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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第15回】「仕入・買掛債務管理のKPI(その② 仕入値引等対応)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第15回】 「仕入・買掛債務管理のKPI (その② 仕入値引等対応)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は前回に引き続き、「仕入・買掛債務管理」を構成する業務プロセスから、「仕入値引等対応」を評価するKPIを取り上げる。 「仕入値引等対応」は、いったん受渡しが行われた物品や役務に数量不足や品質不良が発見された場合に発生するため、仕入・買掛債務管理においては特殊業務であるとともに、返品や仕入値引による仕入金額の減額の過程で誤謬や不正が発生しやすい。 そこで、仕入計上の評価の妥当性、資産保全の観点で業務管理が重要となるが、そのような業務管理のサービスレベルを評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 前回も述べたが、仕入・買掛債務管理において、会社が担う一般的な機能として、「購買業務」、「債務残高管理」、「値引・割戻」という3つの機能が挙げられるが、今回解説するKPIは、「値引・割戻」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:仕入・買掛債務管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、「値引・割戻」に関する対応内容をあらかじめ契約で取り決めているか否かに分けて、「値引・割戻」に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。いずれも、証憑と契約内容に基づき価格調整の根拠となる事実を確認し、仕入値引を行うか、仕入先に対して仕入代金の返戻を請求するという流れとなっている。 このように、経済産業省スタンダードでは、購入対象の数量不足や品質不良を理由に仕入金額を減額する仕入値引や返品を理由にする仕入戻と、一定期間に多額又は大量の仕入を行った仕入先からの仕入代金の返戻(リベート)である仕入割戻を同じ業務プロセスで扱っているのだが、スコアリングモデルでは、仕入割戻ではなく、仕入値引、仕入戻の対応についてその正確性のレベルを問うKPIを設定した。 〈経済産業省スタンダード:2.7.1調整額検証(契約有)〉   〈経済産業省スタンダード:2.7.2調整額検証(契約無)〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「仕入値引、返品」とは、仕入製商品の量目不足、品質不良、破損等の理由で仕入金額を控除する仕入値引、返品により仕入金額の全額を消去する仕入戻をさす。 ところで、仕入金額を直接又は間接に減額する会計事象としては、仕入値引、仕入戻、仕入割戻、仕入割引があるが、このKPIで評価の対象にしているのは、当初の購買取引に予定されていない理由で仕入金額を直接変更する仕入値引、仕入戻である。 「発生日」とは、仕入値引の場合、仕入先と値引金額を合意した日、返品の場合、仕入先における返品物品受領日をさす。 「平均」とは、購買情報管理システムに入力された複数の仕入金額変更データ入力日を合算して、それを仕入金額変更データ入力件数で割った平均値をさす。データを取る場合、前月1ヶ月のデータに基づいて記入すればよい。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、物品又は役務の購入取引において発生した取引条件の変更を適正に買掛金や棚卸資産の金額に反映するため、変更された仕入データ入力を早期に完了することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 そして、このKPIで業務を評価する前提条件として、発注依頼、購買、支払の職務分掌が整備され、返品の承認手続が定められていることが必要と考えている。 そこで、会社の経理財務部門が適正に適時に仕入値引等を計上しているか否かというサービスレベルを比較するため、データ入力日までの平均日数をKPIとした。 スコアリングモデルでは、この日数が短い会社が長い会社よりも相対的に望ましいと考えている。そして、どの程度の日数が望ましいのかという問題は、各会社が提供したKPIデータ群によって形成されるベンチマークに委ねている。 では、もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されない場合、どういう事態が想定されるのか。 まず、買掛金や棚卸資産の金額が正しく計上されなくなる事態が想定される。 さらに、仕入金額の減額又は消去が遅れると、不要な仕入を行い仕入代金も支払った上で後日返品する手口で仕入先の粉飾を幇助する不正の温床を生む。 このような不正は、支払義務なき債務の支払いが発生するリスクだけでなく、仕入先が破産手続に入った場合には、過払代金を回収できなくなるという極めて具体的な資産保全のリスクを高めることになるだろう。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、仕入値引や仕入戻に関連する業務プロセスが仕入・買掛債務管理に組み込まれていることを確認していただきたい。その上で、毎回述べているが、実際にKPIを測定するときは、証拠を具体的に特定して、日数を確認する必要がある。 例えば、閲覧すべき証拠として、購買規程、経理規程が考えられる。購買規程、経理規程に、仕入値引や仕入戻の処理方法が定められていることを確認する。不正を防ぐ職務分掌の定めの確認も忘れてはならない。 さらに、仕入値引や仕入値引根拠資料、返品事実根拠資料、購買管理情報システムから出力された仕入変更一覧表を閲覧し、仕入値引承諾日から変更入力日、あるいは返品物品受領日から変更入力日までの平均日数を確認する。 さて、読者の顧問先において、仕入値引、返品の発生日から、購買管理情報システムへの仕入金額変更データ入力日までの平均日数は何日になっただろうか。 *  *  * 次回は、「仕入・買掛債務管理」を構成する複数のKPIのうち、「支払」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 36(掲載号)
#島 紀彦
2013/09/19

