公開日: 2020/12/02
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《速報解説》 会社法改正に伴う会社法施行規則等の改正が確定~コメントを受け、改正案からの一部修正も~

筆者: 阿部 光成

《速報解説》

会社法改正に伴う会社法施行規則等の改正が確定

~コメントを受け、改正案からの一部修正も~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2020(令和2)年11月27日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(法務省令第52号)が公布された。これにより、2020(令和2)年9月1日から意見募集されていた案が確定することになる。

2020(令和2)年11月20日には、「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」等が公布されている

これは、「会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和元年法律第71号)の施行に伴い、会社法施行規則などについて改正するものである。

会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」も公表されており、コメントを受けて、案から修正されているものもある。

本稿では、会社法施行規則及び会社計算規則の改正に関する主な事項について解説する。
以下で引用する法令の条番号は、特に断らない限り、改正会社法、改正整備法又は改正後の法務省令のものである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 会社法施行規則

1 定義規定の改正

社外取締役を置くことが義務付けられること(会社法327条の2)、業務執行の社外取締役への委託に関する規定が設けられたこと(会社法348条の2)から、次の定義規定を改正する。

 社外役員(会社法施行規則2条3項5号ロ)

 社外取締役候補者(会社法施行規則2条3項7号ロ)

 業務執行者(会社法施行規則2条3項6号イ)

2 株式交付子会社に関する規定の新設

「株式交付」(会社法2条32号の2)について、同号の委任に基づき、株式交付により他の株式会社を子会社としようとする場合における子会社(株式交付子会社)の範囲を定める規定(会社法施行規則4条の2)を新設する。

3 全部取得条項付種類株式の取得及び株式の併合における事前開示事項に関する規定の改正

全部取得条項付種類株式の取得又は株式の併合を利用し、現金を対価として少数株主の締出しをする場合における端数処理手続(会社法234条及び235条)について、開示事項を拡充する改正を行う(会社法施行規則33条の2第2項4号及び33条の9第1号ロ)。

4 株主総会参考書類に関する規定の改正

 役員等の選任に関する議案に関する規定の改正(補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する規定の新設(会社法430条の2及び430条の3)に伴うもの、役員(取締役及び監査役)候補者と親会社等の関係に関する記載事項の拡充、社外取締役候補者に期待される役割を株主総会参考書類の記載事項とすることなど。会社法施行規則74条など)。

 社外取締役を置くことが相当でない理由に関する規定の削除等(一定の株式会社は社外取締役を置くことが義務付けられること(会社法327条の2)に伴うもの。改正前の会社法施行規則74条の2及び94条1項2号の削除)。

 株式交付計画の承認に関する議案に関する規定の新設(会社法施行規則91条の2)。

5 取締役等の報酬等に関する規定の新設

 取締役又は執行役の報酬等として株式もしくは新株予約権又はこれらと引換えにする払込みに充てるための金銭を付与する場合においては、定款又は株主総会の決議により法務省令で定める一定の事項を定めなければならない(会社法361条1項3号から5号まで及び409条3項3号から5号まで)ことから、当該事項の具体的な内容を定める規定を新設する(会社法施行規則98条の2から98条の4まで及び111条から111条の3まで)。

 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針に関する規定の新設(会社法361条7項、会社法施行規則98条の5)。

6 役員等賠償責任保険契約に関する規定の新設

「役員等賠償責任保険契約」(会社法430条の3第1項)に該当しない保険契約を定める規定を新設する(会社法施行規則115条の2)。

7 事業報告に関する規定の改正

次の改正を行うとともに、所要の規定の整備を行う(会社法施行規則133条3項1号など)。

 上場子会社における少数株主保護の議論等を踏まえ、当該株式会社に親会社がある場合において、当該親会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在するときは、事業報告においてその内容の概要を記載しなければならない(会社法施行規則120条1項7号)。

 株式会社の役員等賠償責任保険契約に関する事項や株式会社が取締役、会計参与、監査役又は会計監査人と締結している補償契約に関する事項を記載しなければならない(会社法施行規則119条2号の2、121条3号の2から3号の4まで、121条の2、125条2号から4号まで及び126条7号の2から7号の4まで)。

 取締役、会計参与、監査役又は執行役の報酬等に関する記載事項を拡充する(会社法施行規則121条4号イ及びロ並びに5号の2から6号の3まで)。

 報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する記載事項を追加する(会社法施行規則122条1項2号及び123条1号)。

