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〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第15回】「改正会社法の概要と留意点」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第15回】 「改正会社法の概要と留意点」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 鏡味 靖弘   〔質 問〕 令和3年3月1日施行の改正会社法(令和元年法律第70号)における主な改正内容はどういったものでしょうか。 〔回 答〕 会社法の改正により、株主総会に関する規律、取締役等に関する規律その他の事項について見直しがなされました。主な改正内容は以下のとおりです。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務執行の一層の適正化を図ることを目的として、令和元年12月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)が令和3年3月1日に施行された(ただし、一部については令和4年の施行予定)。主な改正事項は以下のとおりである(以下、改正後の会社法を「新法」という)。   1 株主総会資料の電子提供制度の創設 (1) 電子提供制度 株主総会資料の電子提供制度(法令上の用語は「電子提供措置」)が定められたことにより(新法325条の2以下)、株式会社は、定款で定めることによって株主総会資料等の電子提供措置を採用することができることとなった。 「電子提供措置」とは、 電磁的方法により株主が情報の提供を受けることができる状態に置く措置のことをいい、ウェブサイトでの掲載等がこれに当たる。 (2) 招集手続の見直し 株式会社が電子提供措置を採る場合には、公開会社であるか非公開会社であるかを問わず一律に、総会の日の2週間前までに招集通知を発しなければならない(新法325条の4第1項)。また、株主総会の招集通知を書面で行う必要がある場合(会社法299条2項各号)には、①株主総会の日の3週間前又は②株主総会招集通知(書面)を発した日のいずれか早い日から株主総会の日後3ヶ月を経過するまでの間、総会の日時・場所・目的事項等や計算書類・事業報告記載事項等の一定の情報について電子提供措置を行わなければならない(新法325条の3)。 (3) 書面交付請求 電子提供措置制度を採用する株式会社であっても、インターネットを利用することが困難である株主の利益に配慮するため、書面交付請求制度が設けられている(新法325条の5)。これにより、株主は、株式会社に対し、株主総会資料に記載すべき事項を記載した書面の交付を請求することができる。   2 株主提案権の濫用的行使を制限するための措置の整備 株主提案権の濫用事例(特定の株主が大量の議案を提出する等)を防止するため、新法においては、株主が同一の株主総会において提案することができる議案の数が制限(上限10個)された(新法305条4項)。株主が提出しようとする議案数が10を超える場合には、超過部分については議案要領の通知請求権(会社法305条1項)が認められないこととなる。 なお、議場において提案する議案数に制限が加えられたわけではないことに注意が必要である。   3 取締役の報酬に関する規律の見直し 取締役の報酬等を決定する手続等の透明性を向上させ、また、株式会社が業績等に連動した報酬等をより適切かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため、主に以下のような見直しがなされた。   4 会社補償及び役員等のために締結される保険契約に関する規律の整備 役員等にインセンティブを付与するとともに、役員等の職務の執行の適正さを確保するため、役員等がその職務の執行に関して責任追及を受けるなどして生じた費用等を株式会社が補償することを約する補償契約や、役員等のために締結される保険契約に関する規定が設けられた。 (1) 補償契約 新法にいう「補償契約」とは、新法430条の2第1項各号に掲げる費用等の全部又は一部を、役員等に対して当該株式会社が補償することを約する契約をいう(新法430条の2第1項)。補償の対象となるものとしては、例えば責任追及の訴え等の対応に必要な弁護士費用、会社法429条の責任(役員等の第三者に対する損害賠償責任)によって生じる損失等が挙げられる。 なお、補償契約によっても、全ての費用が補償の対象とされるわけではなく、通常要する費用額を超える部分等、一定の費用・損害については補償を受けることはできない(新法430条の2第2項)。 株式会社が役員等と補償契約を締結するには、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決議を経なければならない(新法430条の2第1項)。なお、補償契約については、利益相反取引ないし自己代理には該当しない(新法430条の2第6項、第7項)。 (2) 役員などのために締結される保険契約(D&O保険) 役員等のために締結される保険契約(役員等賠償責任保険契約。D&O保険)は、会社が保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務執行に関して責任を負うこと、又は責任の追及にかかる請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が補填することを約するものであって、役員等を被保険者とするものをいう(新法430条の3第1項)。職務執行の結果、役員が会社や第三者に対して責任を負うことになったような場合に保険者が役員に生じた責任を補填するものである。 旧法下でも解釈上有効であるとされていたが、新法では明文が設けられた。 会社は、役員等賠償責任保険契約の内容を決定するには、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の決議によらなければならない(新法430条の3第1項)。また、役員等賠償責任保険契約の締結については、利益相反の規定や自己代理の規定の適用は排除される(新法430条の3第2項、第3項)。   5 業務執行の社外取締役への委託に関する規律見直しや社外取締役設置の義務付け (1) 業務執行の社外取締役への委託に関する規律見直し 改正前は、業務を執行した社外取締役は社外性を失うこととされていたが、新法では、一定の要件下であれば業務を執行しても社外性を失わないこととされた(新法348条の2)。 一定の要件とは、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)の場合である。 なお、社外取締役に業務執行を委託するときは、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社の場合は取締役会決議)による必要がある(新法348条の2) (2) 社外取締役設置の義務付け 監査役会設置会社(公開会社かつ大会社であるものに限る)である上場会社については、社外取締役の設置が義務付けられた(新法327条の2)。   6 株式交付制度の創設 企業買収に関する手続の合理化を図るため、株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって、買収会社が、被買収会社を子会社とするため、自社株式を被買収会社の株主に対して交付することができる制度(株式交付)が創設された(新法2条32号の2、新法774条の2から同774条の11、新法816条の2から同816条の10)。 自社株式を対価として他の会社を子会社化する手段には「株式交換」があるが、これは完全子会社化するためのものでありニーズが限られていた。株式交付は、完全子会社化を予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするために自社株式を交付することを認める制度といえる。 なお、株式交付においては、株式を交付する会社(対象会社を子会社化しようとする会社)を「株式交付親会社」といい、被買収会社を「株式交付子会社」という(新法774条の3第1項かっこ書)。   7 施行時期 前記2から6は令和3年3月1日に施行されたが、1(株主総会資料の電子提供制度の創設)については未施行(令和4年中の施行予定)であることに注意が必要である。 (了)

