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《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項~平成31年度税制改正大綱~

《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項 ~平成31年度税制改正大綱~   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   平成30年12月14日、与党(自由民主党と公明党)による「平成31年度税制改正大綱」が公表された。 登録免許税に係る主な改正事項は、以下のとおりである。 1 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の延長 人口の減少下においても土地に対する需要を喚起し、土地の流動化を通じた有効利用等の促進を図るため、また、2019年10月には消費税率の10%への引上げが予定されており、土地に係る税額も住宅取得に影響を与えるおそれがあることから、土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の税率について、下記の軽減税率を平成33年(2021年)3月31日まで2年間延長する。 2 Jリート及びSPCが取得する不動産に係る特例措置の延長 2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革」により、2020年頃までにリート等の資産総額を約30兆円に倍増することを目指し、成長性の高い不動産への転換や供給に向けた投資を促す観点から、Jリート及びSPC(資産流動化法に基づく特定目的会社)が取得する不動産に係る登録免許税について、下記の軽減税率を平成33年(2021年)3月31日まで2年間延長する。 3 不動産特定共同事業において取得される不動産に係る特例措置の拡充・延長 都市機能の向上及び地域活性化を図るため、またデフレからの脱却のためには、不動産特定共同事業法の仕組みを一層活用し、さらなる民間不動産投資を誘発することが必要であり、特例事業者等が取得する不動産に係る現行の特例措置を平成33年(2021年)3月31日まで2年間延長するとともに、一部の要件の見直しを行う。 (了)

#No. 298(掲載号)
#山端 美德
2018/12/17

《速報解説》 BEPS勧告を受けた過大支払利子税制の見直し~平成31年度税制改正大綱~

《速報解説》 BEPS勧告を受けた過大支払利子税制の見直し ~平成31年度税制改正大綱~   弁護士 木村 浩之   平成30年12月14日公表の与党大綱において、過大支払利子税制の見直しが明記された。本稿ではその概要について解説を行う。   1 改正の背景 法人税の所得の計算上、支払利子は損金に算入されることから、これを利用し、過大な支払利子を損金に計上することで税負担を圧縮する租税回避行為が可能となる。そこで、日本では、平成24年度税制改正により、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するため、過大支払利子税制が創設された。 この点、企業グループ内のような関連者間においては、借入れを比較的容易に設定できるため、過大な支払利子を通じた税負担の圧縮が恣意的になされるおそれが高いといえる。このようなことから、改正前の現行制度(以下「旧制度」という)では、関連者に対する純支払利子(支払利子からこれに対応する受取利子を控除したもの)のうち、基準となる所得(調整所得金額)のうちの一定の割合(50%)を超える部分の金額について損金不算入とされていた。 かかる過大な支払利子を通じた租税回避行為は日本のみならず、各国における共通の問題と考えられており、G20/OECDのBEPSプロジェクトでも独立したテーマ(行動4)として取り上げられた。そして、BEPSプロジェクトの最終報告書において、これに対抗するためのベストプラクティスについて勧告がなされた(以下「勧告」という)。 今回の改正は、この勧告内容に照らして、旧制度が不十分であると考えられる点を強化するとともに、借入れを活用した投資活動を過度に抑制することのないようにとの経済界等の要望にも一定の配慮がなされたものといえる。 以下では、主な改正点について解説する。   2 対象となる利子の支払先の拡張 旧制度では、損金算入制限の対象となる利子の支払先は関連者に限られていた。これに対して、関連者以外の第三者からの借入れを通じた租税回避行為も多くみられることが指摘されており、勧告では支払先について特段の限定はなされていない。 そこで、今回の改正では、基本的には、支払先について特段の限定をすることなく、関連者以外の第三者に対する支払であっても制限の対象にするものとされた。もっとも、それでは正常な経済活動が阻害されるおそれがあることから、租税回避とは考えにくい一定の支払利子については対象外にすることとされた。 対象外となる主なものは、①受領者において日本の課税所得に含まれる支払利子(すなわち、日本の課税ベースを侵食しない支払利子)、②社債などの債券に係る支払利子であって非関連者に対して支払われるもの(すなわち、恣意的な借入れに係る支払利子とはみられにくいもの)である。②については、債券利子が日本で課税されるかどうか、国内又は国外のいずれで発行されるかなどにより、対象外とされる金額が異なることになる。   3 基準となる所得の縮小 旧制度では、受取配当の益金不算入額も基準となる所得に含まれており、課税対象とはならない多額の所得によって損金算入が認められる余地が大きく増加するという弊害があった。これに対して、勧告では、益金不算入となる受取配当は基準となる所得には含まれないものとされている。 そこで、今回の改正では、国内外の受取配当益金不算入額は基準となる所得に含まれないこととされた。これにより、損金算入が認められる余地は減少することになる。   4 基準割合の引下げ 旧制度では、基準となる所得のうちの50%を超える部分が損金不算入とされており、言い換えれば、50%までは損金算入が認められていた。これに対して、勧告では、基準割合は10%~30%とされている。 そこで、今回の改正では、この基準割合を20%に引き下げることとされた。これにより、損金算入が認められる余地は減少することになる。   5 制度の適用免除 以上のとおり、今回の改正は制度の適用対象を拡大するものであるが、その緩和措置として、制度の適用免除の要件が緩和された。すなわち、いわゆるデミニミスルールとして、対象となる純支払利子が2,000万円以下である場合には適用を免れられることになった。旧制度では1,000万円以下が基準とされており、これが引き上げられることで要件が緩和されたものである。 また、旧制度では、関連者に対する支払利子割合が全体の50%以下である場合に適用免除とされていたが、今回の改正では、このルールに替えて、50%超の保有関係にある内国法人グループ全体を見た場合において、グループ全体での支払利子のネット金額が基準となる所得の20%以下である場合に適用免除が認められることとされた。   6 適用時期 今回の改正は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用される予定である。 (了)

#No. 298(掲載号)
#木村 浩之
2018/12/14

《速報解説》 平成31年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される~個人版事業承継税制の創設と特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例の要件見直し、配偶者居住権の評価方法を明記、中小企業の防災・減災設備投資を促進する税制の創設~