 事業年度の末日において社外取締役を置いていない一定の株式会社は、社外取締役を置くことが相当でない理由を当該事業年度に係る事業報告に記載しなければならないとする規定等を削除する(改正前の会社法施行規則124条2項及び3項)。

 社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要を記載しなければならない(会社法施行規則124条4号ホ)。

8 社債に関する規定の改正

 社債管理補助者制度の新設(会社法676条7号の2及び8号の2、714条の2から714条の7まで等)に伴い、社債管理補助者を置く場合における社債の募集事項の内容や社債管理補助者の資格等に関する規定を新設するなどの改正を行う(会社法施行規則162条5号から7号までなど)。

 社債権者集会の決議の省略(いわゆる書面決議)の制度の新設(会社法735条の2)に伴い、社債権者集会の決議の省略がされた場合における社債権者集会の議事録の記載事項に関する規定を新設するなどの改正を行う(会社法施行規則177条4項など)。

9 株式交付に関する規定の新設及び改正

株式交付に関する規定の新設(会社法774条の2から774条の11まで、816条の2から816条の10まで等)に伴い、株式交付計画の承認に関する議案を株主総会に提出する場合における株主総会参考書類に記載すべき事項に関する規定(会社法施行規則91条の2)を新設するほか、次の改正を行う。

 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みに関する規定(会社法施行規則179条の2及び179条の3)

 株式交付親会社の事前開示事項及び事後開示事項に関する規定(会社法施行規則213条の2及び213条の9)

 その他(株式交付の場合の一株当たり純資産額の算定における算定基準日に関する規定(会社法施行規則25条6項10号)など)

10 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設及び整備

株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)の新設に伴い、電子提供措置をとる方法に関する規定(会社法施行規則95条の2)、電子提供措置をとる場合における招集の通知の記載事項に関する規定(会社法施行規則95条の3)及び書面交付請求をした株主に対して交付する書面(電子提供措置事項記載書面)に記載することを要しない事項に関する規定(会社法施行規則95条の4)を新設するほか、所要の規定の整備を行う(会社法施行規則41条7号、54条7号等)。

 

Ⅲ 会社計算規則

1 株式交付に関する規定の新設及び整備

株式交付に関する規定の新設(会社法774条の2から774条の11まで、816条の2から816条の10まで等)に伴い、次の改正を行うほか、所要の規定の整備を行う(会社計算規則54条2項及び55条2項10号)。

 株式交付における株主資本等変動額に関する規定(会社計算規則39条の2)

 株式に係る特別勘定に関する規定(会社計算規則12条)

 株式交付が無効とされた場合等における資本金の額の増減に関する規定(会社計算規則25条2項3号及び5号)

2 株式引受権

株式引受権とは、取締役又は執行役がその職務の執行として株式会社に対して提供した役務の対価として当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利(新株予約権を除く)をいう(会社計算規則2条3項34号)。

取締役等が株式会社に対し会社法202条の2第1項(同条3項の規定により読み替えて適用する場合を含む)の募集株式に係る割当日前にその職務の執行として当該募集株式を対価とする役務を提供した場合には、当該役務の公正な評価額を、増加すべき株式引受権の額とする(会社計算規則54条の2第1項)。

株式会社が会社計算規則54条の2第1項の取締役等に対して会社計算規則54条の2第1項の募集株式を割り当てる場合には、当該募集株式に係る割当日における会社計算規則54条の2第1項の役務に対応する株式引受権の帳簿価額を、減少すべき株式引受権の額とする(会社計算規則54条の2第2項)。

貸借対照表等の純資産の部及び株主資本等変動計算書等において、株式引受権を表示する(会社計算規則76条1項1号ハ及び2号ハ、96条2項1号ハ及び2号ハ、105条4号、106条3号)。

3 取締役等の報酬等として株式を交付する場合に関する規定の新設及び整備

取締役又は執行役の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行することができる(会社法202条の2、205条3項から5項まで、209条4項、445条6項等)ことに伴い、その場合に増加する資本金の額等について定める規定(会社計算規則2条3項34号、42条の2、42条の3及び54条の2)を新設するほか、所要の規定の整備を行う。

4 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設

株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)の新設に伴い、連結計算書類に係る監査報告又は会計監査報告に記載され、又は記録された事項に係る情報についての電子提供措置に関する規定を新設する(会社計算規則134条3項)。