#No. 410(掲載号)
#鏡味 靖弘
2021/03/11

2021年株主総会における実務対応のポイント

2021年株主総会における 実務対応のポイント   三井住友信託銀行 証券代行コンサルティング部 部長(法務管掌) 斎藤 誠   いよいよ株主総会準備のシーズンとなった。今年は長引くコロナ禍への対応に加え、3月1日より改正会社法が施行になったことから、株主総会についても改正会社法への対応が中心となる。本稿では3月決算・6月株主総会を前提とした対応を中心に解説する。   1 「取締役の個人別の報酬等の決定に関する方針」の決定 監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)で有価証券報告書提出会社と監査等委員会設置会社については、取締役の個人別の報酬等の決定に関する方針として、法務省令に掲げる事項(会社法施行規則98条の5)を取締役会で決定しなければならないこととなった(会社法361条7項)。 この報酬等の決定方針は施行日(2021.3.1)までに決定しておくことになるが、そうでなければ、できるだけ早いタイミングで決定しておくことが望ましいであろう。 なお、法務省令に委任された事項の解釈については、会社法施行規則等の改正に際しての意見募集の結果(以下、パブコメ結果という)に示されているものが参考となる。 報酬等の決定方針は改正対応における注目ポイントの1つであり、事業報告による開示も必要となるので留意されたい。実務的には、それまでの有価証券報告書における報酬についての開示内容を参考にして対応することになろう。   2 招集通知関係 今回の改正会社法における招集通知の対応事項は多岐にわたっているので、漏れのないように注意が必要である。 3月決算会社については概ね適用となるが、法務省令には詳細な経過措置が設けられているため、以下ではそのポイントを解説する。 (1) 経過措置 ① 事業報告 原則として施行日(2021.3.1)前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告の記載は従前の例による(改正法務省令附則2条11項)とされているので、3月決算会社の事業報告から、改正後の会社法の対応が必要となる。 なお、補償契約及び役員等賠償責任保険契約の記載と、社外取締役を置くことが相当でない理由の記載については、後述のとおり例外規定が設けられている。 ② 株主総会参考書類 原則として施行日(2021.3.1)までに招集の手続が開始された株主総会に係る株主総会参考書類の記載は、従前の例による(改正法務省令附則2条9項)とされている。 ここで「招集の手続が開始された」とは、株主総会参考書類の記載事項を含めて会社法第298条第1項各号に掲げる事項が取締役会の決議によって決定された時点を指すとされている(パブコメ結果60頁)。このため3月決算・6月株主総会の会社は改正法の適用を受けることになるが、補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する記載と、社外取締役を置くことが相当でない理由の記載については、例外規定が設けられている。 (2) 事業報告 今回の改正により事業報告の記載事項として追加されたのは、以下の項目である。 変更事項についての詳細な説明は割愛するが、改正事項を反映した全株懇モデルが公表されているので、作成にあたってはそれらも参考にされたい。 役員等賠償責任保険契約と補償契約に関する事項については、施行日(2021.3.1)以後に締結された役員等賠償責任保険契約と補償契約について、3月決算会社の事業報告から記載することとなっている(改正法務省令附則2条10項)。 締結には更新も含むとされているものの、3月1日以降3月末までの間に役員等賠償責任保険契約を締結するケースは少ないであろう。ただ、実際には事業報告に記載する事例が多いのではないかと思われる。 社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った事項については、すでに社外役員の主な活動状況として開示されている、取締役会への出席状況や取締役会における発言状況等(会社法施行規則124条4号イ~ニに掲げるもの)を除くものとされている。 従前の記載とは異なる内容での社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要の記載が求められているが、すでに開示している事項(会社法施行規則124条4号イ~ニ)と重複する場合であっても、社外取締役が果たすことが期待される役割との関連性を示した上で、当該社外役員が行った職務の概要をより具体的に記載することとされている(パブコメ結果47頁)。本件について、総会場にて株主から質問があった場合には、当該社外取締役が回答することが考えられるので、想定問答への対応も行っておきたい。 なお、社外取締役を置くことが相当でない理由(改正前会社法施行規則124条2項)については、施行日(2021.3.1)以後に到来する最初の事業年度の事業報告への記載が必要であるが(改正法務省令附則2条11項)、対象会社は極めて少ないので、影響はほとんどないであろう。 (3) 株主総会参考書類 株主総会参考書類における追加事項は、(2)で述べた事業報告における追加事項とほぼ同じものである。 会社役員の報酬議案については、確定額報酬(会社法361条1項1号)も含め、改定等の議案を提出するに際して、相当とする理由の説明が必要である(会社法361条4項)。当該議案の上程に際しては、改正会社法により定めることとなった取締役の報酬等の決定方針との平仄に留意したうえで、相当とする理由を説明することとなる。 役員等賠償責任保険契約及び補償契約に関する事項は、施行日(2021.3.1)以後に締結されるものについて適用されることとなっている(改正法務省令附則2条6項)。締結には更新も含まれており、任期中には更新のタイミングを迎えることになるので、新任役員で選任後に役員等賠償責任保険契約に加入することが予定されている場合なども含め、対象となる場合には選任議案に記載することになる。 社外取締役が果たすことが期待される役割に関する事項については、改正前においても、「当該候補者を社外取締役候補者とした理由」、「経営に関与したことがない候補者であっても社外取締役としての職務を適切に遂行することができるものと当該株式会社が判断した理由」(会社法施行規則74条4項2号・5号)が記載事項とされている。従来の記載事項においても、果たすことが期待される役割に関連した内容での記載が想定されるところである。社外取締役への期待は年々高まっていることもあり、社外取締役の招聘に際しても期待事項を明確にし、社外取締役候補者と事前にすり合わせておくことが重要となってくるであろう。 なお、社外取締役への具体的な期待事項については、昨年7月に経済産業省から公表された「社外取締役ガイドライン」なども参考になる。   3 新型コロナに対応した株主総会の準備 昨年以来、株主総会の準備のメインが新型コロナ対応となって、早一年が経過した。株主総会での留意点としては、「感染防止対策の徹底」と「円滑な議事運営による総会時間の短縮化」などがある。また、昨年経済産業省・法務省より「株主総会運営に係るQ&A」が公表されており、今年の総会運営においても参考としたい。 なお、緊急事態宣言の発出・解除の動向等で状況は常に変化しており、緊急度合いに応じて対応も異なってくるので、常に情報収集には留意したい。 (1) 株主総会場での感染防止対策 下記の対応による感染防止対策は、ほぼ定着しており、今年もそれを踏襲することになる。 当社調査(当社の委託会社からのアンケート調査、以下同じ)によれば、昨年(2020年)6月総会における「1社あたりの平均出席株主数」は33名と、前年(2019年)の190名から82.6%という大幅減となった。本稿公開時点でもコロナの収束が未だ見えない状況ではあるが、おそらくはこれが来場者数の底となり、今年はほぼ昨年並みでの来場者数になるのではないかと推測される。 なお、難しい判断ではあるが、昨年の総会で来場者が大幅に減少した場合には、会場スペースの見直しも検討したい。 (2) 議事運営上の対応 昨年は総会時間を極力短縮するため、議事運営の簡素化・省略化が進められた。その中でも事業報告の簡略化等があり、当社調査でも昨年は65.7%の会社が実施した。そのほか「連結・単体計算書類の説明の簡略化等(60.1%)」、「監査報告の省略(40.1%)」などの取組みも行われている。 シナリオの見直しについては、新型コロナの影響や対応のほか、中長期戦略について説明することで、来場株主の満足度は確保できると思われる。 昨年は感染防止のために極力短時間で終わらせる運営が中心であり、当社調査では6月総会の平均時間も34分となって、前年の55分からは21分も短縮化されている。なお、今年についてはお土産を廃止した会社が相次ぐ中ではあるが、やはり1年に一度、株主総会に参加したいとの出席意欲のある株主も相当程度存在することから、その株主への満足度向上のためにも、質問を受けた場合については従来どおりの丁寧な説明が望まれる。このため総会時間については昨年を下限として、今年は若干伸びる傾向になるのではないかと思われる。 (3) 招集通知の対応 従来、いわゆる狭義の招集通知においては、株主へ総会の開催日時を通知し、出席を依頼する文言となっていた。コロナ禍においては、株主の来場に際して慎重な対応を依頼していることから、招集通知の文言も昨年4月に経団連より公表された「新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた定時株主総会の臨時的な招集通知モデル」により、来場いただく株主の数を一定程度制限することを想定したパターンを採用する会社がほとんどであった。本年もこの傾向は続くであろう。併せて、事前の議決権行使方法を丁寧に説明することになろう。 (4) バーチャル株主総会への対応 昨年より注目が集まったバーチャル株主総会であるが、経済産業省からは本年2月に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集」が公表され、バーチャルオンリー型の実施も可能とする改正産業競争力強化法が今国会に提出されるなど、環境整備が進められている。昨年6月総会でも100社を超える実施事例が出ており、今年も導入事例は増えると思われる。 いわゆるハイブリッド参加型が主流と思われるが、配信業者の手配や収集通知等への追加の記載もあるので、早めに方針を決めることが望ましい。 (了)