《速報解説》 平成31年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される ~個人版事業承継税制の創設と特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例の要件見直し、 配偶者居住権の評価方法を明記、 中小企業の防災・減災設備投資を促進する税制の創設~     Profession Journal編集部   自由民主党・公明党は平成30年12月14日、当初予定より2日ほど遅れ「平成31年度税制改正大綱」(与党大綱)を公表した。 今回の大綱取りまとめに当たり焦点となったのは、来年(2019年)10月1日から実施される消費税率10%引上げ後の景気の落ち込みを抑制する施策であり、増税後の自動車や住宅の購入に係る税制措置のさらなる拡充が図られることとなった。 一方で、来年中に期限切れとなるものを含む租税特別措置については、単純な延長ではなく、その効果等を検証し適用要件の見直しが行われるものも多い。 さらに相続法制の見直し及び成年年齢の引下げに関するそれぞれの改正民法を受け、税制においても新たな財産の評価方法や現行制度の見直しが行われており、実務への影響も大きい。それぞれの施行時期については一律ではないという点も留意したい。 以下、主な改正事項を紹介する。なお、例年のとおり、重要な改正事項については年末から年始にかけ個別に速報解説を順次公開していくので、そちらも合わせて参照されたい。 また、こちらの[資料リンク集]ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。 (注)下記で用いている元号表示を西暦で表記すると、次のとおりとなります。   〇住宅・車体課税 車体課税については、平成31年10月1日に導入される自動車税の環境性能割について平成32年9月30日までの軽減措置、自動車税種別割の税率引下げ(恒久化)を行い、一方で自動車税のグリーン化特例や自動車取得税のエコカー減税については対象の絞り込みを行うなど抜本的な見直しが行われている【大綱p83】。 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅ローン控除)の特例が創設され、消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等について、適用年の10年目までは現行制度と同額の住宅借入金等特別控除を認めた上、11~13年目までの各年の控除額を消費税率2%引上げの負担に着目し、①住宅借入金等の年末残高(4,000万円(※)を限度)×1%と②〔住宅の取得等の対価の額又は費用の額-当該住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等〕(4,000万円(※)を限度)×2%÷3のいずれか少ない金額とすることとされる(平成31年10月1日~平成32年12月31日)【大綱p18】。 (※) 一般住宅の場合。認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合は5,000万円。 なお、住宅関連では他に、来年12月31日で期限切れとなる空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について適用期限を平成35年12月31日まで4年延長した上、老人ホーム等に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋・土地等について、一定の要件の下、適用を認めることとした(H31.4.1以後の譲渡から)【大綱p21】。また、土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限は平成33年3月31日まで2年延長される【大綱p48】。   〇中小企業関係税制、延長に合わせ一部見直しも まず中小企業者等の法人税率の特例(年800万円以下の所得金額について15%(本則19%))は平成33年3月31日までの2年延長。中小企業向けの主な設備投資減税(中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制)もそれぞれ平成33年3月31日まで延長される。ただし、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は「投資を含む経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けること」という要件が追加され(H31.4.1以後取得等分)、中小企業経営強化税制についても特定経営力向上設備等の範囲の明確化・適正化を行うとしている【大綱p64】。 これら法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置の適用に当たっては、適用不可とされる「みなし大企業」をめぐり以下の改正が行われる。まず適用対象法人の中に法人税法上のみなし大企業(下記〔補足〕参照)に該当する法人も存在しているとの指摘から、措置法上のみなし大企業の適正化を図るため、その判定において、大規模法人に①大法人(※)の100%子法人②100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人が加えられる【大綱p66】。一方で、事業承継ファンドから出資を受けた場合にみなし大企業とされ、中小企業向けの設備投資減税が適用されないという問題から、事業承継ファンドを通じて中小企業基盤整備機構から受ける出資については、大規模法人の所有する株式等に含まないこととされる【大綱p65】。 (※) 資本金の額等が5億円以上の法人、相互会社もしくは外国相互会社(常時使用従業員数1,000人超)又は受託法人 新たな税制措置としては、昨今頻発する自然災害を受け、中小企業・小規模事業者の事業継続力を強化するための設備投資を後押しするため、一定規模以上の自家発電機や制震・免震装置、照明器具や貯水タンク等の防災・減災を目的とした設備(特定事業継続力強化設備等)を取得等し事業の用に供した場合の特別償却(20%)制度が創設される。なおこの新制度は中小企業等経営強化法の改正が前提とされ(施行時期は同法の改正法の施行日~平成33年3月31日)、適用に当たっては一定の事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画(仮称)を作成し経済産業大臣の認定を受ける必要がある【大綱p65】。 公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例(繰入限度額の10%割増措置)については、既報のとおり会計検査院からの指摘により、来年3月31日をもって期限切れ(廃止)となる(5年間の経過措置あり)【大綱p79】。 研究開発税制は、税額控除率の上乗せ措置の期限切れに合わせ、主に以下の見直しが行われる。まずオープンイノベーション型の対象範囲に民間企業(研究開発型ベンチャー(経産省が認定したファンドから出資を受けているベンチャー企業等))への一定の委託研究を追加等し控除上限を法人税額の10%(現行5%)に引き上げる。また総額型については、研究開発を行う一定のベンチャー企業の控除上限を法人税額の25%から40%に引き上げるとともに、税額控除率及び控除上限の上乗せ措置の適用期限を2年延長し、増加インセンティブを高めることを目的に、平成29年度改正に続きさらに控除カーブの見直し等を行う。これらにより高水準型は総額型に統合される構造となる【大綱p60】。   