~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第11回】
「売買として所有権が移転した土地建物であるが、
その売買代金とされた金額のうち一部が寄附金に当たるとされた事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成22年5月12日横浜地方裁判所[棄却](控訴)
◆平成22年11月2日東京高裁[控訴棄却](確定)
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
原告の法人(X社)は、平成9年12月1日、関係法人であるB社に対し、自己が所有する土地建物(本件土地建物)を5億4,969万1,546円で売却する旨の契約(平成9年契約)を交わした。
その後、平成16年3月25日、X社は、B社から本件土地建物を5億3,000万円で買い受ける旨の契約(平成16年契約)を締結して本件土地建物を譲り受け(買戻し)た。
平成9年契約の代金5億4,969万1,546円の内訳は、土地4億8,417万2,000円、建物6,551万9,546円である。
一方、平成16年契約の代金5億3,000万円の内訳は、土地1億8,620万円、建物5,148万6,011円、損失補填金2億9,231万3,989円と明示されていた。X社は、その損失補填金を損金の額に算入して申告をしたところ、原処分庁は、それがB社に対する寄附金に当たるとして法人税の更正処分等を行った。
(※) なお、平成11年に営業権をめぐってX社とB社との間で合意が交わされた(平成11年合意)事実もあるが、詳細は省略する。
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