~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第8回】
「電化手数料が「資産の譲渡等の対価」に当たるかについて、
書面ではなく実体に即して判断された事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成21年11月12日大阪地方裁判所[棄却](確定)
〔2016/10/20追記〕本稿公開時、上記[棄却]が[認容]となっていました。お詫びの上、訂正させていただきます。
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
不動産賃貸業を行う納税者(甲)は、オール電化設備を各戸に備えた居住用賃貸マンション(本件マンション)の建設を発注し、電力会社から電化手数料名目で金員(電化手数料)を受領した。
甲は、電化手数料が課税売上に当たるとして、それを受領した課税期間の課税売上を100%として、マンション取得に関する建築請負代金等に係る消費税額の全額を仕入税額控除の対象として還付申告書を提出した。
問題となっている課税期間は、平成18年1月1日から同月31日までの課税期間(本件課税期間)である。また、主な事実関係を時系列にみると次のとおりである。
平成17年2月4日
建設会社との間で本件マンションの建築に関する請負契約締結
平成17年3月頃
甲社と電力会社の間で本件覚書を作成
平成18年1月1日~
消費税課税事業者・課税期間特例(課税期間1ヶ月)
同月13日
甲社は電力会社に電化手数料請求書を提出
同月26日
本件マンションの引渡しを受けた
請負代金合計4億円(うち消費税等2,000万円)(※)
同年2月20日
電化手数料(消費税等の金額を除くと182万円)を受領した
(※) 金額端数は切り捨て等している。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。