酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第132回】「消費税法上の実質行為者課税の原則(その5)」
これまで見てきたとおり、所得税法や法人税法における実質所得者課税の原則としては、原則的には法律的帰属説、例外的には経済的帰属説を採用する信託税制という建付けであった。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第27回】「国税通則法第7章の2」-質問検査総説-
国税通則法第7章の2は平成23年度[11月]税制改正における同法の改正によって創設されたが、その創設は、「昭和36年の国税通則法制定に関する答申では、質問検査権を統一的に同法に盛り込むべきとしたが、質問検査の内容や態様がかなり相違するとして見送られた経緯がある。」(日本弁護士会連合会日弁連税制委員会編『国税通則法コンメンタール 税務調査手続編』(日本法令・2023年)148頁[舘彰男執筆])といわれる、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)の答申内容の単なる「復活」ではない。
国際課税レポート 【第3回】「OECD声明と米・伊財務相発言から読み解く利益Aと利益B」
2024年5月30日、OECD・G20 BEPS包摂的枠組み共同議長であるMarlene Nembhard-Parker氏(ジャマイカ国税庁次長)とTim Power 氏(イギリス財務省企業・国際課税担当次長)は連名で声明を発表し、第1の柱を巡る議論の状況については次のように述べた。
マンション評価通達の内容と実務への影響 【第3回】
国税庁が示した評価乖離率算定に係る算式が妥当なものであるのかどうかは、残念ながら現状、厳密な検証はできないのであるが(※22)、仮に妥当なものであるとした場合であっても、その算定時点が問題となる。すなわち、当該算式は、平成30年中の日本全国の中古マンション取引から異常値を除去して抽出された2,478件の取引データにより導き出されているのであるが(※23)、以下の表で見る通り平成30年以降の首都圏(中でも都区部)のマンション価格は上昇傾向にあることから、令和6年1月1日以降取得等するマンションに関し、平成30年時点のデータに基づく評価乖離率では、果たして適正な評価ができるのか大いに疑問である。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第43回】「外国会社株式等がある場合における法人版事業承継税制に係る贈与時における納税猶予税額の計算」
乙は、A社株式の贈与以外に贈与はなく、相続時精算課税贈与を受ける予定ですが、乙の贈与税の納税猶予税額及び贈与税の納付税額はいくらになりますか。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第98回】「共有不動産に係る不動産所得と事務管理事件」~最判平成22年1月19日(集民233号1頁)~
共有者の1人が、共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として所得税の額を過大に申告し、所得税や市県民税を過大に納付した場合、他の共有者のために事務管理は成立するか。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第63回】「M&Aによる第三者承継に向けた株式の集約」
私は、精密機器製造業を営む非上場会社L社を経営するAです。私も70歳を目前に控え、経営承継を強く意識するようになりましたが、私の親族の中には後継者として会社を任せられるものがいません。役員・従業員の中にもL社の経営を担ってもらえる人物は見当たらないため、M&Aによる第三者承継という形で事業承継を行いたいと考えています。
まだ金融機関やM&A仲介会社にも相談していない段階ですが、これから第三者承継を進めるにあたって懸念しているのは、親族や元従業員といった少数株主の存在です。彼らは私が会社を売却することに反対すると思いますし、M&Aが具体化しても株式を手放すことを容認しないかもしれません。
自分が買い手の立場であれば、オーナーの親族など少数株主が反対しているような会社を買いたいとは思えませんので、M&Aによる第三者承継が具体化する前に、少数株主から株式を買い戻しておきたいと考えています。まずは、私が少数株主から買い取るための相談から始めたいと思いますが、M&Aに反対する株主からも強制的に株式を取得できるような仕組みがあれば、ご提案いただけないでしょうか。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第156回】株式会社ラックランド「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2024年4月12日付)」
社内調査の結果、接待交際費等の一部について、望月社長が精算申請時に申告した情報に事実と異なる内容が含まれていたこと等が判明し、望月社長による精算申請を行った経緯等の事実関係及び2023年12月期及び過年度の連結財務諸表等に係る影響額の正確な把握が不可欠となる事態に至ったことから、本件事案に関する徹底した事実調査を実施するため、2月14日開催の取締役会において、当社から独立した中立かつ公正な外部専門家のみで構成される特別調査委員会を設置することを決議したものである。
〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年5月】
2024年5月1日から5月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。
具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。
monthly TAX views -No.136-「子ども・子育て支援金はなぜ評判が悪いのか」
しかし、国民の評判は芳しくない。少子化対策には財源が必要で、それは国民も認識しているにもかかわらず、なぜこの制度はここまで不評なのか、課題や問題点をあらためて指摘してみたい。