税理士が知っておきたい
不動産鑑定評価の常識
【第38回】
「鑑定評価書(原価法)に登場する「付帯費用」の意味」
不動産鑑定士 黒沢 泰
1 はじめに
前回、取引事例比較法に登場する「標準化補正」という鑑定評価に特有の概念について説明しました。鑑定評価書にはこれ以外にも専門的で、かつ、他士業の方々を悩ませる独特の用語も登場します。例えば、建物及びその敷地の価格を原価法(=土地価格、建物価格をそれぞれ求めて合算する手法です)によって求める際、その過程に織り込まれる「付帯費用」もその1つです。
「付帯費用」という言葉から受け取るイメージからして、土地建物を取得することによって生ずる不動産取得税のようなものを思い浮かべる方もおられることと思います。もちろん、「付帯費用」のなかにはこのような要素も含まれますが、原価法に織り込む「付帯費用」という概念はもう少し広い範囲のものとなります。しかし、ともすればこれが抽象的な概念であるため、鑑定評価の依頼者(他士業の方々を含めて)からは「分かりにくい」とか「計算根拠が不明確では?」といった声を聞くこともあります。
今回は原価法に登場する「付帯費用」の意味について解説し、これを織り込む必要性について考えてみます。
2 鑑定評価における「付帯費用」の概念の明確化
従来(すなわち、平成26年5月1日付で不動産鑑定評価基準(以下、基準といいます)の一部改正が行われるまで)の基準の規定にも、原価法による積算価格を求めるに当たり、発注者が通常負担すべき付帯費用を再調達原価に織り込む旨の規定そのものは存在していました。しかし、付帯費用として何を織り込むべきかについて、これ以上の記載はなく、実務においても再調達原価の中に付帯費用が含まれているという理解の基に「建物及びその敷地の価格」(=積算価格)を求めていた傾向にありました。
平成26年の基準改正においてはこの点が明確化され、再調達原価を求める際の付帯費用に関連する規定として、次の内容が織り込まれています(以下、下線は筆者)。
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