公開日: 2015/01/13
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《速報解説》 平成27年7月1日以後の国外転出から「出国時課税制度」(いわゆる『出国税』)が導入~1億円以上の有価証券等保有者を対象(税制改正大綱の記載内容を検証)~

筆者: 小林 正彦

 《速報解説》

平成27年7月1日以後の国外転出から

「出国時課税制度」(いわゆる『出国税』)が導入

~1億円以上の有価証券等保有者を対象(税制改正大綱の記載内容を検証)~

 

税理士法人トーマツ
パートナー
税理士 小林 正彦

 

1 はじめに

早ければ平成27年度税制改正で導入されると予想されていた「出国時課税制度」(いわゆる『出国税』)が、予想どおり平成27年税制改正大綱において、所得税関係の改正案の中の「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の創設」として盛り込まれた(大綱p27最終行~)。平成27年7月1日以降の国外転出に適用される予定である。地方税については引き続き検討するとされており、今回の大綱には盛り込まれていない。

この制度は、一定以上の時価の金融資産を保有する居住者が国外転出する場合、又はその金融資産を非居住者に相続又は贈与する場合に、出国又は相続・贈与等の時点で時価で譲渡したとみなして、事業所得、譲渡所得又は雑所得として課税するものである。

注目されていた適用対象者の保有資産の金額基準は時価1億円以上とされた。適用時期は平成27年7月1日以降に国外転出、又は贈与・相続・遺贈するものから適用する予定としている。

仕組みの概要は次のとおりである。

時価1億円以上の有価証券等金融資産を保有する居住者は、国外転出して非居住者となる時点で、保有する金融資産の未実現のキャピタルゲインを実現したとみなして課税所得及び所得税額を算定し、納付しなければならない。

ただし、納税管理人の届出をしたうえで申告書を提出し、かつ担保を供する等一定の条件を満たせば納税猶予が認められる。納税猶予期間は原則5年であるが、申請により10年に延長できる。この期間内に帰国すれば当初の課税は更正の請求により取り消されるが、そのまま納税猶予期間を経過すれば経過した時点で納付義務が確定する。

期間の途中で譲渡等をした場合には、譲渡等をした部分については納付義務が確定する。譲渡時に値下がりした場合には更正の請求で課税額の減額ができる。

財務省は、本制度の適用対象者は年間数十人から100人程度とみているようである(2014年10月22日日本経済新聞)が、対象者には、永久に帰国しないつもりで国外に移住する者のほか、数年間海外で勤務するために一時的に非居住者となる者も対象となり、さらに非居住者に金融資産を贈与・相続・遺贈する場合も含まれるため、適用範囲は意外に広い点に注意する必要がある。

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 《速報解説》

平成27年7月1日以後の国外転出から

「出国時課税制度」(いわゆる『出国税』)が導入

~1億円以上の有価証券等保有者を対象(税制改正大綱の記載内容を検証)~

 

税理士法人トーマツ
パートナー
税理士 小林 正彦

 

1 はじめに

早ければ平成27年度税制改正で導入されると予想されていた「出国時課税制度」(いわゆる『出国税』)が、予想どおり平成27年税制改正大綱において、所得税関係の改正案の中の「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の創設」として盛り込まれた(大綱p27最終行~)。平成27年7月1日以降の国外転出に適用される予定である。地方税については引き続き検討するとされており、今回の大綱には盛り込まれていない。

この制度は、一定以上の時価の金融資産を保有する居住者が国外転出する場合、又はその金融資産を非居住者に相続又は贈与する場合に、出国又は相続・贈与等の時点で時価で譲渡したとみなして、事業所得、譲渡所得又は雑所得として課税するものである。

注目されていた適用対象者の保有資産の金額基準は時価1億円以上とされた。適用時期は平成27年7月1日以降に国外転出、又は贈与・相続・遺贈するものから適用する予定としている。

仕組みの概要は次のとおりである。

時価1億円以上の有価証券等金融資産を保有する居住者は、国外転出して非居住者となる時点で、保有する金融資産の未実現のキャピタルゲインを実現したとみなして課税所得及び所得税額を算定し、納付しなければならない。

ただし、納税管理人の届出をしたうえで申告書を提出し、かつ担保を供する等一定の条件を満たせば納税猶予が認められる。納税猶予期間は原則5年であるが、申請により10年に延長できる。この期間内に帰国すれば当初の課税は更正の請求により取り消されるが、そのまま納税猶予期間を経過すれば経過した時点で納付義務が確定する。

期間の途中で譲渡等をした場合には、譲渡等をした部分については納付義務が確定する。譲渡時に値下がりした場合には更正の請求で課税額の減額ができる。

財務省は、本制度の適用対象者は年間数十人から100人程度とみているようである(2014年10月22日日本経済新聞)が、対象者には、永久に帰国しないつもりで国外に移住する者のほか、数年間海外で勤務するために一時的に非居住者となる者も対象となり、さらに非居住者に金融資産を贈与・相続・遺贈する場合も含まれるため、適用範囲は意外に広い点に注意する必要がある。

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連載目次

 

◆ 「平成27年度税制改正」に関する《速報解説》 

【全体概要】・・・・・・・・
【所得課税】・・・・・・・・
【法人課税】・・・・・・・・
【消費課税】・・・・・・・・
【資産課税】・・・・・・・・
【納税環境】・・・・・・・・

筆者紹介

小林 正彦

(こばやし・まさひこ)

デロイト トーマツ税理士法人 東京事務所
移転価格サービス
パートナー/税理士

1957年生まれ
長野県松本市出身

【職歴】
・1980年4月東京国税局採用
・1980年から2006年まで、国税庁、東京国税局調査部、東京国税局管内税務署において移転価格・相互協議、APA審査、法人税調査、所得税調査、源泉税調査事務等国際課税関係事務を中心に幅広い国税に関する実務を経験
・2006年7月税大研究部教授を最後に国税庁を退官、税理士法人トーマツに入社
・2008年7月パートナー就任
・現在、移転価格サービス所属パートナー、租税争訟支援サービスチームのヘッドとして、移転価格を含む税務調査対応、不服申立て、移転価格プランニング、APA申請、相互協議等に幅広い分野に関するコンサルティング業務に従事

【著書】
・『平成25年1月施行の実務に対応!税務調査のすべてQ&A』共著(清文社)

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