 

Ⅳ 施行時期及び経過措置

改正後の法務省令は、「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)の施行の日(令和3年3月1日)から施行する。

ただし、1条2表に係る改正規定、2条中会社計算規則2条2項15号の次に1号を加える改正規定及び134条の改正規定並びに3条中一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則7条の次に2条を加える改正規定及び51条の改正規定は、会社法改正法附則1条ただし書に規定する規定の施行の日から施行する。

経過措置に注意する。

(了)

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《速報解説》

会社法改正に伴う会社法施行規則等の改正が確定

~コメントを受け、改正案からの一部修正も~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2020(令和2)年11月27日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(法務省令第52号)が公布された。これにより、2020(令和2)年9月1日から意見募集されていた案が確定することになる。

2020(令和2)年11月20日には、「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」等が公布されている

これは、「会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和元年法律第71号)の施行に伴い、会社法施行規則などについて改正するものである。

会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」も公表されており、コメントを受けて、案から修正されているものもある。

本稿では、会社法施行規則及び会社計算規則の改正に関する主な事項について解説する。
以下で引用する法令の条番号は、特に断らない限り、改正会社法、改正整備法又は改正後の法務省令のものである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 会社法施行規則

1 定義規定の改正

社外取締役を置くことが義務付けられること(会社法327条の2)、業務執行の社外取締役への委託に関する規定が設けられたこと(会社法348条の2)から、次の定義規定を改正する。

 社外役員(会社法施行規則2条3項5号ロ)

 社外取締役候補者(会社法施行規則2条3項7号ロ)

 業務執行者(会社法施行規則2条3項6号イ)

2 株式交付子会社に関する規定の新設

「株式交付」(会社法2条32号の2)について、同号の委任に基づき、株式交付により他の株式会社を子会社としようとする場合における子会社(株式交付子会社)の範囲を定める規定(会社法施行規則4条の2)を新設する。

3 全部取得条項付種類株式の取得及び株式の併合における事前開示事項に関する規定の改正

全部取得条項付種類株式の取得又は株式の併合を利用し、現金を対価として少数株主の締出しをする場合における端数処理手続(会社法234条及び235条)について、開示事項を拡充する改正を行う(会社法施行規則33条の2第2項4号及び33条の9第1号ロ)。

4 株主総会参考書類に関する規定の改正

 役員等の選任に関する議案に関する規定の改正(補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する規定の新設(会社法430条の2及び430条の3)に伴うもの、役員(取締役及び監査役)候補者と親会社等の関係に関する記載事項の拡充、社外取締役候補者に期待される役割を株主総会参考書類の記載事項とすることなど。会社法施行規則74条など)。

 社外取締役を置くことが相当でない理由に関する規定の削除等(一定の株式会社は社外取締役を置くことが義務付けられること(会社法327条の2)に伴うもの。改正前の会社法施行規則74条の2及び94条1項2号の削除)。

 株式交付計画の承認に関する議案に関する規定の新設(会社法施行規則91条の2)。

5 取締役等の報酬等に関する規定の新設

 取締役又は執行役の報酬等として株式もしくは新株予約権又はこれらと引換えにする払込みに充てるための金銭を付与する場合においては、定款又は株主総会の決議により法務省令で定める一定の事項を定めなければならない(会社法361条1項3号から5号まで及び409条3項3号から5号まで)ことから、当該事項の具体的な内容を定める規定を新設する(会社法施行規則98条の2から98条の4まで及び111条から111条の3まで)。

 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針に関する規定の新設(会社法361条7項、会社法施行規則98条の5)。

6 役員等賠償責任保険契約に関する規定の新設

「役員等賠償責任保険契約」(会社法430条の3第1項)に該当しない保険契約を定める規定を新設する(会社法施行規則115条の2)。

7 事業報告に関する規定の改正

次の改正を行うとともに、所要の規定の整備を行う(会社法施行規則133条3項1号など)。

 上場子会社における少数株主保護の議論等を踏まえ、当該株式会社に親会社がある場合において、当該親会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在するときは、事業報告においてその内容の概要を記載しなければならない(会社法施行規則120条1項7号)。

