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理由付記の不備をめぐる事例研究 【第12回】「寄附金と営業権」~営業権の譲受代金の支払ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第12回】 「寄附金と営業権」 ~営業権の譲受代金の支払ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~   中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して、X社が営業権の譲受代金債務と貸付金債権の相殺を行ったことについて、営業権の譲受代金ではなく、貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成3年3月27日裁決(裁決事例集41号219頁。以下「本裁決」という)を取り上げる。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 (注)  X社は営業権の取得価額である20,000,000円について、2期にわたって減価償却費として損金の額に算入していたところ、課税庁及び本裁決はこの減価償却費の損金算入を認めなかった。しかしながら、理由付記に減価償却費に関する記載があったのか否かも含めて、本裁決においては、減価償却費の否認に係る理由付記の記載の十分性に関する判断がなされていないため、本稿でも、この点に関しては言及しないこととする。   3 本判決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 私見 (1) 関係法令等の確認 本件更正処分は、X社がA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受代金ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当するものである。そうすると、根拠条文は、法人税法37条であるといえる(法人税法37条の規定内容については【第11回】参照)。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社がA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受代金ではなく、私法上はともかく法人税法においては寄附金と評価するものであるという理解を前提とするならば、本裁決が述べるとおり、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 この場合、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、まず、X社とA社との間の追加契約に係る営業権について、これを営業権としては認めないこととしている。その理由として、「1 貴法人とA社との営業権譲渡契約は、×3年4月1日に有効に成立しています。」、「2 営業権の追加契約というのは、一般的にあり得ない行為であるとともに、当初契約から4年が経過したにもかかわらず、当該行為ができたのは、お互いに同族関係会社にあったからであります。」、「3 ×7年3月31日にA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受け代金ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当します。」と記載している。 その判断の是非は別としても、これらによれば、本件理由付記は、×3年4月1日にX社とA社との営業権譲渡契約が有効に成立していることを前提として、営業権の追加契約というのは、一般的にあり得ない行為であるという経験則に基づいて、×3年4月1日の契約から4年が経過したにもかかわらず、事後的に追加契約ができたのは、お互いに同族関係会社であったからであって、他に合理的な理由があるとは認められないため、×7年3月31日にA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受けの対価ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で行われた対価性・経済合理性のない、寄附金に該当するという趣旨であると解することもできる。 このように、本件理由付記について、X社がA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受けの対価ではなく、私法上はともかく法人税法においては、対価性・経済合理性のない支出として、法人税法37条の寄附金と評価するという趣旨であることを読み取ることが可能であるとすれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える (4) 異なる視点 別の考え方として、本件更正処分は、実質的に、帳簿書類に記載のある「営業権」やその追加契約があったことを否定するもの、あるいはX社とA社間で締結したとされている本件追加契約の成立を私法レベルで否定して、本件金員は実際にはX社がA社に対して有する貸付金を免除する目的で行った贈与であると認定するものであるといえ、帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するという見解があり得る。 そうすると、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 この場合、本件理由付記は、更正処分の根拠ないし資料を摘示したものであると理解できそうではあるが、営業権や追加契約に関する帳簿書類との関係で、本件理由付記をもって、更正処分の根拠を帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示していると評価できるかが問題となり、場合によっては理由付記の十分性が否定される可能性もある。 ここでは、素材とした本裁決に係る審査請求において、課税庁は、本件追加契約に関して、「×7年2月10日に開催されたX社の取締役会の議事録によれば、本件追加契約に係る本件覚書を取り交わす理由が、『譲渡人から、清算事務遂行上著しく障害となる旨の異議の申入れがあったため』であるとされているが、A社の清算事務遂行上障害となるような具体的な事実はない」と主張しているが、このような内容が本件理由付記には記載されていないことを指摘しておこう。 (了)

#No. 171(掲載号)
#泉 絢也
2016/06/02

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第8回】「募集株式の発行等⑦」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第8回】 「募集株式の発行等⑦」   公認会計士 佐藤 信祐   前回は、大阪地裁平成2年2月28日判決、京都地裁平成4年8月5日判決について解説を行った。 【第8回】に当たる本稿では、東京地裁平成4年9月1日判決、東京地裁平成6年3月28日判決について解説を行うこととする。   10 東京地裁平成4年9月1日判決・判時1463号154頁 (1) 事実の概要 本事件は、株主総会の特別決議を経ないで発行価額50円とする30万株の新株を発行済株式の総数の約40%を保有する労働組合に対して割り当てたことにつき、取締役と引受人に対して損害賠償を求めた事件である。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように本事件では、時価純資産方式を採用しながらも、7割の非流動性ディスカウントを行っている。ただし、本事件の原告は、時価純資産方式による譲渡を目論み、取締役会に承認を求めていたという特徴がある。すなわち、時価純資産方式での買取りを断念した労働組合が額面金額による第三者割当の引受けを行うという背景があったことから、時価純資産方式を採用するという裁判所の判断に繋がるのは自明のことと考えられる。 なお、非流動性ディスカウントの金額が多額であり、かつ、時価純資産方式に非流動性ディスカウントを行うというやや違和感のある判決となっているが、この点についても、時価純資産が割高になりやすいと裁判所が考えているからであろう。 そして、売買事例方式は極めて閉鎖的な会社であることから採用できないとし、配当還元方式は無配が継続していること、類似会社比準方式、類似業種比準方式は適切な標本会社、標本業種が見当たらないこと、利益還元方式は社内に留保された部分は直接株主に利益を与えるものではないことから、それぞれ採用されなかった。 このうち、利益還元方式を採用しなかった理由については、ファイナンス理論からすると大いに問題があるが、本事件では、労働組合が筆頭株主でありながら経営参加をしていないという特殊性があることから、社内留保を少数株主にとっての株式価値から除外するという現在の裁判例の傾向からするとやむを得ないのかもしれない。   11 東京地裁平成6年3月28日判決・判時1496号123頁 (1) 事実の概要 本事件は、発行済株式総数の13.1%を保有する筆頭株主が、第三者に対して行われた第三者割当が、①当該筆頭株主の発言権を低下させることを目的とした不当なものであること、②有利発行に該当することを理由として、新株発行の差止めを請求した事件である。 本連載は、非上場株式の評価についての連載であるため、後者についてのみ解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 本事件で類似会社比準方式が採用されなかった理由は、子会社であるフジテレビジョンやポニーキャニオンを含めて連結すれば、東京放送や日本テレビ放送などと比準することが可能であるが、被告であるニッポン放送はフジテレビジョンの発行済株式の総数のうち51%しか保有しておらず、会社の規模も子会社の方が大きいことを理由として、一体的に捉えることが困難であるとしている。 また、子会社のフジテレビジョンが上場を意図しているという点についても、親会社である日本放送が上場をすることが決まっているわけではないことや、可能性があったとしても時期が未定であることから、類似会社比準方式を採用する理由にはならないとしている。 さらに、時価純資産方式、収益還元方式についても、支配株主にとっての株式価値を示すものであり、少数株主にとっての株式価値を示すものではないということで採用されなかった。 このように、少数株主にとっての株式価値を示す評価方法として最も優れている方式をゴードンモデル方式による配当還元方式とした点で非常に注目すべき事件であり、その後の裁判例でも同様の傾向が見受けられる。 なお、本事件における鑑定意見書は、河本一郎・濵岡峰也『非上場株式の評価鑑定集』(成文堂、平成26年)277-314頁に収録されているため、興味のある読者は一読されたい。 次回では、東京地裁平成9年9月17日判決、千葉地裁平成8年8月28日判決、大阪高裁平成11年6月17日判決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 171(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/06/02

