扶養親族の個人番号を記載し行政機関等に提出する場合。 税理士が行う本来業務は、これらでカバーすると想定され、すべからく「税理士=個人番号関係事務実施者」に該当すると考えられるのだが、「ガイドブック」では次のような記述(ガイドブック6頁)がある。 ※ なお、税理士が顧問先である個人の納税者から当該納税者の個人番号のみを取得し(納税者の扶養親族の個人番号を取得せず)、当該納税者の個人番号のみを記載した所得税の確定申告書を作成し行政機関等に提出する場合は、当該納税者が個人番号関係事務実施者に該当しないことから、当該納税者の代理人である当該税理士についても「個人番号関係事務実施者」に該当しません。 上記の繰り返しではあるが、これを具体的に説明すると下記のようになる(ガイドブック29頁)。 ① 自らの事務所の従業員等の給与所得に係る源泉徴収票等の作成、健康保険・厚生年金事務、労働保険事務を行う場合 ② 顧問先との業務委嘱契約等に基づき顧問先の給与所得に係る源泉徴収票等の作成事務を行う場合 ③ 顧問先との業務委嘱契約等に基づき顧問先の税務代理(税理士法第2条第1項第1号)又は税務書類の作成(税理士法第2条第1項第2号)に係る事務を行う場合 上記①及び②については、個人番号関係事務に該当することは明確ですが、③のうち、顧問先である個人の納税者が当該納税者以外の他者の個人番号を取り扱わない場合、委嘱された税理士等は、当該納税者の個人番号のみを取り扱うこととなります。当該納税者が本人の個人番号を取り扱う事務は、個人番号関係事務に該当しないことから、当該納税者の代理人である税理士等が行う事務も個人番号関係事務には該当しません。 つまり、税理士が個人の確定申告書の作成と提出を受任した場合に、依頼者が独身などで、申告書に依頼者本人の個人番号しか記すことがないケースでは、マイナンバー制度(番号法)上は、受任した税理士は「個人番号関係事務実施者」から外れることとなるのだという。 しかし、上記の確定申告の依頼者に配偶者や子供がおり、各種控除を適用する場合に、その配偶者や子供の個人番号を預かり、その番号を申告書に記載する場合には、その配偶者や子供の個人番号については「個人番号関係事務実施者」に該当することとなる。なお、この場合でも依頼者本人に対しては「個人番号関係事務実施者」からは外れる。 なんとも理解しがたい番号法の制度設計だが、制度上ではこのような事態が生じるのだ。 とはいえ、上記ケースのように番号法の責任の範囲から外れて「個人番号関係事務実施者」には該当しない場合であっても、次のように税理士法の縛りがかかるため、「ガイドブック」の内容の遵守が求められることとなる(ガイドブック6頁)。 税理士等は、税理士法第37 条(信用失墜行為の禁止)及び第38 条(秘密を守る義務)の規定を遵守しなければならず、また、個人番号関係事務に該当しない事務を行う場合であっても、顧問先の特定個人情報を取り扱うことに変わりはないため、必要かつ適切な安全管理措置を講じる必要がある。 (了)
《速報解説》 法人税法施行規則の一部改正により 平成27年度税制改正を受けた 「法人税申告書(別表)」の新様式が明らかに Profession Journal編集部 平成27年4月15日付けの官報号外第86号で「法人税法施行規則の一部を改正する省令」が公布され、平成27年度税制改正等を受けた法人税申告書(別表)の改正様式が明らかとなった(当該省令は公布の日から施行(改正省令附則1一))。 なお、以下の改正省令も官報同号において公布されている。 以下、主な様式の改正事項について取り上げる。 (了)
《速報解説》 「金融商品会計に関する実務指針」及び 「金融商品会計に関するQ&A」が改正 ~ヘッジ会計に関する2つの論点の取扱いを明記~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月14日(ホームページ掲載日は4月16日)、日本公認会計士協会は、次の実務指針等の改正について公表した。 これにより、平成27年2月6日付で意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、企業会計基準委員会からの依頼によるものであり、ヘッジ会計の限定的見直しを行うものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 異なる商品間でのヘッジ 次の取扱いは、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)及び「金融商品会計に関する実務指針」上、明確である。 これを周知するために、「金融商品会計に関する実務指針」143項に一文を追加するとともに、結論の背景(314-2項)を記載する改正を行っている。 2 ロールオーバーを伴う取引に関するヘッジ会計の適格性 「ロールオーバーを伴う取引に関するヘッジ会計の適格性」について、「金融商品会計に関するQ&A」に規定を設けるものである。 Q59-2が新設され、例として、当初、6ヶ月後に輸入を予定しているある商品の仕入価格の変動リスクをヘッジするため、輸入の見込時期に合わせた商品スワップ契約を締結していたが、船積みの遅延から1ヶ月程度、到着が遅れることが明らかとなったため、元の商品スワップ契約を満期に決済し、改めて到着見込時期の価格変動をヘッジする新たな商品スワップ契約を締結した場合の会計処理について述べている。 このようなケースは「ロールオーバー」と呼ばれており、「金融商品会計に関する実務指針」180項に従って、当初のヘッジ手段である元の商品スワップ契約について、満期時点で商品の到着より先に決済がなされるため、ヘッジ会計の中止として会計処理することが述べられている。 Ⅲ 実施時期 本改正は現行の取扱いを明確化するためのものであるので、公表日(平成27年4月14日)から適用する(「金融商品会計に関する実務指針」195-13項)。 (了)
2015年4月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.115が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。