〇個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設 中小企業の事業承継を促進する措置については平成30年度税制改正において事業承継税制の特例措置が期間を10年に限定して導入されたところだが、平成31年度では新たに個人事業者の事業承継を促進する個人版の事業承継税制(個人事業者の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)が、こちらも10年間の時限措置として創設される【大綱p41】。 具体的には、贈与税の場合、一定の承継計画に記載され経営承継円滑化法の規定により認定を受けた後継者(認定受贈者)が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に贈与により特定事業用資産を取得し事業を継続する場合、担保の提供を条件に、認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち贈与により取得した特定事業用資産の課税価格の100%に対応する贈与税額が猶予される。なお特定事業用資産とは、贈与者の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地(面積400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税もしくは軽自動車税の課税対象となっているもの等)をいう。その他、猶予税額の全額・一部免除や承継後の届出書等の提出要件など法人版の事業承継税制をベースに設計されている。 なお個人事業者の事業承継をめぐっては、許認可手続の簡素化が規制改革推進会議で検討されており、これら他方面からの環境整備の動向も注目される。 ただしこの個人版事業承継税制は、既存の個人版事業承継税制ともいえる特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例との選択適用となる。既存制度はすでに浸透している制度であり減税効果も大きいことから、新制度の適用には躊躇する面もあるが、一方で特定事業用宅地等については、昨年の会計検査院の指摘もあり、その範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の15%以上である場合を除く)が除外されるという見直しが行われる(H31.4.1~)【大綱p44】。 特定事業用宅地等をめぐる本特例については、相続税の申告期限までしか事業の継続要件がない等、上記以外にも制度上の問題点がいくつか指摘されており、小規模宅地等特例については、32年度以降の改正動向にも注視が必要だ(【大綱p6、p121】の記載も合わせて参照されたい)。   〇改正相続法への対応 既報のように11月公布の施行日政令により、各改正項目の施行時期が判明した民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(改正相続法)だが、税制上の対応として次の事項が示された【大綱p57】。 まず、改正相続法の附帯決議にもその対応が求められていたが、相続税における配偶者居住権等の評価額を次のように定めるとした。 一昨年の広大地評価の見直し等と同様に考えると、今後、財産評価基本通達の改正案がパブコメに付され、配偶者居住権の施行(平成32年4月1日)に合わせて確定されるという工程が考えられる。 なお、配偶者居住権が設定された不動産については物納劣後財産(物納に充てることが認められる順位の低い財産)とされ、配偶者居住権の設定の登記については、登録免許税を課税することとされた(2/1,000)【大綱p58】。 他の改正項目として、被相続人の療養看護等を無償で行い被相続人の財産の維持等に貢献した相続人以外の被相続人の親族(例えば長男の嫁等)に、相続人に対するその寄与に応じた金銭の請求が認められる特別寄与料については、被相続人から遺贈により取得したとみなし相続税の課税対象とされる。また特別寄与料を支払う相続人の課税価格からは、その額が控除される【大綱p58】。   〇成年年齢の引下げに伴う見直し 「民法の一部を改正する法律」が平成34年4月1日から施行され成年年齢が20歳から18歳に引き下げられるが、税制上、年齢要件を20歳又は成年(未成年)としている制度は、対象者の行為能力や管理能力に着目して要件を定めているとの考えから、同法施行に合わせ、相続税の未成年者控除の対象者や、相続時精算課税制度(及び同特例)・直系尊属からの贈与に係る贈与税の特例税率・非上場株式等に係る贈与税の納税猶予といった各制度における受贈者の年齢要件が20歳から18歳に引き下げられる【大綱p57】。成年=20歳との思い込みから判断を誤ることのないよう施行時期に合わせた対応を心がけたい。なお、他にも税理士資格を有する成年の年齢についても改正後の成年の年齢と同様とされるため【大綱p118】、今後、10代の税理士資格保有者が登場する可能性がある。   〇世代間の早期資産移転を目的とした贈与税の非課税措置は縮減へ 平成31年3月31日に適用期限を迎える「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」及び「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、内閣府や文部科学省などから制度恒久化や対象拡大等の要望がなされていたが、共に足元1年間の新規契約数が創設当初の件数から大幅に落ち込んでいることや、教育資金特例については経済格差が教育格差を生んでいる現状などから、共に平成33年3月31日まで2年延長されたものの、教育資金特例については受贈者の所得要件(1,000万円)が規定され23歳以上の者の教育資金の範囲の限定などが行われ、結婚・子育て資金特例も受贈者の所得要件(1,000万円)が追加された【大綱p45、p46】。   〇その他地方税、国際課税関係、ひとり親への対応 地方税源の偏在是正の問題への対応として、平成31年10月1日以後開始事業年度からの地方法人特別税の廃止と法人事業税への復元に合わせ、復元後の法人事業税(所得割・収入割)の一部(法人事業税の約3割)を特別法人事業税(仮)(国税(ただし賦課徴収は法人事業税と併せ都道府県が行う))として分離し、その全額を特別法人事業譲与税(仮称)として、人口を譲与基準として都道府県に譲与する仕組みが設けられる【大綱p71】。 また過度な返礼品が問題視されていたふるさと納税については、税額控除の対象となる団体を、一定の基準(返礼割合3割以下、地場産品等)に基づき総務大臣が指定したものに限られ、指定した都道府県等がその基準に適合しなくなった場合は指定を取り消すことができることとされた(H31.6.1~)【大綱p40】。 国際課税の関係では、過大支払利子税制においてBEPS勧告内容に合わせるため①対象となる利子②調整所得の定義③基準値についての見直し等を行い【大綱p98】、移転価格税制では評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置の導入、移転価格税制上の無形資産の定義の明確化などが行われている【大綱p100】。 最後まで与党間での協議が難航したひとり親をめぐる税制上の措置については、「子どもの貧困に対応するため、事実婚状態でないことを確認した上で支給される児童扶養手当の支給を受けており、前年の合計所得金額が135万円以下であるひとり親に対し、個人住民税を非課税とする措置を講ずる」とした上【大綱p14、p41】、大綱p121(第三 検討事項)において「婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する更なる税制上の対応の要否等について、平成32年度税制改正において検討し、結論を得る。」とされている。 (了)