#No. 410(掲載号)
#斎藤 誠
2021/03/11

《速報解説》 会社法施行規則等及び会社計算規則の改正等に対応した『経団連ひな型』の改訂版が公表される

《速報解説》 会社法施行規則等及び会社計算規則の改正等に対応した 『経団連ひな型』の改訂版が公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年3月9日、日本経済団体連合会 経済法規委員会企画部会は、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を公表した。 これは、2019年12月の会社法改正に伴い、会社法施行規則等が改正されたこと、「時価の算定に関する会計基準」「収益認識に関する会計基準」「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の策定に伴い、会社計算規則が改正されたことなどに対応するものである。 今回の改訂に際して、計算書類関係(連結計算書類及び注記表を含む)では多数の「記載上の注意」が記載されている。このため、経団連ひな型の「記載例」を利用する場合には、「記載上の注意」をよく読み、自社の状況を反映するように適宜工夫して記載する必要があると考えられる。 また、【本ひな型の適用時期】にも注意する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 事業報告関係の主なポイント 1 重要な親会社及び子会社の状況 事業報告作成会社とその親会社との間に事業報告作成会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、その内容の概要を記載する。 2 事業年度中に会社役員(会社役員であった者を含む)に対して職務執行の対価として交付された株式に関する事項 事業年度中に事業報告作成会社の会社役員(会社役員であった者を含む)に対して「職務執行の対価として当該会社が交付した」当該会社の株式がある場合、次の会社役員(会社役員であった者を含む)の区分ごとに株式の種類、種類ごとの数及び交付を受けた者の人数をそれぞれ記載する。 3 会社役員に関する事項 会社役員に関する記載事項について、次の事項などを記載する。 4 補償契約に基づく補償に関する事項 事業報告作成会社が取締役、監査役又は執行役との間で補償契約(会社法430条の2第1項の契約)を締結している場合には、①契約の相手方の氏名と共に、②当該契約の内容の概要を記載する。 5 役員等賠償責任保険契約に関する事項 事業報告作成会社が保険者との間で役員等賠償責任保険契約を締結している場合、所要の事項を記載する。 6 取締役、会計参与、監査役又は執行役ごとの報酬等の総額(業績連動報酬等、非金銭報酬等、それら以外の報酬等の総額) 会社役員に支払った報酬その他の職務執行の対価である財産上の利益(以下「報酬等」という)の額を、①業績連動報酬等、②非金銭報酬等、③それら以外の報酬等の種類別に、かつ、取締役、会計参与及び監査役(監査等委員会設置会社の場合は監査等委員である取締役以外の取締役及び監査等委員である取締役並びに会計参与、指名委員会等設置会社の場合は取締役及び執行役並びに会計参与)ごとに区分して、それぞれの総額と員数を記載する。 7 業績連動報酬等に関する事項 報酬等に業績連動報酬等が含まれている場合には、当該業績連動報酬等について次の事項を記載する。 8 非金銭報酬等に関する事項 報酬等に非金銭報酬等が含まれている場合には、当該非金銭報酬等の内容を記載する。 9 報酬等に関する定款の定め又は株主総会決議に関する事項 会社役員の報酬等についての定款の定め又は株主総会の決議による定めがある場合、それぞれにつき、以下の事項を記載する。 10 各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針に関する事項 株式会社において、各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針(会社法361条7項の方針又は会社法409条1項の方針)を定めているときは、以下の事項を記載する。 11 各会社役員の報酬等の額の決定の委任に関する事項 株式会社が当該事業年度の末日において取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)である場合において、取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が当該事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除く)の個人別の報酬等の内容の全部又は一部を決定したときは、その旨及び以下の事項を記載する。 12 各社外役員の主な活動状況 社外役員のうち社外取締役については、当該社外役員が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要も記載する。   Ⅲ 計算書類関係の主なポイント 以下では、基本的に、連結計算書類に関して解説する。 1 連結貸借対照表 次の改訂が行われている。 2 連結損益計算書 「記載上の注意」に、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を適用する会社については、顧客との契約から生じる収益は、適切な科目をもって連結損益計算書に表示する。なお、顧客との契約から生じる収益については、原則として、それ以外の収益と区分して連結損益計算書に表示するか、区分して表示しない場合には、顧客との契約から生じる収益の額を注記する(会社計算規則3条、116条)と記載している。 3 連結株主資本等変動計算書 「株式引受権」を新設している。 4 注記表の一覧表 作成すべき注記表の一覧について、改正会社計算規則を反映するとともに、留意点を詳細に記載している。 5 収益及び費用の計上基準 「収益認識に関する会計基準」を反映して、次の「記載例」が示されている。 これに、例えば、支払条件、変動対価、独立販売価格の比率に基づいて取引価格の履行義務に対する配分が重要な会計方針に含まれるものと判断される場合の記載例(「記載上の注意」(4))も並べると次のようになる。 6 収益認識に関する注記 「収益認識に関する会計基準」を反映して、次の「記載例」が示されている。 これに、例えば、「当連結会計年度及び翌連結会計年度以降の収益の金額を理解するための情報」の記載例(「記載上の注意」(4))も並べると次のようになる。 7 会計上の見積りに関する注記 「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を反映して、次の「記載例」が示されている。 これに、例えば、「会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報」の記載例(「記載上の注意」(3))も並べると次のようになる。 8 金融商品に関する注記 「時価の算定に関する会計基準」等を反映して、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項を記載しない記載例」と「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項も記載する記載例」の2つが記載されている。 「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項も記載する記載例」は次のとおりである。 (了)

#No. 409(掲載号)
#阿部 光成
2021/03/10

《速報解説》 国税庁HPにてOECD「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」の仮訳が公表される~感染の世界的拡大で顕在化した移転価格に関する問題のうち4つの優先課題について実務的視点を提供~

《速報解説》 国税庁HPにてOECD「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」の仮訳が公表される ~感染の世界的拡大で顕在化した移転価格に関する問題のうち4つの優先課題について実務的視点を提供~   弁護士 下尾 裕   OECDは、2020年12月18日に、「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」(原題:Guidance on the transfer pricing implications of the COVID-19 pandemic。以下「本ガイダンス」という)を公表していたところ、このたび、国税庁において、本ガイダンスの仮訳が公表された。 本稿においては、当該仮訳の内容を前提に、本ガイダンスの要点について取り上げる。   [1] 本ガイダンスの位置付け 本ガイダンスは、既に公表されているOECD移転価格ガイドライン2017年版(以下「OECD移転価格ガイドライン」という)を前提に、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大(以下「コロナ拡大」という)により生じ又は顕在化した移転価格上の問題に対し、独立企業間原則及びOECD移転価格ガイドラインをどのように適用するかという観点から、特に という4つの優先課題について、実務的視点を提供するものである。   [2] 本ガイダンスにおける各優先課題に対する実務的視点 1 比較可能性分析 この優先課題は、コロナ拡大が、独立企業間取引での価格設定に大きな影響を及ぼす可能性があり、また、比較可能性分析を行う際に用いる過去のデータに対する信頼性を低下させる可能性があるとの問題意識を出発点とするものである。 ここでは、 などに言及されている。 2 損失及び新型コロナウイルス感染症特有の費用の配分 この優先課題は、コロナ拡大により、多くの多国籍グループにおいて発生した例外的かつ非経常的な営業費用等の損失を関連企業でどのように配分するかという問題である。 ここでは、 といった点について言及されている。 3 政府支援プログラム この優先課題は、政府支援プログラム、すなわち、政府又は公的機関が資格ある納税者に対し、交付金、補助金、返済免除要件付融資といった直接的又は間接的な経済的利益を提供するプログラムが、その利用可能性、内容、期間及び利益率如何により、移転価格に影響を及ぼすのではないかという議論である。 特に、多くの新型コロナウイルス感染症関連の支援プログラムが一時的支援として設計されていることとの関係で、その利用条件を踏まえ、影響力の程度を考慮すべきことが冒頭で指摘されている。 具体的には、 といった点について、詳細に検討されている。 4 事前確認(APA) この優先課題は、コロナ拡大が将来に向けた一定期間を対象とする既存のAPAの合意時には予想していなかった経済状態の重大な変化をもたらしていることを背景とするものであり、既存のAPAに対する影響及び交渉中のAPAに対する影響についてそれぞれ検討している。 特に、既存のAPAに対する影響の内容については、コロナ拡大の下でも既存のAPAがなお拘束力を有することを前提に、 といった点について検討されている。 (了)

