酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第91回】「法令相互間の適用原則から読み解く租税法(その1)」~所管事項の原則~
租税法が法である限り法解釈・適用の一般原則が適用されることになる。しかし、ときとして、租税法律主義の支配する租税法領域においては、租税実体法を前提とした議論の展開が重視され過ぎるがゆえに、必ずしも法解釈・一般適用の原理が強く意識されているとは限らない。
そこで、租税法の個別具体の問題解決場面、すなわち租税法の解釈適用において、いかに法解釈・適用の一般原理を前提として展開されているか検証を行うこととしたい。
本稿では、特に、法令相互間の適用原則たる「所管事項の原則」について関心を寄せることとしよう。
谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第43回】「租税法律主義の基礎理論」-「上からの租税法律主義」と法律による行政の原理-
本連載は「税法の基礎理論」と題して租税法律主義を基軸に据えて、税法の制定及び解釈適用に関する総論的な問題について、そのときどきの筆者の問題関心によりトピックを取り上げ検討してきたが(第1回Ⅰ参照)、今回からは「租税法律主義の基礎理論」を主題として、租税法律主義それ自体の「総論的」検討を行うことにする。
このような検討は、これまでにも若干言及したが(第34回Ⅰ・前回Ⅲ2参照)、昨年、公益財団法人日本税務研究センターの「憲法と租税法」共同研究会において行った租税法律主義に関する「総論的」検討をベースとするものである。その成果は日税研論集77号(近刊)で拙稿「租税法律主義(憲法84条)」として公表することになっている。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第12回】「〔第1表の2〕使用人兼務役員・みなし役員がいる場合の従業員数の算定」
A社の従業員及び役員に関する労働時間等の状況は、下記の通りとなります。
A社の会社規模を判定する場合における従業員数は、何人になりますでしょうか。
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第2回】「完全支配関係の範囲を拡大することの問題点」
連結納税制度に関する専門家会合「連結納税制度の見直しについて」10頁(令和元年)では、100%未満の会社に対してもグループ通算制度の範囲を拡大することについて、「そのグループ内の法人間での損益通算による税額の増減に相当する額を各法人間で適正に分配しなければ、少数株主の利益が害されることとなる。」としたうえで、「少数株主の利益が害されないような制度を目指せば、制度の複雑化は避けられない。また、会社法上、子法人の少数株主を保護するための親法人の責任や代表訴訟によるその責任の追及に関する規定が設けられていない中で、税法上、子法人の少数株主と親法人との利益が相反する構造が内在する損益通算を容認することについては、慎重な検討が必要と考えられる。」とすることで、グループ通算制度の範囲を連結納税制度と同様に、「発行済株式又は出資の全部を保有する関係」に限定することにしている。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第21回】「財団法人の設立」
私Zは電気メーカーBを経営しています。事業をグローバルに展開し、大手企業の省人化投資の波に乗り、近年大きく業績を伸ばしています。10年前は株式上場を考えましたが、上場すると短期の業績を求められ、じっくり事業を育てることが難しくなる可能性があるので、非上場企業のままとすることを決めました。
ところで、私は来年70歳になるので数年内に社長職を息子Yに譲り、私は会長に就任し経営の一線から退く予定です。会長になれば時間に余裕ができるので、今までお世話になった地域、社会への恩返しとしての活動を行いたいと考えています。
そこで、企業オーナーとして財団法人を設立し、その法人を通して社会貢献活動を行いたいと考えていますが、財団法人とはどのような法人なのでしょうか。また、どのように設立できるのでしょうか。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第63回】「自動車税減免申請事件」~最判平成22年7月6日(集民234号181頁)~
Xは、右翼団体幹部を名乗るAから脅迫を受け、自動車を購入して、購入した自動車をAに引き渡した。その後、Xは、Aに対して自動車の返還を求める訴訟を提起して勝訴したが、これに基づく動産執行は不能により終了してしまった。他方、Xには、自動車税を賦課される地位が残ったままとなった。
そこで、Xは、Y県の県税事務所長に対し、自動車を占有しておらず、所在も不明であることなどを理由として自動車税の減免申請をした。しかし、県税事務所長は、当該申請に対し却下処分をした。そのため、Xが当該却下処分の取消しを求めて出訴したのが本件である。
最高裁は、Xの主張を認めなかった。
monthly TAX views -No.92-「始まる「日本型記入済み申告制度」」
本年10月から、マイナポータルを活用して申告に必要な証票を入手できる情報連携が始まる。これを活用して、令和2年分の確定申告から、年末調整だけでなく個人の申告についても、いわゆる「日本型記入済み申告」がスタートする。
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第1回】「序論」
「連結納税制度と組織再編税制の整合性がない」という問題があったことから、令和2年度税制改正による連結納税制度からグループ通算制度への移行においては、組織再編税制との整合性が意識されている(※1)。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第11回】「〔第1表の1〕種類株式と株主判定」
下記の通り、経営者甲が所有しているA社株式の全て(30株)を長男である後継者乙に贈与する場合において、A社株式の評価方式は原則的評価方式が適用されるのでしょうか。それとも特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されるのでしょうか。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例21】「従業員名義預金口座に振り込まれていた決算賞与の損金性」
先日受けた税務調査で予期せぬ指摘を受けました。それは、従業員に対して支払った賞与のうち、一部分は従業員名義の預金口座を経理部が直接管理しているため、当該口座に支払われた決算賞与は損金不算入となるというものでした。
わが社が一部の従業員に対して支払う決算賞与を、調査官が指摘するような方法で行っているのは事実ですが、これには理由があり、一部の独身の従業員は多額の決算賞与を一度に受け取ると、ギャンブル等にそれを浪費してしまいがちであるため、会社がその分を代わって管理し、結婚して配偶者が当該従業員の給与を管理できるようになれば、それを引き渡すという「親心」からのものです。
会社のこのような行為は「過保護ではないか」という批判に対しては真摯に受け止めますが、それと税務上の取扱いは全く別の話で、役員であればともかくとして、従業員に対して支払った賞与が損金算入されないというのは、どうにも納得がいきません。従業員に対する決算賞与に関する調査官の指摘は妥当なのでしょうか、教えてください。