公開日: 2025/06/26 (掲載号:No.624)
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固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第50回】「鶏舎や牛舎は完全な周壁がないとしても一部を除いて「建物」として登記され、大規模で資産価値も相当高いから「構築物」ではなく「建物」であるとされた事例」

筆者: 菅野 真美

固定資産をめぐる判例・裁決例概説

【第50回】

「鶏舎や牛舎は完全な周壁がないとしても一部を除いて「建物」として登記され、大規模で資産価値も相当高いから「構築物」ではなく「建物」であるとされた事例」

 

税理士 菅野 真美

 

▷建物の定義

建物がどういうものかについては、税法において定義されていない。

固定資産税の評価基準となる家屋(建物)は「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物」(地法341三)と定められている。「家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること」(「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」第3章第1節第1二)とされている。

そこで、不動産登記法における建物の意義とは、「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない」(不動産登記規則111)とされている。この建物の意義を簡単な言葉で置き換えると、外気分断性、定着性、用途性といわれ、これが建物を登記する際の認定基準とされている。

このうち外気分断性について、「令和6基準年度東京都固定資産(家屋)評価事務取扱要領」第1章第1節第2の1によると、「外気分断性とは、建物の内部に外気が自由に出入りすることを防止するための屋根及び周壁等の存在をいう。これは、建物の用途に見合った空間が屋根及び周壁等によって確保されていることを必要とするものであるが、これらは、必ずしも物理的なものに限定する趣旨ではなく、用途に応じて判断することになる。つまり、仮に周壁のない建造物であっても、その使用目的、利用状況等に鑑み、概ね下界から区画された空間を形成し、またある程度の風雨等から人や物品を保護するに足るものであれば、外気分断性を満たすものとして差し支えない。」 とされているように、周壁については柔軟な取扱いが示されている。

ところで、家屋(建物)の定義において、家屋(建物)に該当しないものとして、「例えば、鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等は一般に社会通念上家屋とは認められないと考えるので、特にその構造その他からみて一般家屋との権衛上課税客体とせざるを得ないものを除いては、課税客体とはしない」(「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」第3章第1節第1二)とされている。

他方、耐用年数の適用等に関する取扱通達(耐用年数通達)では、「家畜、家禽、毛皮獣等の育成、肥育、採卵、採乳等の用に供する建物については、別表第一の『建物』に掲げる『と畜場用のもの』に含めることができる」(耐用年数通達2-1-8)とされている。

上記のような規定ぶりから家畜小屋について、建物に該当するか否かは一律に判断するのではなく、実体をみて判断することになると考えられる。今回は、牛舎、鶏舎が建物に該当するのかについて争われた事案を検討する。

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固定資産をめぐる判例・裁決例概説

【第50回】

「鶏舎や牛舎は完全な周壁がないとしても一部を除いて「建物」として登記され、大規模で資産価値も相当高いから「構築物」ではなく「建物」であるとされた事例」

 

税理士 菅野 真美

 

▷建物の定義

建物がどういうものかについては、税法において定義されていない。

固定資産税の評価基準となる家屋(建物)は「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物」(地法341三)と定められている。「家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること」(「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」第3章第1節第1二)とされている。

そこで、不動産登記法における建物の意義とは、「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない」(不動産登記規則111)とされている。この建物の意義を簡単な言葉で置き換えると、外気分断性、定着性、用途性といわれ、これが建物を登記する際の認定基準とされている。

このうち外気分断性について、「令和6基準年度東京都固定資産(家屋)評価事務取扱要領」第1章第1節第2の1によると、「外気分断性とは、建物の内部に外気が自由に出入りすることを防止するための屋根及び周壁等の存在をいう。これは、建物の用途に見合った空間が屋根及び周壁等によって確保されていることを必要とするものであるが、これらは、必ずしも物理的なものに限定する趣旨ではなく、用途に応じて判断することになる。つまり、仮に周壁のない建造物であっても、その使用目的、利用状況等に鑑み、概ね下界から区画された空間を形成し、またある程度の風雨等から人や物品を保護するに足るものであれば、外気分断性を満たすものとして差し支えない。」 とされているように、周壁については柔軟な取扱いが示されている。

ところで、家屋(建物)の定義において、家屋(建物)に該当しないものとして、「例えば、鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等は一般に社会通念上家屋とは認められないと考えるので、特にその構造その他からみて一般家屋との権衛上課税客体とせざるを得ないものを除いては、課税客体とはしない」(「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」第3章第1節第1二)とされている。

他方、耐用年数の適用等に関する取扱通達(耐用年数通達)では、「家畜、家禽、毛皮獣等の育成、肥育、採卵、採乳等の用に供する建物については、別表第一の『建物』に掲げる『と畜場用のもの』に含めることができる」(耐用年数通達2-1-8)とされている。

上記のような規定ぶりから家畜小屋について、建物に該当するか否かは一律に判断するのではなく、実体をみて判断することになると考えられる。今回は、牛舎、鶏舎が建物に該当するのかについて争われた事案を検討する。

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連載目次

固定資産をめぐる判例・裁決例概説

第1回~第30回 ※クリックするとご覧いただけます。

【第31回】~

筆者紹介

菅野 真美

(すがの・まみ)

税理士・社会福祉士・CFP

関西学院大学法学部政治学科卒業後、平成2年税理士試験合格。
平成18年まで新日本監査法人大阪事務所並びに関係会社において、監査並びに税務コンサルティング業務に従事。
その後、日本租税綜合研究所主任研究員を経て、税理士事務所開業。現在、東京税理士会芝支部、信託法学会会員、成年後見法学会会員。

【主な著書】
・『老後の備え・相続から教育資金贈与、事業承継まで 「信託」の基本と使い方がわかる本』日本実業出版社
・『税理士のために国外転出時課税と国際相続について考えてみました』中央経済社
・『申告なし・税金なしの贈与使いこなしQ&A 教育・結婚・子育て資金一括贈与+ジュニア NISA』中央経済社
・『顧問税理士なら答えて!個人の国際課税Q&A 結婚・転勤・移住・留学・運用・相続アラカルト80』(共著)中央経済社
・『教育資金の一括贈与非課税制度完全ガイド』中央経済社
他多数

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