#No. 409(掲載号)
#下尾 裕
2021/03/09

《速報解説》 株式報酬の見直しに係る改正法人税法等政省令が公布される~改正会社法の施行に伴い関連規定を整備~

《速報解説》 株式報酬の見直しに係る改正法人税法等政省令が公布される ~改正会社法の施行に伴い関連規定を整備~   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   令和元年の会社法改正に伴い、令和2年度税制改正において株式報酬に関する税制上の取扱いについて見直しが行われている。 このたび令和3年2月25日付け官報第439号において、この株式報酬の見直しに関する改正政省令(「法人税法施行令等の一部を改正する政令(政令第39号)」及び「法人税法施行規則及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(財務省令第4号)」)が公布された。 本稿ではこの改正政省令の概要について解説を行う。   1 会社法の改正 まず、今回の改正政省令に関係する改正会社法(令和元年法律第70号)の改正事項をまとめると、以下の通りである。 (1) 金銭でない報酬等に係る株主総会の決議による定め 取締役の報酬等を決定する手続等の透明性を向上させるため、取締役の報酬等として自社の株式又は新株予約権を付与しようとする場合には、定款又は株主総会の決議により、株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないこととされた(会社法361①三・四)。 (2) 出資の履行を要しない報酬等としての株式の付与 業績に連動した報酬等を円滑に取締役に付与できるように、上場会社は、取締役の報酬等として株式の発行又は自己株式の処分をするときは、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は現物出資財産の給付を要しないこととされた(会社法202の2)。 (3) 増加する資本金の額等 取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合に増加する資本金の額等についての規定が整備された(会社計算規則42の2、42の3、54の2)。 事前交付型の規定(取締役等が株式会社に対し割当日後にその職務の執行として募集株式を対価とする役務を提供する場合)、事後交付型の規定(取締役等が株式会社に対し割当日前にその職務の執行として募集株式を対価とする役務を提供する場合)、株式引受権に関する規定が定められている。 (4) 株式引受権 株式引受権とは、取締役等がその職務の執行として株式会社に対して提供した役務の対価としてその株式会社の株式の交付を受けることができる権利(新株予約権を除く)をいう(会社計算規則2③三十四)。   2 株式報酬の見直しに関する政令 改正政令(法人税法施行令等の一部を改正する政令(政令第39号))における改正事項は以下の通りである。 (1) 法人税法施行令第8条第1項第1号イ《株式の発行又は自己の株式の譲渡の場合の増加資本金等の額》 株式の発行又は自己の株式の譲渡により増加する資本金等の額の規定(法人税法施行令第8条第1項第1号)から除外するものとして、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合(※1)が追加される。 (※1) 事後交付型の場合及び株式と引換えに給付された債権(役務の提供の対価として生じた債権に限る)がある場合を除く。 (2) 法人税法施行令第8条第1項第1号の2《事前交付型の場合の増加資本金等の額》 取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合(※2)には、役務の提供に係る費用の額のうち既に終了した事業年度において受けた役務の提供に係る部分の金額に相当する金額(※3)だけ資本金等の額が増加することとなる。 (※2) 事後交付型の場合及び株式と引換えに給付された債権(役務の提供の対価として生じた債権に限る)がある場合を除く。 (※3) 株式が法人税法第54条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式である場合には、同項の規定の適用がないものとした場合の金額をいう。 (3) 法人税法施行令第8条第1項第15号《分割型分割により分割法人において減少する資本金等の額》 分割型分割により分割法人において減少する資本金等の額の計算で使用する「分割法人の前事業年度終了時の負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (4) 法人税法施行令第23条第1項第2号《所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等》 非適格分割型分割が行われた場合のみなし配当の計算基礎である「所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額」の計算で使用する「分割法人の前事業年度終了時の負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (5) 法人税法施行令第69条第10項第3号《利益の状況を示す指標》 業績連動給与における「利益の状況を示す指標」の計算で使用する「貸借対照表に計上されている総負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (6) 法人税法施行令第70条第1項第1号《過大な役員給与の額》 取締役の報酬等として自社の株式又は新株予約権を付与しようとする場合には、定款又は株主総会の決議により、株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないこととなったため、定款又は株主総会等の決議による限度額を超える過大給与の判定規定にも反映することとなる。 (7) 法人税法施行令第71条の3《確定した数の株式を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に係る費用の額等》 事前確定届出給与として確定した数の株式又は新株予約権を交付する場合の損金算入額は、「正常な取引条件で行われた場合」には、交付決議時価額に相当する金額となる(赤字部分が追加)。 取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合(※4)の増加する資本金等の額となる「役務の提供に係る費用の額」は、交付決議時価額に相当する金額となる。 (※4) 事後交付型の場合及び株式と引換えに給付された債権(役務の提供の対価として生じた債権に限る)がある場合を除く。 (8) 法人税法施行令第111条の2第4項《譲渡制限付株式の範囲等》 特定譲渡制限付株式の交付が正常な取引条件で行われた場合における役務の提供に係る費用の額は、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行したとき(消滅債権(※5)がないとき)は、特定譲渡制限付株式の交付された時の価額となる。 (※5) 消滅債権とは、特定譲渡制限付株式と引換えに給付された債権その他その役務の提供をする者にその特定譲渡制限付株式が交付されたことに伴って消滅した債権で役務の提供の対価として個人に生ずる債権をいう。 (9) 法人税法施行令第113条《引継対象外未処理欠損金額の計算に係る特例》   法人税法施行令第123条《合併等により移転をする資産及び負債》   法人税法施行令第123条の9《特定資産に係る譲渡等損失額の計算の特例》 上記各規定において、「負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (10) 法人税法施行令第123条の10第15項《非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等》 非適格合併等があった場合に、被合併法人等の株主等が特定報酬株式(※6)を有していたときは、資産調整勘定又は負債調整勘定の計算で使用する非適格合併等対価額には、次の①から②を控除した金額相当額を含めないこととなる。 (※6) 特定報酬株式は、役務の提供の対価として被合併法人等により交付された被合併法人等の株式等(事後交付型を除く)のうち、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式が発行されたとき(消滅債権がないとき)におけるその株式をいう。 (※7) 特定報酬株式が法人税法第54条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式である場合には、同項の規定の適用がないものとした場合の金額をいう。 (11) 租税特別措置法施行令第39条の10の3《特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例》 「負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる(※8)。 (※8) 租税特別措置法施行令第39条の110、所得税法施行令第61条、改正後法人税法施行令第119条の3についても同様。   3 株式報酬の見直しに関する省令 改正省令(法人税法施行規則及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(財務省令第4号))における改正事項は以下の通りである。 (1) 法人税法施行規則第25条の9《譲渡制限付株式を対価とする費用》 分割型分割(承継譲渡制限付株式が交付されるものに限る)に伴い、分割型分割に係る分割法人の特定譲渡制限付株式につき給与等課税額が生ずることが確定した場合には、特定譲渡制限付株式に係る役務の提供に係る費用の額は、特定譲渡制限付株式に係る消滅債権の額に相当する金額に次の①に掲げる割合を乗じて計算した金額とその相当する金額からその計算した金額を控除した金額に次の②に掲げる割合を乗じて計算した金額との合計額その他の合理的な方法により計算した金額とし、承継譲渡制限付株式に係る費用の額は、消滅債権の額に相当する金額からその合理的な方法により計算した金額を控除した金額とされている(赤字部分が変更)。 上記2(7)の改正政令に伴い、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行したとき(消滅債権がないとき)の消滅債権の額は、特定譲渡制限付株式の交付された時の価額として計算することとなる。 (2) 法人税法施行規則第27条の16第2項《非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等》 法人税法施行令第123条の10第15項《非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等》の非適格合併等が分割型分割に該当する場合には、役務の提供に係る費用の額のうち分割法人の分割型分割の日前に終了した各事業年度において受けた役務の提供に係る部分の金額は、特定報酬株式の交付された時の価額に次の①に掲げる割合を乗じて計算した金額と特定報酬株式の交付された時の価額からその計算した金額を控除した金額に次の②に掲げる割合を乗じて計算した金額との合計額その他合理的な方法により計算した金額となる。 (※9) 特定報酬株式が法人税法第54条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式である場合には、法人税法施行令第111条の2第1項第1号《譲渡制限付株式の範囲等》に規定する譲渡制限期間終了の日をいう。   4 施行期日 改正政省令については、「会社法の一部を改正する法律」の施行日(令和3年3月1日)から施行される(経過措置あり)。 (了)

