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《速報解説》 金融庁、「コンテンツ事業に関するQ&A」を公表~映画製作等のコンテンツ事業における資金調達時の金商法適用関係を明確化~

《速報解説》 金融庁、「コンテンツ事業に関するQ&A」を公表 ~映画製作等のコンテンツ事業における資金調達時の金商法適用関係を明確化~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年5月31日、金融庁は、「コンテンツ事業に関するQ&A」を公表した。 これは、映画製作等のコンテンツ事業における資金調達時の金融商品取引法の適用関係を明確化するために取りまとめたものである。 なお、コンテンツ事業における資金調達に活用可能なスキームについて、「コンテンツ事業における資金調達について」として整理し、併せて公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「コンテンツ事業に関するQ&A」は(問1)から(問8)までで構成されており、各問の概要は次のとおりである。 回答については、法令の解釈に関係するので、各問の答を直接お読みいただきたい。 (問1) 製作委員会方式によって、映画製作のために出資を募る際の金融商品取引法の適用 (問2) ある映画の製作委員会に出資している企業がその映画とのコラボレーション商品の販売やタイアップCMの放送、映画フェアの開催をする場合の金融商品取引法の適用 (問3) 製作委員会に出資している企業がプロダクト・プレイスメント(自社製品を映画の中で目立つような形で取り上げてもらうことで自社の宣伝を行う手法)を行う場合の金融商品取引法の適用 (問4) ある映画の製作委員会に出資している企業がその映画の前売券の販売を行う場合の金融商品取引法の適用 (問5) 製作委員会に出資している海外の企業(ディストリビューター)が、海外における興行権、放映権、ビデオグラム化権をはじめとした広範にわたる利用権に係る事業(例えば、これらの権利のライセンス付与など)を行う場合の金融商品取引法の適用 (問6) 製作委員会に出資している企業自身ではなく、その親会社もしくは子会社が製作委員会が行うコンテンツ事業に従事している場合の金融商品取引法の適用 (問7) 海外で興行などを行う企業(海外企業)が、製作委員会に出資している企業(国内企業)に対して、その映画から生じる利益を受ける権利を得るために出資する場合の金融商品取引法の適用 (問8) 例えば寄付型・購入型クラウドファンディングなどのように、出資額を超えるリターンを受ける権利がない資金提供(寄付金を含む)を募る場合の金融商品取引法の適用 (了)

#No. 220(掲載号)
#阿部 光成
2017/06/01

《速報解説》 経産省、企業経営者と投資家による「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」を公表~ESG投資・非財務情報等の重要性を示す~

《速報解説》 経産省、企業経営者と投資家による 「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」を公表 ~ESG投資・非財務情報等の重要性を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年5月29日、経済産業省は、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-(価値協創ガイダンス)」を公表した。 これは、経済産業省に設置された「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」における検討に基づいて策定されたものであり、企業価値向上に向けて、企業経営者と投資家が対話を行い、経営戦略や非財務情報等の開示やそれらを評価する際の手引となるガイダンス(指針)である。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ ガイダンスの全体像 ガイダンスの全体像は次のとおりである。 ガイダンスは表紙を含めて27ページあるので、以下では主な内容と思われる事項について解説する。 1 価値観 企業は、企業理念等を示し、その体現方法などの基本的な考え方を示すべきであるとしている。 投資家は、企業の目指すべき方向や優先課題を理解することで、企業の経営戦略や主要なKPI(Key Performance Indicator)、その達成のために必要な取組期間を踏まえた実施計画等を適切に評価することができるとしている。 2 ビジネスモデル ビジネスモデルとは、企業が事業を行うことで、顧客や社会に価値を提供し、それを持続的な企業価値向上につなげていく仕組みであり、「ビジネスモデルがある」とは、中長期で見たときに成長率、利益率、資本生産性等が比較対象企業よりも高い水準であることであるとしている。 投資家にとって、ビジネスモデルは企業の持続的な収益力(すなわち「稼ぐ力」)を評価する上で最も重要な見取図であるとしている。 3 持続可能性・成長性 企業が持続的に価値を高めていくためには、①明確なビジネスモデルが存在すること、②持続可能であること(サステナビリティ)、③成長性を持つものであることが求められるとし、そのためにはまず自社のビジネスモデルを持続・成長させる上で脅威となり得る要素は何かを把握する必要があると述べている。 長期的な視野に立つ投資家が、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))といった要素を重視していることも述べている。 4 戦略 戦略は、想定されるリスクに備え、競争優位の源泉となる経営資源・無形資産やステークホルダーとの関係を維持・強化することで持続的なビジネスモデルを実現するものとしている。 企業は、経営戦略や事業戦略といった様々なレベルでの戦略を実行することで成長性を獲得し、投資家を含むステークホルダーからの信任を得ることで共同利益を拡大し、社会的価値を創造し続けることができるとしている。 投資家には、長期の価値創造ストーリーの中で、社会課題(ESG等)の組み込みやステークホルダーとの関係の構築など、ビジネスモデル及び持続可能性・成長性で示した内容を実現するための戦略を伝えるべきであるとしている。 5 成果(パフォーマンス)と重要な成果指標(KPI) 企業が持続的な企業価値を向上させるためには、まず自社がこれまで経済的価値をどのぐらい創出してきたかを振り返るとともに、経営者が財務的な業績をどのように分析、評価しているかを示すべきであると述べている。 投資家には、企業が事業を通じて自らの価値観を具体化し、企業価値を高めていくための道標として、また、その達成度を測る尺度として、成果を評価する重要指標(KPI:Key Performance Indicator)を予め定め、示しておくことが有益であるとしている。 企業の持続的な企業価値向上は、中長期的に資本コストを上回る財務パフォーマンス(キャッシュリターン)をあげることによって実現され、投資家はそうした価値創造に期待して長期投資を行うことができるとしている。 6 ガバナンス 投資家にとって、企業がビジネスモデルを実現するための戦略を着実に実行し、持続的に企業価値を高める方向で規律付けられるガバナンスの仕組みが存在し、適切に機能していることは不可欠な条件であるとしている。 (了)

