これからの国際税務
【第8回】
「多国籍企業情報の文書化義務と税務コンプライアンス」
早稲田大學大学院会計研究科 教授
青山 慶二
1 BEPS合意に基づく国別報告書、マスターファイル等の整備
多国籍企業グループによる巧妙な二重非課税スキームの活用による租税回避は、多くの国の課税当局の財政運営に対するチャレンジとして注目を浴び、BEPSプロジェクトで対応策が合意された。
それらのスキームは、国家間の税制のミスマッチの間隙を突く点に共通する特色があり、BEPS勧告の多くは国内法及び条約の実体法規定(PE帰属利得、移転価格、CFC税制等)の改正を指摘するものであったが、同時に、超過収益の源となる無形資産の収益力評価等に関する情報の非対称性という多国籍企業が安住してきた実態にも、メスが入れられることになった。
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