#No. 409(掲載号)
#川瀬 裕太
2021/03/08

プロフェッションジャーナル No.409が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年3月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.409を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/03/04

monthly TAX views -No.98-「東日本大震災から学ぶコロナ後の財政運営」

monthly TAX views -No.98- 「東日本大震災から学ぶコロナ後の財政運営」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   東北を震源地とした大震災から、節目となる10年を迎える。「震災からの復興なくして日本の再生なし」という基本方針の下で、30兆円を超える事業が行われた結果、未だ県外での避難生活が続いている福島などの原子力災害被災地域を除き、地震・津波被災地域では「復興は総仕上げの段階に入った」といわれている。この間の関係者の努力を多としたい。 *  *  * さて、2月25日放送のNHK「クローズアップ現代+」では、復興予算がどう使われたか、特集を組んでいた。 筆者が大変興味を持ったのは、元復興構想会議議長(現兵庫県立大学理事長)の五百旗頭真さんへのインタビューだった。 復興財源は、25年間にわたる2.1%の所得税付加税(復興特別所得税)と10年間にわたる年1,000円の個人住民税の上乗せなどでまかなわれたのだが、これについて同氏は、「増税が決まるときに、私は、反乱は起こらないだろうけど非難ごうごう起こるのではと一生懸命注意していたが、全く批判はなかった。国民の温かい、この災害列島で、次々あちこちで災害は起こる。それを見放すんじゃなくて、順繰りにみんなで被災地を支えていくという。そのおかげで財源も得て『創造的復興』・・という形ができたと思う。」と述べていた。 復興に必要な「歳出」と「歳入」を「東日本大震災復興特別会計」として別管理し、「歳出」に見合う「復興債(国債)」を発行し、その償還財源を所得税・住民税・法人税の付加税として確保した。こうすることで、その負担を後世世代に持ち越さなかったのである。 *  *  * このような「歳出」と「歳入」の別管理スキームは、現在、多額の出費が続いている新型コロナウイルス対策に伴うわが国財政の今後のあり方に、大いに参考になる。すなわち、「コロナ対策特別会計」を作り、コロナ対策に必要な費用を特掲し、その財源を「コロナ対策債」で賄うとともに、その償還については中長期の付加税などの追加課税で賄うというスキームを作り、財政規律を示すことである。 米国長期金利の上昇が、先進国最悪の財政事情のわが国に波及しつつある。日銀の超金融緩和政策によってある程度は食い止めることが可能だろうが、このままの財政運営を続けていけば、金利急騰(国債価格急落)という、いつ破裂するかもしれない爆弾(リスク)を抱えることになる。 下の図表は、一般会計の歳出と歳入の推移であるが、ざっと見ただけでも、コロナ対策関連経費の異常性と別管理の必要性を物語っているといえよう。 そのためには、付加税をどうするのかという「増税」議論が必要となる。政治的には避けたいところだろうが、先進国最悪の財政支出を抱えるわが国としては、最低限の財政規律を守っていくことによって、米国金利上昇の影響を最小限にとどめていく必要がある。 (了)