#No. 220(掲載号)
#阿部 光成
2017/06/01

プロフェッションジャーナル No.220が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年6月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.220を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/06/01

monthly TAX views -No.53-「政府税調、今年の課題は「記入済み申告制度」」

monthly TAX views -No.53- 「政府税調、今年の課題は「記入済み申告制度」」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   政府税制調査会の議論が6月から再開される。 昨年の議論では、配偶者控除は、夫婦控除への転換ではなく、控除対象範囲の拡大という「逆方向」で決着がつき、安倍政権のもとでは税収中立ですら「増税は難しい」ことが思い知らされた。「所得控除から税額控除へ」と政府税調は言ってはいるが、実現可能性は低い。 では、今年一年(正確には11月頃まで)、政府税調は何を議論するのだろうか。 *  *  * カギは政府税制調査会委員の海外出張にある。本年1月開催の政府税制調査会では、「納税実務等を巡る近年の環境変化への対応に向けた海外調査」が行われることが決まった。 その趣旨は とされている。 現に政府税調委員は、4月下旬~5月上旬頃にかけて、米国、カナダ、英国、フランス、スウェーデン、韓国などに出張した。 この海外調査で得られた「税務手続の電子化など、納税者の利便性向上に係る諸制度とその運用状況」及び「情報収集のあり方など、適正公平な課税の実現に係る諸制度とその運用状況等」を参考に議論が始まると思われる。 *  *  * 筆者が関心を持っているのは、「記入済み申告制度」である。 この制度は、納税者サービスの一環として行われているもので、税務当局が番号(マイナンバー)を活用して収集した納税者の情報を、納税者の申告利便のために1年に一回、納税者にフィードバックするというものである。 例えば、雇用主や金融機関等から提出された源泉徴収票などに記載されている収入金額や源泉徴収税額などを申告書に記入して納税者に送付し、納税者はその内容を確認、必要に応じ修正して申告する。 税務当局も、申告書の収受後に内容を審査する従来の方式に比べて、申告間違いや記入漏れといった単純なミスを予め防止できるため、申告書収受後の事務が効率化されるというメリットがある。 *  *  * この制度の導入が最も進んでいるスウェーデンをみてみよう。 税務当局から送付されてきた申告書に、給与、利子所得、配当所得などと並んで、支払税額(国税・地方税)、税額控除額などが記入されている。驚くべきことに、納税者の税の過不足額(追加納税額や還付額)まで計算・記入されている。 スウェーデンの記入済み申告書(イメージ) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※1) スウェーデン国税庁からのヒアリングの際に入手した記入済み申告書サンプルより作成 (※2) イメージの中の「矢印」「注書き」は事務局による記載 (出典:金融税制・番号制度研究会作成) わが国でも、マイナンバー制度の一環として本年9月頃から開始されるマイナポータルをe-Taxと結びつけて「日本型記入済み申告制度」が可能になる日も近いかもしれない。 マイナポータルの「情報提供等記録開示システム」や「電子私書箱機能」を活用することにより、保険者からの医療支払情報の入手、生・損保の保険料控除や住宅ローン控除に必要な証明書の電子的受取りが可能となるので、これをe-Taxと連動させれば、簡素な記入済み申告が可能となる。 さらには、クレジットカードなど民間の決済サービスと連動する「電子決済機能」を使って納税まで可能になる。 なお、筆者は、金融税制・番号制度研究会でその具体案を提言している。 詳しくは下記リンク先を参照してほしい。 すでに多くの欧州諸国において導入されているこの制度が日本でも導入されれば、医療費控除なども容易になるし、将来的には、サラリーマンが年末調整の代わりに自らの追加的な経費を自己申告できるような制度も可能になる。 ぜひ海外出張の成果を生かした議論をしてほしいものだ。 (了)

