「調査の終了の際の手続に関する同意書」の役割と
税理士業務への影響
公認会計士・税理士
八ッ尾 順一
は じ め に
平成23年度税制改正によって「税務調査の終了の際の手続」については、税務当局の納税者に対する説明責任を強化する観点から、その内容について法令で明らかにされた。ただし、実質的には、下記に示すように「改正前」と「改正後」において、それほど差違があるわけではない。
しかしながら、これらの手続が法令化されたことによって、改正前のように税務当局の判断によってその一部を省略することができなくなり、税務当局は法令通り、一定の手続の下で執行しなければならなくなった。
その中で、納税義務者に対する説明が省略できるという「調査の終了の際の手続に関する同意書」は、国税通則法第74条の11第5項を根拠として作成されたものである。
本稿では改正前後における調査終了時の取扱いの差異について紹介するとともに、当該同意書の「記載例」を元に、税理士業務への影響について述べたい。
【参考】
国税通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》
第5項 実地の調査により質問検査等を行った納税義務者について第74条の9第3項第2号に規定する税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への第1項から第3項までに規定する通知等に代えて、当該税務代理人への通知等を行うことができる。
1 改正前の取扱い【税務慣行】
平成23年度改正前は、実地の税務調査が終了すると、税務当局は、納税者に対して、調査の結果を説明することになっていた。
その場合、「非違がある場合」と「非違がない場合」で、次のような説明をしていた。
① 非違がある場合
(イ) 非違の内容と税額等の金額の説明
(ロ) 修正申告書等の提出の慫慂
(ハ) 修正申告書等をした場合、不服申立ての対象にならないことの説明
② 非違がない場合
(イ) 申告内容に誤りがなかった旨と税務調査が終了した説明
(ロ) (イ)を記載した旨の通知の書面送付(送付されない場合も多々あった)
(ハ) 爾後の再調査の可能性のある旨の連絡
2 改正後の取扱い【国税通則法で具体的に規定】
平成23年度改正後は、以下のように法定された。
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