税理士が知っておきたい
不動産鑑定評価の常識
【第20回】
「相続税の財産評価における鑑定評価の位置付け」
~「特別の事情」という大きな壁~
不動産鑑定士 黒沢 泰
ご承知のとおり、相続税の財産評価には全国一律の財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます)が適用され、画一的な評価が行われています。その理由としていくつかの点があげられていますが、特に租税平等主義という観点からみた場合、評価通達に定められた評価方法が合理的なものである限り、これが形式的にすべての納税者に適用されることにより租税負担の公平を実現できるという考え方が前面に登場してきます。
そのため、国税不服審判所の過去の裁決事例をみても、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ評価通達に定める方法以外の方法によって評価を行うことは、例えその結果が相続税法第22条の定める時価として許容できる範囲内のものであったとしても、納税者間の実質的負担の公平を欠くことになり受け容れられないという結果が導かれている傾向にあります。
〇相続税法
(評価の原則)
第22条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
評価通達による評価方法は(精査に基づく)鑑定評価と異なり、納税者の便宜(=コストを要せず簡易に評価額を算定できる)に配慮したものであり、その意味では個々の土地の価格形成要因をすべて的確に反映し切れないケースが生ずることも考えられます。そのため、納税者が評価通達を適用して算定した結果、自分の考えている以上に高い評価額となった場合には、納税者にとって最も厄介かつ難しい問題に発展することにもなりかねません。
不動産鑑定士による鑑定評価は適正な時価を立証するための手段として多く活用されていますが、国税不服審判所の裁決事例や過去の裁判例等の利害関係の錯綜する場面においては、その結果がそのまま受け容れられているわけではありません。
そこで、本稿では、筆者なりにその要因を分析し、相続税の財産評価における鑑定評価の位置付けについて改めて検討してみたいと思います(以下、焦点を絞るため、提出された鑑定評価書の信憑性や合理性、整合性が問われる以前の問題として、相続税評価における鑑定評価の位置付けが争点となった事案をヒントに分析をしていきます)。
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