税務判例を読むための税法の学び方【83】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その11:「一時所得の計算における所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」の範囲①」(最判平24.1.13))

税務判例を読むための税法の学び方【83】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その11:「一時所得の計算における所得税法34条2項の 「その収入を得るために支出した金額」の範囲①」(最判平24.1.13))   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   1 はじめに この判例は、所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」の意義を巡って争われ、第一審・控訴審ともに納税者が勝訴したのにもかかわらず、最高裁で一転国側が勝訴した事案である。 この訴訟自体は、養老保険契約に基づいて受領した満期保険金の一時所得の計算にあたり控除し得る金額について争われた事案であるが、条文の読み方の姿勢として示唆するところは大きいものであるため、これを解説したい。   2  事案の概要 原告らは、その経営する法人が契約者となり、原告らと同法人が保険料を各2分の1ずつ負担した養老保険契約の満期保険金を受領した。そこで原告らは、同法人負担分も含む保険料全額を、所得税における一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」に当たるものとして、所得税に係る確定申告(平成13年分から平成15年分)をした。しかし税務署長は、同法人が負担した(保険料として損金処理した)2分の1の保険料は、「収入を得るために支出した金額」に当たらないとして、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をなした。そこで原告らが、上記各処分の取消しを求めた事案である。 この保険契約は、従業員の福利厚生の一環として、全従業員を被保険者とし、死亡保険金の受取人を被保険者である従業員の遺族、満期の生存保険金(以下「満期保険金」という)の受取人を契約者である法人とした場合に、支払う保険料の半額を損金、半額を資産計上とする、いわゆる「ハーフタックス」類似の保険契約である。ただしこの「ハーフタックス」と異なり福利厚生目的ではなく、一部の役員を対象とし、死亡保険金の受取人を契約者である法人、満期保険金の受取人を被保険者である従業員(本件では役員)としたものである。 これまで、このような契約の場合の課税関係は明らかにされていなかったところ、死亡保険金と生存保険金は表裏の関係であるとして、ハーフタックスと同様(このハーフタックスの課税関係は、法人税基本通達9-3-4(3)に示されている)と見て、次の処理をしていた。すなわち、保険料の半額は法人で損金に算入し、この通達の但し書きに残りの半額は給与として課税されるということから、源泉徴収しない代わりに、この半額分は役員への貸付金として処理していた。これは源泉徴収はなされていないが、保険料の半額については、被保険者である満期保険金の受取人が負担していたという点では、給与課税されたものと同視し得よう。 そして原告らは、満期保険金を受領した際に、この貸付処理されていた金額を法人に返済したが、この満期保険金を一時所得として申告した際に、控除しうるのはこの貸付処理されて返済した受取人が実際に負担した保険料だけなのか、法人が支払った保険料も含むのかが争われたのである。   3  関係条文(平成13年~平成15年当時) この判例に関係する当時の法令・通達を挙げると次の通りである。 (1) 関連法令 (2) 関連通達   4 裁判所の判断(第一審(福岡地裁平成21年1月27日判決)の判断) これは裁判所ホームページや税務大学校の税務訴訟資料にて判決が公開されているため、これを入手し、読んでいただきたい。本稿では割愛するが、そこには当事者の主張も掲載されているため、ぜひ見てもらいたい。 (1) 一般的法命題 まず、以下の2点の内容を判示する。 すなわち、この判決は、法令解釈を争うものであるから、法令解釈の基本的あり方を一般的法命題(大前提)として挙げて、次の事実認定(小前提)も法令解釈となっている。 (2) 小前提 そこでは、まず所得税法34条2項の文言からは、所得者本人が負担した部分に限られるのか、所得者以外の者が負担した部分も含まれるのかは、必ずしも明らかでないとして、施行令の判断に移り、そこでは、「所得税法施行令183条2項2号本文は、生命保険契約等に基づく一時金が一時所得となる場合、保険料又は掛金の「総額」を控除できるものと定めており、この文言からすると、所得者本人負担分に限らず保険料等全額を控除できるとみるのが素直である。そして、同号ただし書イないしニは、控除が認められない場合を、包括的・抽象的文言を用いることなく、法律と条文を特定して個別具体的に列挙しており、他に控除が認められない場合が存することをうかがわせる体裁とはなっていない。」と指摘し、次の結論を導いている。 これに引き続き、所得税基本通達34-4も、明確に、控除し得る金額には「支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(これらの金額のうち、相続税法の規定により・・・の金額を除く。)も含まれる。」と規定しており、括弧書きで除かれた部分以外に控除し得る金額が限定される場合があると読み取ることは困難であるとする。 次いで、補足的に国の主張に対して検討を加えている。すなわち国が、関連法令及び通達を合理的に解釈すれば、一時所得の計算上控除し得るのは、収入を得た本人が負担した保険料及び事業主が負担した保険料で使用人に対して給与課税された保険料に限られ、原告らが法人損金処理保険料を控除することは認められないと主張する点につき検討している。 ① 所得税法施行令183条2項2号と所得税基本通達34-4 そこでは、まず国の、所得税法施行令183条2項2号ただし書が、所得者において実質的な負担がない保険料等は控除しないことを例示的に定めたものであるとの主張に対しては、この例示から「上記法の趣旨ないし原則を直ちに導き得るものとはいえず、納税者の観点からしても、そのような解釈をすることは困難」と判示し、むしろこの規定が例示列挙ではなく限定列挙とみるのが相当であるとしている。 次いで、国の、所得者以外の者が負担した保険料等も控除できる旨の所得税基本通達34-4の規定は、所得者以外の者が保険料等を負担した場合原則として所得者(保険金受取人)に給与課税等されていることを前提としたものであるとの主張に対しては、「そのような背景があるとしても、何ら明文がないのに、所得者に給与課税等されていなければ控除できないと限定的に解釈することは困難」と判示し、むしろ、所得税法施行令183条2項2号、所得税基本通達34-4の文言からすると、誰が保険料等を支払ったか、所得者に給与課税等されたか否かにかかわらず、控除を認めることとしているとみる方が合理的であるとする。 ② 所得税基本通達34-4(同通達76-4との対比の点から) さらに他の通達との関連で、生命保険料等控除に関する同通達76-4が、本文において、役員又は使用人に給与課税されたか否かを明確に区別しているのに対し、この34-4本文ではその区別がされていないことから、給与課税の有無を問わず控除を認めることとしているものと解されるとする。 また国側が、34-4の注書きで、少額非課税とされた保険料が控除しうる保険料又は掛金の総額に算入できる旨を定めていることから、これが例外を定めたものであって、それには自己の負担した保険料以外は控除できないという前提がある旨主張する点について、少額非課税とされた生命保険料等については生命保険料控除の対象とならない(同通達76-4の注書き参照)ので、注書きがなければ一時所得の計算上も控除できないとの誤解を招くおそれがあることから、あえて原則(本文)どおり控除できることを規定した確認的なものであると解するのが相当であり、注書きが例外を定めたものという主張は採用できないとする。 ③ 所得税法76条1項と基本通達 国は、所得税法76条1項及び所得税基本通達76-4が、使用者が負担した保険料であっても使用人等に給与課税されていれば使用人等が支払ったのと同様であるという観点から、給与課税されている場合に限定して、生命保険料等控除を認めたものであり、この点からも、一時所得の計算上その保険料等を控除できないことを指摘するが、判決は、生命保険料控除と、一時所得の計算上の控除は、別の問題であって、前者に関する解釈から後者に関する解釈を導くことは相当でないとする。 ④ 法人税基本通達9-3-4 国は、法人税基本通達9-3-4における(1)~(3)の中で、(2)の死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合及び(3)の役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合には、法人が負担した保険料については従業員等に給与課税等されることになっていることから、満期保険金が個人に対する一時所得となるのは、この(2)の場合のみと主張するが、このことから従業員等が一時所得の計算上控除できる保険料は法人が支払った保険料のうち従業員等に給与課税されたものに限られるとの法の趣旨ないし原則を読み取ることは相当とはいえないとする。 *   *   * 次いで、国の、法人損金処理保険料部分に対応する満期保険金(2分の1)については、原告らが法人から贈与によって取得したものとみるべきであるから、法人損金処理保険料は原告らの一時所得の計算上控除できないとの主張に対しては、保険金の受領を直ちに贈与と見ることはできないとする。 また、国の、本件養老保険契約は通常行われる保険契約と異なり、原告らがほとんど税負担を負うことなく法人から資金の移転を受けることを企図した不自然な契約形態であるとして、法人が損金処理をした保険料の控除を認めるべきではないとの主張に対しては、契約者を法人、被保険者を従業員等、死亡保険金の受取人を法人、満期保険金の受取人を従業員等とする契約形態は、必ずしも想定不可能なほど不自然・不合理なものとはいえないのであり、これにより、原告らがほとんど税負担を負わずに法人から資金の移転を受けることができることになるが、それは法令上許された契約を締結したことによる結果であって、これが直ちに租税の基本原則に抵触するとか、租税の公平性を害するものということはできないとする。 (3) あてはめ そしてこれらの検討を通して と結論付ける。 *   *   * 次回はこの事案の控訴審及び上告審について見ていく。 (続く)

