税務判例を読むための税法の学び方【75】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その3:「生計を一にする親族」の範囲~最判昭51.3.18①) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 1 「生計を一にする」 税法の条文には、明確な定義がなされていないにもかかわらず、「生計を一にする親族」や「生計を一にするもの」というものが多く出てきており、様々な規定の適用に「生計を一にする」という要件が重要なものとなっている。 適用条文は、所得税法では大きく次の2つに区分することができる。 1つは、控除対象配偶者、扶養親族、寡婦及び寡夫の定義に関する規定(所得税法第2条)のほか、雑損控除(所得税法第72条)、医療費控除(所得税法第73条)等、所得控除に関する規定の適用要件である。 もう1つは、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)、事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等に関する規定(所得税法第57条)の適用要件である。 この所得税法第56条では、必要経費の特例として、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金等の金額(条文は「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額」)は必要経費にならないと定めている(ただし同57条ではその例外として専従者給与を規定している)が、一方で、その親族がその収入を得るために支出した金額等については、「その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する」と、必要経費となるべきことを規定している。 この問題に関しては、「夫弁護士・妻弁護士事件」(最高裁平成16年11月2日判決)及び「夫弁護士・妻税理士事件」(最高裁平成17年7月5日判決)が有名である。 すなわち、お互いに独立した事業を営む夫婦間の弁護士報酬や税理士報酬が必要経費として認められるか否かが争点となっており、「夫弁護士・妻弁護士事件」での最高裁は、「生計を一にする親族が居住者と別に事業を営む場合であっても、そのことを理由に所得税法56条の適用を否定することはできない」との判示が、立法趣旨の点からは問題あるという批判もあるが、「生計を一にする」の意義については何ら見解を示していない。 これから取り上げる昭和51年3月18日判決は、被引用判例の数は決して多くはないが、「生計を一にする」の意義について判示した最高裁判決として著名なものであり、また原審と最高裁が結論を異にしているため、2つの見解の相違を比較しながら「生計を一にする親族」のメルクマールが何かについて検討する。 2 概要 3 判決の構造 (1) 一般的法命題 この最高裁判決においては、「一般的法命題」は示されていない。 判決の中で、「主文」に続き「理由」が記され、その中で原判決が、当該事案について所得税法第56条に該当すると判断した事実認定を挙げた上で、その事実認定を否定している。 本連載【69】に、一般的法命題を欠いた判決を通常「事例判決」と呼ぶ旨記したが、この判決もこの事例判決の1つといえる。 (2) 事実認定 判決は、上記高裁の認定事実に続けて とした。 (3) 結論 上記事実認定を受けて「Dらと上告人とが生計を一にする関係にあったと判断し、上告人の本訴請求中被上告人Y税務署長に対して本件更正及び過少申告加算税賦課決定の取消を求める部分を失当とした原判決は、ひっきょう、所得税法56条の規定の解釈適用を誤り・・・」と判示している。 4 検討 (1) 高裁判決 高裁判決では、「生計を一にする」と認定して国側の主張を認めている。では何が判断を分けたのであろうか。 まず原審である高裁判決を入手し、読んでいただきたい。 この中で事実認定として(もっともこれは、当然、上記3(1)に記した「原判決が、当該事案について所得税法56条に該当すると判断した事実認定」と同じものとなる)以下を挙げている。 そして続けて「以上の事実によれば、前記両名は控訴人の印刷業を手伝い控訴人は右両名に対し生活費を支給して有無相扶ける関係にあるものと認めるのが相当であり、したがって右両名は所得税法(略)56条の控訴人と生計を一にする親族にあたるものというべきである」と結論付けている。 