#No. 220(掲載号)
#森信 茂樹
2017/06/01

役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第2回】「定期同額給与及び事前確定届出給与に関する改正」

役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第2回】 「定期同額給与及び事前確定届出給与に関する改正」   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子   1  定期同額給与に関する改正 定期同額給与(法人税法34条1項1号)とは、〔図表1〕の1から3のいずれかに該当する給与をいう。平成29年度税制改正による改正点は、下記1及び2・イに関するものである。 〔図表1〕 定期同額給与の類型と平成29年度改正点 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 上記1の改正の趣旨は、従来、月額報酬が定額でも、源泉税等の額の変動により各支給時期の支給額が同額とならない場合に、形式的に、定期同額給与に該当しないと取り扱われてきた点を改めることにある。 実務においては、例えば、外国役員への給与について、日本における所得税や社会保険料等を法人の実質的負担とするべく、当該金額を上乗せして給与を支払う場合が少なくない。当該改正により、これらの控除後の金額が同額である場合についても、定期同額給与として扱うことが可能となる。 また、上記2・イの改正の趣旨は、定期同額給与の改定の期限について、平成29年度税制改正による、確定申告書の提出期限の延長の特例の見直しを反映することにある。 会計監査人設置会社(内国法人)においては、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から3ヶ月以内に当該年度に関する定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、特別の事情がない限り、法定申告期限からさらに最長で4ヶ月(各事業年度末から6ヶ月)の申告期限の延長が認められることとなった(法人税法75の2条1項)。 かかる特例の指定を受けた内国法人においては、定期同額給与の改定期限は、当該延長の指定月数に2を加えた月数を経過する日となる。例えば、3月決算の会社において、当該特例により申告期限が7月末とされた場合(つまり、延長の指定に係る月数が「2」である場合)は、4月1日から起算して4ヶ月を経過する日である7月末が改定期限となる。 (※) 上記下線部分につきまして、本稿公開時、改定期限を9月末としておりましたが、正しくは上記の通りです。お詫びの上、訂正させていただきます。   2  事前確定届出給与に関する改正 事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与であり、原則として、法定の届出期限までに納税地の所轄税務署長にその事前確定届出給与に関する定めの内容に関する届出をしているものをいう(法人税法34条1項2号)。 平成29年度税制改正による事前届出確定給与に関する改正の概要は〔図表2〕の通りであるが、主要な改正点は3つある。 第1は、支給対象の拡充(株式及び新株予約権をも支給対象とするよう横断的な整理がなされたこと)、第2は、支給対象の拡充に伴う事前届出の要否の整理、また、第3は、譲渡制限付株式に関する要件の見直し(次稿で検討する)である。 〔図表2〕 事前届出確定給与に関する改正の概要 (※1) ②の「株式」には、譲渡制限付株式が含まれる。 (※2) ②・③における「株式」は、市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式で、役員が在籍する法人又はその関係法人が発行したもの(適格株式)に限られる。また、「新株予約権」は、その行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権で、役員が在籍する法人又はその関係法人が発行したもの(適格新株予約権)に限られる。  また、「関係法人」は、50%超の株式又は持分を保有する関係にある法人が含まれる(法人税法2条12号の7の5)。 主要改正点の第1、支給対象の拡充は、従来、事前確定届出給与には、現物資産により支給するものは含まれないとされ、例外は、平成28年度税制改正で導入された特定譲渡制限付株式のみであった点(法基通9-2-15)を改め、確定した数の株式又は新株予約権(上記1・②)、及び確定した額の金銭債権に係る一定の譲渡制限付株式又は新株予約権(上記1・③)も対象に加えられた。 具体的には、上記の改正により、平成28年度税制改正により事前確定届出給与の対象となった譲渡制限付株式に加え、将来の一定の時期に株式を交付するもの(つまり事後交付型の譲渡制限付株式)や、業績連動要件が付されていない株式交付信託による株式報酬も、事前確定届出給与の対象に含まれることとなった。 なお、事前に報酬額が確定していて、交付直前の株価を参照して交付株式数を決定するような報酬で、端数部分を金銭交付するものも、事前確定届出給与の対象と認められている(法人税法施行令69条8項)。 主要改正点の第2、事前届出の要否の整理は、事前確定届出給与の支給対象として新株予約権も加えられたことに伴い、要件が再整理されたものである。 具体的には、平成28年度税制改正により導入された譲渡制限付株式に関する事前届出を不要とするための要件(将来の役務提供に係るものとして、職務の執行の開始の日から1ヶ月以内に株主総会等の決議により、所定の時期に確定額を支給する旨が定められ、その決議の日から1ヶ月以内に交付されるもの(特定譲渡制限付株式の要件))が、新株予約権による事前確定届出給与にも適用されることとなった(法人税法施行令69条3項)。 実務的には、当該改正に関しては、平成29年度税制改正の適用下(具体的な適用時期については前稿参照)で発行するストック・オプションについて、事前届出の省略のメリットを受けつつ、事前確定届出給与として損金算入を維持したい場合には、ストック・オプション発行スケジュールに上記の要件を組み込む必要がある点に十分に留意が必要である。 また、将来の一定の時期に株式を交付するもの(いわゆる、事後交付型の譲渡制限付株式)については、上記の届出不要の要件を満たさないため、事前届出が必要であることにも留意すべきである。 なお、原則通り事前届出が必要とされる場合にも、その時期については、定期同額給与の改定の期限に関する改正同様に、確定申告書の提出期限の延長の特例の指定を受けた内国法人においては、事前届出の期限は、当該延長の指定月数に3を加えた月数を経過する日となる(法人税法施行令69条4項)との改正がなされている。例えば、3月決算の会社において、当該特例により申告期限が7月末とされた場合(つまり、延長の指定に係る月数が「2」である場合)は、4月1日から起算して5ヶ月を経過する日である8月末が事前届出期限となる。 (※) 上記下線部分につきまして、本稿公開時、事前届出期限を10月末としておりましたが、正しくは上記の通りです。お詫びの上、訂正させていただきます。 (了)