#No. 171(掲載号)
#長島 弘
2016/06/02

ストーリーで学ぶIFRS入門 【第1話】「わが社もIFRS導入!?」

ストーリーで学ぶ IFRS入門 【第1話】 「わが社もIFRS導入!?」 仰星監査法人 公認会計士 関根 智美    桜井の朝 「今日もすがすがしいなぁ。」 桜井は自席に座ると、大きく伸びをした。6月にしては晴れて気持ちの良い朝だ。 朝7時30分。早朝のオフィスはまだ閑散としていて、空調の静かな音だけが室内に響いている。会社の始業は9時だが、満員電車を避けるため毎日1時間以上早く出社している。その1時間に流行の自己啓発本や専門情報誌を読むのが桜井の日課だ。今日も『できる人の10箇条』という本をパラパラめくり、しおりを探した。 桜井は機械部品を製造する東証一部上場企業のA社の経理部に勤めている。入社直後から経理部に配属され、今年で3年目になる。初めは全く歯が立たなかった業務も一通りこなせるようになり、少しゆとりも出てきた。 「お、勉強か。感心感心。」 突然、桜井の背後の光が遮られ、視界が暗くなる。 桜井が振り返ると、彼より2年先輩の藤原が桜井の手許を覗き込んでいた。 藤原は185センチの長身と筋骨隆々の体型どおり、頼りがいのある人物だ。彼は桜井が新入社員の頃の教育係だったことから入社以来世話になっており、桜井は藤原のことを秘かに尊敬している。藤原は桜井の隣の席にかばんを置き、背広を脱ぎ始めた。 「おはようございます。今日はいつもより早いですね。」 「早朝会議だよ。社長がこの時間しか空いていなかったんだ。」 藤原はあくびをかみ殺して、昨日用意したと思われる会議資料の確認を始めた。 「え?会議に社長が出るんですか? 経理部の会議ですよね?」 桜井はびっくりして思わず声が裏返ってしまった。 「お前も覚悟しておけよ。とうとうウチの会社もIFRSを導入するかもしれないぞ。社長直々のご提案だ。」 桜井は再び驚いて、口をあんぐりと開けた。まさに寝耳に水である。    再び盛り上がるIFRS IFRSとは、「国際財務報告基準」と言われる会計基準のことだ。日本では2010年3月期の連結財務諸表から一定の要件を満たす上場企業に対して、IFRSの任意適用が認められている。当初2012年を目途にIFRSを強制適用するかの判断をすることになっていたが、2011年にその判断が実質的に無期延期になったことから、企業のIFRS採用に対する熱はいったん下がった。 しかし、2013年にIFRSを任意適用できる会社の要件が緩和されたこともあり、IFRSを採用する会社は年々増加傾向にある。現在では、今後IFRS適用を決定している会社を含めると、IFRS適用会社は100社を超えている。 桜井は入社前のことであるため話にしか聞いていないが、2010年頃はIFRSの強制適用の可能性があったことから、A社でも勉強会を開いたり、監査法人から情報収集したりと、ちょっとした騒ぎであったらしい。 しかし、A社も他の大多数の企業の例に漏れず、2011年を機にIFRS対策チームは自然消滅し、経理部の情報共有ファイルに残っているIFRS関連の資料は2011年以降更新されないまま放置されているのが現状だ。    大手企業が次々とIFRS適用 「確かにこの業界の大手が次々とIFRSを任意適用しているのは知っていますが、規模がウチとはケタ違いじゃないですか。売上だけみたって、数兆円とか、数千億円の規模ですよね?」 桜井の勤める会社は上場しているとはいえ、売上高は連結で500億円ほど。機械部品を製造している会社としては決して大きくない。 「それがなぁ・・・」 藤原は短い髪をポリポリと掻いた。 「K社が来期からIFRSを適用するって発表したんだよ。まぁ、K社にしたって売上規模はウチの3倍もあるが、業界の中ではせいぜい20位くらいだ。で、他の会社はどうしてるのか調べてみたら、ウチの業界でもIFRS適用に向けて動いてる会社が何社かあるみたいなんだ。」 「それで『わが社も負けてはいられない!』ってなったんですか。」 「まだ社長が提案しただけで、これから他の役員を説得するに足る資料作りをしなくちゃいけないって段階だが、社長のあの様子だとほぼ決まりだな。 IFRSのことを相当勉強しているところをみると、どうやら社長は前々からIFRS導入を検討していたみたいなんだよ。」 「あぁ、想像できますね。社長は精力的なタイプですから。」 「問題は、保守的な社内でIFRS適用の同意をどうやって早く得るか、だ。 社長もK社の発表をきっかけに、保守層に重い腰を上げてもらいたいんだろう。こういうことは勢いが大事だからな。」    グループ全体を同じ「モノサシ」で見る 藤原は机の脇に置いていたホッチキス止めされた分厚い資料を手に取ると、桜井に渡した。 「金融庁が出した『IFRS適用レポート』だ。IFRS任意適用会社がIFRSへ移行する際に生じた課題やIFRSを導入することのメリット・デメリットをまとめたものなんだが、他の会社がどういった経緯で導入に踏み切ったのか、どのくらいのコストと時間がかかったのかを知るのに参考になるぞ。お前も読んでおいたほうがいいだろう。」 桜井は渡された資料にざっと目を通す。 「そんなにIFRSを導入することが良いことなんですか?」 桜井がレポートから目を上げると、藤原はコホン、と1つ咳払いをした。 「先生」モードになるときの藤原の癖だ。 「IFRS導入のメリットとしてまず挙げられるのが、海外子会社の経営管理に役立つ点だな。 海外子会社の場合、IFRSか米国基準に基づいた財務諸表を入手しているだろう? だが、それぞれ適用している会計基準が異なるため、海外子会社の経営状況を比較しようとしたとき、国内子会社や他の海外子会社の数値と単純に比べられないという問題が出てくる。」 「確かにその通りです。」 「だが、もしIFRSを採用すれば、『IFRS』という同じ「モノサシ」を使ってグループ全体を管理することができるようになる。売上高、在庫、キャッシュフローの比較だけではなく、同じ製品を製造している子会社間の業務の効率性だって、今より有用な情報を提供することができる。その結果、海外子会社に関する意思決定もより適切に、かつタイムリーに行えるようになる、というわけだ。」 「なるほど。ウチの子会社10社のうち5社は海外子会社ですよね。ヨーロッパやアジアの子会社はIFRSを使ってますけど、アメリカの子会社は米国基準を採用しています。