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第5回】「管理会社を選ぶ決め手は?」

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第5回】 「管理会社を選ぶ決め手は?」   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   前回、ホームページの管理会社に満足できないのであれば、管理会社を変更することができることをご説明しました。少し難しい話をしてしまいましたが、手続としては変更先の管理会社に任せてしまえば安心です。 というわけで今回は、任せて安心な管理会社の選び方です。 条件は3つ、「料金」と「技術力」、あとは「あなたのニーズ」です。  *  *  * まずは、「料金」です。 これには、毎月の維持費、更新料、さらに制作料も関係することがあります。毎月の「維持費」と「更新料」についてはすでにお話しました。新たな管理会社を調べる際には、これらについて、少なくとも明確な料金を開示していることが条件です。 その上で、金額的に納得できる業者を選びましょう。 次に、「新規の制作料」です。移管に制作料が関係するの?と驚かれるかもしれません。次回お話する内容なのですが、CMS(第3回参照)や著作権の問題で、どうしても移管できず、新しい業者で、全面的もしくは部分的に、新たに制作し直すしかない場合があります。そしてこの場合には、制作料も関係してきてしまうのです。全面的に制作し直すとなると、その業者の新規制作料が必要となります。   *  *  * 次に、「技術力」です。 ホームページの管理は、簡単なホームページであれば、ちょっと知識のある素人にもできます。制作は外注し、管理は素人レベルの社員に任せている、そんな技術力の低い会社がホームページの制作管理を受注している場合もあります。 それでも、トラブルが発生しなければ問題ないといえるかもしれません。また、そのような会社が、あなたの事務所に常に出入りしている業者である場合には、ホームページに関する様々な要望を話しやすいという利点もあります。 しかし、そのような、「技術力の低さを補う利点」が見当たらない場合には、技術力の低い業者よりも高い業者を選んだ方が得策です。それは、トラブルが発生した場合の対処や、今後ホームページを発展させていく場合のサポートが円滑に行われる可能性が高いからです。 そこで、技術力の高い業者をどうやって選ぶか、ですが、方法としては、ホームページに関する疑問点を何でも聞いてみてください。 制作に関することでも、管理に関することでも、移管に関する手続でも構いません。専門用語で煙に巻くことなく、あなたにわかるように、明確に答えてくれる業者こそが、技術力の高い業者です。 これは、逆の立場で考えるとわかりやすいと思います。 税理士や会計士の方々が、クライアント様から税務・会計の質問をされた場合に、自分が詳しい分野の質問の場合には、即座に相手にわかりやすく説明できますが、自分があまり詳しくない分野の質問の場合には、そうもいかないですよね。   *  *  * 最後は、「あなたのニーズ」です。 これは、事務所として「どのような目的でホームページを公開しているのか」ということに関わります。これによって、前述の料金の安さや技術力の高さをどの程度求めるかも決まってきますし、その他にどのようなサービスを求めるのかも決まってきます。 この連載の第1回の冒頭にも書きましたが、紹介の見込み客が見てくれて住所や電話番号を確認してくれればそれでよいということなら、住所や電話番号が記載されたホームページを公開しておくだけですから、技術力もそれほど必要ないでしょう。そうすると、料金の安い業者を選択すればよいということになります。 これに対し、ある程度の新規顧客の獲得を目指したいということになると、ホームページの作り方やSEO対策などに詳しい業者が選定対象となってきます。 新規顧客の獲得のためのホームページの制作管理をうたって、ある程度のノウハウを公開している業者はいくつもありますが、一般に料金は高めです。料金とサービスを比較して、納得のいく業者を選択する必要があります。  *  *  * なお、この連載では、顧客獲得のためのホームページの制作管理や広告手段について、後日稿を改めて具体的に書かせていただきます。 (了)