#No. 298(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/12/14

プロフェッションジャーナル No.298が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年12月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.298を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/12/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第71回】「社会通念から読み解く租税法(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第71回】 「社会通念から読み解く租税法(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅱ 租税法と社会通念(承前) 2 財産分与に係る第二次納税義務 (1) 財産分与と「著しく低い額の対価による譲渡」 離婚に伴う財産分与については、既に過去の最高裁判決によって、財産分与を行った者に対して譲渡所得課税がなされるとされている。 すなわち、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(民集29巻5号641頁)は、次のように述べ、財産分与者に対する譲渡所得課税を肯定する。 このように、財産分与をする側の者に対して所得課税が行われると判断されており、財産を取得した側に対する課税はなされないものと理解されているところである。 これに対して、離婚に際し自宅を財産分与された妻が、元夫が国税を滞納していたことに関して「第二次納税義務」の納税告知処分を受けたことから、かかる納税告知処分の取消しを求めた事例がある。次に、東京地裁平成29年6月27日判決(判例集未登載)をみてみよう。 事案の概要 X(原告・控訴人)の夫Pは、土地を譲渡したことで譲渡所得の申告(修正申告)をしたが、滞納したため、平成12年4月に所轄国税局より所有土地の差押えを受けた。 その後、XとPは協議離婚を行い、かかる離婚に伴ってPはXに対して、居宅のあったA土地を財産分与することになった。これに伴いPは、翌年3月にA土地の財産分与(譲渡)に係る所得税の確定申告を行った。A土地を取得したXは、その後土地を分筆の上、平成19年1月にその一部を譲渡し、譲渡代金として、3,900万円を受け取った。 Pの国税の滞納が続いていたところ、所轄国税局は平成24年2月に租税債権約2億5,900万円の徴収のため、Xに対し、国税徴収法39条に基づき、納付税額約1億1,000万円とする第二次納税義務の納税告知処分を行った。   このように、国税徴収法39条は一定の場合における第二次納税義務を定めているが、同条における「著しく低い額の対価による譲渡」であるか否かの判断について、東京地裁は、その制度趣旨に鑑みて次のように説示する。 このように、東京地裁は、著しく低い額と認められるか否かについては、「社会通念」で判断すべきとしている。 そして、離婚に伴う財産分与の場合についても、国税徴収法39条所定の「譲渡」に当たると解されることを前提とした上で、まず財産分与の本旨を以下のように述べる。 そして、財産分与の協議等に従い不動産の譲渡等がなされた場合、それにより財産分与者が「分与義務の消滅」たる経済的利益を享受する点については、上述の最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決を参照している。 そして、財産分与と第二次納税義務の関係性に関し、次のように説示する。 (2) 不相当に過大な財産分与 上記のとおり、東京地裁は、不相当に過大な財産分与については、租税債権が徴収不足となり、納税者間の公平が損なわれるとしているが、それでは、具体的に財産分与として相当な額とはいったいいくらなのであろうか。 この点について、東京地裁は、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与の合計額を参考に検討しているため、簡潔に確認しておきたい。 ① 清算的財産分与 ② 扶養的財産分与 東京地裁は、①Xが本件離婚時において53歳であり、②本件離婚時に至るまでパートタイムの仕事により月約10万円の収入を得ており、③X名義の預金として388万8,734円を有していたこと、また、④上記1,152万2,735円相当の清算的財産分与を受けることができること、そして、⑤XとPとの間の子2名は、既に本件離婚時に成年に達し、その後も本件不動産上の建物においてPと同居をしていたことを認定した上で、扶養的財産分与としての相当額を次のように算定する。 ③ 慰謝料的財産分与 このような認定から、東京地裁は、民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大と評価される財産分与の額を求めている。 すなわち、本件離婚に伴いPがXに対して少なくとも3,000万円を超えて財産分与をすることは民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大なものとの評価を免れないとした上で、結論として次のように判断している。 本件東京地裁のいう「社会通念」に従って判断するとのことは、結局のところ、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与などの分析的手法による積み上げ計算での結果を指しているものと思われる。 このように考えると、社会通念とは、必ずしも非科学的な漠然とした観念として捉えられるものではなく、具体的な計算結果に落とし込んだ判断を展開するための法技術的な「道具」であるとみることもできなくはないといえよう。 (続く)

#No. 298(掲載号)
#酒井 克彦
2018/12/13

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第4回】「法人税の課税所得計算と損金経理(その4)」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第4回】 「法人税の課税所得計算と損金経理(その4)」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   (6) 費用収益対応の原則 法人税法における損金性、すなわち当該損金をどの年度において計上するのかという年度帰属の問題を理解するにあたり、避けて通れないのが「費用収益対応の原則」と「権利確定主義」についてである。以下でそれぞれの意義を確認しておきたい。 まず費用収益対応の原則(matching principle)であるが、これは一般に、経済活動の成果をなす収益と、それを得るために費やされた犠牲としての費用を、厳密に対応づけその差額を利益として算定することを通じて、各会計期間の経営成績を適切に測定するという、企業会計における利益計算の基本原則であると解されている(※1)。 (※1) 桜井久勝『財務会計講義(第19版)』(中央経済社・2018年)75頁。 それでは、費用収益対応の原則は法人税法においても妥当するのであろうか(※2)。これについては、法人税法第22条第4項を根拠に、法人所得の計算においても妥当するものと解すべきというのが通説である(※3)。すなわち、以下のように整理できるのである。 (※2) 所得税法においても、継続的事業の所得については妥当すると考えられる。藤谷武史「必要経費の意義と範囲」『日税研論集74号』(平成30年)162頁参照。 (※3) 金子宏『租税法(第二十二版)』(弘文堂・2017年)346頁。 (※4) なお、費用収益対応の原則は損失には及ばないとする学説もあるが(例えば、酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅱ』(中央経済社・2016年)57頁)、筆者は当該原則の根拠は公正処理基準にある(金子説及び上記東京高裁昭和48年8月31日判決)と考えることから、損失も射程に入るという立場である。 要するに、特定の収益との対応関係が明らかな費用(原価)はその収益と同一年度に(個別的対応)、そうでないもの(非原価項目)は発生した年度の費用として計上する(期間的対応)というのである。 裁判所はこの点につき、以下の通り判示している(東京高裁昭和48年8月31日判決・行裁例集24巻8=9号846頁)。   (7) 権利確定主義と債務確定主義 ① 権利確定主義 権利確定主義とは、一般に、所得課税における収入の年度帰属の問題に関する考え方を示したものと解されている。これについては大きく分けて、現実の収入の時点を基準とする現金主義(cash method)と現実の収入がなくとも所得が発生した時点を基準とする発生主義(accrual method)の2つの考え方がある。企業会計においては、上記のうち現金主義ではなく広義の発生主義を採用した上で(企業会計原則第二・一A)、収益の計上基準として実現主義を採用している(企業会計原則第二・三B)。 所得税法においては、この点につき「収入すべき金額」とすると規定されており(所法36①)、これは収入すべき権利の確定した金額のことを意味するとして、発生主義の中でも「権利確定主義」を採用したものと解されている(※5)。 (※5) 金子前掲(※3)書293-294頁。 法人税法においては、収益の計上基準について条文の文言上、明示されているわけではない。しかし、法人税法においても基本的にこの考え方が妥当し、所得の実現の時点を基準として所得を計上すべきこととなり、原則として財貨の移転や役務の提供などによって債権(対価を得る権利)が確定したときに収益が発生すると解すべき、すなわち所得税法と同様に権利確定主義によるべきものとされている(※6)。なお、企業会計上の実現主義に対応するのが法人税法上の権利確定主義であると理解すべきであろう。 (※6) 金子前掲(※3)書336-337頁。 裁判所は法人税法における権利確定主義の意義について、以下の通り判示している(最高裁平成5年11月25日判決・民集47巻9号5278頁[大竹貿易事件])。 ② 債務確定主義 次に債務確定主義ないし債務確定基準であるが、これは費用の認識基準ないし年度帰属の基準であり、償却費以外の費用は債務の確定を待って初めて損金に計上できるという、法人税法22条3項2号カッコ内の規定に基づくと考えられる。 裁判所は当該債務確定主義について、以下の通り判示している(大阪高裁平成21年10月16日判決・判タ1319号79頁)。 また、「債務の確定」とは以下の裁判例(山口地裁昭和56年11月5日判決・行集32巻11号1916頁[株式会社ケーエム商事事件])等より、①債務が成立していること、②当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③金額を合理的に算定できるものであること、という3要件を満たす必要があると解されている(法基通2-2-12も同旨)。 なお、費用のうち原価(法法22③一)は、売上との直接的・個別的な対応があり、その計上に関し恣意性の介入する余地がないため、債務の確定を要しないと解されている。また、損金算入され得る損失とは、債務の確定ではなく、損失の確定(ないし実現)が要求されるものと解される(※7)。ここから、債務確定主義は費用(販売費・一般管理費のような期間費用)についてのみ妥当するといえる。 (※7) 谷口勢津夫『税法基本講義(第5版)』(弘文堂・2016年)391頁。 (了)