国内の子会社はもちろん日本基準ですから、これらの業績を並べたところで、単純に比較できないですね。もしIFRSという1つの会計基準をグループ全体で使えば、その問題も解消できるというわけですね。」 「その通り。イメージで表すとこんな感じだな。」 「それにしても、面白いですね。IFRSって財務報告の会計基準なのに、まず挙げられるメリットが財務会計側ではなく、管理会計からの視点だなんて。」 桜井の反応を見て、いい兆候だ、と藤原は思った。今後IFRSを導入した場合、桜井には主戦力になってもらう必要がある。幸いにも彼は勉強熱心であるが、英語に苦手意識があり、IFRSに興味を持ってもらえるか、藤原は内心不安だったのだ。    経理部も助かる? 「もちろん、管理会計面のメリットだけじゃない。『投資家に対する有用な情報を提供する』という面からも、IFRS任意適用は利点がある。 お前がさっき言った通り、同業大手は次々とIFRSを導入している。また、ライバル会社は日本の会社だけではない。ウチがIFRSを適用することによって、投資家にとっても海外を含む同業他社との比較可能性が増すことになる。 それにIFRSを採用することで、わが社が『財務報告を積極的に発信する会社だ』という先進的なイメージも与えられるだろう?」 「なるほど。確かにその通りですね。」 桜井は納得した様子で頷いた。 「それだけじゃない。海外投資家が株主に多い会社では、株主へ業績説明をする際にも役立つんだ。いちいちIFRSとの差異を説明することなく、有価証券報告書の財務諸表をそのまま説明資料に用いることができるからな。」 「業績説明資料を作成している経理としては、とても助かる話ですね。」 「だろ?」 藤原はニヤリと返した。    適切に業績を反映させる 「他にも、将来海外市場へ上場することを想定している場合、IFRSに基づく財務諸表をそのまま利用できるし、会社によっては、IFRSを適用することでより自社の業績を適切に財務諸表に反映させることができるという利点もある。」 「先輩、最後の利点の意味がよく分からないんですが・・・」 「どこが分からないんだ?」と、藤原は片眉を吊り上げた。 「IFRSを適用することでより適切に業績を反映させるって、どういったケースがあるんですか?」 「そうだな・・・さっきお前に渡した『IFRS適用レポート』によると、『のれん』の非償却を挙げている会社があったと記載されているな。」 「のれんの会計処理って、日本基準とIFRSでは違うんですか?」 「日本基準ではのれんは資産計上後、毎期規則的に償却する必要があるが、IFRSでは非償却資産なんだ。その代わり、定期的に減損チェックをして、兆候を認識したら落とさなくてはいないんだが。のれんが多額に計上されているような会社だと、IFRSを導入することで資産計上額や利益へのインパクトが大きいと言われている。 まぁ、この辺については今度時間があるときにじっくり教えてやろう。」 「はぁ。ありがとうございます?」 「なんでそこ、疑問形なんだよ。」 「え、でも僕は今回のIFRS導入のプロジェクトチームに入っているわけではないですし。」 「そう寂しいこと言うなよ。」 藤原は悲しそうな顔をして、わざとらしく溜め息をついた。    IFRS導入にはどれだけ時間がかかる? 「ところでお前、IFRSを導入するのにどれぐらいかかるか、知ってるか?」 いきなり話が切り替わったので、桜井は少し面食らった顔をした。 「えーと、3年くらいですか?」と、しばらく考えてから答える。 「惜しいな。移行にはだいたい4~5年かかると言われている。といっても、企業規模が小さく、システムもほとんど変更しなければ、2年未満で移行した会社もあるらしいぞ。」 「えっ!! 2年でできるんですか!?」 「あくまでシステムの変更を最低限にした場合だけどな。ただ、ウチの社長はやるときはとことんやる派だから、一旦導入に踏み切ると決めたら、大掛かりになると思うぞ。」 「はは。でしょうね・・・」 桜井は社長の顔を浮かべながら、藤原の予想は的中すると確信した。    IFRSの勉強スタート! 「なんで導入期間の話をしたのか、というとだな・・・」 藤原は一旦言葉を止めて、桜井をじっと見る。 「3年~4年後、お前のポジションはどうなってる?」 桜井のハッと気がついた表情を見て、藤原は頷いた。 「そうだ。その時はもう年次は7~8年目だ。今の俺よりも上にいて、経理部の要になっているはずだ。というか、なってくれ。」 「なれるんでしょうか・・・」 桜井は不安になったが、ぐいっと顔を上げると、自分に言い聞かせるように答えた。 「でも、やらなくちゃいけないですよね。いつまでも下っ端気分じゃいけないってことですよね。」 A社の経理部は派遣社員を入れても10名程度であるため、毎年新人が配属されるわけではない。この春一人新入社員が入ったことで初めて桜井に後輩ができ、その指導を任されているが、約2年間培われた新人体質はなかなか抜けない。藤原にもよく注意されている点だ。 「そういうことだから、お前にもIFRSを勉強しておいてもらいたい、という俺の勝手な希望だな。希望というより、期待に近いかな。」 藤原先輩は言葉の使い方が上手い、と桜井はいつも思う。期待、と言われては、応えたいと思うのが人情だ。 「はい・・・頑張ります!」 桜井はまだ不安が残っているのか、表情が硬くなっている。藤原はそんな桜井を優しい眼差しで見ると、卓上カレンダーを引き寄せた。 「そうと決まれば、さっそく勉強会の日程を決めてしまおう。」 5月ほどではないが、6月も株主総会が終わるまでは忙しい。カレンダーには予定や締切日がびっしり書き込まれていた。 「今日は木曜日だろ・・・。お、今月はあと4回木曜があるから、毎週木曜日の早朝にしようぜ。この4回でみっちりIFRSの基礎概念を教えてやろう。」 「よろしくお願いします。」と、桜井はペコリと頭を下げる。 そこへ清瀬部長と倉田課長がそろってオフィスに入ってきた。例の早朝会議のため、2人ともいつもより早い出勤だ。 「部長、課長、おはようございます。資料の準備もあるんで、先に会議室に入ってます。」 藤原は会議資料を手に立ち上がり、部長と課長に頭を下げた。 桜井は会議室に向かう3人を見送ると、時計を確認した。8時5分。藤原から渡されたIFRS適用レポートを読む時間は十分にある。 「よし!」 一声気合いを入れ、桜井はページをめくり始めた。   (了)

