固定資産をめぐる判例・裁決例概説
【第60回】
「相続税の申告を受任した税理士が空き家特例不適用の指摘をしなかったことは、税理士の説明・助言指導義務違反で損害賠償責任があるとされた事例」
税理士 菅野 真美
▷空き家特例とは
少子高齢化の進む日本の課題の一つとして、空き家が放置されていることがある。適切な管理・修繕をせずに家屋を放置することは、倒壊リスク等の問題が大きいことから、政府は空き家対策の政策をいくつも実施している。この空き家対策の税制として、空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除(以下「空き家特例」)がある(措法35③)。
この措置法35条3項で「相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第5項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項において同じ。)」と定められていることから、家屋と敷地の両方を同一の被相続人から相続した場合についてのみ適用があり、敷地と家屋を異なる被相続人から相続した場合は適用がないとされる。
ところで、何代も相続された土地や家屋の相続が登記されず、登記の名義人が直近の被相続人でないことがある。このような不動産を売却する場合は、売却当事者に名義を変更する必要がある。そこで、直近の被相続人からの相続ではなく、以前に他界した被相続人からの相続による取得とすると、登録免許税等のコストが安くなる。しかし、直前の被相続人からの相続ではないことが登記から明らかとなる場合には、空き家特例の適用を受けるのは難しいと考えられる。
今回は、相続税の申告を受任した税理士が、遺産分割協議書の内容に関連して空き家特例が不適用であるという指摘をしなかったことにより、相続人から損害賠償請求を受けた事例を紹介する。
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