#No. 298(掲載号)
#安部 和彦
2018/12/13

租税争訟レポート 【第40回】「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは(国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」

租税争訟レポート 【第40回】 「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは (国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   所得税法第204条第1項には、「源泉徴収義務」について、以下のような規定がある。 そして、ホステス等に支払う報酬・料金については、国税庁タックアンサーNo.2807に以下のとおり、詳細な解説がされている。 ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払時に源泉所得税を控除することが義務付けられ、ホステス等は、支払いを受けた「報酬・料金」については、事業所得として確定申告を行うことが、所得税の規定からは予定されていたはずである。 そして、ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払いを行う事業者の消費税額等の計算上、課税仕入れに該当することから、これを仕入税額控除の対象として消費税額等の確定申告を行うものという理解が成り立ってきたものと考える。 ところが、最近公表された裁決事例や判決では、上記タックスアンサー冒頭のただし書きの条項「その内容が給与等に該当する場合には、給与等として源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します」を適用して、ホステス等に支払う「報酬・料金」を給与所得と認定することにより、消費税額等の計算においても課税仕入れであることを認めず、納税告知処分や消費税額等の賦課決定処分を行った原処分庁の判断を認め、納税者の主張を退けるものが散見される。 本稿では、去る9月27日に公表された裁決事例のうちから、キャバクラを経営する審査請求人がキャストに支払った金銭が給与であると判断された裁決と、同じく、自ら経営するキャバクラのホステスに支払った金銭が、給与であるとして納税告知処分を受けた原告(控訴人、上告人)の訴えを裁判所が棄却した判決を検討することにより、所得税法第204条1項6号に規定する「ホステス等」の意義を考えてみたい。   【事案の概要】 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という)のキャスト及びスタッフに支払った金員は給与等に該当し、売上金員の一部を請求人の代表者が費消したことは同人に対する給与等に該当するとして源泉所得税等の納税告知処分等を行ったこと、また、キャスト等に簿外で支払った金員相当額を課税標準額から除外したとして消費税等に係る重加算税の賦課決定処分を行ったこと、さらに、キャスト等に支払った金員は課税仕入れに該当しないとして消費税等に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことに対して、請求人が、キャスト等に支払った金員は、報酬料金に該当し、課税仕入れに該当するから消費税額等は生じない、また、売上金員の一部を代表者が費消した事実はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 上記のとおり、争点は多岐にわたるが、本稿では、[争点2]のキャスト等に支払った金員が給与等に該当するか否かについて、国税不服審判所の判断を検討したい。   【キャストに支払った金員が給与等に該当するか否か[争点2]】 請求人の経営するキャバクラには、接客業務の対価を月払いで受け取る「月払キャスト」と日払いで受け取る「日払キャスト」が存在していた。請求人は、各キャストに接客業務の対価として支給すべき額を算定し、月払キャストに対しては月末に、日払キャストに対しては日々の営業時間終了後に、それぞれ金員を支給していた。 1 原処分庁の主張 原処分庁は、キャストに対する支給額について次の理由から、請求人との関係において、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務を提供して、その対価として、金員を支給されていたと認められ、各キャストと請求人との雇用契約又はこれに類する原因に基づき請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち給与等に該当すると主張した。 (1) 月払キャストについて (2) 日払キャストについて 2 審査請求人の主張 一方、審査請求人は、以下の理由から、キャストに対する支給額は、給与等に該当せず所得税法第27条第1項に規定する事業所得(報酬)に該当すると主張した。 (1) 月払キャストについて (2) 日払キャストについて 日払キャストは、上記(1)の①から⑧までについて月払キャストと同じ状況であり、金員の支払方法が日払いか月払いかの違いのみである。 3 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、まず、法令解釈として、最高裁昭和56年4月24日判決を引用する形で、次のように事業所得と給与所得の所得区分について判断を示した。 その上で審判所は、請求人が経営するキャバクラ店で働くキャストについては、請求人との間で、本件各店舗での接客業務に従事するに当たり、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意がされていたこと、合意に基づき、代表者又は店長が、出勤状況、接客時間又は勤務時間等を管理していたこと、店舗における顧客サービスの中で、自分の指名客以外の客に対しても店長の指示により接客業務に従事していたことが認められることから、各キャストは、入店から退店までの時間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供をしていたものとみることができると述べた。 また、審判所は、各キャスト支給額は、時給に接客時間又は勤務時間を乗じて計算した基本給の額に、各種手当の額を加算して算定されていること、雇入れ年月日から少なくとも1又は2ヶ月間は一定の時給が保証されていること、各キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、各キャストが自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできないと述べた。 