#No. 36(掲載号)
#河村 慎弥
2013/09/19

《速報解説》 「公共施設等運営権に係る会計処理方法に関する PT研究報告(中間とりまとめ)」の解説

《速報解説》 「公共施設等運営権に係る会計処理方法に関する PT研究報告(中間とりまとめ)」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年9月6日、内閣府 民間資金等活用事業推進室は「公共施設等運営権に係る会計処理方法に関するPT研究報告(中間とりまとめ)」を公表した。 平成23年改正「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)」(「PFI法」と呼称される)により、公共施設等運営権(以下「運営権」という)制度が規定されている。 当該制度については、空港に係る公共施設等運営事業(以下「運営事業」という)が近々に具体化されることが見込まれている。 PT研究報告は、現時点で想定される範囲内の空港における運営事業のスキームを前提に、会計処理方法を可能な範囲内で例示するものである。 ただし、PT研究報告は、運営事業に係る円滑な会計実務の実施に向けた研究であり、実務上の指針として位置付けるものではなく、実務を拘束するものではないと述べられている。   Ⅱ 運営権制度のスキーム概要 運営権の制度は、利用料金の徴収を行う公共施設等について、当該公共施設等の所有権を公共主体が有したまま、当該公共施設等を運営して利用料金を収受する(収益を得る)権利を民間事業者に設定するスキームである。 運営権は財産権(みなし物権)として認められ、その譲渡、抵当権の設定、税法上の減価償却が可能とされている。 PT研究報告では次のスキーム図が示されている。 (公共施設等運営権に係る会計処理方法に関するPT研究報告(中間とりまとめ))より   Ⅲ 会計処理の内容 1 運営権対価の会計処理方法 運営権者は、運営権設定時に無形固定資産に計上し、運営事業の事業期間にわたり減価償却過程を経て費用認識することが考えられる。 管理者等は、「繰延受取運営権対価」等の長期前受収益として繰り延べて、運営権の存続期間にわたり、時の経過に基づき収益認識することが合理的であると考えられる。 2 運営権者による第三者への転貸を前提とした管理者等と運営権者との賃貸借契約のケース 運営権者が運営事業の一環として、管理者等の所有する施設等の一部を第三者へ転貸するために締結する管理者等との賃貸借契約等における賃料等相当分については、①運営権対価に包含されている場合には運営権に含まれるものとして取り扱い、②当該賃料等が別途支払われる場合には基本的には通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理が適用されることが考えられる。 3 運営権者の負担により施設等を新設するケース 新たな運営権が設定されると考えられることから、運営権者は新設にかかる正味の負担金額を運営権の取得価額として計上することが考えられる。 4 運営権者の負担により施設等を更新するケース 原状回復を目的とした更新(収益的支出)は費用処理、使用可能期間の延長・価値の向上を伴う更新(資本的支出)は、運営権(無形固定資産)として資産計上し、運営事業の残存期間にわたって減価償却することが考えられる。 5 運営権者の負担により災害復旧を行うケース 原則として、運営権設定の基礎となっている施設等が災害等に伴って受けた損害の度合いに応じて、運営権の簿価を切下げ、原状回復のために要した支出額を運営権の簿価に加えることが考えられる。 (了)

#No. 35(掲載号)
#阿部 光成
2013/09/19

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第5回】「ホステス報酬事件(その2)」~ホステスは事業所得者か?~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第5回】 「ホステス報酬事件(その2)」 ~ホステスは事業所得者か?~   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   1 最高裁昭和56年判決 ここでは、ホステス報酬の所得区分を考えてみたい。すなわち、「給与所得」に該当するのか「事業所得」に該当するのかである。 このことを検討するに当たっては、弁護士顧問料事件最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)が参考になる。同判決は、事業所得については独立性要件によって説明し、給与所得については従属性要件によって説明している。 すなわち、最高裁昭和56年4月24日判決は、 とする。この事業所得の要件の部分を「独立性要件」といい、給与所得の要件の部分を「従属性要件」と呼ぶことが多い。   2 独立性要件――事業所得該当性 事業所得と給与所得を画するメルクマールの一つに、独立性要件がある。最高裁昭和56年判決がいうように、自己の危険と計算において独立して営まれるような業務から生じた所得は事業所得に該当するというわけである。 いわゆる親会社ストック・オプション訴訟最高裁平成17年1月25日第三小法廷判決(民集59巻1号64頁)は、「本件権利行使益は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものとして、所得税法28条1項所定の給与所得に当たる」と判示しているが、ここにいう「非独立的」とは上記の独立性を有しない所得であるという意味であり、給与所得該当性が独立性のない所得という観点から論じられた珍しい判断でもあった。   3 従属性要件――給与所得該当性 最高裁昭和56年判決は、前述の引用部分の後で、さらに、なお書きにおいて、「とりわけ給与所得者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束」を受けたものを給与所得というとしている。 素直に理解すれば、この空間的、時間的な拘束とは、給与支給者と給与受給者との関係を指していると理解することができそうである。しかしながら、そのように理解すると、前段で給与支給者と給与受給者との関係について、「雇傭契約又はこれに類する原因に基づき」としているのであるから、改めて給与支給者と給与受給者との関係を論じる必要はないように思われる。 そこで、この疑問点について考えたい。 判決によれば、給与支給者と給与受給者との関係は「雇用契約」という法律関係がある場合のみならず、「これに類する原因」のある関係をも含むものとしているのであるから、その判断は難しいところである。そこで、前段では単に「これに類する原因」と説示するにとどめ、これを明らかにするために、判決は、なお書きにおいて、「何らかの空間的、時間的な拘束」を受ける関係であるかどうかが重要であると説明したのではないかと思われる。 イ 雇用契約に限定しない解釈 ロ 使用者の指揮命令に限定しない解釈 すなわち、雇用契約がないと指揮命令関係を観念できないが、その場合であっても、指揮命令まではいかないとしても、空間的ないし時間的な拘束があれば(その場合には継続的ないし断続的な労務の提供が要求されるが)、給与所得に該当し得ることを最高裁昭和56年判決は明らかにしたものである。この点は、同最高裁判決が、必ずしも雇用契約のみにこだわっているわけではないという態度を示していることの帰結の一つともいえよう。 すると、空間的ないし時間的拘束の有無は、使用者の指揮命令に服していない労務提供関係下においては、重要な要件となると解することができる。 ハ 給与所得該当性   4 小括 ホステス報酬が給与所得に当たるか事業所得に当たるかを考えた場合どうであろうか。 ①上記に示した独立性要件の観点からは、ホステスは自己の営業成績が直截的に報酬やホステスとしての地位に影響を及ぼす関係にあり、かようなリスク負担を自らが負っていること(自己の危険)、衣装代や交際費などはすべて自弁であること(自己の計算)からすれば、独立性要件を充足しているものと解される。 また、補充的に②従属性要件をみると、店とホステスとの関係は、雇用契約によるものでもそれに類するものでもなく、ホステスは指揮命令下にあるわけではない。もっとも、契約条件として店の各種のルールはあるが、それは労働条件ではなくあくまでも役務提供を行うに当たっての契約条件であるとみることができよう。一見すると指揮命令関係にこそないとしても、空間的・時間的拘束を受けているようにも思えるが、その拘束性は一般的な勤務関係における従業者に比して緩やかで、自由度の高いものであるといえよう。 このようなことから、ホステス報酬は一般に、事業所得に該当するケースが多いと思われる。 (続く)