#No. 171(掲載号)
#関根 智美
2016/06/02

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第115回】引当金の会計処理③「工場閉鎖損失引当金」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第115回】 引当金の会計処理③ 「工場閉鎖損失引当金」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹   〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:百万円) (X1年3月決算時) ① 機械装置の売却に伴い生じると見込まれる損失 ② 原状回復義務の履行に伴い生じると見込まれる費用 ③ 事業用定期借地権契約の中途解約に伴う違約金 ④ 工場の事務所の事務機器等の移転費用   〈会計処理の解説〉 我が国では、引当金について、企業会計原則注解18(以下「注解18」という)にその計上基準が示されています。企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会から、個別の会計事象等について、会計基準や監査上の取扱い等が公表されていますが、引当金に関する包括的な会計基準は設定されていません。 そのため、会計事象について「注解18」に示されている引当金の計上基準を満たす場合には、引当金を計上する必要があると考えられます。 ただし、他の会計基準に直接規定されている費用又は損失については、そちらの会計基準の規定が適用されます。   (1) 機械装置の売却に伴い生じると見込まれる損失 当該損失については「機械装置の売却」という将来の事象に起因するものであると考えられます。そのため、「その発生が当期以前の事象に起因する」というものではないので、引当金の計上要件を満たしていないと考えられます。 当該損失については、固定資産の減損に係る会計基準の定めに従って、機械の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態を、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理が求められます(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書(減損会計意見書)三 3)。   (2) 原状回復義務の履行に伴い生じると見込まれる費用 当該原状回復義務の履行に伴い生じると見込まれる費用については、事業用借地に工場を建設したという当期以前の事象に起因していると考えられます。 また、他の「注解18」に示されている引当金の計上要件も満たしていると考えられますが、当該費用については、資産除去債務に関する会計基準に直接規定されていますので、資産除去債務の会計基準の規定が適用されます。 なお、上記の原状回復義務に伴い生じると見込まれる費用については、工場の建物等の取得時及び取壊時に、以下のように会計処理されます。 (ⅰ) 工場の建物の取得時 (※) 建物の取得時においても、原状回復義務の履行に伴い生じると見込まれる費用が300百万円と見込まれていたと仮定しています。また、割引率は考慮外としています。 (ⅱ) 工場の建物の取壊時   (3) 事業用の定期借地権契約の中途解約に伴う違約金 当該損失については、違約金の支払いが来期に見込まれているので、将来の特定の損失であると考えられます。また、「工場の閉鎖に伴い事業用定期借地権契約を中途解約することを決定した」という当期以前の事象に起因していると考えられます。発生可能性も高く、違約金の額も契約書に明記されており、金額を合理的に見積もることができると考えられます。 よって、当該違約金については、引当金の計上要件を満たすため、「工場閉鎖損失引当金」等の勘定科目名称で引当金を計上することが求められると考えられます。   (4) 工場の事務所の事務機器等の移転費用 工場の閉鎖を決定しただけでは、移転が行われていないので、一般的には、費用の発生が当期以前の事象に起因していないため、引当金の計上要件を満たしていないと考えられます。 *   *   * 次回は、引当金の会計処理のうち、リコール損失引当金について解説します。 (了)