#No. 409(掲載号)
#森信 茂樹
2021/03/04

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例27】「支払利息の損金性と同族会社の行為計算否認」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例27】 「支払利息の損金性と同族会社の行為計算否認」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、都内の外資系製薬メーカーである合同会社Aで財務及び経理を担当するマネージャーです。日本の医薬品市場は、今後予想される人口減少により先行きは不透明なところがありますが、幸いなことにA社は治療効果が良好な新薬をいくつか抱えているため、業績は好調であるといえます。 ところでA社は、30年ほど前から日本に拠点を置いて事業展開を行っており、その間にいくつかの子会社を設立して企業グループを形成しております。A社の親会社B社はフランス法人ですが、全世界的なグループ事業最適化の一環で、数年前にA社が中心となって日本事業の再構築を行っております。当該事業再構築の主眼は、日本国内に研究開発の拠点を新設することで、その資金を賄うため、A社は親会社B社から借入れを行っております。これは親会社の高い信用力に基づきB社が欧州において低利で資金調達し、その資金をA社に付け替えるというもので、財務上の合理性は十分あると自負しております。 ところがA社が今般受けた税務調査で調査官が、日本国内事業の再編に伴う親会社B社からの借入れは、その支払利息の損金算入によりA社の法人税の負担を不当に減少させるものであることから、同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められない旨指摘してきました。 私は当該税務調査の担当者として、調査官からの指摘に対し、A社が親会社B社から行った借入れは、いわゆる「デット・プッシュ・ダウン」という財務上の手法であり、グループ企業における組織再編成・事業再構築の一環として行われた、正当な事業目的を有する経済合理性がある取引であることから、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用要件を満たさないはずであると反論しております。親会社であるB社も、国税側が不当な課税処分を行う場合には、訴訟で決着をつけるべきとしておりますが、このような対処方針で進めてしまって大丈夫でしょうか、アドバイスをお願いします。 なお、今回の税務調査で問題となった事業年度は平成20年12月期から平成24年12月期の5事業年度で、個別的租税回避否認規定である過大支払利子税制(措法66の5の2)の導入前です。 〇 「デット・プッシュ・ダウン」の手法 【A】 本件の場合、海外の親会社からの借入れを伴う事業再編・組織再編成を行う場合、その借入れに対する支払利息によりわが国の課税ベースが浸食されるとして、課税庁が包括的な租税回避否認規定の一種である同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められないと指摘したわけですが、個別的租税回避否認規定があるのであればともかくとして、当該事業再編に伴う借入れに税務上のみではなく財務上の経済合理性があるのであれば、同族会社等の行為又は計算の否認規定により否認することは困難であると考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 支払利子の損金性と課税ベースの浸食 法人間において金銭の貸借(金銭消費貸借契約)がある場合、その契約においては、貸手は借手から一定の利率の利子を徴収することとなるが、当該利子(支払利子)は借手における法人税の課税所得の計算上、損金算入されることとなる。しかし、当該金銭のやり取りが国内であればともかくとして、貸手が海外の居住者である場合、支払利子は国内で損金算入され借手の課税所得を減らす一方で、貸手の受取利息はわが国では課税されないこととなる。特に借手が高課税国(多額の利益・所得を計上)、貸手が低課税国に存するときには、その借手・貸手を含む企業グループ全体で課税所得が圧縮されるため、非常に有効なタックスプランニングとなるが、各国の課税庁サイドからみれば、そのような手法を無条件で許容すると、課税ベースが浸食され深刻な歳入欠陥となりかねないところである。 そのため、わが国においては、個別的租税回避の否認規定として、移転価格税制(措法66の4)や過少資本税制(措法66の5)、タックスヘイブン対策税制(措法66の6)が整備され、このような租税回避行為を規制・課税しようとしていた。しかし、本件のようないわゆる「デット・プッシュ・ダウン」という財務上の手法に対して、これらの規定が有効な手段となり得たのか疑問があった。そこで、平成24年度の税制改正で以下の図で示されるような過大支払利子税制(措法66の5の2)が導入されたところである。 〇 過大支払利子税制の概要(令和元年度税制改正前) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 財務省編『平成24年度 税制改正の解説』559頁。 なお、OECDの「BEPSプロジェクト」行動計画4:利子控除制限ルール(国税庁「BEPSプロジェクト」参考)の勧告を受けて、令和元年度税制改正で過大支払利子税制も以下の通り強化されている。 〇 令和元年度改正の概要(過大支払利子税制) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 財務省編『令和元年度 税制改正の解説』566頁。   (2) 同族会社等の行為又は計算の否認規定 今回の税務調査で問題となった事業年度は、平成20年12月期から平成24年12月期の5事業年度で、個別的租税回避否認規定である過大支払利子税制(措法66の5の2)の導入前ということもあり、わが国の法人税法上、A社とその親会社との間で行われた「デット・プッシュ・ダウン」という財務上の手法を税務上規制する個別の規定は存在しなかったということになる。そのため、課税庁・調査官は苦肉の策として、包括的な租税回避否認規定の一種である同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められないと指摘したわけであるが、このような課税手法に違法性はないのであろうか。 よく知られるように、わが国においては、租税回避行為に対処するための一般的否認規定(GAAR)は存在しない。かつては、わが国においても国税通則法制定時に、当時のドイツの租税調査法に倣って一般的租税回避否認規定の採用が検討されたが、課税権力の濫用の危険を理由とした反対論が強かったため、見送られたとされる(※)。そのため、租税回避行為に対しては、基本的に個別の租税回避行為否認規定により対処することとなるが、少数の株主や社員によって支配されていることから、作為的な租税回避行為を行うことが比較的容易な同族会社が関与するスキームに対しては、これまでも同族会社等の行為又は計算の否認規定により課税するケースが見られたところである。 (※) 金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)137頁参照。 同族会社等の行為又は計算の否認規定にいう、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」同族会社の行為・計算とは何を指すのかについては、判例上、「専ら経済的、実質的見地において当該行為又は計算が純粋経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否かを基準として判定」するものと解する傾向にある(経済的合理性基準、最高裁昭和53年11月30日判決・訟月25巻4号1145号、東京地裁平成26年5月9日判決・判タ1415号186頁・TAINSコード:Z264-12469(日本IBM事件))。   (3) 個別的租税回避行為の否認規定がない場合の同族会社等の行為又は計算の否認規定が問題となった事案 それでは本件のように、個別的租税回避行為の否認規定がない場合(又は導入前)において、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用の可否が問題となった事案(東京地裁令和元年6月27日判決・TAINSコード:Z888-2250(ユニバーサルミュージック事件)、納税者勝訴)を以下で確認しておきたい。 ① 事案の概要 音楽事業を目的とする日本法人である原告は、本件各事業年度(平成20年12月期から平成24年12月期まで)に係る法人税の確定申告において、同族会社である外国法人からの借入れに係る支払利息の額を損金の額に算入して申告したところ、麻布税務署長(処分行政庁)は、同支払利息の損金算入は原告の法人税の負担を不当に減少させるものであるとして、法人税法第132条第1項に基づき、その原因となる行為を否認して原告の所得金額を加算し、本件各事業年度に係る法人税の各更正処分等を行った。 本件は、原告が、上記借入れは原告を含むグループ法人の組織再編の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性がある取引であり、本件各更正処分等は法人税法第132条第1項の要件を欠く違法な処分であると主張して、被告を相手に、本件各更正処分等の取消しを求める事案である。 ② 本件の争点 法人税法第132条第1項にいう「その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の該当性。 ③ 裁判所の判断 なお、本件控訴審(東京高裁令和2年6月24日判決・TAINSコード:Z888-2315、控訴棄却・控訴人上告受理申立て)も納税者が勝訴している。ただし、控訴審で裁判所は、経済的合理性基準につき、納税者側の「法人税法132条1項の不当性要件につき、経済合理性基準を踏まえて、法人税の負担が減少するという利益を除けば当該行為又は計算によって得られる経済的利益がおよそないといえるか、あるいは、当該行為又は計算を行う必要性を全く欠いているといえるかという観点から判断すべき旨」の主張に対し、「当該行為又は計算を行う必要性のほとんどが租税回避目的であって、税負担の減少以外の経済的利益がごく僅かである場合でも、経済的合理性があるとされかねない。このようなことは、不当性要件の的確な判別を困難にするものとして、法人税法132条の趣旨及び目的に反し、相当でもない。(下線部筆者)」としている点は注目に値する。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本件で問題となったデット・プッシュ・ダウンという手法は、裁判所も指摘する通り、「財務上の観点からは、規模が大きく多額の利益を計上している事業会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的であり、税務上の観点からは、税率の高い国で多額の利益を計上し多額の税金を負担している会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的である」といえ、中でも税務上のメリットは、それを規制する規定がない限り、特に大きいといえる。 このような税務上のメリットを享受するためのタックスプランニングは、近年わが国においても租税訴訟事件で存在感が増している多国籍企業(本件のユニバーサルミュージックや日本IBMなどが想起される)にとっては広く知られたもので、OECDのBEPSプロジェクトでもその規制が議論されており(前述の行動計画4:利子控除制限ルール(国税庁「BEPSプロジェクト」参考))、わが国でも個別的租税回避の否認規定として過大支払利子税制が導入されている。しかし、本件の対象となる事業年度は過大支払利子税制が導入される前の事業年度であり、そのような場合において、課税庁側としては苦肉の策として、いわば伝家の宝刀としての包括的租税回避否認規定である同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用に踏み切ったというわけである。 本件においては、納税者側が示した、組織再編を伴う一連の行為に関する8つの事業目的(本件取引の目的)が裁判所によって丁寧に検討され、「本件8つの目的を本件組織再編取引等により達成したことは、ヴィヴェンディ・グループ全体にとってだけでなく原告にとっても経済的利益をもたらすものであったといえる一方、本件借入れは原告に不当な不利益をもたらすものとはいえないから、これらが原告にとって経済的合理性を欠くものであったと認めることはできない」と結論付けられ、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用が経済合理性基準に照らして斥けられている。タックスプランニングの結果、税務上の利益が大きいとしても、それ以外に十分な事業上の目的があれば、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用は認められないとしたものであり、今後の実務の参考となるであろう。   (4) 本件への当てはめ 本件の場合、海外の親会社からの借入れを伴う事業再編・組織再編成を行う場合、その借入れに対する支払利息によりわが国の課税ベースが浸食されるとして、課税庁が包括的な租税回避否認規定の一種である同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められないと指摘したところであるが、個別的租税回避否認規定があるのであればともかくとして、当該事業再編に伴う借入れに税務上のみではなく財務上の経済合理性があるのであれば、同族会社等の行為又は計算の否認規定により否認することは困難であると考えられる。本件のような事案は、基本的に個別的租税回避否認規定により課税の可否を判断すべきといえよう。 (了)