 株式会社の役員等賠償責任保険契約に関する事項や株式会社が取締役、会計参与、監査役又は会計監査人と締結している補償契約に関する事項を記載しなければならない(会社法施行規則119条2号の2、121条3号の2から3号の4まで、121条の2、125条2号から4号まで及び126条7号の2から7号の4まで)。

 取締役、会計参与、監査役又は執行役の報酬等に関する記載事項を拡充する(会社法施行規則121条4号イ及びロ並びに5号の2から6号の3まで)。

 報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する記載事項を追加する(会社法施行規則122条1項2号及び123条1号)。

 事業年度の末日において社外取締役を置いていない一定の株式会社は、社外取締役を置くことが相当でない理由を当該事業年度に係る事業報告に記載しなければならないとする規定等を削除する(改正前の会社法施行規則124条2項及び3項)。

 社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要を記載しなければならない(会社法施行規則124条4号ホ)。

8 社債に関する規定の改正

 社債管理補助者制度の新設(会社法676条7号の2及び8号の2、714条の2から714条の7まで等)に伴い、社債管理補助者を置く場合における社債の募集事項の内容や社債管理補助者の資格等に関する規定を新設するなどの改正を行う(会社法施行規則162条5号から7号までなど)。

 社債権者集会の決議の省略(いわゆる書面決議)の制度の新設(会社法735条の2)に伴い、社債権者集会の決議の省略がされた場合における社債権者集会の議事録の記載事項に関する規定を新設するなどの改正を行う(会社法施行規則177条4項など)。

9 株式交付に関する規定の新設及び改正

株式交付に関する規定の新設(会社法774条の2から774条の11まで、816条の2から816条の10まで等)に伴い、株式交付計画の承認に関する議案を株主総会に提出する場合における株主総会参考書類に記載すべき事項に関する規定(会社法施行規則91条の2)を新設するほか、次の改正を行う。

 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みに関する規定(会社法施行規則179条の2及び179条の3)

 株式交付親会社の事前開示事項及び事後開示事項に関する規定(会社法施行規則213条の2及び213条の9)

 その他(株式交付の場合の一株当たり純資産額の算定における算定基準日に関する規定(会社法施行規則25条6項10号)など)

10 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設及び整備

株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)の新設に伴い、電子提供措置をとる方法に関する規定(会社法施行規則95条の2)、電子提供措置をとる場合における招集の通知の記載事項に関する規定(会社法施行規則95条の3)及び書面交付請求をした株主に対して交付する書面(電子提供措置事項記載書面)に記載することを要しない事項に関する規定(会社法施行規則95条の4)を新設するほか、所要の規定の整備を行う(会社法施行規則41条7号、54条7号等)。

 

Ⅲ 会社計算規則

1 株式交付に関する規定の新設及び整備

株式交付に関する規定の新設(会社法774条の2から774条の11まで、816条の2から816条の10まで等)に伴い、次の改正を行うほか、所要の規定の整備を行う(会社計算規則54条2項及び55条2項10号)。

 株式交付における株主資本等変動額に関する規定(会社計算規則39条の2)

 株式に係る特別勘定に関する規定(会社計算規則12条)

 株式交付が無効とされた場合等における資本金の額の増減に関する規定(会社計算規則25条2項3号及び5号)

2 株式引受権

株式引受権とは、取締役又は執行役がその職務の執行として株式会社に対して提供した役務の対価として当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利(新株予約権を除く)をいう(会社計算規則2条3項34号)。

取締役等が株式会社に対し会社法202条の2第1項(同条3項の規定により読み替えて適用する場合を含む)の募集株式に係る割当日前にその職務の執行として当該募集株式を対価とする役務を提供した場合には、当該役務の公正な評価額を、増加すべき株式引受権の額とする(会社計算規則54条の2第1項)。

株式会社が会社計算規則54条の2第1項の取締役等に対して会社計算規則54条の2第1項の募集株式を割り当てる場合には、当該募集株式に係る割当日における会社計算規則54条の2第1項の役務に対応する株式引受権の帳簿価額を、減少すべき株式引受権の額とする(会社計算規則54条の2第2項)。

貸借対照表等の純資産の部及び株主資本等変動計算書等において、株式引受権を表示する(会社計算規則76条1項1号ハ及び2号ハ、96条2項1号ハ及び2号ハ、105条4号、106条3号)。