#No. 171(掲載号)
#渡邉 徹
2016/06/02

「従業員の解雇」をめぐる企業実務とリスク対応 【第2回】「解雇の有効・無効」~解雇することが正しいのか~

「従業員の解雇」をめぐる 企業実務とリスク対応 【第2回】 「解雇の有効・無効」 ~解雇することが正しいのか~   弁護士 鈴木 郁子   1 はじめに ~解雇をすることが正しいのか~ 会社が解雇を実行するにあたっては、違法・無効な解雇とならないよう留意することは当然である。しかしそもそも、解雇することが全体的見地から正しい判断といえるのだろうか。 解雇の有効・無効の判断は総合考慮(連載【第1回】参照)により決まり、裁判官により判断が分かれることも多いが、解雇の是非を判断するにあたっては、解雇が万が一無効となった場合に会社はどのような法的リスクを負わなければならないのか、解雇が無効となるとどうなるのかということを正確に把握する必要がある。 また、解雇の有効性に問題がない事案であったとしても、解雇が争いとなることで会社に事実上どのようなリスクが発生するのか、認識しておく必要がある。 その上で、それでもなお、解雇という手段をとるのが望ましいといえるのか、合意退職の余地はないのか、考える必要があるのである。   2 解雇の有効・無効とは ~復職とバックペイ、中間収入~ (1) 復職とバックペイ 当事者間で解雇が有効か無効か争いになった場合には、従業員の申立てにより、最終的には裁判所が訴訟手続(解雇無効訴訟)で判断することになる。 解雇が無効であると考える従業員が、 との訴訟(これを「地位確認等請求事件」という)、いわゆる①復職と②復職までの間の給与(バックペイ)及び遅延損害金の支払いを求める訴訟を提起するのである。 そして、裁判所は、解雇が有効である場合には、従業員の請求を棄却して終わるだけであり、無効である場合には、復職とバックペイ及び遅延損害金の支払いを命じることになる。 (2) 解雇が争われている間の従業員の他社での就業について(中間収入) なお、解雇が争われている間、従業員は生計の道を断たれるため、賃金仮払いの仮処分の申立てを行うほか(連載【第3回】で説明予定)、アルバイト等他社で就業することがある。 その場合、裁判例上争いのあるところであるが、従業員が他社で得た収入(中間収入、中間利益と呼ばれる)は、会社の平均賃金の40%を限度としてバックペイから控除できるとの最高裁判決がある。   3 従業員側の無効な解雇についての誤解 ~当然に金銭的要求ができるわけではない~ 従業員は交渉等において、解雇が無効である場合には無条件に会社から賠償金等の金員をもらえると誤解し、会社への高額な金銭的要求に及ぶことが多々あるが、これは正しくない。 解雇が無効であったとしても、従業員が会社に対し求めることができるのは、原則として復職までの給与(バックペイ)だけである。 何らかの合意が会社との間に成立しない限り、会社が、その解雇が無効であることを認め復職命令を出すのであれば、従業員は会社に戻らざるを得ないし(戻らずに他社に就職するのであれば辞職をすることになる)、金銭的には復職命令が出るまでの給与分しかもらえない。慰謝料の発生は解雇の態様等によっては全くないわけではないが、非常に限定的な場合である。 なお、従業員に再就職先が決まっているなどして復職の意思がない場合において、会社が解雇を撤回し復職命令を出したとたん、「退職するが少し解決金をもらう形で解決できないか」等といった話を持ちかけてくることもある。   4 解雇による会社側のリスクと合意退職の検討 (1) 解雇が無効となることのリスク 一方、会社としては、解雇が万が一無効ということになると、解雇無効が確定するまでの間のバックペイ及び遅延損害金が発生する上に、最終的には復職を認めざるを得なくなる。詳しくは【第3回】で解説するが、交渉から労働審判を経て訴訟で判決が確定するまでには数年かかる場合もあり、従業員の給与額によっては、優に1,000万円を超えるバックペイと遅延損害金が発生することになる。 そうすると、解雇の無効が確実視される事案であり、また、従業員が復職にこだわるようであれば、判決確定まで待たずに解雇を撤回し、早期に復職させた方がよい。 それでもどうしても従業員を退職させたいのであれば、従業員側に納得の行く条件を提示し、合意退職に持ち込む、言葉は悪いが、いわば従業員の言い値による金額で退職をお金で買い取るしかなくなる。 なお、解雇の無効が確実視される事案では、従業員は、退職を条件とする場合には、解決金として「バックペイ分+α」を当然に要求してくるので、早期に合意により解決した方がよいことは、改めて述べるまでもない。 (2) 解雇が争いとなること自体のリスク また、解雇の有効が確実視される事案であっても、次のように、解雇が争いとなることで事実上会社が被るリスクは計り知れない。 ① 他の問題が顕在化するリスク まず、解雇が争いとなる場合には、残業代やパワハラ等、他の労働問題もあわせて争われることが多い。このため解雇する前には、従業員との間に他の問題が発生する危険性がないのか確認した方がよい。もし問題があるのであれば、早期に一定の解決金を支払い、あわせて解決してしまった方がよいことが多い。 ② 弁護士費用・手続的負担のリスク また、解雇が有効であれ無効であれ、これが争いとなる場合には、一定のコストが発生する。 詳細は【第3回】での説明を予定しているが、一般に、解雇の争いは、交渉、労働審判、訴訟(地裁、高裁、最高裁)の過程を経るところ、訴訟で判決が確定するまでには、解雇から数年経過することも珍しくない。そして、少なくとも労働審判以降の手続は弁護士に依頼しないと対応が難しく、弁護士費用が発生する上、審判・訴訟の手続の過程で会社の法務・人事が手続に要する時間・手間は甚大である。 その弁護士費用分を解決金の支払いにまわして解決していた方が、最終的には遙かに安上がりであったし、時間・手間も省けたといったケースもよく聞く話である。 ③ 問題が決着しないことのリスク また、そもそも争われるか、争われないか、会社として不確定な状態がいつまでも続くということ(解雇に時効があるわけではない)自体のリスクもある。 (3) 合意退職の可能性の検討 とすれば、解雇の有効性の問題はさておくとしても、解雇を行う前に、そもそも合意退職の余地がないのか、十二分に検討する必要がある。退職勧奨をしてみても、合意退職が不可能な場合に、解雇をすればよいだけである(もちろん、解雇が明らかに無効なケースは解雇すべきでない)。なお、解雇の場合には、解雇予告手当が発生するので、解雇予告手当分を解決金の支払いに充てるという発想もありうる。 そして、これが争いとなった場合の敗訴リスク、上記のように他の問題も顕在化することのリスク、弁護士費用・手続的負担、いつまでも解決未了のままとなるリスク等を考えれば、会社が一定の解決金を支払ってでも合意退職の形で解決してしまった方が全体的見地からは良いこともあることがお分かりいただけると思う。 実務的には、解雇はあくまで最終手段なのである。解雇に合意退職の形をとることを上回る実益(例えば、他の従業員との関係で会社としての筋を通す必要など。なお、解決金支払いの事実については、合意書に守秘義務条項を入れておくことも考えられる)があるのかどうか、慎重に検討されたい。   (了)

#No. 171(掲載号)
#鈴木 郁子
2016/06/02

マイナンバーの会社実務Q&A 【第11回】「就業規則の改定④(「懲戒」の条文の改定)」

マイナンバーの会社実務 Q&A 【第11回】 「就業規則の改定④(「懲戒」の条文の改定)」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   〈Q〉 当社の「懲戒」の条文の改定について教えてください。現在の条文は、以下の通りです。   〈A〉 服務規律の条文には、懲戒処分を科す際の根拠条文として以下の条文を規定した(【第10回】〈パターン1〉参照)。 一方、上記懲戒の条文には、服務規律違反が1回の場合は譴責(けんせき)、数回の場合は減給・出勤停止、数回かつ改善の見込みがない場合は諭旨解雇・懲戒解雇と規定されている(アンダーライン部分参照)。 従業員がマイナンバーを社外へ流出したり不正アクセス行為などによりマイナンバーを取得した回数が1回だからといって譴責(けんせき)で済ますわけにはいかない。懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇が相当である。 以上を前提に改定を行う。   〈パターン1〉 第7号に“マイナンバーを他にもらしたり、不正アクセス行為などによりマイナンバーを取得したとき”を追加した。   〈パターン2〉 第6号のカッコ書きに“マイナンバーを含む”を追加した。 (了)