#No. 409(掲載号)
#安部 和彦
2021/03/04

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第19回】「家屋の所有者に譲渡損失がなく、土地の所有者に譲渡損失がある場合」-居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第19回】 「家屋の所有者に譲渡損失がなく、土地の所有者に譲渡損失がある場合」 -居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)は、Y(妻)と共に9年程前から住んでいたY所有の家屋とX所有の土地を売却しました。 Y所有の家屋には譲渡損失は発生しませんでしたが、X所有の土地には譲渡損失が発生しました。 家屋と土地の所有が異なる場合でも、その他の適用要件が具備されている場合は、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 譲渡物件に係る家屋の所有者Yに譲渡損失がないことから、Yが「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用がなくとも、譲渡物件に係る土地の所有者のXは、同特例の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る譲渡家屋の所有者以外の者が、その譲渡家屋の敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えているものの全部又は一部を所有している場合において、租税特別措置法通達41の5-11(居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合の取扱い)に掲げる要件の全てを満たすときは、これらの者がともに同特例を受ける旨の申告をしたときに限り、その申告を認めるとされています。 そして、上記通達に係る次の注書1により、その家屋の譲渡損失がない場合は、その家屋の所有者が同特例を適用しないときでも、その土地所有者には適用があるとされています。 ※下線については筆者加筆。 したがって、本事例の場合、Y所有の家屋には譲渡損失の金額がないことから、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができます。 (了)

#No. 409(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/03/04
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