法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例28】「従業員が窃取した棚卸資産の販売に関する損害賠償請求権と貸倒損失」
私は、首都圏近郊のある市に本社を置く事務機器販売会社A株式会社で総務部長をしております。わが社は企業向け事務機器を扱っているため、取引先は企業のみですが、扱う品目数は膨大であるため、在庫管理はすべてコンピュータで行っています。
現在の在庫管理システムが導入されたのはちょうど1年ほど前で、これは数年前に起こった従業員による在庫の横流し事件を契機に、旧システムの更新という形で行われたものでした。旧システムの下では、チェック体制の不備により、在庫管理を担当している者(法人経理には一切関与していない)が虚偽の入力をして商品を簿外とすることが可能であったため、その商品を個人的にインターネットオークションサイトに出品して販売することにより、懐を肥やすようなケースがあったのです。
租税争訟レポート 【第54回】「税理士に対する損害賠償請求事件(東京地方裁判所令和2年7月30日判決)」
被告Y1は、原告会社の顧問税理士として税務申告業務等を行うとともに、コンサルティング業者である被告会社の代表取締役として、原告会社の事業承継等についてのコンサルティング業務等に携わっていた。
本件は、原告会社及び同原告の代表取締役であった亡A(以下「A」という)を相続した承継人(以下、原告会社と承継人をあわせて「原告ら」という)が、上記業務等に関し、被告Y1の詐欺による報酬の不正請求があったなどと主張して、被告らに対し、不法行為等に基づく損害金の支払を求める事案である。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第86回】「業務委託に関する契約書①(臨床試験業務委託契約書)」
当社は食品会社です。ある食品の臨床試験を委託するにあたり、下記の「臨床試験業務委託契約書」を作成しようと思いますが、印紙税法上の課税文書に該当しますか。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第5回】「複数の取引を一の取引として独立企業間価格を算定できる場合」
複数の取引を一の取引として独立企業間価格を算定できるのはどのような場合か。
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第23回】「「生計を一にしているもの」の意義」-生計を一にする親族の居住用家屋の譲渡-
譲渡した居住用資産の譲受者が、特殊関係者であるかどうかを判定する場合の「生計を一にしているもの」という意味はどのようなものでしょうか。
《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和2年7月~9月)」~注目事例の紹介~
国税不服審判所は、2021(令和3)年3月24日、「令和2年7月から9月までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加された裁決は表のとおり、国税通則法及び国税徴収法が各2件、所得税法及び相続税法が各1件、合わせて6件となっている。
今回の公表裁決では、6件のうち5件が国税不服審判所によって、原処分庁の課税処分等の全部又は一部が取り消され、棄却は1件のみとなっている。
〈判例評釈〉ユニバーサルミュージック高裁判決 【第4回】
わが国では、法人税法上、特定の状況における一般的「租税回避」否認規定として、〈1〉同族会社の行為計算否認規定(法人税法132条)、〈2〉組織再編成の行為計算否認規定(法人税法132条の2)、〈3〉連結法人の行為計算否認規定(法人税法132条の3)、及び〈4〉外国法人の恒久的施設帰属所得の行為計算否認規定(法人税法147条の2)が設けられているが、近年、〈1〉及び〈2〉に関し、複数の事案が裁判所で争われており、そこでは、各条文共通の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(いわゆる不当性要件)の文言の解釈が問題とされている。以下では、不当性要件が争われた最近の重要判例について見ていく。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第50回】
法人税基本通達2-1-1の15は、法人が請け負った建設工事等に係る工事代金につき、資材の値上がり等に応じて一定の値増金を収入することが契約で定められている場合において、同通達2-1-1の11の取扱いを適用しないときの取扱いを定めている。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例96(消費税)】 「建物新築に係る消費税の還付を受けるため、事前に「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すべきところ、これを失念したため、新型コロナウイルス感染症の影響を理由とする「災害等による消費税簡易課税制度選択不適用届出に係る特例承認申請書」を提出したところこれが認められたため、損害を回避できた事例」
令和2年分の消費税につき、都市計画道路事業により、飲食業を営む個人の店舗併用住宅が収用を受け、隣地に店舗併用住宅を新築したため、建物新築に係る消費税の還付を受けようとしたが、過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していたことに令和2年12月に気付いたため、還付が受けられなくなってしまった。
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第22回】「配偶者等を一時的に住まわせた後で譲渡した場合」-配偶者等の居住用家屋の譲渡-
会社員Xは、7年前に名古屋から東京へ転勤したので、妻子を名古屋の自宅に残したまま単身赴任し、東京の賃貸マンションに住んでいました。
転勤から2年後、Xは妻子を東京へ呼び寄せて同居し、名古屋の自宅を他人に貸し付けていました。しかし、昨年になって、約3年間住んだ借家人が立ち退いたことから、再び妻子を住まわせました。
本年、名古屋の自宅を売却したところ譲渡損失が発生し、東京の買換物件については銀行で住宅ローンを組んで購入しました。
他の適用要件が具備されている場合に、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。