#No. 35(掲載号)
#酒井 克彦
2013/09/12

貸倒損失における税務上の取扱い 【第1回】「近年における税制改正の概要」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第1回】 「近年における税制改正の概要」   公認会計士 佐藤 信祐   平成23年度税制改正により、貸倒引当金制度は、銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定され、それ以外の法人は4年間の激変緩和措置を設けて廃止されることになった。 そのため、これらの業種に該当しない大法人においては、不良債権を貸倒損失として実現させる重要性が高まってきたと考えられる。 本稿では、近年における貸倒損失、貸倒引当金に係る税制改正の概要について解説を行う。   1 平成10年度税制改正 法人税法の抜本改正が行われたと言われているのが、平成10年度税制改正である。 平成10年度税制改正により、引当金制度が大幅に見直され、貸倒引当金の制度についても、 とされた。 このように、貸倒引当金の繰入限度額の計算が、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分して計算する方式に改められた。 さらに、中小法人等を除き、一括評価金銭債権に対する貸倒引当金については、法定繰入率が廃止され、実績繰入率により貸倒引当金の計算を行うことになった。   2 平成12年度通達改正 平成12年6月28日に、法人税基本通達が改正され、法人税基本通達11-2-1の2(平成14年度の法人税基本通達の改正により、法人税基本通達11-2-2に変更)として、貸倒損失として計上したものについて、その後の自己監査や税務調査により否認された場合であっても、個別評価金銭債権に対する貸倒引当金の要件を満たしているのであれば、「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」を提出することにより、貸倒引当金の計上を認めることが明らかにされた。 しかしながら、平成23年度税制改正により、そもそも貸倒引当金制度は、銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定されてしまったため、それ以外の法人においては、意味のある制度ではなくなってしまった。   3 平成13年度税制改正 平成13年度税制改正により、組織再編税制が導入され、貸倒引当金の制度についても、期中損金経理の制度や、貸倒実績率の引継ぎ等が定められた。 また、平成13年度税制改正により、 こととされた。 さらに、平成13年度税制改正前は、貸倒引当金の繰入限度額は、個別評価金銭債権に係る繰入限度額と一括評価金銭債権に係る繰入限度額の合計額とされていたため、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入額に繰入限度超過額がある一方で、一括評価金銭債権に貸倒引当金の繰入額が繰入限度額に達していないような場合には、その通算が可能であったが、平成13年度税制改正により、個別評価金銭債権に係る繰入限度額と一括評価金銭債権に係る繰入限度額とをそれぞれ別に計算することとされたため、このような通算は認められなくなり、平成15年2月28日に改正された法人税基本通達11-2-1の2において、そのことが明らかにされている。   4 平成14年度税制改正 平成14年度税制改正により、連結納税制度が導入され、連結納税制度下においては、連結完全支配関係のある他の法人に対する金銭債権については、貸倒引当金を設定することが認められなくなった。   5 平成21年度税制改正 平成21年度税制改正により、企業再生税制が見直され、法的整理、私的整理における資産の評価損益を計上する対象資産として金銭債権が含められることになった。 それ以前においては、金銭債権に係る評価損益の計上は認められていなかったため、貸倒損失又は貸倒引当金の要件を満たさない限り、含み損部分について、損金の額に算入することは認められていなかった。 そのため、金銭債権に係る評価損益の計上が認められるようになったことについては、法的整理、私的整理という極めて限定された場面のみであるが、金銭債権における法人税法上の取扱いを大きく変更するものといえる。 なお、資産の評価損と貸倒損失は理論上も本質的な差異があることから、租税法の分析においても、両者は異なる検討をすべきであることはいうまでもない。この議論については、貸倒損失について、部分貸倒れを容認すべきか否かという議論にも繋がってくる点であるため、本連載において、いずれその点についても触れる予定である。   6 平成22年度税制改正 平成22年度税制改正により、グループ法人税制が導入された。その結果、資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等の100%子法人については、中小法人等の特例が適用されないことになった。 さらに、平成23年度税制改正により、中小法人等の特例の適用除外の範囲が、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人にも拡充された。   7 平成23年度税制改正 平成23年度税制改正により、貸倒引当金制度は、銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定され、それ以外の法人は4年間の激変緩和措置を設けて廃止されることになった。   8 総括 このように、平成10年度税制改正から平成23年度税制改正までの流れについては、貸倒引当金の制度を大幅に見直すものであったといえる。 しかしながら、最終的に、銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等を除いては、貸倒引当金が廃止されることになったということは、それ以外の法人については、不良債権を貸倒損失として実現させる重要性が高まってきていると考えることもできる。 一般論ではあるが、上記の業種を除く大法人においては、主要取引先、子会社、関連会社を除き、多額の不良債権が生じる可能性は少なく、子会社、関連会社に対する金銭債権についても、平成23年度税制改正前においても、貸倒引当金の計上が容認されにくかったということを考えると、平成23年度税制改正により大きな影響を受けるのは、外部取引先に対する金銭債権が不良債権化したケースであると考えられる。 また、アベノミクスの影響により、少しずつ景気が回復しているという考え方もあるが、日本経済、世界経済の動向は不透明であり、今後、産業構造の変化により、外部取引先や子会社、関連会社に対する不良債権が増えてくる可能性は否めない。 本連載においては、そのような状況を鑑み、貸倒損失についての税務上の取扱いについて理論的に分析した上で、実務上、どのように対応すべきなのかという点を模索していく予定である。 (了)  