3 取締役等の報酬等として株式を交付する場合に関する規定の新設及び整備

取締役又は執行役の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行することができる(会社法202条の2、205条3項から5項まで、209条4項、445条6項等)ことに伴い、その場合に増加する資本金の額等について定める規定(会社計算規則2条3項34号、42条の2、42条の3及び54条の2)を新設するほか、所要の規定の整備を行う。

4 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設

株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)の新設に伴い、連結計算書類に係る監査報告又は会計監査報告に記載され、又は記録された事項に係る情報についての電子提供措置に関する規定を新設する(会社計算規則134条3項)。

 

Ⅳ 施行時期及び経過措置

改正後の法務省令は、「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)の施行の日(令和3年3月1日)から施行する。

ただし、1条2表に係る改正規定、2条中会社計算規則2条2項15号の次に1号を加える改正規定及び134条の改正規定並びに3条中一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則7条の次に2条を加える改正規定及び51条の改正規定は、会社法改正法附則1条ただし書に規定する規定の施行の日から施行する。

経過措置に注意する。

(了)

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連載目次

3月期決算における会計処理の留意事項

「2024年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

Ⅰ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅱ 資金決済法における特定の電子決済の手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い

Ⅲ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い

Ⅳ グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)

Ⅴ グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)

Ⅵ 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)

Ⅶ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅷ インボイス制度

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ サステナビリティ開示

XI 税制改正

XII 四半期報告制度の改正

XIII 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2023年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)
  • 【第2回】
    Ⅲ 時価の算定に関する会計基準の適用指針
    Ⅳ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第3回】
    Ⅴ 会社法施行規則等の改正
    Ⅵ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第4回】
    Ⅶ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い
    Ⅷ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
    Ⅸ 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2022年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第2回】
    Ⅳ 収益認識に関する会計基準等
    Ⅴ 時価の算定に関する会計基準等
  • 【第3回】
    Ⅵ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅶ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅷ その他の記載内容に関連する監査人の責任
  • 【第4回】
    Ⅸ 会社法施行規則等の改正
    Ⅹ 金融庁の令和2年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 開示の好事例
  • 【第5回】(追補)
    ◎最近の不安定な世界情勢下における会計処理等の留意事項

「2021年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ 監査上の主要な検討事項(KAM)
  • 【第2回】
    Ⅳ 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
    Ⅴ 会計上の見積りの開示に関する会計基準
    Ⅵ 新型コロナウイルス感染症に関連する会計処理及び開示
  • 【第3回】
    Ⅶ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅷ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅸ 会社計算規則等の改正
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成31年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ その他留意事項及び参考情報
    Ⅻ 今後の会計基準の改正
  • 【第5回】(追補)
    ◎ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)の公表

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項
~新型コロナウイルス感染症の影響への対応~」(全2回)

  • 【前編】
    Ⅰ 新型コロナウイルス感染症に関連する省庁や各団体からの公表物
  • 【後編】
    (【前編】公開以降の公表情報について)
    Ⅱ 新型コロナウイルス感染症における会計処理の検討事項
    Ⅲ 会計上の見積りにあたって

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表
  • 【第2回】
    Ⅲ 会社法の改正
    Ⅳ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
  • 【第3回】
    Ⅵ 企業結合会計基準等の改正
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ 時価の算定に関する会計基準等の公表
    Ⅸ 収益認識基準の早期適用
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成30年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 今後の改正予定

「2019年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税制改正
    Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第3回】
    Ⅳ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
    Ⅵ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ マイナス金利
    Ⅸ 仮想通貨の会計処理等
  • 【第4回】
    Ⅹ 企業結合会計基準等の改正
    XI 金融庁の平成29年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    XII 今後の改正予定

「平成30年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
  • 【第2回】
    Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅴ 仮想通貨の会計処理
  • 【第3回】
    Ⅵ マイナス金利
    Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組
    Ⅷ 金融庁の平成28年度有価証券報告書レビューの審査結果
  • 【第4回】
    Ⅸ 収益認識
    Ⅹ 税効果会計の改正
    ⅩⅠ 監査報告書の透明化

「平成29年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税効果会計の改正
    Ⅲ 減価償却方法の改正
    Ⅳ 法人税等に関する会計基準の改正
  • 【第3回】
    Ⅴ マイナス金利
    Ⅵ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅶ リスク分担型企業年金
  • 【第4回】
    Ⅷ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
    Ⅸ 短信及び有価証券報告書の改正
    Ⅹ 金融庁の平成27年度有価証券報告書レビューの審査結果

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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