谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第42回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成⑥【補論】-
前回まで22回にわたって「租税法律主義と租税回避との相克と調和」という主題の下、租税回避について様々な観点から検討してきたが、その検討は前回でひとまず置くこととして、次回からは租税法律主義それ自体の意義、内容等について改めて検討することにしたい。その前に、今回は、第15回の「租税法律主義と実質主義との相克-税法の目的論的解釈の過形成⑥」についてその「補論」として最近の判例を基に改めて検討しておくことにする。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第10回】「〔第1表の1〕株主判定と遺産分割のやり直し」
乙は甲から相続により、非上場会社であるA社の議決権総数のうち6%の株式を取得しています。筆頭株主は戊であり、議決権総数の94%の株式を有しています。A社の役員は、戊のみであり、甲の相続人である乙及び丙はいずれもA社の役員には該当していません。
甲の相続人から依頼を受けて相続税の申告を行ったB税理士法人は特例的評価方式(配当還元価額)によりA社の株式の評価を行いましたが、その後、甲の相続税の税務調査によりA社株式については、特例的評価方式(配当還元価額)は適用できず、原則的評価方式により評価するべきとして、増額更正処分を受けました。
遺産分割協議においては、乙がA社株式を取得する代わりに、丙に代償金を支払うことが前提となっており、代償金の算定においては、配当還元価額で評価したA社株式評価額の2分の1相当額で計算がなされていました。
そこで、当初の遺産分割協議において錯誤があったものとして取消しを主張し、A社の議決権総数6%の株式のうち、3%ずつを乙と丙が取得する旨の遺産分割協議書を作成すれば、更正の請求により特例的評価方式(配当還元価額)は認められるのでしょうか。また、遺産分割協議のやり直しとして、乙から丙に3%の株式の贈与があったものとして贈与税の課税対象になるのでしょうか。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例89(消費税)】 「同族会社に対する貸付金を減らすため建物による代物弁済を実行したが、簡易課税を選択しており建物取得に係る消費税の還付が受けられないことから、錯誤で取り消し、原則課税に戻してから再度実行したため、移転費用が二重にかかってしまった事例」
相続税対策として依頼者が代表者である同族会社に対する貸付金を減らすため、税理士の提案により、同族会社が所有する建物を依頼者に1億円で代物弁済することに決定し、令和X1年に実行した。
しかし、依頼者が簡易課税を選択しており、建物の取得に係る消費税の還付が受けられないことが判明したため、建物の所有権移転登記を錯誤で取り消し、令和X2年に原則課税へ戻してから再度実行することになった。
これにより、司法書士報酬及び登録免許税が二重にかかり、二度目の司法書士報酬及び登録免許税につき賠償請求を受けた。
令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第9回】「「適用時期」「経過措置」」
グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(令和2年所法等改正法附則14)。
〔弁護士目線でみた〕実務に活かす国税通則法 【第4回】「税務当局による課税処分(更正処分等)の意義」
読者の皆様は、税務訴訟における「事件名」を見られたことがあるだろうか。
税務訴訟の多くは、裁判所に更正処分等の取消しを求めるものであるが、例えば、法人税の更正処分を争う税務訴訟であれば、「法人税更正処分等取消請求事件」という名称(事件名)が付けられている。
今回は、この事件名における「更正処分等」の詳細、すなわち、税務当局が強制的に納税者の税額を確定しようとすることの意義について、改めて確認してみたい。
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第44回】「外国債の利子に係る個人の課税関係と救済措置」
日本の金融機関を通じて支払を受けた外国の国債の利子について、外国税額控除の適用を忘れていました。
更正の請求をすることで、税金の還付を受けることができますか。
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第25回】「非課税承認が取り消された場合の課税関係」
譲渡所得税の非課税承認が取り消された場合、どのような課税が生じますか。
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第50回】「建設協力金の会計処理」
建設協力金とは、ある土地及び建物を借りるにあたって、賃借人が賃貸人(土地の所有者)に建物の建設費用を預託する金銭のことをいう。一般的には、一定期間据え置き後に、利息とともに分割返済される(又は賃料と相殺される)のが一般的である。
今回は、賃借人の建設協力金の会計処理について解説する。
税効果会計を学ぶ 【第11回】「その他有価証券の評価差額に係る一時差異などに関する税効果」
その他有価証券の評価差額に係る一時差異は、原則として、個々の銘柄ごとにスケジューリングを行って、次のように繰延税金資産及び繰延税金負債を計上する(回収可能性適用指針38項)。
日本の企業税制 【第82回】「令和3年度税制改正における研究開発税制の課題」-見直し事項とグループ通算制度での取扱い-
令和3年度税制改正における法人課税関係の重要課題の1つが研究開発税制となることは間違いない。
研究開発税制は、企業が研究開発を行っている場合、法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合(6~14%)を乗じた金額を控除できる制度である。ただし、法人税額に対する控除上限がある(総額型と呼ばれる本体部分は、法人税額の25%)。
総額型の基本的部分は恒久措置であるが、税額控除割合の上限の引上げ(10%⇒14%)の部分は期限切れを迎える。また、平均売上金額に占める試験研究費の割合が10%を超える場合の控除率・控除上限の上乗せ措置も期限切れを迎えるからである(それぞれ令和2年度末まで)。