#No. 220(掲載号)
#柴田 寛子
2017/06/01

電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる会計処理と税務Q&A 【第6回】「仮想通貨の譲渡の非課税措置」~平成29年度税制改正~

電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる 会計処理と税務Q&A 【第6回】 「仮想通貨の譲渡の非課税措置」 ~平成29年度税制改正~   公認会計士・税理士 八代醍 和也   A 本連載【第1回】で概要を述べたが、平成29年度税制改正では、ビットコインをはじめとする仮想通貨の譲渡取引について、消費税が非課税とされることになった。 今回は施行時期が近づくこの改正について、世間的な注目も相当高まっていることもあり、解説を加えてみたい。   1 改正の概要 【第1回】で述べたとおり、今回の改正は「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」)が改正され、その第2条5項において仮想通貨が定義されたことに加え、国際的な課税のバランス、今後の仮装通貨の利用増加の可能性等に考慮して、これを非課税とすることになったものである。 改正事項をまとめると次の3点である。 以下、これら各項目について説明を加える。   2 平成29年7月1日以後、資金決済法に定める仮想通貨の譲渡について消費税が非課税となる 資金決済法に定義された仮想通貨の譲渡が非課税になるというのは、単純に「消費税がかからなくなる」ということと分かるが、実務面では具体的にどのような場合が想定されるのか。 ビットコイン等の仮想通貨がどのようなものか関心はあるものの、実際の流通量が非常に限られたものであり、未だ一般に馴染みがないことから、そういった疑問も巷にはあるようである。 (1) 譲渡取引の3つのタイプ 実務的な観点で「仮想通貨の譲渡」とは何を指すのかという点については、主に以下の3点が考えられる。 ①の購入は分かりやすいが、②③の売却する場合については、要約すると仮想通貨の取得態様を問わず、仮想通貨そのもの譲渡して換金した場合がこれに該当する。したがって、仮想通貨を単に決済手段として物品の販売や購入を行った場合には、仮想通貨の譲渡を行ったことにはならない。 ちなみに、本稿の論点からは若干ずれるが、上記のような仮想通貨を決済手段とした売買取引を行った場合の課税上の取扱いについて規定する法人課税・所得課税上の明文規定は存在しないため、今後、税務行政上の手当・対応が必要と考えられるところである。 (2) 平成29年7月1日以後の譲渡から適用 適用開始時期にも留意が必要である。仮想通貨の譲渡(取得・売却を含む)について、当然ながら、改正法適用前の平成29年6月30日以前の取引については消費税の課税取引となるため、会計処理や消費税計算において誤りが生じないよう事務処理において留意が必要である。   3 仮想通貨の譲渡取引については、課税売上割合の算定上、資産の譲渡等には含めない 公表された改正消費税法施行令では、事業者が行う仮想通貨の譲渡の対価について、これを課税売上割合の計算から除外されることになった(いわゆる課税対象外取引)。 これも仮想通貨が資金決済法において法律上定義されたことを受け、消費税法上非課税売上高に含めないこととされる「支払手段の譲渡」に類するものと評価して、課税売上割合を算定するように措置したものである。 以下、具体的な計算を設例で紹介する。 設 例 上記課税売上割合の算式に基づき、改正前後の課税売上割合を計算すると、それぞれ次のようになる。 なお、当該改正点も平成29年7月1日以後の仮想通貨の譲渡から適用されるから、平成29年6月30日の属する課税期間においては、平成29年6月30日以前の仮想通貨の譲渡高は課税売上高に含め、平成29年7月1日以後の仮想通貨の譲渡高は上記計算に含めずに計算する必要があることに留意が必要である。   4 一定の経過措置が設けられる 平成29年6月30日現在において、税抜で100万円以上の仮想通貨(国内で譲受けを受けたものに限る)を有する場合、その保有数量が平成29年6月中の平均保有数量に対して増加した場合に、その増加分に係る消費税について仕入税額控除を認めないなどの経過措置が設けられた。 今般の改正に伴い、仮想通貨を平成29年6月中に大量に市場から購入し、これに係る消費税額について仕入税額控除を適用し、これを平成29年7月以後に譲渡することにより、消費税の負担を不当に軽減することに対する一定の制限が加えられた形となる。 (了)