それに続けて「前記両名は昭和40年当時いずれも結婚して控訴人と別居していたことが認められるが、別居していても、生活費の面で有無相扶ける関係にあれば、生計を一にするものということができるから、右別居の事実は、なんら前記認定および判断の妨げとはならない」と判示し、結婚して別居していることは「生計を一にする」の判断に影響がないと判示している。 この点、最高裁は、「毎月支給を受ける右金員のうちから自らの責任と計算でそれぞれの家賃や食費その他の日常の生活費を支出し」ている点を重視している。一方高裁は、Xの長男次男への支払いにおけるその支払金額の計算根拠の曖昧な点や支払期日の不統一な点、源泉所得税の未徴収や賃金台帳がない点など、Xの給与支払いにおける不備なところを重視し、これを給与ではなく生活費と認定したのであった。 * * * 次回も引き続き本事案について検討を行うこととする。 (続く)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第42回】 倉敷紡績株式会社 「特別調査委員会報告書(平成27年11月24日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【調査委員会の概要】 【倉敷紡績株式会社の概要】 倉敷紡績株式会社(以下「クラボウ」と略称する)は、1888年(明治21年)3月創立。繊維事業、化成品事業をはじめとする事業を展開。国内17社、海外15社のグループ会社を有する〈同社webより〉。連結売上高169,755百万円、包括利益9,167百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数4,628名。本店所在地、岡山県倉敷市。東京証券取引所一部上場。 【調査報告書のポイント】 1 不正行為が発覚した経緯 平成27年6月、元従業員A氏(平成27年6月末日退職)と、クラボウの中国子会社であるP社との取引において、①P社が立替払いをしていた検品代等の費用の未払い、②P社からの仕入商品に係る不適切な単価調整及び③P社への預け在庫に係る実地棚卸不備及び架空生地在庫の存在が明らかとなった。 社内調査の過程で、A氏が買戻し条件付取引を行っていたのではないかと疑われるメール等が発見されたことから、さらに事実確認を行った結果、A氏による買戻し条件付取引の存在が確定的であることが認められ、A氏による上記各不適切行為は、複数年度にわたり、かつ、その影響額も営業利益にして累計約4億円に及ぶ可能性が見込まれた。 そこで、クラボウは、本件に関しては、社内調査ではなく、弁護士、公認会計士等の外部専門家を含む特別調査委員会を設置して、さらなる調査を実施することが必要であると判断し、特別調査委員会の設置に至った。 2 調査報告書により判明した事実 (1) A氏による不適切行為の類型(報告書p.5以下) 報告書によれば、A氏による不適切行為は、グループ会社との間のものと、グループ会社も含む複数の社との間の買戻し条件付取引(循環取引)とに大別できる。 (2) A氏が不適切行為を行うに至った背景事情及び動機 A氏は、仕入業務及び販売業務の両方を担当し、また、単価調整等による重大な弊害についての問題意識を十分に有していなかった、とされている。さらに、当時の上司である課長は、「自身が過去に買戻し条件付取引を行っていた上、A氏による買戻し条件付取引等についても、これを認識しながら制止しなかった可能性が高い」(報告書p.17)ということであり、内部統制が機能していなかったことがうかがわれる。 そのうえで、A氏の動機としては、 などが挙げられている。 一方、過去に発覚した買戻し条件付取引の実行行為者に対する処分が「始末書を書いた程度」(報告書p.17)であったことから、「それほど重大なことではないと認識した」という、A氏における不正の正当化につながるような記述もみられる。 (3) 類似行為に関する調査(調査報告書p.18以下) 委員会が、A氏の行為と類似する行為の調査を行った結果、他に6人が買戻し条件付取引を行っていたことが判明した。それらの行為者の動機は、A氏と同じく、売上予算達成や長期滞留在庫の評価損の計上を避けるものであり、また、そのうち、B氏の上司については、A氏の上司同様、「買戻し条件付取引に気づきながら、これを容認ないし黙認していた」と評価されている。 (4) 長期滞留在庫の評価損計上ルール(調査報告書p.17) A氏による買戻し条件付取引が行われた当時、クラボウでは、各四半期末の時点で滞留期間が18ヶ月以上の長期滞留在庫は、帳簿価格の50%に相当する評価損を、当該在庫を担当する者又は課が負担するというルール(以下「18ヶ月ルール」という)があった。 報告書では、あくまで「当時」という表現が使われており、その後のルールの変化を想起させるものとなっているが、現在において、18ヶ月ルールがどのように運用されているかは、報告書にも、クラボウのリリースにも記述がないため、不明である。 (5) 人事査定制度(調査報告書p.26) ここまで見てきたように、買戻し条件付販売の動機としては、「18ヶ月ルールの適用を避ける」というものが多く見られたが、調査委員会によると、クラボウでは、成果報酬制や予算達成度合いを直接反映するような人事査定制度は設けられておらず、また、クラボウの繊維営業部門において、過度の売上偏重の風潮があったとも認められなかったということである。 3 再発防止策(調査報告書p.28以下) 調査委員会がまとめた再発防止策の概要は以下のとおりである。 特に目新しい提言ではないが、買戻し条件付取引では必ず協力者の存在が必要であることから、「(2) 環境の改善」で提言されている「取引先に対する積極的通報の要請」については、さらに報奨金制度のようなものまでも含めて、検討すべきではないかと思料する。 また、内部通報制度におけるリニエンシー制度については、「検討」することが提言されているが、損害の拡大を防ぐ意味でも、制度導入が望ましいであろう。 4 調査報告書の特徴 (1) 過年度決算への影響(調査報告書別紙) 報告書によれば、連結売上高の過大計上が1,018百万円、税引前利益の過大計上が288百万円であった。このうち、A氏の行為による影響がそれぞれ625百万円、291百万円となっている。これは、A氏以外の行為者による買戻し在庫は、調査時点ですでに処分がされているため、損益に与える影響が軽微であったことによるものである。 (2) 「会社ぐるみ」の行為とは認められないこと(調査報告書p.24) 特別調査委員会の調査によって買戻し条件付取引を行っていることが判明したA氏を含む7名以外にも、クラボウにおいては、買戻し条件付取引の発覚による従業員の処分がなされてきた。 そうした事実を解明してもなお、調査委員会は以下の理由から、「会社ぐるみ」とは言えないと結論づけた。 (3) 新たな従業員による不祥事の発生 クラボウが、特別調査委員会の調査期間中である、平成27年11月9日に公表した「グループ会社従業員による横領事案の発生について」というリリースでは、繊維部門グループ会社の営業補助担当であった従業員が、繊維原料を私的に転売して、現金を着服、その被害額は75百万円であることが説明されている。 この不正行為が、本特別調査委員会による調査の過程で発覚したかどうかは説明されていない。 (4) 会社側の再発防止策の概要 12月15日、クラボウは、本件不適切行為及び上記(3)の不正行為に対する再発防止策を公表した。会社側の再発防止策の概要は以下のとおりである(一部抜粋)。 なお、会社側の再発防止策では、調査委員会による提言の最初に記されている「トップマネジメントによる明確なメッセージの発出」に関しては触れられていない。また、本稿執筆時点(平成28年1月29日)において、クラボウ社のwebサイトにおける「トップメッセージ」も、平成27年6月からまったく変わっていない。 不適切行為にどう対応するのか、「トップマネジメントによる明確なメッセージの発出」の重要性を提言した調査委員会の報告書の理念は、残念ながら、十分に活かされてはいないのではないかと評価せざるを得ない。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第107回】 連結会計⑨ 「子会社の欠損」 仰星監査法人 公認会計士 田中 良亮 〈事例による解説〉 〈会計処理〉(単位:百万円) ×1年4月1日(A社設立) A社個別仕訳 当社個別仕訳 当社連結仕訳 ×2年3月31日(決算日) 当社連結仕訳 ×3年3月31日(決算日) 当社連結仕訳 (※1) 持分比率に応じて処理すれば、A社で計上した損失100百万円の30%である30百万円を非支配株主が負担することになりますが、非支配株主は出資額30百万円を上限として損失を負担するため、×2年度に非支配株主が負担した損失9百万円を控除した金額21百万円が×3年度における非支配株主の損失負担額となります。 その結果、×3年度末における当社の損失負担累計額は、A社で計上した累計損失130百万円から非支配株主が負担した累計損失30百万円を控除した100百万円となり、出資額70百万円を超えた金額となっています。 ×4年3月31日(決算日) 当社連結仕訳 (※2) ×4年度にA社が計上した当期純利益70百万円のうち、×3年度までに当社が負担していた出資額を超える30百万円の累計損失を優先的に回収し、残りの40百万円を持分に応じて非支配株主に按分することになります。この場合の非支配株主に按分する金額は40百万円の30%である12百万円となります。 〈会計処理の解説〉 1 法制度の確認 現行の会社法では、株主は出資額以上の負担をしない旨が規定されている(株主有限責任の原則)ため、原則として株主は欠損について責任を負いません。 A社は×2年度においては出資額を上回る損失を計上していないため、持分割合に応じて各株主が損失を負担することになりますが、×3年度に100百万円の損失を計上した結果、債務超過となっています。法律上は債務超過について当社も非支配株主も責任を負わないため、子会社の欠損について負担する必要はないということになります。 2 子会社で発生した欠損負担の実務対応 しかしながら、親会社は子会社の債務者に対して、保証債務等の契約に基づく責任を負う場合が多いだけでなく、親会社の経営責任や信用保持のための経営判断等から当該子会社の債務の肩代わりを行う可能性も高いと考えられます。 このような場合には、非支配株主が負担すべきA社の欠損金額は出資額を上限とし、それを超える部分については親会社である当社が負担することになります。×3年度はこの前提に立って会計処理を行っています。 3 子会社で欠損を相殺するほどの利益が計上された場合 株主有限責任の原則の見地から、当社はA社の欠損を負担する必要がないため、×4年度のように、A社で欠損を相殺するほどの利益が計上された場合には、当社が過去に負担していた欠損を優先的に相殺することになります。欠損の相殺を上回る利益が計上されている場合には、当該利益は通常通り持分割合に応じて非支配株主へ按分します。 4 特定の非支配株主との合意等が存在する場合 本稿の会計処理は、A社の欠損を親会社である当社が全額負担する前提に立っていますが、特定の非支配株主と当社又は他の株主や債権者との間でA社の債務の引受けなど、出資を超えた非支配株主による負担が合意されている場合があります。このような合意が存在する場合には、当該合意に基づいた負担額の配分を行う必要があります。 * * * 次回は、関連会社の債務超過の会計処理について解説します。 (了)
改正労働者派遣法への実務対応 《派遣先企業編》 ~派遣社員を受け入れている企業は「いつまでに」「何をすべきか」~ 【第4回】 「労働者派遣契約等の見直し」 特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ 【第4回】は、労働者派遣契約等の見直しについて検討する。 1 変更すべき書類 今回の改正により、派遣先が変更して整備すべき書類は、「労働者派遣契約」及び「派遣先管理台帳」の2点であり、変更すべき項目はそれぞれ以下の通りとなる。 (1) 労働者派遣契約 労働者派遣契約で締結しなければならない事項として、以下の3項目が追加されている。 ① [組織単位] 「個人」単位の期間制限では、同一の組織単位におけるに派遣可能期間は3年となるため、労働者派遣契約において派遣就業する組織単位を明確に定めるようになっている。 なお、組織単位を特定することができるよう、組織の名称や組織の長の職名を明記することとされている。 ② [紛争を防止するための措置] 労働者派遣契約終了後に派遣労働者を雇用する場合に、その雇用意思を事前に派遣元に示すことや紹介手数料を支払うこと等の派遣先と派遣元との紛争を防止するための措置を労働者派遣契約で定めることとされている。なお、紹介手数料を支払う取り決めは、派遣元が職業紹介事業を行っている場合に限られる。 ③ [無期雇用派遣労働者又は60歳以上の者に限定するか否かの別] 無期雇用者や60歳以上の者の派遣のみを受け入れる場合は、特例として期間制限の適用を受けないため、期間制限の適用を受けない労働者派遣に限定するか否かを労働者派遣契約で明確にしておく。 (2) 派遣先管理台帳 派遣先管理台帳に記載しなければならない事項として、以下の3項目が追加されている。 ① [無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別] 募集内容の周知等、派遣労働者が無期雇用か有期雇用かにより対応すべき事項が異なるため、派遣先管理台帳に記録し把握しておく。 ② [組織単位] 労働者派遣契約で追加すべき[組織単位]((1)の①)と同様となる。 また、派遣先管理台帳に記載すべき事項のうち、派遣就業をした日の実績等については月に1回以上派遣元へ通知する必要があるが、その通知事項にも[組織単位]を追加する必要がある。 ③ [教育訓練を行った日時及び内容] 自社の従業員に対して業務関連の教育訓練を行う場合は、一定の場合を除き派遣労働者にも同様の教育訓練を行う配慮義務があるため、教育訓練を実施した場合はその内容を派遣先管理台帳に記録しておく。 2 確認体制 改正に対応した書類整備が行われているかは、法務等の契約を管理する部署や人事等の派遣先管理台帳を管理する部署が、書類の作成が必要になる都度確認して対応すればよいが、確認漏れを減らすためには、書類に記載すべき項目のチェックリストを作成してそれに基づいて確認する体制とするとより確実となるだろう。 3 対応スケジュール 労働者派遣契約については、平成27年9月30日以降に締結する契約から項目の追加が必要となる。 また、派遣先管理台帳については、平成27年9月30日以降に作成すべきものから項目の追加が必要となる。 なお、派遣先管理台帳は、派遣労働者を受け入れる都度作成するものであるため、平成27年9月30日以降新たに受け入れた派遣労働者のものだけでなく、改正前より引き続き受け入れている派遣労働者のものについても、項目の追加が必要となる。 * * * 労働者派遣契約や派遣先管理台帳は、派遣元が主体で準備し派遣先へ提供される場合も多いが、上記追加項目がきちんと記載されているか念のため確認をしていただきたい。特に派遣先管理台帳については、本来派遣先で作成すべきものであるため、派遣元から提供された資料を活用しつつ、派遣先で責任をもって整備する必要がある。 (了)
養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第17回】 「養子と法定相続人(相続税の負担が不当に減少させる結果となる場合)」 弁護士・税理士 米倉 裕樹 [1] はじめに(相続税法上の養子縁組の制限について) 相続税の計算を行うに当たり、①基礎控除額、②生命保険金及び死亡退職金の非課税限度額、③相続税の総額の計算については、民法の定める法定相続人の数を基準とする。 例えば、①基礎控除額については、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が相続税の基礎控除額となり(相法15①)、②生命保険金及び死亡退職金の非課税限度額についても、「500万円×法定相続人の数」が非課税限度額となることから(相法12①五・六)、法定相続人の数が増えれば増えるほど相続税の負担を減少させる結果となる。 また、③相続税の総額を計算するに当たっては、法定相続分に応じた各取得金額に超過累進税率(高い取得金額部分には高い税率が課せられる)を乗じて計算されることから(相法16)、法定相続人の数が増えれば増えるほど相続税の負担を減少させることとなる。 しかしながら、昭和63年の相続税法改正により、上記相続税の計算を行う際の法定相続人の数に含める養子の数は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、被相続人に実子がいない場合には2人までと制限されることとなった(相法15②)。 [2] 実子とみなされる養子 もっとも、特別養子縁組により養子となった者や、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者(いわゆる配偶者の連れ子との養子縁組)は、相続税法上、実子とみなされる結果、たとえ、養子縁組が介在していたとしても、相続税法上の養子縁組の制限対象とはならない(相法15③、相令3の2、相基通15-2)。 すなわち、このような者は相続税法上、実子とみなされるため、たとえ複数人存在する場合であっても、相続税法上の養子縁組の制限において実子としてカウントされ、養子としてカウントされない。 [3] 法定相続人としての地位 以上の相続税法等の定めは、あくまでも相続税の計算を行うに当たっての相続税法等の制限であり、同相続税法等の定めを超えた民法上の養子縁組の効力や養子の相続人としての地位を否定するものではない。 