#No. 35(掲載号)
#佐藤 信祐
2013/09/12

「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の解説 【第3回】「対象となる事業者の範囲及び設備の範囲」

「商業・サービス業・ 農林水産業活性化税制」の解説 【第3回】 「対象となる事業者の範囲 及び設備の範囲」   公認会計士・税理士 新名 貴則   本税制の概要は、【第1回】から解説しているため確認になるが、次のとおりである。 中小企業等が器具備品及び建物附属設備を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(当期の法人税額の20%が上限)を認める税制措置が創設された(措法42の12の3)。 ただし、下記の要件を満たす必要がある。 今回は、この中の「対象企業」及び「対象設備」について、詳細に解説する。   1 対象企業(個人事業者も含む)の具体的な範囲 本制度の対象となるのは、青色申告書を提出している「中小企業者等」であるが、その具体的内容は次のとおりである(措法42の12の3①②、42の4⑥、42の4⑫五、措令27の4⑩、27の12の3②)。   2 対象設備の具体的な範囲 本制度は、次の設備が対象となる(措法10の5の3①、42の12の3①、措令5の6の3②、27の12の3③)。   また、上記の設備で、かつ、次の要件を満たすものにつき本制度が適用される。   3 なぜ対象設備を「器具備品」と「建物附属設備」に限定しているのか 現時点での中小企業向けの設備投資税制としては、「中小企業等投資促進税制」(措法42の6)がある。当該税制についても、中小企業者等が一定の設備投資を行った際に税額控除(7%)又は特別償却(30%)の選択適用を認めているが、対象資産が限定されている。 つまり「建物附属設備」は対象外とされ、「器具備品」についても事務処理の能率化等に資するものとして財務省令で定められているものに限られている。 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」は、この「中小企業投資促進税制」の対象外となった投資設備に対しても税制上の優遇措置を与えようとする政策的配慮より設置された税制であることから、対象設備を「器具備品」と「建物附属設備」に限定しているものと考えられる。 (了)

