これからの国際税務 【第15回】「デジタル経済下での市場国課税権の拡大」-過去の移転価格ルール改定からみた作業計画の本質-
筆者:青山 慶二
文字サイズ
- 中
- 大
- 特
これからの国際税務
【第15回】
「デジタル経済下での市場国課税権の拡大」
-過去の移転価格ルール改定からみた作業計画の本質-
21世紀政策研究所 国際租税研究主幹
青山 慶二
1 デジタル課税ルールについての長期的解決策の見通し
デジタル経済への国際課税ルールについては、去る6月のG20サミットで、市場国の課税権を拡大する方向での作業計画への支持が表明され、2020年の最終報告に向けOECDでの細部の検討が行われている。
本稿では、課税権の配分に関し市場国の発言権が拡大してきた沿革を振り返り、今回のデジタル経済対応を契機とした課税ルールの見直しは、突然出現したものではなく、これまでのルール改定のトレンド、特に独立企業原則の下での移転価格ルールの見直しの延長線上に位置づけられることを確認するものである。
2 市場の特性を考慮した移転価格税制における課税権配分の検討
最初にこのテーマが論じられたのは、低コストの製造地開拓に伴い享受する利益(ロケーションセービングがもたらす超過利益)を親会社所在地と製造地のどちらが享受するかという場面であった。この場合は、コスト削減に伴い発生する超過利益は、完全競争条件下においては先行企業に与えられる経過的な利益に過ぎないとして、製造地における独立企業間比較対象取引の選択を適正に行うことにより、いわば片側検証によって製造地への所得配分問題は解決されると整理された。
○記事全文をご覧いただくには、プレミアム会員としてのログインが必要です。
○プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

○プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。
○一般会員の方は、下記ボタンよりプレミアム会員への移行手続きができます。
○非会員の皆さまにも、期間限定で閲覧していただける記事がございます(ログイン不要です)。
こちらからご覧ください。
連載目次
これからの国際税務
- 【第1回】 変化する国際税務の焦点
- 【第2回】 デジタルエコノミーの進展と恒久的施設(PE)の変質
- 【第3回】 ガイダンス文書からみた帰属主義適用の精緻化
- 【第4回】 全世界所得課税方式と領域内所得課税方式
- 【第5回】 タックスヘイブンに対する国際協調の動き
- 【第6回】 EUにおけるデジタル経済課税の検討とPE概念
- 【第7回】 平成30年度税制改正における恒久的施設定義の見直し
- 【第8回】 多国籍企業情報の文書化義務と税務コンプライアンス
- 【第9回】 税の透明性プロジェクトと金融口座情報の自動的交換
- 【第10回】 ポストBEPSにおける『税の安定性プロジェクト』の進捗
- 【第11回】 与党大綱の提案する過大支払利子税制の改正
- 【第12回】 平成31年度改正で導入されたデジタル経済等への課税情報照会制度
- 【第13回】 無形資産についての移転価格課税-平成31年度税制改正-
- 【第14回】 平成31年度改正で追加されたタックスヘイブン税制改革
- 【第15回】 デジタル経済下での市場国課税権の拡大-過去の移転価格ルール改定からみた作業計画の本質-
- 【第16回】 費用分担契約による無形資産の移転-アマゾン事件判決と我が国税制改正-
- 【第17回】 令和2年度税制改正大綱における国際課税の焦点(その1)-国外の不動産投資を利用した節税策への対応-
- 【第18回】 令和2年度税制改正大綱における国際課税の焦点(その2)-一国主義の税制改革と外国税額控除の制限-
- 【第19回】 令和2年度税制改正大綱における国際課税の焦点(その3)-子会社配当益金不算入を利用した租税計画への対応-
- 【第20回】 電子経済課税ルール確立への最終局面における難題
- 【第21回】 OECDによる『シェアリングエコノミー及びギグエコノミーのデジタル・プラットフォーム情報の通告ルール』の採択
- 【第22回】 包摂的枠組(IF)承認のデジタル課税に関する新ルール案(青写真)の課題
- 【第23回】 令和3年度税制改正における国際金融都市対応の項目 1/28公開
筆者紹介
青山 慶二
(あおやま・けいじ)
現 職:千葉商科大学大学院 客員教授
21世紀政策研究所 国際租税研究主幹
専 門:国際租税【略歴】
1971年 東京大学法学部卒業
1973年 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士)、国税庁入庁
1998年 国税庁国際業務課長
2003年 ニューヨーク大学ロースクール客員研究員
2004年 国税庁審議官(国際担当)
2006年 国税庁退職、筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授
2012年 早稲田大学大学院会計研究科教授(2019年3月定年退職)
2020年 千葉商科大学大学院客員教授【主な審議会等委員】
OECD租税委員会(1998年~2000年、2004年~2006年)
経済産業省国際課税小委員会座長(2008年~2014年)
国連経済社会理事会・税に関する専門家委員会 委員(2009年~2014年)
国際租税協会(IFA)常設研究企画委員会 委員(2010年~2018年)
政府税制調査会専門家委員会 特別委員(2010年~2011年)【近年の著書】
『米国内国歳入法第482条(移転価格)に関する財務省規則』社団法人日本租税研究協会(1995年)
『国際課税の理論と実務』(共著)有斐閣(1997年)
『改訂版国際課税の理論と課題』(共著)税務経理協会(1999年)
『租税条約の理論と実務』(共著)清文社(2008年)
『日本の税をどう見直すか』(共著)日本経済新聞出版社(2010年)
『国際課税の理論と実務73の重要課題』(共著)大蔵財務協会(2011年)
『現代税制の現状と課題(国際課税編)』(単著)新日本法規出版(2017年)
Profession Journal関連記事
関連書籍
-
令和2年12月改訂
Q&A消費税の税務処理101
公認会計士・税理士 田淵正信 編著
定価:3,520円(税込)
会員価格:3,168円(税込)
-
令和2年10月改訂
プロフェッショナル 消費税の実務
税理士 金井恵美子 著
定価:4,840円(税込)
会員価格:4,356円(税込)
-
2020年版[詳解]国際税務
遠藤克博、多田雄司、幕内浩、望月文夫、吉川保弘 著
定価:8,800円(税込)
会員価格:7,920円(税込)
-
調査現場からの厳選蔵出し事例集
税理士が判断に迷う会社税務100例
税理士 馬場文明 著
定価:2,860円(税込)
会員価格:2,574円(税込)
-
移転価格の実務Q&A
信成国際税理士法人 井藤正俊 著
定価:5,500円(税込)
会員価格:4,950円(税込)
-
キャッシュレス決済のしくみと会計実務
EY新日本有限責任監査法人 編
定価:2,420円(税込)
会員価格:2,178円(税込)
-
平成29・30年度税制改正対応
外国子会社合算税制
一般社団法人 日本経済団体連合会 経済基盤本部 幕内浩 著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
移転価格ローカルファイル作成実務と実践上の留意点
弁護士 大沢拓、税理士 牛島慶太、税理士 平野潤一、税理士 梶巻重幸、税理士 坂本安孝 編著
定価:3,080円(税込)
会員価格:2,772円(税込)
-
アジア進出企業の会計・税務
公認会計士・税理士 大久保昭平 編著
定価:3,740円(税込)
会員価格:3,366円(税込)
-
第3版
M&A 無形資産評価の実務
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 編
定価:3,740円(税込)
会員価格:3,366円(税込)