租税争訟レポート 【第56回】「事業所得の意義~大学名誉教授が執筆した原稿料の所得区分(国税不服審判所令和元年6月14日裁決)」
本件は、複数の大学等で名誉教授や顧問等を務める医師である審査請求人が、救命救急医療等に関する専門技術・知識の教授又は指導等(以下、「本件役務」という)を行い、給与を得ていた一方、執筆等に係る業務(以下「本件業務」という)を行い、本件業務から生じる所得が事業所得に該当することを前提に、事業所得における損失の金額を給与所得の金額から控除して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、本件業務から生じる所得は雑所得に該当するから、当該損失の金額を給与所得の金額から控除することはできないなどとして、所得税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が本件業務から生じる所得は事業所得であるなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第40回】「借地権取得の後に底地を取得している場合」-敷地のうちに所有期間の異なる部分がある場合-
Xは、10年前に借地権を6,000万円で取得し、同年中に家屋を2,000万円で建築しました。
4年前に、底地を4,000万円で取得(更地の時価1億円)して居住の用に供していましたが、本年になってこれらの土地及び家屋を、土地8,000万円、家屋ゼロで売却しました。
譲渡物件に係る所有期間5年超以外の他の適用要件が具備されている場合に、Xは、その全部の譲渡について、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。
また、土地についての譲渡損はどのように計算されるのでしょうか。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第90回】「プログラム著作権譲渡契約書」
当社はプログラム開発会社です。当社が所有するプログラム著作権を〇〇株式会社へ譲渡することを約するために、下記の「プログラム著作権譲渡契約書」を作成する予定ですが、印紙税の取扱いはどうなりますか。
《速報解説》 改正産業競争力強化法、「令和3年8月2日」施行~施行期日政令及び関連政令等が7月30日付け官報特別号外にて公布、DX税制等の適用スタート~
令和3年度税制改正のうち法人税関係の特例措置との関連が深い「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律(令和3年法律第70号)」(以下、改正産強法)は6月16日に公布されその一部がすでに施行されているものの、上記の通り税制に係る特例措置(本改正法附則第1条本文に定める施行期日)については、公布日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日とされていた。
《速報解説》 国税庁の「インボイス制度特設サイト」が更新、登録申請手続の詳細情報が追加される~登録申請から通知までに要する期間は、書面の場合1ヶ月程度、e‐Taxでは2週間程度との目安も~
令和5年(2023年)10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)開始に向け、国税庁は本年5月にインボイス制度特設サイトをリニューアルし関連通達やQ&A、パンフレットの公表に加えYouTubeによる動画配信も行うなど、積極的に周知を行っている。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第4回】「課税要件明確主義と立法者の説明責任」-ホステス報酬源泉徴収事件・最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁-
今回は、租税法律主義(形式的租税法律主義)の要請のうち課税要件明確主義に関してホステス報酬源泉徴収事件・最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁(以下「本判決」という)を取り上げる。
これからの国際税務 【第26回】「国際課税に関するG20大枠合意」
7月9日から10日にかけてイタリアベネチアで開催された表記会議のコミュニケは、同会議はOECD/G20の包摂的枠組みが7月1日に公表した2つの柱からなる国際課税に関する新ルールの大枠に関する声明を承認した、と発表した。同会議は、さらに、「多国籍企業の利得の再配分と効果的なグローバルミニマム税」を内容とする同提案につき、包摂的枠組みに対して、10月のG20の本会合までの間に、残された課題に迅速対応するとともに、合意された枠組み内で、当該案の設計要素をその詳細な実行計画込みで最終決定するよう求めている。
本稿は、承認された7月1日公表の上記声明の内容を紹介するとともに、今後の展開の見通しを予測するものである。
令和3年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第5回】「研究開発税制の拡充(その2)」
連結納税制度においても、厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる企業について、2年間の時限措置として、税額控除の上限を引き上げる(改正前:25%→30%)とともに、研究開発投資の増加インセンティブを強化する観点から、控除率カーブの見直し及び控除率の下限の引下げ(改正前:6%→2%)を行うこととしている。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例100(消費税)】 「営業譲渡を受けたドラッグストアの「輸出物品販売場許可申請書」の提出を失念したため、免税売上が認められず、国内における課税売上になってしまった事例」
令和Y年1月期から3月期(課税期間を1ヶ月に短縮している。)の消費税につき、営業譲渡を受けたドラッグストアの「輸出物品販売場許可申請書」の提出を失念したため、免税売上が認められず、国内における課税売上になってしまった。
これにより、還付不能となった消費税につき損害が発生し、賠償請求を受けたものである。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第7回】「地目の認定について異議のある納税者が固定資産評価審査委員会を経ずに直接異議申立てを行った判例」
固定資産税は、毎年3月31日までに価格等が決定されて固定資産税課税台帳に登録され、その後、固定資産の所有者の元に納税通知書が送られてくる。この納税通知書には、固定資産評価額、課税標準額、税率、税額、納期、各納期における納付額等が記載されている。