#No. 35(掲載号)
#新名 貴則
2013/09/12

相続税対策からみた生前贈与のポイント 【第5回】「税制の特例を活用した贈与の検討」

相続税対策からみた 生前贈与のポイント 【第5回】 (最終回)  「税制の特例を活用した贈与の検討」   税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義     1 相続税対策として選択すべき贈与税の特例とは 相続税の節税対策のために贈与を行う場合、贈与税の特例の選択にあたって一番に検討すべき条件は、「贈与した財産が贈与者の死亡時に相続税の課税対象とならないこと」である。贈与財産が贈与者の相続税の課税対象とされては、贈与をした意味がないからだ。 したがって贈与税の課税方法は、贈与者の相続時に贈与財産が相続税の課税対象とされる相続時精算課税制度は選ばす、暦年課税制度によるべきである。 贈与税の暦年課税制度による財産の贈与を行う場合、注意すべきは生前贈与加算(相法19)の適用である。 贈与者が贈与後3年以内に死亡し、その受贈者が贈与者からの相続又は遺贈により財産を取得したときは、生前贈与加算の規定により、受贈者の相続税の課税価格に贈与財産の贈与時の価額が加算されてしまう。贈与者の相続開始の時期は予定できないので、贈与税の特例の選択の際には、贈与財産が生前贈与加算の対象とならない特例を選ぶことがポイントになる。 また、相続税対策として贈与を行う場合には、相続税の課税を一回飛ばして財産を移転するため、贈与の相手先を「孫」とすることがしばしば検討される。このため、孫への贈与についても適用が認められるような贈与税の特例を選択したいところである。 以上の条件をすべて満たす贈与税の特例が、相続税の節税対策として望ましいものとなるが、それは次の①~③の特例である。 上記①~③の特例は、贈与財産の価額のうち一定額について贈与税が非課税となり、かつ贈与後3年以内に贈与者が死亡した場合であっても、贈与税が非課税とされた額については、贈与者に係る相続税の計算上、生前贈与加算の対象とはされず、相続税の課税がされることはない。 ①~③の特例の適用を受けるにはそれぞれの要件を満たす必要があり、贈与税の非課税枠には上限があるものの、確実に相続税の節税効果が期待できる。 相続税対策の一環として贈与を考える場合は、まずはこれら特例の適用要件を満たす「孫」がいないかどうかを検討してみるべきだろう。   2 相続税対策としての贈与税の配偶者控除の活用 上記①~③以外に相続税対策としての活用を考えたい特例としては、婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅不動産等の贈与をした場合の贈与税の配偶者控除(相法21の6)がある。 贈与税の配偶者控除に係る贈与者がその贈与後3年以内に死亡した場合、贈与者の死亡に係る相続税の計算上、生前贈与加算額は贈与税の配偶者控除額を控除した金額とされる。 したがって、この特例の適用を受けることにより、控除額(最大)2,000万円と基礎控除額110万円を合わせた2,110万円までが、相続税の課税対象から除外できる。 贈与税の配偶者控除を活用した贈与は配偶者への財産移転であるため、二次相続(受贈者の死亡)時の相続税負担の増大が懸念されるが、贈与者や受贈者の所有財産額によっては、相続税の節税対策として活用できる場合もある。 例えば、夫の主たる財産が自宅不動産と預貯金で、その金額が相続税の基礎控除をわずかに上回る程度であり、かつ妻の固有財産もわずかである場合には、夫から妻に自宅不動産を贈与し、夫の財産額を基礎控除以下にすることによって、相続税の負担をゼロにすることが可能である。 二次相続に係る相続税については、夫の相続時の遺産分割で相続人である妻と子の間で調整をすれば、妻の相続に係る相続税の負担をゼロにすることも可能であろう。   3 おわりに 相続税対策として親から子に贈与をする場合には、税制以外にも重要なポイントがある。 それは、生前や相続後を通じ、子には極力、公平に財産を渡すことである。 公平な財産の配分に心を砕いておかないと、親の死亡後に子の間で相続争いが起きかねない。 民法上、相続人である子には「遺留分」という、相続できる最低限の権利が保証されている(民法1028~1044)。この遺留分の算定においては、被相続人が相続開始時に所有していた財産のほか、生前に子に贈与した財産も加算される。 相続人は相続による自分の取り分が遺留分より少なければ、遺留分の減殺請求によって財産を取り戻すことができる。ただし、兄弟間でこれを実行すれば、信頼関係が崩れるおそれが大である。 贈与による相続税の節税も重要ではあるが、節税の大前提は、相続が円満に行われることである。 相続で不幸な結末を迎えないためにも、子への財産の配分には公平を期し、全相続人の遺留分を確保するようにしたいものである。 (連載了)

#No. 35(掲載号)
#山崎 信義
2013/09/12

〔書面添付を活かした〕税務調査を受けないためのポイント 【第2回】「書面添付制度の概要・現状と考え方」

〔書面添付を活かした〕 税務調査を受けないためのポイント 【第2回】 「書面添付制度の概要・現状と考え方」   公認会計士・税理士 田島 龍一   1 書面添付制度の特徴 書面添付制度は、「〈1〉税理士が納税者のために会計・税務調整した処理のうち、重要と思われる事項の説明等を定められた書面に記載し、申告書に添付すること(法33条の2)」及び「〈2〉税務当局は、事前告知税務調査前に、その添付書面の内容につき、税理士から意見聴取(法35条)をすることにより、税務調査が不要であると判断した場合には、税務調査を省略する」という一連の制度のことをいう。 (注:上記文中カッコ内の「法」とは「税理士法」を意味する。) その特徴として、次の点を挙げることができる。   2 意見聴取のタイミングと手続の流れ 意見聴取は、予告通知税務調査予定日の1~2週間前に税務当局より税理士に通知され、納税者抜きで実施される。その主なタイミングと手続の流れは以下の通りである。   3 書面添付の普及率とその背景 この書面添付の普及率は、現状では極めて低い状況である。財務省資料によると、平成23年度における法人税申告書の「書面添付」割合は、7.4%(前事業年度7.0%)であり、e‐Taxの利用率52.7%と比較すると低迷している(財務省「平成23事務年度 国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価書」平成24年10月31日付)。 書面添付制度は平成13年より制度化(注)されているが、普及率が低い理由として、次のような税理士の心理がある。 (注:「税務調査前意見聴取」制度を有しない書面添付は、昭和31年よりあったが、メリットが無く、ほとんど利用されなかった。) 上記に挙げたデメリットに対する筆者の考えを以下に記述する。   4 書面添付のメリット 一方、書面添付のメリットとしては、次のようなことが考えられる。 上記のうち最大のメリットは、事前通知税務調査が省略されうることである。しかし、そのためには、それなりの手順と準備期間が必要である。 自計化率の増加問題や赤字会社のクライアントに負担をかけて、「書面添付」のための手続を促すのはどうか等、実務的な困難さも立ちはだかる。 書面添付は、税理士の意思で任意に行うものであり、無理をして行うものではない。 しかし、書面添付にチャレンジすることは、税理士及び納税者双方にとって、より質の高い信頼関係を築く機会となり、また、税務署に対する信用度も上昇する機会となりうる。 次回は、「意見聴取の対策(留意点)」を取り上げる。 (了)

