事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第57回】「資産管理会社の株式をゼロ円で贈与することのリスク」
私(J)は、その発行済株式の100%を所有するW社(製造業)を経営しておりましたが、5年前に金融機関の提案により、私が所有するW社株式のすべてを私が設立した資産管理会社L社へ売却しました。当然、L社に私の株式を買い取る資金はなかったので、金融機関の融資により買取りを実行しました。そして、その年の確定申告において私は多額の譲渡所得税を納税したのを覚えています。
W社には私の子供(K)が社員として働いており、今年の株主総会において取締役に就任させようと考えています。そこで、私の所有しているL社株式の40%を子供であるKへ贈与しようと思い、顧問税理士に株価算定を依頼したところ株価はゼロ円だと言われました。贈与税が課税されない価格で子供に贈与できるなら大変ありがたいのですが、後から税務署より贈与税の追徴等の指摘を受けることはないでしょうか。
〈徹底分析〉租税回避事案の最新傾向 【第12回】「支配関係が生じてから5年を経過するまで待つ行為」
支配関係発生日から合併事業年度開始の日までの期間が5年未満である場合において、みなし共同事業要件を満たさないときは、繰越欠損金の引継制限・使用制限及び特定資産譲渡等損失額の損金不算入が課される(法法57③④、62の7①)。
そのため、支配関係発生日から合併事業年度開始の日までの期間が5年を経過するまで待ってから適格合併を行うといった事案が考えられる。なぜなら、繰越欠損金は9年間又は10年間の繰越しが認められていることから(法法57①)、最後の4年間又は5年間の時間差を利用して、繰越欠損金を利用することができるからである。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第90回】「ユニバーサルミュージック事件」~最判令和4年4月21日(民集76巻4号480頁)~
X社は、フランス法人A社が直接的又は間接的に全ての株式・出資を保有する法人から成る企業グループに属している合同会社であり、グループ会社であるオランダ法人C社により設立された。その後、C社は、Xに追加の出資を行い、また、同日、グループ会社であるフランス法人D社は、X社に対し、無担保で866億円を貸し付けた。他方、グループ会社であるオランダ法人E社は、グループ法人である日本法人F社の全ての株式を保有していたのであるが、X社は、上記の出資金・借入金を原資として、同日、E社から、F社の全株式を取得した。さらに、後日、X社は、F社を吸収合併した。
リース会計基準(案)を学ぶ 【第5回】「借手のリースの会計処理①」-使用権資産及びリース負債の計上額、借手のリース料、使用権資産の償却-
今回から3回にわたり、借手のリースの会計処理について解説する。
リース会計基準(案)は、主として借手の会計処理について改正を行うものであり(リース会計基準(案)BC33項)、基本的に、借手のすべてのリースについて資産及び負債の計上を求めるものである(リース会計基準(案)BC12項、BC34項)。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2023年8月】
2023年8月1日から8月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。
具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。
《速報解説》 府省庁が令和6年度税制改正要望を公表~経産省からは事業承継税制の特例措置延長、SO税制要件緩和等を要望~
本年も8月末から9月頭にかけて各府省庁より税制改正要望が公表された。
令和6年度税制改正要望については既存制度の延長・拡充を求めるものが中心ではあるものの、経済産業省からはGXやDX、経済安全保障等の観点を踏まえつつ、国内生産を促すための新たな減税措置等の新設も要望されている。また、適用期限をもって廃止との見方もあった事業承継税制の特例措置について延長要望がなされるなど注目点も織り込まれている。
《速報解説》 会計士協会、「Web3.0関連企業における監査受嘱上の課題に関する研究資料」の草案を公表~監査受嘱上の留意事項及びトークン発行に係る監査上の課題等に言及~
2023年9月6日、日本公認会計士協会は、業種別委員会研究資料「Web3.0関連企業における監査受嘱上の課題に関する研究資料」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。
monthly TAX views -No.127-「ベーシックインカムは政策たり得るか」
この夏に、フィリップ・ヴァン・パリース、ヤニック・ヴァンデルポルト著『ベーシック・インカム』(クロスメディア・パブリッシング、2022年)を読んだ。ベーシックインカム(注:一般的には、中黒(・)がない)は、欧米では多様な論者が主張し、実現に向けた運動体まで存在する政策である。一方わが国では、最大野党を目指す日本維新の会が政策に掲げるが、いまだ一部学者のアイデアにとどまっている。
〔令和5年度税制改正における〕電子帳簿等保存制度の見直し 【追補】
国税庁は、令和5年6月30日に「「電子帳簿保存法取扱通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」及び「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」(以下「一問一答」という)の更新等を公表した。
本稿では、電子帳簿保存法に関する令和5年度税制改正に伴い整備された上記の改正通達及び一問一答の内容について解説する。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例55】「従業員に対する賞与の損金算入時期」
私は、近畿地方のある県庁所在地において、主として旅行者向けの土産物店や飲食店を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。2020年以来のコロナ禍で、わが社がターゲットとするインバウンドの旅行客は激減し、一時は廃業やむなしという瀬戸際まで追い込まれました。そのため、インバウンド一本やりの経営戦略を改め、国内客の取り込みも必死になって行うとともに、政府の様々な支援策や社長の必死の資金策によりどうにかこうにかこの度の経営危機を乗り切り、今年は国内客のみならずインバウンドの旅行客もだいぶ戻ってきたため、お陰様で何とか一息つくことができました。