たとえば、未成年者控除(相続人が一定の要件を満たす未成年者である場合、相続税の額から一定の金額を差し引くこと(相法19の3))は、実子のみならず、養子についても適用を受けることができるし、障害者控除(相続人が一定の要件を満たす85歳未満の障害者である場合、相続税の額から一定の金額を差し引くこと(相法19の4))についても同様である。 他にも、不動産の相続税評価額を下げるために、相続税法上の養子縁組の制限を超えても、あえて養子縁組を行うことで法定相続人の数を増やすことも考えられる。 たとえば、1筆の土地を1人が相続するのと比べ、土地を分割し何人かで相続する方が土地の道路づけや地形などにより、その土地の相続税評価額を安くすることができる場合などが考えられる。 逆に、養子が相続人としての地位を得ることで、考慮しなければならない事項も存在する。 たとえば、「相続開始前3年以内の贈与財産の相続財産への加算」(相法19)は、あくまでも相続や遺贈で財産を取得した人を対象とするもので、年間110万円の基礎控除の範囲内での贈与も含め、被相続人の死亡前3年以内になされた贈与は相続税の課税対象に加算されることになる。そのため、相続の発生が近いと考えられるケースでは、あえて法定相続人とはならない複数の親族へ贈与する選択肢も存在する。 [4] 養子の数の否認規定 相続税法第63条では、たとえ1人または2人の養子縁組であっても、相続税の負担を不当に減少させる結果となると税務署長が認める時は、これを否認して、相続税額を更正決定できるという「養子の数の否認規定」が規定されている。 「養子の数の否認規定」の解釈に関し、相続税法基本通達逐条解説では、 と解説されている(加藤千博編『平成22年版相続税法基本通達逐条解説』大蔵財務協会、2010年、641頁)。 ここでいう「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との「養子縁組の目的」は、あくまでも主観的なものであるため、その主観を裏付ける状況証拠の積み重ねによって課税庁が立証していくことになろう。 一般的には、相続開始により近い時期になされた養子縁組は、そうでない養子縁組に比べ、「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との目的が推認されやすいといえ、同居の親族や日頃から親密に交流していた者との養子縁組は、そうでない養子縁組に比べ、「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との目的が推認されにくいといえる。 もっとも、たとえ相続開始直前になされた養子縁組であっても、養子となる者が、日頃、被相続人が気に懸けていた孫などであった場合には、その者の将来の生計等を配慮してなされたともいえるのであり、一概に「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との目的であったと課税庁が立証することは困難といえる。 そのため、実際に養子の数の否認規定が適用された事例はないとも言われているが、規定が存在する以上、留意しておく必要はある。 なお、縁組意思や届出意思を欠いている養子縁組は、民法上も無効と解せられているので、ここにいういわゆる不当減少養子とは異なって相続人の地位すら有しないことになる(前掲書641頁)。 また、一部の養子について相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、その不当な減少の原因となった養子だけを除いて計算することとされており、他の養子は法定相続人の数に含めて計算されることとなる。 (了)
企業の不正を明らかにする 『デジタルフォレンジックス』 【第7回】 (最終回) 「デジタルフォレンジックスの現場」 ~調査編②~ プライスウォーターハウスクーパース株式会社 シニアマネージャー 池田 雄一 前回に続き、デジタルフォレンジックスの調査について解説していく。 1 報告書には「事実」のみを記す 筆者がデジタルフォレンジックスの研修を受けた際に、報告書の書き方については司法当局出身のアメリカ人教官に非常に厳しく指導されたことを記憶している。デジタルフォレンジックスの報告書の特徴は、「判明した事実のみを記す」ことであり、「~と思う」や「~と考える」などの「意見や見解」などを一切含んではいけないというものである。 その背景にある理由として、調査結果が裁判などの証拠として使用される可能性もあるため、100%確証が持てない情報(証拠として断定することができない情報)に関して専門家が見解を示すことによるリスクを避ける必要があるからである。