#No. 35(掲載号)
#田島 龍一
2013/09/12

税務判例を読むための税法の学び方【18】 〔第5章〕法令用語(その4)

税務判例を読むための税法の学び方【18】 〔第5章〕法令用語 (その4)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘   (前回はこちら) (承前)このように、「ものとする」があってもなくても意味が変わらないにもかかわらず、これを付すのは、語感や語呂から、また表現をソフトにするためであり、例外を認める余地はなく、義務を課したものである。 ③ 解釈の明確化 「・・・(の規定)は、・・・に適用があるものとする」というような用例がある。 これまで述べた用例とはやや異なり、そこで問題となっているある規定が、ある場合に適用があるのは解釈上あるいは論理上当然のことであるが、解釈上の疑義を避けるために、念のために規定で明確にするという場合に使われるものである。 この場合、これを「・・・適用する」と言い切ってしまうと、本来適用のないところを、この規定で適用するようにしたという創設的意味が付加されたという解釈が生じることになりかねない。そこで、創設的意味が付加されているのではなく、念のためのものであるということを表す趣旨で、この「・・・ものとする」が使われている。 なお、若干表現は異なるが、「規定の適用があるものとする」(例えば、所得税法施行規則第100条第3項)も同じ趣旨のものである。 ④ みなし規定と類似の「制度としてそのように決める」という意義を持つもの 「制度的に、そのように決める。」という場合に、主に「とする」と表現する。 これは「みなす」(次回詳細に解説する)という用語が、「擬制的にそのように扱う」という趣旨であるのと異なり、本来そのように扱っておかしくない性質をもっているので「制度としてそのように決める」という趣旨で用いている。 この「とする」の前に「もの」が来た場合に「ものとする」という表現になる場合があるため、ここで説明する。 所得税法第12条には以下のようにある。 また、法人税法第11条には以下のようにある。 収益が実際に、名義人に帰属せずに実質所得者によって享受され、その享受する者に帰属しているわけであるから、税制上は名義人でなく、実質所得者に帰属するものと定めればよいのであるから「みなす」のではなく「とする」と規定している。 相続税法施行令第1条の12には、以下のようにある。 この第3項~4項に見られる「するものとする」もまた、同様の用例である。 しかし、第6項の「納めるものとする」は前回紹介した「② 法文上の語感から付されるもの」の用例であり、義務を課したものである。 また第9項の「規定は、・・・適用があるものとする」は、上記「③ 解釈の明確化」の用例である。 ⑤ 法令用語として慣用的に用いられるもの 「するものとする」が慣用的に用いられている場合としては、例えば、準用の場合の読替規定がある。ここでは、「読み替える」と言い切らないで、法文上「読み替えるものとする」と表現する慣行がある。 例えば法人税法第81条の6第6項には、以下のようにある。 この用例のものは、前回の「② 法文上の語感から付されるもの」の一種ともいえるが、慣行となっているため、ここに分類した。 また、制定の当初から、その附則の中に、「この法律は、・・・までに廃止するものとする」という規定が置かれていることが、時折みられる。期間満了とともに何らの措置をとることなく自動的に失効する限時法と異なり、このような定め方をしている場合には、期限の到来をもって自動的に失効するのではなく、「・・・までに廃止するものとする」という一種の政治的義務が宣言されているだけであるから、この法律の効力を失わせるためには、廃止の措置を別にとる必要がある。 なお、上記①~⑤とも、「ものとする。」と言い切らずに、「ものとし、」と続く場合もあるが、「する」の活用変化として当然あり得る表現であることを付言しておく。 (了)

