~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第21回】
「費用の帰属は法人(司法書士法人)か個人(司法書士)かが争われた事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成26年11月19日横浜地裁[棄却](控訴)
◆平成27年7月16日東京高裁[棄却](上告・上告受理申立て)
◆平成27年12月22日決定[棄却・不受理](確定)
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
個人で司法書士業務を営んでいた原告は、平成22年12月末に電車内広告契約に係る費用(本件広告宣伝費)を支払い、平成22年分の所得税の確定申告において、本件広告宣伝費を事業所得の必要経費として所得税の確定申告を行った。これに対して原処分庁は、本件広告宣伝費は法人成りにより設立された司法書士法人の業務を広告することを内容としている等として、原告の必要経費算入を否認した。
争点は、①本件広告宣伝費を平成22年分の事業所得の計算上必要経費に算入することができるか否か、②本件広告宣伝費に係る消費税額を平成22年課税期間の消費税等の控除対象仕入税額とすることができるか否かである。ここでは、主に①の争点について取り上げる。
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