以上の事実認定から、審判所は、各キャストは請求人との関係において、時間的、空間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務の提供をし、その対価として支給額の支給を受けていたということができることから、各キャストへの支給額は、各キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当すると判断した。   【事案の概要(第1事件についてのみ)】 武蔵野税務署長は原告に対して、原告はいわゆるキャバクラ店を経営し、各店舗に勤務する各ホステス及び各従業員並びに原告がキャバクラ事業の管理を行っていた事務所に勤務する各従業員に対し、給与等を支給していたにもかかわらず、原告が給与等の支払者ではないかのように仮装し、源泉所得税をいずれも各法定納期限までに国に納付しなかったとして、平成14年1月から平成17年4月までの各月分の源泉所得税の各納税告知処分及び重加算税の各賦課決定処分を受けたため、上記各処分の取消しを求める審査請求を国税不服審判所長にしたところ、国税不服審判所長から、上記各処分の一部を取り消し、その他の審査請求を却下ないし棄却する旨の裁決を受けたことについて、原告は、各ホステスらに支払われた金銭に係る源泉徴収義務者ではなく、また、上記裁決には、源泉所得税額の計算の基礎とされた各ホステスらに支払われた金銭の金額の明細の認定判断が示されていない違法があるなどと主張し、上記各処分及び上記裁決の取消しを求める事案である。 《第1事件》の争点は上記のとおり多岐にわたっているが、本稿では、〔1〕各ホステスに支払われた金銭が、給与等(所得税法28条1項、183条1項)に該当するか否かについてのみ、第一審である東京地方裁判所の判断を検討したい。   【ホステスに支払った金銭が給与に該当するか否か】 1 被告(国・処分行政庁)の主張 各キャバクラ店に勤務する各ホステスは、事前に原告と合意した勤務形態に基づき各店舗において管理され、それぞれ所定の就業時間及び就業場所において接客等をしていたものであり、原告又は各店長から空間的、時間的な拘束を受け、継続的に労務又は役務の提供をし、その接客等の労務提供の対価として、所定の時給を基礎に算定される一定の保証がされた現金の支払いを受けていたものであり、給与支給者との関係において、その提供した労務又は役務の対価として現金の支給を受けていたのであるから、原告から各ホステスに支払われていた金銭は、所得税法28条1項に規定する給与等に該当し、同項に規定する給与所得に該当する。 2 原告の主張 各店舗に勤務する各ホステスについて、出勤日や入退店時刻等は、各ホステスと各店長との話合いで決められており、各ホステスへの支給額は、売上バック制度や同伴バック制度等によって加算されており、各ホステスの技能や人気に応じて大きく増減しているのであって、給与といえず、各ホステスが行っていたホステス業は、所得税法27条1項に規定するサービス業その他の事業であり、各ホステスに支払われた金銭は、同法204条1項6号に規定する報酬に該当し、同法28条1項に規定する給与所得ではなく、同法27条1項に規定する事業所得に該当する。 3 裁判所の判断 裁判所は、前掲の裁決における審判所と同様、まず、事業所得について、次のように判示した。 その上で、ホステスに支払われた金銭の性質について、次のような事実認定を行った。 こうした事実認定から、裁判所は、各ホステスは、各店長の指揮命令に服して、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務を提供し、その対価として、時給に勤務時間を乗じるなどして算出された金額の現金を日払い又は月払いにより支給されていたものというべきであって、各ホステスに支払われた金銭は、所得税法28条1項に規定する給与等に該当し、同項に規定する給与所得に該当すると認められると判断した。 4 控訴審における争点 控訴審では、控訴人が源泉徴収義務を負うか否かが争点となっており、ホステスに支払われた金銭が給与所得に該当するか否かという争点に関しては、原審である東京地方裁判所の判断が確定している。   【解説】 ホステスに支払う報酬に係る源泉所得税が争点となった有名な事件である最高裁判所(第三小法廷)平成22年3月2日判決では、あくまで、ホステスが支払いを受ける金銭は「報酬・料金」であることを前提として、報酬の額から控除する概算控除額(1日につき5,000円)を計算するに際しての「計算期間の日数」が争点となった事件であった。判決でも触れているように、概算控除額を控除した残額に源泉所得税として徴収すべき税率を乗じることは、ホステスが受け取った「報酬・料金」について、当然に事業所得として確定申告を行うことが前提となって訴訟が進められており、本稿で取り上げた裁決・判決とは異なっている。 そこで、この最高裁判決の第1審であるさいたま地方裁判所平成18年5月24日判決から、経営者・店長によるホステスの出勤状況の管理に該当する部分を引用する(一部省略している)。 上記の「原告におけるホステスの報酬の計算方法等」については、集計期間における各ホステスの指名個数に応じた時間当たりの報酬額に勤務した時間数を乗じて計算した額に手当を加算し、税・厚生費として集計期間におけるホステス報酬の12%を乗じた金額を減算すると決められている。 こうした判決文からは、ホステス(キャスト)に支払った金銭を給与所得と認定した上記の裁決・判決と際立った違いは見てとれないところである。上記の裁決・判決が、経営者又は店長による出勤管理に焦点を当てて、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供を行っていると判断されたこと、最高裁判決では触れられていないが、この事案では、指名客に対する売掛金の回収責任がホステスにあったのかもしれないということが「自己の計算と危険において」という事業所得の意義につながったのかもしれないところであるが、いずれも推測の域を出ない。 むしろ、かなり特別な職業であったはずのホステスが、キャバクラやガールズバーなどが流行したことによって、副業やアルバイト感覚で入店する女性が増え、とても事業所得とは認定できないケースが増えたことや、クレジットカード決済が浸透して、「売掛金の回収」という行為そのものがなくなってきている現状では、「自己の計算と危険において」という昭和56年当時の最高裁判決への当てはめが難しくなっていることが、裁判所・国税不服審判所の判断を超えているのではないだろうか。 所得税法第204条第1項第6号は、そろそろその役目を終え、削除される時期が到来しているのかもしれない。   (了)

