さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第56回】「破産管財人の源泉徴収義務事件」~最判平成23年1月14日(民集65巻1号1頁)~
破産会社A社の破産管財人である弁護士Xは、裁判所の決定に従い、自らに対し、破産管財業務についての報酬金を支払った。また、退職金債権に係る配当金を、A社の元従業員に対して支払った。しかし、Xは、これらの支払の際、所得税の源泉徴収をしなかった。そこで、所轄税務署長は、これらの支払につき源泉徴収義務があったとして、Xに対し、源泉所得税の納税告知処分と不納付加算税の賦課決定処分をした。
そこで、Xは、Y(国)に対し、源泉所得税・不納付加算税の納税義務がないことの確認請求訴訟を提起した。
最高裁は、弁護士である破産管財人Xは、自らの報酬の支払について源泉徴収義務を負うが、退職手当等の債権に対する配当については源泉徴収義務を負わないと判断した。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第22回】
これまで検討してきたところによれば、かような仕切精算書到達基準による収益の計上が法人税法22条の2第2項の適用により認められるためには、少なくとも、①仕切精算書到達基準が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当し、かつ、②目的物の引渡日に「近接する日」の属する事業年度の確定決算において収益として経理したものであることを要する。
改めて確認したいJ-SOX 【第10回】「記載例をベースにした「内部統制報告書」の作成方法」
前回まで、財務報告に係る内部統制の有効性をどのように評価するかを説明してきました。
財務報告に係る内部統制をどのように評価し、有効性はどうだったかという結果は、「内部統制報告書」という報告書で第三者に公表されます。そのため、どれだけ時間をかけて内部統制の有効性を評価したとしても、この報告書の作成を誤ってしまうと、すべてが水の泡になってしまいます。
そこで今回は、内部統制報告書の記載内容、記載文書の作成方法等を説明します。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第96回】東洋インキSCホールディングス株式会社「特別調査委員会調査報告書(2019年12月11日付)」
2019年8月14日、東洋インキHDのフィリピン子会社であるTICCの社長を務めるB氏が、フィリピンの現地銀行リサール商業銀行の担当者に対し、バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズからの借換えを相談したところ、同担当者から、既にTICCは同行から借入をしている事実、同時点での借入残高が47百万米ドルである旨を告げられた。
B氏は、TICCが同行から借入を行っているとの認識を有していなかったため、同月26日、上記事実を東洋インキHDに報告し、東洋インキHDが事実確認を進めたところ、みずほ銀行からの借入についても、実際の借入額が、連結パッケージによる報告上の借入額よりも70万米ドル過大であることが判明した。
monthly TAX views -No.85-「米国で進むギグ・エコノミーへの対応」
ITの技術革新に伴い、シェアリング・エコノミー、ギグ・エコノミーが拡大し、新たな成長機会や雇用機会が創出され、世界的に経済の活性化につながっている。わが国でもプラットフォームを通じた人材の有効活用、遊休資産・観光資源の掘り起こしなどに役立つ事例が増えている。
〔令和2年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】「研究開発税制の見直し」
令和元年度税制改正における改正事項を中心として、令和2年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。
第1回は、研究開発税制の見直しについて、令和2年3月期決算申告において留意すべき点を解説する。
〔免税事業者のための〕インボイス導入前後の実務対応 【第1回】「消費税の納税義務の免除制度の概要」
令和5年10月から、仕入税額控除の要件が区分記載請求書等の保存から適格請求書等の保存に変わる。免税事業者は適格請求書等を交付できないため、免税事業者の取引先は、仕入税額控除を行うことができない(仕入税額控除の経過措置あり)。
このため事業者間の取引を主として行う免税事業者は、令和5年10月から適格請求書等発行事業者になることを、取引先から求められる可能性がある。
本連載では、免税事業者が適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)の導入前後に求められる対応等について解説することとしたい。
街の税理士が「あれっ?」と思う税務の疑問点 【第1回】「低い地代の貸宅地の評価」
相続税評価では「貸宅地」について、古い物件かつ昔からのお付き合いということで借地の地代が非常に低い(固定資産税の1~2倍)ケースがありますが、地主と借地人が共に個人で他人の場合、使用貸借扱いとせず、賃貸借として借地権は控除可能ですか。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例14】「分掌変更により支払う役員退職給与の損金性」
私は関東地方のとある県の県庁所在地で、自動車用のプラスチック製品の製造販売を行っている株式会社Xに、高校卒業後35年間勤務しており、現在経理部長を務めております。わが社は前会長Aが約50年前に創業した会社で、株式会社化した40年前からAが代表取締役を務めていました。
Aも高齢となり事業を後継者に任せるため、平成30年5月末の取締役会で、その娘婿であるBに代表取締役の地位を譲り、相談役に退きました。それに伴い、報酬の額は代表取締役の時の3分の1にまで減額されております。同時に、それまでのわが社に対する多大な貢献に報いるため、規定に基づきAに対し役員退職慰労金1億5,000万円を支給する旨を取締役会で決議し、翌月末に同額をAに対して支給したところです。株式会社Xは、平成31年3月期の法人税に関し、当該役員退職慰労金を全額損金の額に算入し、確定申告書を所轄税務署に提出しております。
租税争訟レポート 【第47回】「内縁の妻に対して支給した給与の否認と納税告知処分(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決)」
建設用機械及び車両の企画・設計・製造・販売等を目的として設立された法人である原告は、処分行政庁である茂原税務署による税務調査の対象となった平成19年10月1日に開始する事業年度から、平成26年9月30日に終了する事業年度までの各事業年度における法人税の確定申告において、自己の従業員であるとする「A」に給与を支給したとして、その支給額を損金の額に算入して申告を行った。
税務調査の結果、茂原税務署は、その支給額につき、「A」に対する給与であるかのように事実を仮装して経理することにより原告代表者に対して支給された役員給与の額と認め、①法人税法34条3項に基づき、法人税の所得の金額の計算上、その支給額を損金の額に算入することはできないとして、平成27年6月29日付けで、各事業年度に係る法人税の更正処分をするとともに、②原告代表者に対する役員給与に該当するとした金額につき、所得税法183条1項に基づき、平成20年上期から平成26年下期までの各期間について納付すべき源泉所得税が発生しているとして、その納税告知処分をし、さらに、③国税通則法の規定に基づき、各期間に係る不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