#No. 171(掲載号)
#上前 剛
2016/06/02

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第25回】「養親の離婚と養子の相続権」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第25回】 (最終回) 「養親の離婚と養子の相続権」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   問 題 【問題①】 A女は婚姻後にBを出産したものの離婚、その後、C男と再婚した。婚姻後、C男はA女の連れ子Bとの間で養子縁組を行ったが、数年後、A女とC男は離婚した。当該離婚によりBは当然にC男の相続権を喪失するか。 【問題②】 【問題①】において、C男がBとの間で養子縁組を行った後に、Bに一定の財産を遺贈する旨の遺言を作成したものの、その後、A女と離婚し、Bとも離縁すれば、当該遺言も当然に効力を喪失するのか。遺贈ではなく、Bに一定の財産を相続させるとの遺言の場合はどうか。 【問題③】 【問題②】において、Bへの遺贈等を回避するための確実な方法は何か。   回 答 【問題①】 A女とC男が離婚しても、C男がBと離縁しない限り、Bは当然にC男の相続権を喪失するものではない。 【問題②】 諸般の事情より観察して、離縁が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかでない限り、その遺言の効力が当然に否定されるものではない。なお、Bに一定の財産を相続させるとの遺言の場合には、あくまでも当該養子が法定相続人であることを前提に、一定の財産を相続させる意思の表れとして、その後の離縁が当該意味を有する遺言と両立しない趣旨のものになされたとの評価を補強する1つの事情とはなりえる。。 【問題③】 協議離縁を行うなどして縁組が解消した場合には、それまでに作成した遺言でかつての養子に財産を与える条項が存在するのであれば、新たな遺言で撤回するか、あくまでも縁組関係の継続を前提または条件として養子へ一定の財産を遺贈する旨を遺言に明記しておくことが望ましい。   解 説 [1] 【問題①】について 連れ子を有する配偶者と婚姻し、連れ子との養子縁組を行ったものの、その後、当該配偶者と離婚したとしても、当該離婚によって直ちに連れ子との親子関係が断絶されることはない。 本問でいうと、C男がBと離縁しない限り、C男が死亡した際には、BはC男の子としての相続人となる。それを回避するためには、C男がA女と離婚するに当たり、Bと離縁する必要がある。 [2] 【問題②】について 養子縁組を行った後、同養子に一定の財産を遺贈する旨の遺言を作成したものの、その後、養子縁組を解消した場合においても、その遺言の効力が当然に否定されるものではない。 この点、養子への遺贈に関し、最高裁昭和56年11月13日判決では、以下のように判示し、一定の要件を満たす場合には、遺贈の効力が後の協議離縁によって取り消されたものとし(一部筆者により編集)、協議離縁を行ったことで養子への遺贈は効力を喪失したものとしている。 つまり、同裁判例では、「諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合」には、民法1023条2項により、後の協議離縁により前の遺言(養子への遺贈)が取り消されたものとした。 すなわち、養子から終生扶養を受けることを前提として養子縁組がなされ、それゆえに養親の所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言を作成したという事情のもと、その後、養親が養子に不信感を抱いて協議離縁したような場合には、その後の協議離縁は、縁組関係の継続を条件ないし前提とした遺言と両立しない趣旨であることが明らかであるとして、養子への遺贈が取り消されたものである。 そのため、同じく、養子縁組をした後に、同養子に一定の財産を遺贈する旨の遺言を作成し、その後、養子縁組を解消したような場合であっても、将来的な縁組の継続を条件ないし前提としたものではなく、過去の養子の貢献等に鑑みて一定の財産を与えるとの遺言がなされたような場合には、その後の養子縁組解消によっても同遺言が取り消されたものと評価することは困難である。 たとえば、東京地裁平成26年11月14日判決では、内縁関係にあった女性(被告)に対する遺贈がその後の内縁関係の解消によって失効した、との遺言者の子ら(原告)の主張に対し、被告へ遺贈する財産の割合も多くはなく、当然に遺言者と被告との内縁関係の継続を前提または条件としているとみることはできず、10年以上生活を共にしたと評価できる相手であったことから、そのことだけからでも、ある程度の財産が遺贈されても不自然ではないとして、問題となった遺言につき、遺言者と被告との内縁関係の継続を前提または条件としてなされたものであると認めることは困難であると判示している。 その結果、同裁判例では、民法1023条2項により、その後の内縁解消によって前の遺言が取り消されたものとはいえないとしている。 そのため本問でも、たとえC男がBとの養子縁組を解消したとしても、諸般の事情より観察して、当該離縁が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかでない限り、その遺言の効力が当然に否定されるものではない。 なお、Bに一定の財産を相続させるとの遺言の場合には、あくまでも当該養子が法定相続人であることを前提に一定の財産を相続させる意思の表れとして、その後の離縁が当該意味を有する遺言と両立しない趣旨のものになされたとの評価を補強する1つの事情とはなりえる。 [3] 【問題③】について 上記裁判例でも争われたように、諸般の事情より観察して後の離縁が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合か否かが関係者によって争われたような場合には、時間、費用、そして何よりも結論が予測不可能であるといったリスクが生じる。 そのため、協議離縁を行うなどして縁組が解消した場合には、それまでに作成した遺言でかつての養子に財産を与える条項が存在するのであれば、新たな遺言で撤回する等しておくことが望ましい。 もしくは、万が一、将来的に養子縁組が解消してしまう場合に備え、あくまでも縁組関係の継続を前提または条件として養子へ一定の財産を遺贈等する旨を遺言に明記しておくことが望ましい。   (連載了)