#No. 298(掲載号)
#米澤 勝
2018/12/13

金融・投資商品の税務Q&A 【Q41】「上場外国株式の譲渡損についての損益通算の可否」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q41】 「上場外国株式の譲渡損についての損益通算の可否」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 株式の譲渡から生じた損益に係る損益通算の概要 上場株式等の譲渡から生じる所得については、他の所得と区分し、上場株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(以下、「上場株式等に係る譲渡所得等」)として、申告分離課税(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。上場株式等が証券会社等の特定口座内の源泉徴収選択口座で保管されており譲渡益について証券会社等により源泉徴収がなされる場合を除き、原則として申告が必要となります。 一方、上場株式等の譲渡について譲渡損が生じた場合は、特に申告を行う必要はありません。ただし、①他の上場株式等の譲渡益と損益通算する場合、又は②上場株式等の配当所得等(申告分離課税を選択したもの)と通算する場合は、特定口座内で損益通算が行われる場合を除き、申告を行う必要があります。また、上場株式等の譲渡損失について翌年以降3年間繰り越す場合も申告を行う必要があります。 この場合において、上記の②(上場株式等に係る配当所得等との損益通算)又は譲渡損失の繰越控除に関しては、譲渡が以下を含む一定の場合に限られています。 上記①の「金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者又は同法第2条第11項に規定する登録金融機関」とは、日本で金融商品取引法上の登録を受けた者をいいますので、外国に所在する証券会社は含まれません。したがって、外国に所在する証券会社に売委託又は当該証券会社に対して譲渡した場合等は、原則として上場株式等の配当所得等との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除の対象とはなりません(上記⑨⑩の日本の信託財産として保有されている外国株式を譲渡する場合を除く)。 なお、上場株式等の譲渡に係る譲渡損は、非上場株式の譲渡に係る譲渡益との損益通算を行うことはできません。また、他の所得(給与所得や雑所得等)との損益通算もできません。   2 本件へのあてはめ 本件の上場外国株式等の譲渡から生じた譲渡損については、1に記載のとおり、他の上場株式等の譲渡益と損益通算を行うことができます。したがって、他に上場株式等(国内、国外株式を問わず、特定口座に保管されているかどうかも問いません)の譲渡益がある場合は、申告を行うことにより損益を通算することができます。 一方、本件の上場株式等の譲渡は外国の証券会社を通じて行われることから、上場株式等の配当所得等との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除を行うことはできません。また、それ以外の所得との損益通算もできません。 (了)

#No. 298(掲載号)
#箱田 晶子
2018/12/13

〈桃太郎で理解する〉収益認識に関する会計基準 【第1回】「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」

〈桃太郎で理解する〉 収益認識に関する会計基準 【第1回】 「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」 公認会計士 石王丸 周夫   ◆この連載のねらい◆ これは単なる新会計基準ではありません。“これ”というのは、2018年3月に公表された「収益認識に関する会計基準」のことです(この連載では以下、収益認識会計基準と呼びます)。 収益認識会計基準は、新しい時代を見据えた、革新性の高い会計基準です。この会計基準には、これまでの日本の会計基準とは明らかに異なる点が1つあります。 それは、「製造業中心思考ではない」という点です。 従来の収益に関する会計ルールは、「出荷基準」という用語に見られるとおり、製造業を前提としていることを感じさせるものでしたが、収益認識会計基準では、「履行義務の充足」という抽象的な表現が中心になっており、製造業を強く感じさせるような表現は見当たりません。 これは、IFRS(国際財務報告基準)のルールをほぼそのまま取り入れたことにもよりますが、そもそもIFRSの収益認識ルールが、モノづくりの枠を超えた多種多様な経済を前提としているということも、背景として見逃すことができません。 そのため、従来の感覚でこの会計基準を読むと、「何を言おうとしているのかよくわからない」と感じてしまうのです。 この連載では、その難解な会計基準のエッセンスを、誰もが知っている『桃太郎』の話を引き合いにして、やさしく解説していきます。イヌ・サル・キジたちが桃太郎からもらった「きびだんご」を、イヌ・サル・キジにとっての「収益」とみなし、イヌ・サル・キジがその収益をどのように認識すればよいかということを考えていきます。 なお、この連載はエッセンスのみを取り上げていることから、収益認識会計基準の内容について割愛した部分が多くあります。それらについては他の解説書をご参照いただくようお願い申し上げます。   1 桃太郎とイヌ・サル・キジの契約 連載最初のテーマは「契約」です。 契約というのは、何も私たちの時代だけに限ったことではありません。それに似たことは、はるか昔からありました。どれくらい昔からかというと、少なくともこれくらい昔でも、契約みたいなものはありました。 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。 おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。 皆さん、おわかりでしょうか。あの『桃太郎』です。 このあと、おばあさんが家に持ち帰った桃から桃太郎が生まれ、大きくなった桃太郎は鬼退治に行くのでしたね。 そして、以下が「契約」の登場する場面です。 桃太郎は、おばあさんの作ったきびだんごを持って、鬼ヶ島にむけて出発しました。すると、その途中で、イヌがワンワンとやってきました。 「桃太郎さん、お腰につけたきびだんごを1つくださいな。」 「鬼退治に一緒について来るならあげましょう。」 こうして、きびだんごをもらったイヌは、桃太郎と一緒に歩いていきました。 これがなぜ契約だかわかりますか。 それは、桃太郎とイヌが「約束」を取り交わしているからです。こんな感じにです。 ここでは契約書は作成しておらず、口頭での約束で終わっています。しかし、契約というのは、書面によらずとも、当事者同士が口頭で約束すれば成立します。これは立派な契約です。 そしてこの契約により、イヌは「サービス売上を計上する」ことになります。 ご存じのとおり、桃太郎はこのあと、サルとキジにも出会い、同様の契約を締結します。   2 契約の内容を確かめることが大切 桃太郎とイヌ・サル・キジたちは、契約をしましたが、契約書はありません。鬼退治同行の約束をすると同時にきびだんごをもらえるので、店頭での現金売りと同じ感覚で、契約書は作成しなかったのではないでしょうか。 しかし・・・イヌ・サル・キジとしては、これはちょっとうかつでしたねぇ。 鬼退治に同行するといっても、いったいどんなことをやらされるのか分からないじゃないですか。 「長期化した場合に追加のきびだんごはあるのか」とか、「ケガをした場合の保障はあるのか」とか、「宝物を手に入れた場合の分け前はどうなるのか」とか、気になることはいくらでもあります。 そういう細かいことを確認せずに仕事をしてしまって、本当に大丈夫なんでしょうか。 イヌ・サル・キジが販売したものは、目に見えるモノではありません。目に見えない無形のサービスです。そういう場合は一般的に、当事者間の合意内容を書面に記録し、契約書として残しておくことが多いのです。 目に見えない約束は、あとで揉めごとが起きないとも限りませんので、そうした事態を避けるため、契約書を作成して「見える化」するというわけです。 イヌ・サル・キジは、それをやらなかったのですね。 いずれにしても、「目に見えない取引」を実行する場合は、モノの販売と違って、「サービスの範囲はどこまでか」とか、「予定していた作業量を大幅に超えた場合の追加報酬はあるのか」といったことも確かめておく必要があります。 なぜなら、そうした細かいことが、収益の計上に際して関係してくるからです。 つまり、イヌ・サル・キジたちは、桃太郎との取引で契約書を作りませんでしたが、サービス売上の計上処理を行うにあたっては、取引条件の詳細を知っておくことが不可欠だというわけです。 次回から解説していきますが、収益認識会計基準では、収益認識というのは「契約の内容をよく確かめる」ことからスタートするとなっています。それは上記のような「目に見えない取引」を念頭に置いているからです。 ところで、現代社会においては、この「目に見えない取引」というのが、近年かなり増えてきました。サービス産業やIT産業の営業取引がその代表格ですが、それだけではありません。製造業であっても、技術やノウハウ、ブランドやデザインといった知的財産から派生する収益への関心が年々高まってきています。特に欧米では、社会経済の関心は、モノではなく、目に見えない財産権のほうに完全に移っています。 実は、収益認識会計基準が登場した背景はここにあるのです。 収益認識会計基準というのは、モノへの関心が強かった近代工業社会ではなく、それに代わって到来した新しい社会のために作られた会計基準なのです。 ▷今回のまとめ 収益の認識は、まず、契約内容を確かめることから始めます。 (了)