#No. 220(掲載号)
#八代醍 和也
2017/06/01

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第16回】「買い換えた土地の上に親族が家屋を建築して同居した場合」-居住の用の判定-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第16回】 「買い換えた土地の上に親族が家屋を建築して同居した場合」 -居住の用の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、自己の居住用財産(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を5,000万円で譲渡し、その譲渡代金で新たに土地を取得しましたが、家屋の建築資金がないため、長男が銀行からその資金を借入れし、長男名義で家屋を建築させました。 Xは、長男と共にその家屋に居住していますが、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができるでしょうか。 A 「買換えの特例」の適用を受けることはできません。 ●○●○解説○●○● 「買換えの特例」は、買換資産を一定の時期までに、その譲渡者が居住の用に供することを要件として適用を受けることができるものですが、買換資産である土地等について、その土地等をその居住の用に供したかどうかは、その土地等の上にあるその譲渡者の所有する家屋をその譲渡者が居住の用に供したかどうかにより判定することとされています(措通36の2-17(買換資産を当該個人の用に供したことの意義))。 したがって、本事例の場合、X所有の家屋ではないことから、つまり、Xが買い換えた家屋でないため、その買い換えた土地はXの居住の用に供したことにはなりませんので、「買換えの特例」の適用を受けることができません。 なお、土地等と家屋の所有者が異なり、これらの所有者が生計を一にする親族である場合において、その家屋と土地等を一体として譲渡し、その譲渡代金でそれぞれ家屋と土地等を取得して、従前と同様に一体として利用してその家屋に、これらの者が居住(同居)した場合には、上記の例外として、その土地等の所有者についても、つまり、その土地等の上にある家屋の所有者が自己以外の者であっても、「買換えの特例」の適用を受けることができることとされています(措通36の2-19(居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合の取扱い))。 (了)