#No. 35(掲載号)
#長島 弘
2013/09/12

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載35〕 措置法40条申請の承認取消しと贈与者の死亡

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載35〕 措置法40条申請の承認取消しと 贈与者の死亡   税理士 鈴木 達也   Q 個人が公益法人等に対して資産を贈与又は遺贈し租税特別措置法40条の申請に係る承認を受けた場合に、その承認が取り消されたときの課税関係について教えてください。 また、その取消時に贈与者が死亡している場合には、どうなりますか。 A 個人が租税特別措置法40条1項後段の承認を受けた場合において、寄贈財産が公益法人等の公益目的事業の用に供される前にその承認が取り消されたときは、その寄贈者に対して、その公益法人等の公益目的事業の用に供された後にその承認が取り消されたときは、その公益法人等に対して、その取消日の属する年分の所得税が課される。 また、その寄贈者が死亡している場合には、それぞれの者に対してその贈与者の死亡日の属する年分の所得税が課されるが、その申告期限から時効が進行するため、一定年数を経過して取り消されたときは、時効により課税されない。 解 説 個人から公益法人等に対して財産の贈与又は遺贈があった場合において、その財産がその贈与又は遺贈があった日から2年を経過する日までの期間内に、公益法人等の公益目的事業の用に直接供され又は供される見込みであるときは、一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについて、所得税法59条1項1号のみなし譲渡課税の適用にあたり、その財産の贈与又は遺贈がなかったものとみなされる(措法40①後段)。つまり、贈与者又は遺贈者に対してみなし譲渡課税が行われない。 その後、その贈与又は遺贈に係る財産が公益目的事業の用に供される前にその承認が取り消された場合には、その贈与又は遺贈をした個人に対して課税が行われる。また、その贈与又は遺贈に係る財産が公益目的事業に供された後に取り消された場合には、その公益法人等に対して課税が行われる。   1 財産が公益目的事業の用に供される前の承認取消し ① 課税関係 下記②の事由により国税庁長官の承認の取消しがあった場合には、その贈与又は遺贈をした個人に対して、みなし譲渡所得に係る課税が行われる。 具体的には、その贈与又は遺贈があった時に、その時の価額に相当する金額により、その贈与又は遺贈を受けた財産の譲渡があったものとして、その贈与又は遺贈によるみなし譲渡所得に係る譲渡所得の金額等を計算し、次のいずれかの年分の所得として、所得税を課することとなる。 イ 贈与の場合 その贈与をした者の非課税承認が取り消された日の属する年分(非課税承認が取り消された日までに、その贈与をした者が死亡していた場合には、その死亡の日の属する年分【図1】) 【図1】   ロ 遺贈の場合 その遺贈をした者のその遺贈があった日の属する年分【図2】 【図2】   ② 取消事由 その贈与又は遺贈について、次のいずれかの事実が生じた場合には、国税庁長官は、その承認を取り消すことができる。   2 財産が公益目的事業の用に供された後の承認取消し ① 課税関係 下記②の事由により国税庁長官の承認の取消しがあった場合には、その公益法人等に対し、その非課税承認に係る贈与又は遺贈を行った個人とみなして、みなし譲渡所得に係る課税が行われることになる(措法40③、措令25の17⑮)。 この取扱いは平成20年度税制改正により変更されたもので、公益法人等がその贈与又は遺贈を受けた資産を一旦その公益目的事業の用に供した後にその用に供しなくなるといった、いわば後発的事由により承認が取り消される場合には、その事情を考慮して、その贈与又は遺贈をした者ではなく贈与又は遺贈を受けた公益法人等に対して課税することとしたものである。 具体的には、その贈与又は遺贈があった時に、その時の時価相当額により、その贈与又は遺贈があったものとして、その財産に係る譲渡所得等の金額を計算し、次のいずれかの年分の所得として、所得税が課される。 イ 贈与の場合 その贈与をした者の非課税承認が取り消された日の属する年分(非課税承認が取り消された日までに、その贈与をした者が死亡していた場合には、その死亡の日の属する年分【図3】) 【図3】 ロ 遺贈の場合 その遺贈をした者のその遺贈があった日の属する年分【図4】 【図4】   ② 取消事由 国税庁長官の承認に係る財産の贈与又は遺贈を受けた公益法人等が、次のいずれかの事由に該当することとなった場合などの一定の事実(上記1②の取消事由を除く)が生じた場合には、国税庁長官はその承認を取り消すことができることとされている。   3 贈与者の死亡日の属する年分に課税される所得税と時効 贈与者が死亡後に上記2の承認の取消しが行われた場合には、その公益法人等に対して、その贈与者の死亡日の属する年分の所得税が課される。これは、公益法人等がその贈与者とみなされて所得税が課税されるため、課税年度も公益法人等の事業年度を基準として考えるのではなく、その贈与者の課税年度を基準として考えることとなり、その結果、その者の課税できる最後の年、つまり死亡日の属する年で課税することとなる。 この承認の取消しが、その贈与者の死亡日の属する年分の法定納期限から5年を経過した日後に行われた場合には、その公益法人等に対して課される所得税の徴収権が時効となる(通法72①)ため、結果として、その公益法人等に対して所得税が課されることはない【図5】。 【図5】   4 贈与者の死亡日の属する年分に課税される所得税に係る延滞税 上記1の承認の取消しがあった場合には、非課税承認を受けた者に対して所得税が課されることとなるが、既に贈与した者が死亡している場合や遺贈の場合におけるその所得税の額に対する延滞税の計算にあたっては、これらの所得税の法定納期限の翌日が起算日とされている【図6】。 ただし、法定納期限の翌日よりも通知日が遅い場合には、その通知をした日の翌日からそのみなし譲渡課税に係る所得税を完納するまでの期間を基礎として延滞税を計算することとされている(措法40⑭、措令25の17(26))【図7】。 【図6】 【図7】 また、上記2の承認の取消しがあった場合には、公益法人等に対してみなし譲渡に係る所得税が課されることとなるが、既に贈与した者が死亡している場合や遺贈の場合におけるその所得税の額に対する延滞税の計算にあたっては、これらの所得税の法定納期限の翌日が起算日とされている【図8】。 ただし、法定納期限の翌日よりも通知日が遅い場合には、その通知をした日の翌日からそのみなし譲渡課税に係る所得税を完納するまでの期間を基礎として延滞税を計算することとされている(措法40⑭、措令25の17(26))【図9】。 【図8】 【図9】 (了)

#No. 35(掲載号)
#鈴木 達也
2013/09/12
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