公開日: 2023/02/22 (掲載号:No.508)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第63回】「追加情報の注記」

筆者: 西田 友洋

【STEP1】注記対象の確認

追加情報の注記は、各社ごとに財務諸表等規則等で定めている注記以外で利害関係者にとって重要な事項を注記することになるが、一からどれを注記するか検討することは、時間を要すると考えられる。そこで、監査・保証実務委員会実務指針第 77 号「追加情報の注記について(以下、「監保実77」という)」に例示が記載されているため、まず、これらに該当するものがないかを確認しながら、検討することが考えられる。

監保実77では、以下の例が記載されている(監保実77.5、7~14)。

会計方針の記載に併せて注記すべき情報  会計処理の対象となる新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原則及び手続を採用する場合、新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の採用は、会計方針の変更に該当しない。そのため、当該会計処理の採用に関し、会計方針の記載以外に追加的に開示する必要があると判断した場合は、追加情報として会計方針の記載に併せて注記する。  例えば、新たに事業を開始し、当該事業に係る有形固定資産の減価償却方法が、既存事業における有形固定資産の減価償却方法と異なる方法を採用する場合 資産の使用・運用状況の説明  資産の使用・運用状況について通常の使用方法ではなく、特殊な使用方法の場合には、当該事実及び関連する金額を追加情報として注記する。  例えば、重要な遊休又は一時休止の固定資産がある場合 特殊な勘定科目の説明  財務諸表等の表示に、特殊な勘定科目を使用している場合など、勘定科目名の記載だけではその内容が明確ではない場合に、当該内容について追加情報として注記する。  例えば、損益計算書における特別損益科目の説明や 業界特有の科目の説明 会計基準等で注記を求めている事項(財務諸表等規則で規定しているものを除く)  監査・保証実務委員会実務指針第 61 号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」に基づく注記  保証債務の履行に伴う損失の発生の可能性が高く、かつ、金額の見積りが可能な場合には、債務保証損失引当金を計上するが、損失の発生の可能性が高いが、金額の見積りが不可能な場合、及び損失の発生がある程度予想される場合には、その旨、主たる債務者の財政状態、主たる債務者と保証人との関係内容、主たる債務者の債務履行についての今後の見通し等、その状況を適切に説明するために必要な事項を追加情報として注記する。  なお、損失の発生の可能性が高いが金額の見積りが不可能な場合には、上記の注記に加えて、金額の見積りが不可能な理由を注記する。  監査・保証実務委員会報告第 69 号「販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い」による注記事項  販売用不動産等及び固定資産の保有目的の変更が、会社の財務諸表に重要な影響を与える場合は、追加情報として、その旨及びその金額を貸借対照表に注記する。  監査第一委員会報告第 43 号「圧縮記帳に関する監査上の取扱い」による注記事項  直接減額方式で圧縮記帳を行った場合、圧縮記帳を行った旨及び圧縮額を注記する。 連結固有の事項  監査・保証実務委員会実務指針第 56 号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」による注記事項  連結決算手続上、親会社の会計処理を修正し、その影響額が重要な場合には、その旨、修正の理由及び当該修正が個別財務諸表において行われたとした場合の影響の内容を連結財務諸表に追加情報として注記しなければならない。 期間比較上説明を要する事項  期末日が休日のため、財政状態が通常の期末日の状況と異なる場合  期末日が休日で、期末日満期手形残高が重要な場合には、入出金の会計処理を満期日又は交換日のいずれで行ったか及びその金額を、当該科目との関連を明らかにして注記する。  新規事業の開始・取引形態の変更などにより、財政状態及び経営成績の状況が前期と比較して大きく変化した場合など 後発事象に該当しないが説明を要する事項  事業年度中に行われた意思決定又は発生した一連の取引で、決算日後から監査報告書日までの間に当該意思決定に基づく行為又は取引が終結していない場合、決算日後に発生した事象ではないので、後発事象に該当しないが、重要な事象であれば追加情報として注記する。  例えば、新株式の発行について、当該事業年度中に取締役会の承認決議はあったが、まだ払込期日が到来していない場合  例えば、過年度に後発事象として注記した事象で、注記した内容を更改(補正)、又は経過等を引き続き注記する場合 財務制限条項  借入金や社債等に付された財務制限条項が財務諸表等に重要な影響を及ぼすと認められる場合

また、追加情報は上記の項目に限定されるわけではないため、災害やコロナ禍の影響等、重要な事項が発生していれば、追加情報として注記することが考えられる。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第63回】

「追加情報の注記」

 

史彩監査法人 パートナー
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

連結財務諸表や財務諸表には、連結財務諸表規則や財務諸表等規則で特に定める注記のほか、利害関係人が会社(企業集団)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項があるときは、当該事項を注記しなければならない(連結財務諸表規則15、財務諸表等規則8の5)。

また、計算書類には、貸借対照表等、損益計算書等及び株主資本等変動計算書等により会社(企業集団)の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項を注記する(会社計算規則116)。

これらの注記を「追加情報の注記」という。今回は、「追加情報の注記」について解説する。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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