#No. 220(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/06/01

租税争訟レポート 【第32回】「租税特別措置法上の当初申告要件(東京地方裁判所判決)」

租税争訟レポート 【第32回】 「租税特別措置法上の当初申告要件 (東京地方裁判所判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     【事案の概要】 本件は、建物内外の保守管理・清掃業務・住宅リフォーム等を営む有限会社である原告が、平成26年3月期の事業年度に係る法人税の確定申告書の提出の際、租税特別措置法42条の12の4の規定による特別控除(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)の適用を失念していたとして、同条4項に規定する書類を添付し、上記特別控除を適用して計算し直した上で更正の請求をしたところ、所沢税務署長から、確定申告書に同条の規定による計算に関する明細を記載した書類の添付がないなどとして、いずれも更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、その取消しを求める事案である。 争点は、雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除の規定は、更正の請求によって、適用を受けることができるか否か、である。   【原告・納税者の主張】 原告は、以下のように理由を列挙したうえで、「更正請求書」のみに控除明細書の添付がある場合であっても、控除明細書に記載された「雇用者給与等支給増加額」と「控除を受ける金額」に基づき、本件特別控除が適用されるというべきであり、本件各通知処分は、違法なものであり、取り消されるべきである、と主張した。 1 措置法42条の12の4第4項前段は、「第1項の規定は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に同項の規定による控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。」と規定しており、控除明細書が添付された更正請求書が提出された場合にも、本件特別控除の適用があることは、条文の文言上明らかである。 2 措置法42条の12の4第4項後段の「当該確定申告書等」を中間申告書及び確定申告書に限定し、これらに添付された控除明細書による計算の限度で本件特別控除の適用が認められると解することは、措置法42条12の4第4項前段との整合性や申告納税制度の趣旨に照らして合理的とはいえない。 3 本件特別控除は、企業に対して税額控除というインセンティブを与えることにより、消費税等の増税で負担が増える給与所得者の給与等の増額を促すということを目的とするという意味で、極めてマクロ的な政策配慮に基づくものである。 また、措置法は、平成26年法律第10号附則82条は、平成26年3月31日以前に終了する事業年度についての経過措置を設け、「改正前の適用要件を充足していない場合であっても、改正後の適用要件を充足していれば、平成27年3月期に給与等の増額に伴う法人税等の税額控除に関する上乗せ適用ができる」という趣旨を規定し、給与等の増額を促すことにより消費税増税の負担を緩和するという極めてマクロ的な政策目的の実現を図ったのであるから、本件特別控除の適用範囲については、できる限り広範に解するのが立法者の意思に合致するというべきである。   【被告・課税庁の主張】 被告は、雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除の制度について、次のように、その趣旨を説明したうえで、当初申告要件が必要であることを主張した。 1 当初申告要件が満たされていないこと 措置法42条の12の4第4項前段の「確定申告書等」とは、中間申告書及び確定申告書をいい、それを受けた同項後段の「当該確定申告書等」も、同項前段の「確定申告書等」、すなわち、中間申告書及び確定申告書をいうのであって、修正申告書又は更正請求書を含まないことは明らかであり、本件特別控除によって控除される金額は、中間申告書及び確定申告書に添付された控除明細書に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額に限られるのであって、修正申告や更正の請求において、雇用者給与等支給増加額を増加することはできず、また、上記中間申告書及び確定申告書に控除明細書の添付がない場合には、当該各申告書に添付された控除明細書に記載された雇用者給与等支給増加額がないことになるから、修正申告や更正の請求において、本件特別控除の適用を受けることはできない。 原告は、本件法人税確定申告書に控除明細書を添付しなかったのであるから、本件各更正の請求において、本件特別控除の適用を受けることはできない。そうすると、本件法人税確定申告書の提出により納付すべき法人税額が過大であるとはいえない。 したがって、本件各更正の請求は、通則法23条1項1号に規定する場合には該当せず、本件各更正の請求に対しその更正をすべき理由はないものと認められるから、本件各通知処分は適法である。 2 原告の主張に理由がないこと (1) 措置法42条の12の4第4項の「確定申告書等」の意義については、措置法2条2項柱書き及び同項27号において、中間申告書及び確定申告書をいう旨明確に定義されているのであり、原告の主張は、これらの規定による定義を無視するものである。 また、措置法42条の12の4第4項前段において、「確定申告書等、修正申告書又は更正請求書」とされているのは、確定申告書等に添付した控除明細書に記載された雇用者給与等支給増加額以外の事項について、確定申告書等に記載された金額に変動がある場合には、当該事項について変更した修正申告や更正の請求を行うことができることを規定したものであり、本件特別控除は、措置法42条の12の4第4項後段のとおり、確定申告書等に添付した控除明細書に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額に限って適用を受けることができるのであって、雇用者給与等支給増加額の変更ないし適用を理由として修正申告又は更正の請求ができないことは法文上明らかというべきである。 (2) 特例措置の適用を受けるためには、実質的要件の有無にかかわらず、手続的要件の履践が必要であると解されることからすれば、措置法42条の12の4第4項後段は、確定申告書等(中間申告書及び確定申告書)に添付した控除明細書に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額に限って本件特別控除の適用を受けることができる旨明確に規定しているのであるから、実際に原告の本件事業年度において雇用者給与等支給増加額に該当する金額が存在していたとしても、適用要件である確定申告書への控除明細書の添付を欠く以上、本件特別控除を適用することはできないのであって、原告の主張は理由がない。 (3) 本件特別控除の制度を創設した立法者は、立法趣旨に基づいて法律を制定し、適用要件等に関して法律を改正し、経過措置を設ける一方、当該制度の目的・効果や課税の公平等の観点から、適用要件のハードルを下げて適用事業者を単に増やすといったことにならない様に配慮しているのであって、そもそも法律の定めを超えて広範に本件特別控除を適用することまで予定していたとは到底認められない。 (4) 最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決を受けて、法人税法68条3項が改正されたのは、同条が規定する所得税額控除の制度は、内国法人が支払を受ける利子及び配当等に対し法人税を賦課した場合、当該利子及び配当等につき源泉徴収される所得税との関係で同一課税主体による二重課税が生ずることから、これを排除する趣旨で、当該利子及び配当等に係る所得税の額を法人税の額から控除する旨規定したものであり、このような制度の目的・効果等に鑑みて、当初申告要件について廃止されたものである。本件特別控除と法人税法68条の所得税額控除では、制度の目的や性質が全く異なり、それによって当初申告要件の有無についても違いが生じているのであって、このことは、その規定内容が異なっていることからも明らかである。   【東京地方裁判所の判断】 東京地方裁判所は、本制度が求める当初申告要件について、まず、以下のように判示した。 その上で、原告の主張については、 とそれぞれ斥けた上で、結論として、以下のようにまとめて、「本件各通知処分について、その余の違法をうかがうこともできないから、本件各通知処分はいずれも適法であると結論づけた。   【解説】 法人税法上の当初申告要件が、本判決でも引用されている最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決により改正された一方、租税特別措置法上の当初申告要件はそのまま存続された。これは、本訴訟を通じて、国・処分行政庁が主張したように、「インセンティブ措置」については、当初申告要件を廃止することは適当ではないと判断されたためである。 本訴訟において、原告・納税者は、租税特別措置法上の当初申告要件についても、法人税法上の当初申告要件撤廃と同様の取扱いがされるべきであると主張したが、裁判所はそうした主張を一蹴した。そして、平成29年度税制改正でも、当初申告要件の見直しは行われたが、当初申告要件を堅持するとともに、納税者が立証すべき事項が明確化されるという形での改正となっている。 1 平成23年度税制改正による当初申告要件の撤廃 平成23年12月2日に公布された「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」により改正が行われた法人税法及び租税特別措置法のいわゆる「当初申告要件」及び「適用額の制限」については、国税庁は、「いわゆる当初申告要件及び適用額の制限の改正について」と題するQ&A集を公開している。 この改正では、法人税法における「受取配当等の益金不算入」など12の制度につき、当初申告要件が廃止されたことが説明されているが、この段階では、租税特別措置法においては、当初申告要件は存続することとされていた。 2 平成29年度税制改正 (1) 平成29年度税制改正大綱における当初申告要件の見直し 平成29年税制改正大綱では、「円滑・適正な納税のための環境整備」として、以下のように、当初申告要件の明確化などが織り込まれている。 (2) 所得税法等の一部を改正する等の法律案要綱 平成29年税制改正大綱公表時には、「当初申告要件の撤廃か」ということで話題になった租税特別措置法の一部改正であったが、法案段階において、「撤廃」ではなく「見直し」「要件の厳格化」といった改正に落ち着いた。 当初申告要件の見直しについて、財務省が公開している法律案要綱では、「十二 租税特別措置法の一部改正(第12条関係)」「2 法人課税」として、以下の表記がある(条文番号等は省略)。 (3) 改正後の雇用者給与等支給額が増加した場合の特別税額控除の規定 雇用者給与等支給額が増加した場合の特別税額控除の規定は、平成29年度税制改正に伴い、条文番号が、租税特別措置法第42条の12の5に改められるとともに、第4項からは、この改正前の措置法42条の12の4第4項後段部分が削除され、代わりに、適用できる申告書について、「確定申告書等(同項の規定により控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、当該修正申告書又は更正請求書を含む。)」という文言が加わり、「控除を受ける金額を増加させる」修正申告又は更正の請求においても適用可能であることが明記された。 しかし、本改正は、当初申告要件の撤廃ではなく、当初申告要件を維持したうえで、控除額が増加する場合の修正申告や更正の請求でも、要件を満たしている場合には控除額を変更できるよう、改正がされたと考えるべきである。   (了)