#No. 298(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/12/13

「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第9回】

「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第9回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   15 顧客により行使されない権利(非行使部分) (1) 顧客により行使されない権利(非行使部分) 顧客から企業に、返金が不要な前払いがなされた場合、将来において企業から財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与され、企業は当該財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)義務を負うが、顧客は当該権利のすべてを行使しない場合がある。この顧客により行使されない権利を「非行使部分」という(適用指針53)。例えば、商品券等が該当する。 ① 会計処理 将来において財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)履行義務については、顧客から支払を受けた時は、支払を受けた金額で契約負債を認識する(適用指針52)。 そして、財又はサービスを移転し、履行義務を充足した時に、契約負債を取り崩し、収益を認識する。 一方、契約負債の非行使部分については、顧客が権利を行使するかどうかの状況を判断し、その状況により以下のとおり収益を認識する(適用指針54)。 (2) 顧客により行使されない権利(非行使部分)(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響    16 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払 (1) 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払 顧客が契約において取引開始日又はその前後に、返金が不要な支払が必要となる場合ある。これを返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払という。 例えば、返金義務のないスポーツクラブ会員契約の入会手数料、電気通信契約の加入手数料、サービス契約のセットアップ手数料、供給契約の当初手数料、不動産賃貸借契約の礼金等がある(適用指針141)。 ① 顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかの判断 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払は、その支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかによって会計処理が異なる。 そのため、契約における取引開始日又はその前後に、顧客から返金が不要な支払を受ける場合、まず、履行義務を識別するために、顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかを判断する(適用指針57)。 なお、返金が不要な契約における「取引開始日」の顧客からの支払は、通常、企業が契約における取引開始日又はその前後において「契約を履行するために行う活動」に関連するが、当該活動は約束した財又はサービスを顧客に移転させるものではない(適用指針142)。つまり、当該活動自体は履行義務ではない。 ② 会計処理 顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかにより、会計処理は以下のとおりとなる(適用指針58、59)。 (2) 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 17 ライセンスの供与 (1) ライセンスの供与 ライセンスとは、企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものである(指針61)。例えば、ソフトウェア、フランチャイズ、動画、音楽、特許権、商標権、著作権などがある。 ① ライセンスの供与は他の財又はサービスと別個のものであるかの判断 契約にライセンスの供与が含まれる場合、契約に含まれる他の財又はサービスと別個のものである場合、会計処理の単位が異なるため、まず、ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであるかどうかを判断する。 そして、ライセンスの供与が、契約における他の財又はサービスと別個のものである場合、ライセンス部分とその他の財又サービス部分を別々の履行義務として会計処理する。また、別個でない場合、1つの履行義務として会計処理する。 ② ライセンスを供与する約束が別個のものでない場合の会計処理 上記①の結果、ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものでない場合には、ライセンスを供与する約束と当該他の財又はサービスを移転する約束の両方を一括して単一の履行義務として処理し、【STEP5】に従い収益を認識する(適用指針61)。 ③ ライセンスを供与する約束が別個のものである場合の会計処理(総論) 上記①の結果、ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものである場合には、ライセンスを供与する約束と他の財又はサービスを移転する約束は、別々の履行義務であるため、取引価格をそれぞれに配分し、別々に収益を認識する。 基本的な会計処理は、上記のとおりだが、ライセンスを供与する約束の収益認識については、以下④の特有の論点がある。 ④ ライセンスを供与する約束の会計処理 (ⅰ) アクセスする権利か使用する権利かの判定 ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであり、ライセンスを供与する約束が独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、顧客に以下のいずれを提供するものかを判定する(適用指針62)。 具体的には、以下のように判定する。 ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、以下の要件のすべてに該当する場合には、顧客が権利を有している知的財産の形態、機能性又は価値が継続的に変化していて、企業の知的財産にアクセスする権利を提供するものとなる(適用指針63)。いずれかに該当しない場合は、企業の知的財産を使用する権利となる(適用指針64)。 なお、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたっては、以下の要因は考慮しない(適用指針66、148)。 (ⅱ) ライセンスを供与する約束の会計処理 上記の(ⅰ)の判定の結果、アクセスする権利か使用する権利かにより、以下のように会計処理する(適用指針62、147)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) ライセンスの供与(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (了)

#No. 298(掲載号)
#西田 友洋
2018/12/13
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