#No. 171(掲載号)
#米倉 裕樹
2016/06/02

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第9話】「誤指導と信義則」

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第9話】 「誤指導と信義則」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「困ったもんだよ・・・」 田中統括官は渋い顔をして谷垣調査官に話しかけた。 昼休みの時間で、谷垣調査官は食事が終わった後、新聞を読んでいる。 「何かあったのですか?」 谷垣調査官は新聞から目を離し田中統括官の方に振り向いた。 「確定申告の相談会場で、そこに配置されていた税理士の指導の下で確定申告書を作成したのだが、その確定申告の内容に誤りがあったらしく・・・納税者がひどく怒っているというんだ・・・」 田中統括官は、つい先ほど、トイレで所得課税第一部門の統括官からその話を聞いたところだった。 「しかし、税理士も間違えることはあるでしょう。特に確定申告時期の税務相談は多くの納税者の相手をしますから、すべてに正しく答えることは難しいでしょうね。それに・・・税務職員だって間違えることはありますよ。」 谷垣調査官は税理士に同情的である。 「ところでその誤りって、税務署から連絡があったのですか?」 谷垣調査官が尋ねる。 「そうだ・・・納税者が税務署から、確定申告書が誤っているという連絡を直接受けたらしい・・・」 「なるほど、それで納税者はビックリしたのでしょうね。」 谷垣調査官は苦笑いする。 「納税者は『なんで税理士がこんなミスをするのか信じられない!』と言って、税務署に文句を言いに来たらしい・・・」 田中統括官の声も若干トーンが上がっている。 「ちなみにそれって・・・どんな誤りなのですか?」 谷垣調査官は興味深そうに尋ねる。 「・・・一時所得のマイナスを他の所得と損益通算した、ということらしい・・・」 田中統括官は困った表情を浮かべる。 「エッ! そんなの・・・できないって・・・税理士が知らなかったのですか?」  谷垣調査官は田中統括官を責めるような口調になった。 「・・・その税理士は知らなかったらしい・・・」 田中統括官は自分のミスのように声を小さくして答える。 「その納税者にはかんぽ保険の満期支払があったんだが、その申告に際して、その税理士が受取金額から払込金額を控除するとマイナスになったので、これを他の所得と損益通算することができると指導したらしい・・・」 田中統括官は机の中から確定申告書Bを取り出す。 「この申告書の所得金額欄の⑧「総合譲渡・一時」」のところにマイナスの金額を記載して、⑨「合計」には他の所得と損益通算した後の金額を書いた・・・もっとも、マイナスの金額は80万円ぐらいだったので、所得税額としては6万円ぐらい増額したという話だ。」 「しかし、納税者は『税理士に言われるまま申告書の金額を書いただけで、それが誤っていたなんてまったく知らない!』と、ひどく腹を立てている。所得税の統括官もその納税者を相手にして困っていたよ・・・」 田中統括官はトイレで会った所得税の統括官の顔を思い浮かべた。 「税務署としては、その納税者の確定申告書を見てすぐ誤りに気づいたから、納税者に電話したのでしょうね。」 谷垣調査官の確認に田中統括官はうなずく。 「それにしても・・・税理士なら、一時所得のマイナスを他の所得と損益通算できないことぐらい知っていそうなものだけどなあ・・・」 谷垣調査官はそう言いながら、読んでいた新聞を机の上に置いた。 「ところで、自慢ではありませんが、私なんか、納税者から質問されてその場で答えたことが、後で誤っていたと気づくことがよくありますよ。」 谷垣調査官は少しバツが悪そうに言う。 「もちろん、誰にだってあるさ。」 田中統括官は応じる。 「よく『税務署に聞いて申告書を作成した』という納税者がいますけど・・・これって、たとえ税務署の職員が納税者に対して間違ったことを指導したからといっても、納税者は税金を払わなくてもよいということにはなりませんよね。」 谷垣調査官は田中統括官の顔を見た。 「信義則の問題だな。」 田中統括官は机からファイルを取り出す。 「税務上の信義則の適用は、民法と違って、その適用はとても厳しいんだよ。」 そう言いながら、田中統括官はそのファイルから「信義則の適用要件」(最高裁平成18.1.24判決)と書かれた書類を谷垣調査官に見せた。 「税務上の信義則の適用は、他の納税者との税負担のバランスを考えて判断をしなければならない・・・」 田中統括官は、ファイルを見ながら説明をする。 「要は・・・税務職員の電話相談とか税務調査での指導等については、この信義則の適用要件の①の「公的見解」に該当しないことから、納税者は税務職員の誤指導を理由として税負担の免除を訴えても、ダメだということだな。」 田中統括官はそう力強く言ってファイルを閉じた。 (つづく)

#No. 171(掲載号)
#八ッ尾 順一
2016/06/02

《速報解説》 消費税率10%引上げは平成31年(2019年)10月へ2年半延期~税制関連法案は秋の臨時国会での成立を目指す

《速報解説》 消費税率10%引上げは平成31年(2019年)10月へ2年半延期 ~税制関連法案は秋の臨時国会での成立を目指す   Profession Journal編集部   昨日(6月1日)の安倍首相の記者会見により、消費税率の10%引上げの時期が平成31年(2019年)10月1日まで2年半延期されることが明らかとなった。軽減税率の導入も同様に2年半の延期が明言された。 現在は平成28年度税制改正を踏まえ、下記のスケジュールで消費税率10%引上げ等が行われることとなっている。 平成28年(2016年)10月1日 ⇒経過措置に係る指定日 平成29年(2017年)4月1日 ⇒10%引上げ+軽減税率スタート(区分記載請求書等保存方式) 平成31年(2019年)4月1日 ⇒適格請求書発行事業者の登録申請受付スタート 平成33年(2021年)4月1日 ⇒インボイス(適格請求書等保存方式)導入 これが今回の延期により、次のスケジュールとなる見込みだ。 平成31年(2019年)4月1日 ⇒経過措置に係る指定日 平成31年(2019年)10月1日 ⇒10%引上げ+軽減税率スタート(区分記載請求書等保存方式) 今回の消費税率引上げの延期、及び既報のように直系尊属からの住宅取得等資金贈与特例など法律上の手当ては、秋の臨時国会で審議される予定であり、提出される改正法案により詳細が明らかになる見込みだ。 また、現在、募集を行っている軽減税率対策補助金制度についても、平成28年3月29日から平成29年3月31日までに導入または改修等が完了したものが支援対象とされているため、今後の動向に注意したい。 さて、区分記載請求書等保存方式による4年の経過期間を経たインボイス制度だが、その導入(及び発行事業者の登録開始)時期については、消費税率アップと同様に2年半延期されるかは未定だ。インボイスは現在から準備できるものとして、財務省は軽減税率の導入にかかわらず、平成33年から当初の予定どおり導入するのではないかとの憶測も広がっている。 すでに来年4月からの税率引上げ及び複数税率への対応を始めていた企業や業界団体にとっては予算管理も含めスケジュールの見直しが求められるものの、引上げまで1年を切った現在としては、今回の延期は実務家にとって朗報ともいえよう。 なお、当面の対応は不要となるものの、インパクトの大きい改正であることには変わりないことから、特に軽減税率については経営上の問題点の洗い出しやシステム改修の検討等の対応について、綿密なスケジュールを立て着実に進めておきたい。 また、秋の臨時国会では、昨日の安倍首相の「総合的かつ大胆な経済対策を講じてアベノミクスをいっそう加速させていく」との発言にあったように経済対策を盛り込んだ今年度第2次補正予算案が編成されることから、税制についても何らかの手当てが行われる可能性もあり、7月10日の参議院選挙後の与党及び政府の動向にも注視が必要だ。 (了)

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#Profession Journal 編集部
2016/06/02
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