#No. 220(掲載号)
#米澤 勝
2017/06/01

〔経営上の発生事象で考える〕会計実務のポイント 【第15回】「工場を新設した場合」

〔経営上の発生事象で考える〕 会計実務のポイント 【第15回】 「工場を新設した場合」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 日本公認会計士協会準会員 素村 康一     1 建設仮勘定の計上と本勘定への振替 《解説》 建設中の建物等に対し、着工前や完成前に建設費用の一部を前払いすることがある。このときの支出は、工事が完成し、実際に引渡しを受けるまでは建設仮勘定に計上する。 そして、工事が完成し、実際に引渡しを受けた時点で、建設仮勘定から本勘定(建物、建物付属設備等)に振り替える。このため、建設仮勘定として計上する支出には資産性が求められ、修繕費等、当期の費用として計上すべきものが含められていないかどうかに留意が必要である。 また、本勘定に振り替えた後、実際に事業の用に供した時点(=稼働開始日)で、減価償却を開始する。引渡日と実際の稼働開始日が大きく異なる場合には、引き渡されていても、稼働開始日まで減価償却を開始しないこともあるため留意が必要である。   2 建設仮勘定の減損の検討 《解説》 減損の対象となる固定資産には、有形固定資産に属する建設仮勘定が含まれる(適用指針第68項)。 以下のような場合には、減損の兆候があると判定され、減損損失を認識するかどうかの判定が必要となる。 【減損の兆候の例示】 ① 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合 ② 使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合 ③ 経営環境の著しい悪化の場合 ④ 市場価額の著しい下落の場合 (適用指針第12項~第15項) 建設仮勘定に関しては、建設中であるため営業活動は生じていないものの、建設計画の中止又は大幅な延期が決定されたり、当初の計画に比べて著しく滞っていたりする場合には、②に該当する減損の兆候があるものとされ、減損損失を認識するかどうかの判定が必要となる(適用指針第13項)。 そして、減損損失の認識の判定に用いる将来キャッシュ・フローは、合理的な建設計画や使用計画等を考慮して、完成後に生ずると見込まれる将来キャッシュ・イン・フローから、完成まで及び完成後に生ずると見込まれる将来キャッシュ・アウト・フローを控除して見積もる。 この結果、割引前将来キャッシュ・フローが建設仮勘定の帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額と回収可能価額の差額を当期の損失とする。 〔設例〕 当社は新工場の建物を建設中であり、貸借対照表には当該建物に係る建設仮勘定が計上されている。X2年度に当該建設中の建物に減損の兆候が存在し、今後完成までに要する支出及び完成後に生ずる将来キャッシュ・フローを見積もったところ、以下の通りであった。 減損損失の認識の判定及び測定の際に使用する建設仮勘定等の割引前将来キャッシュ・フローは、合理的な使用計画に基づき、完成後に得られるであろうキャッシュ・イン・フローの見積額から、完成まで及び完成後の利用や処分に要するキャッシュ・アウト・フローの合理的な見積額を控除して算定することとなる。この結果、減損損失の認識の判定は以下のようになると考えられる。 そして、回収可能価額が100と算出されたとすると、以下のような会計処理となる。 (※) 減損損失計上額=150-100=50   3 建設仮勘定に対する資産除去債務の検討 《解説》 資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう(会計基準第3項(1))。 資産除去債務は、発生したときに負債として計上する。一方、資産除去債務に対応する除去費用は、当該負債計上額と同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加える。さらに、当該除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分する(会計基準第7項)。 資産除去債務の対象となる有形固定資産には、財務諸表等規則において有形固定資産に区分される資産のほか、それに準じる有形の資産も含む。したがって、建設仮勘定も対象に含まれることになる(会計基準第23項)。 そのため、建設仮勘定として計上した資産に、当該資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものが含まれている場合には、その時点で資産除去債務の計上が必要となる。 このとき、計上される資産除去債務に対応する除去費用は、建設仮勘定の帳簿価額に加えられ、工場が完成して事業の用に供したときから減価償却を通じて費用化されることとなる。   【検討事項のチェックリスト】 ~工場を新設した場合~ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 220(掲載号)
#竹本 泰明、素村 康一
2017/06/01

連結会計を学ぶ 【第4回】「連結の範囲に関する適用指針②」―子会社の範囲の決定―

連結会計を学ぶ 【第4回】 「連結の範囲に関する適用指針②」 ―子会社の範囲の決定―   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 前回に引き続き、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号。以下「連結範囲適用指針」という)にしたがって連結の範囲を解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社の範囲の決定 連結会計基準では、次のように、他の企業の意思決定機関を支配しているケースを規定している(連結会計基準7項)。 ① 他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業 ② 他の企業の議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において所有している企業であって、かつ、一定の要件に該当する企業 ③ 自己の計算において所有している議決権と、緊密な者及び同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めている企業であって、かつ、一定の要件の要件に該当する企業   連結範囲適用指針は、議決権の過半数を所有していないが他の企業の意思決定機関を支配しているケースについて、次のように規定している(連結範囲適用指針11項~15項)。 【議決権の過半数を所有していないが、他の企業の意思決定機関を支配しているケース】 連結の範囲については、日本公認会計士協会から「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の留意点についてのQ&A」(監査・保証実務委員会実務指針第88号)が公表されているので、連結の範囲を適切に判断するためには、当該実務指針にも注意が必要である。 (了)

#No. 220(掲載号)
#阿部 光成
2017/06/01
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