不正行為を直接的に示す情報が特定されれば、そのような情報が存在するという事実のみで証拠として成り立つため、意見や見解を示す必要はない。 一方で、不正行為を直接的に示さない状況証拠が特定された場合は、それだけでは証拠として成り立たない。それらの状況証拠が何を意味しているのかを独自に解釈し、専門家の見解として記載することは避けるべきであることが鉄則として認識されている。ただし、複数の状況証拠を組み合わせることで有効な証拠として成り立つ場合がある。もちろん、その際においてもこれを客観的に記述する必要がある。 あるべき姿のデジタルフォレンジックスの報告書を見ると、非常に淡々と発見事項が並べられているのみで、まったく面白味のない無機質な印象を受けるかもしれない。しかし、多くの解釈や意見などが含まれる報告書は、適切なトレーニングを受けていない調査員によって書かれていることを示している可能性がある。 一見、そのような報告書の内容は読み物として面白く、調査員が多くの知識を持っている印象を受けるかもしれないが、素人が読んだ場合には誤解を招くリスクがあるほか、万が一専門家の解釈が正しくなかった場合に、法廷などでは致命的な結果を招くことなどが考えられる。 したがって、デジタルフォレンジックスを利用する側として、報告書のあるべき姿は判明した事実のみが記されている、非常に淡白なものとして認識しておくことが推奨される。 2 デジタルフォレンジックス専門家の適性とは ここで、デジタルフォレンジック調査を行う専門家の適性について簡単に触れておきたい。 デジタルフォレンジック調査を行う専門家は、不正事案の事実解明にはどのような情報が必要なのか、何をどのように証明する必要があるのかなど、いくつものシナリオを想定しながら調査を組み立てていく必要があるため、コンピュータに詳しいだけでなく、調査業務そのものについても詳しい必要がある。 実際に不正調査が行われる場合、デジタルフォレンジックスの専門家が1人で調査を行うのではなく、案件の性質に応じてデジタルフォレンジックス以外の分野における調査の専門家を含めたチームとして取り組むことが多い。そのため、不正会計調査の専門家、法律の専門家などからどのような情報が証拠として必要なのかを伝えられたうえで、その情報をどのように見つけていくかを考え、調査を進めていくことになる。 一方で、デジタルフォレンジックスの専門家が中心となって調査を組みたてていく必要がある「理系的アプローチ」を必要とする案件においては、特に専門家の適性が問われる。 専門家の適性に関して、筆者の研修を担当した教官を含む何人もの専門家が言っていたことの中に、今でも印象に残っていることがある。 それは、「センスの良い優秀なデジタルフォレンジックスの専門家は、必ずしもコンピュータプログラミングなどに詳しい理系の人間ではない。」ということである。 米国の司法当局で活躍している優秀な専門家は、多くの場合、コンピュータ以外の調査業務の経験も豊富にあり、そこで培った知識と経験をデジタルフォレンジック調査に生かしているという。分析を行う対象はコンピュータではあるが、本当に相手にしているのはそれを使っていた人間であることを忘れてはならない。 調査を行うにあたり、コンピュータに詳しいにこしたことはないが、不正行為を行う人間がどのような動機に基づき、特定の行為をどのように行ったかを予想するための行動分析を行いながら調査を進めていくことで、初めて効果的に証拠の特定ができるのである。 また、発見事項を正確かつ分かりやすく説明できることも、必要とされる適性の1つである。素晴らしい発見事項があったとしても、それをうまく伝えることができなければ、専門家としての価値も半減してしまう。 優秀なデジタルフォレンジックスの専門家に求められる適性とは、コンピュータに関する知識、調査能力、コミュニケーション能力および地味で詳細な調査業務を長時間継続することのできる根性であると筆者は考える。 3 セカンドオピニオンが必要な理由 医療業界においても、別の医者にセカンドオピニオンを求めることが推奨されているのと同様に、採用したデジタルフォレンジックスの専門家に少しでも疑問を感じるようであれば、別の専門家にセカンドオピニオンを求めてみることで、疑問の解消につながるかもしれない。 時に筆者も、クライアントや弁護士などから、以下のような理由によりセカンドオピニオンを求められることがある。 セカンドオピニオンの取得によって、採用した専門家がとった調査アプローチが適切ではなかった、調査結果に問題がある、費用を払いすぎていた、時間がかかりすぎているなどの課題が浮かび上がるかもしれない。 (連載了)
〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第5話】 「マイナンバーの影響」 ~資産情報の調査~ 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 谷垣調査官が右手に経済雑誌を持ちながら、田中統括官の机の前に来た。 「あの・・・」 「どうした?」 部下の調査報告書を読んでいた田中統括官は、顔を上げて谷垣調査官を見た。 「マイナンバーのことで少しお聞きしたいのですが・・・」 谷垣調査官は、持っていた経済雑誌を見せながら、田中統括官の顔色を窺っている。その雑誌では相続税対策の特集が組まれており、その中にマイナンバーの記事が載っている。 「個人番号及び法人番号か・・・今年、2016年から制度がスタートするんだな。」 田中統括官は、谷垣調査官の質問に興味を持った様子で言った。 「マイナンバーが導入されたら、資産税の税務調査もかなり変わってくるだろうな。」 田中統括官は腕を組んで思案顔になる。 「預金口座と個人番号がひも付くと、すべての預金口座を簡単に名寄せできるから、お金の流れも資産の状況もかなり把握することができる。今までは、被相続人や相続人の居住地や勤務地近くにある金融機関に照会して、関係口座の有無を調べていたのだが・・・その必要もなくなる。」 田中統括官は少し興奮した様子で言葉を続ける。 「それに、納税者の金融機関や証券会社等との取引事実を把握するための・・・資産の所有等に関する資料又は金融取引資料せんなどは、今までは氏名や住所の不正確な表示で一致させられない情報がかなり宙に浮いたままになっていた。それも個人番号を利用することによって、かなり正確に納税者とマッチングすることになる。これは税務調査にとって大きなプラスだ。」 田中統括官の言葉に谷垣調査官はうなずいた。 「しかも、マイナンバー制度が導入されると、借名の口座には個人番号を付けることができなくなりますから、借名の口座などもできなくなります。それで、個人番号の付いていない口座を集中的に調べて、不自然なキャッシュの流れを解明するとか・・・」 谷垣調査官は言葉を付け加えた。 「ところで、今、銀行では現金で引き出しをする人が多いらしいですね。」 谷垣調査官は苦笑いしながら言う。 「それはなぜだい?」 田中統括官が尋ねる。 「統括官が今おっしゃったように、マイナンバーが導入されたら個人の預金が把握されるから、その前に銀行から預金を引き出そうと・・・」 谷垣調査官の説明に、田中統括官は再び尋ねた。 「それをタンス預金にするというのか?」 「いえ、銀行の貸金庫に入れておくらしいです。ですから、今、銀行では貸金庫の申込みが多いと聞いています。」 谷垣調査官の説明に、田中統括官は大きくうなずいて言った。 「そうか・・・マイナンバーの影響だろうな・・・」 「しかし、谷垣君も知っているだろう。税務調査では銀行の貸金庫に備え付けられている防犯監視カメラを見るから、誰が、いつ、貸金庫に行ったかなんて、簡単に調べることができる。現金を持って貸金庫に行く納税者の姿もバッチリ確認できるんだ。」 田中統括官は笑いながら言う。 「そうですね。貸金庫にどれだけ現金を入れていても、税務調査からは逃れられません。」 谷垣調査官も納得する。 「それに、銀行の預金口座だけでなく投資信託口座や保険などもマイナンバーでひも付くことになるから、相続税の税務調査はずいぶん効率的になる。・・・つまり、個人番号からその人の大部分の財産を機械的にはじき出すことが可能になる、というわけだ。」 「そうすると、ますます日本の富裕層の人たちはそれを嫌って、海外に逃避するのでしょうかね・・・」 谷垣調査官は不安そうな表情を浮かべた。 田中統括官は腕を組みながら言った。 「そうだなあ・・・しかし、既にかなりの富裕層の人が住所を海外に移していると聞いているが・・・」 「例えば、香港とかシンガポールですか?」 「ああ、あそこは相続税がない国だから・・・」 田中統括官は半ばあきらめの表情になる。 「この雑誌にも載っていますが、相続税のない国って、けっこうあるんですね。例えば、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデンそして・・・マレーシアも、相続税がありません。」 谷垣調査官は雑誌の記事をもう一度田中統括官に見せた。 「そういえば台湾では、2009年の税制改正で、相続(遺産)税と贈与税の減税措置(一律税率:10%)が実施されたらしい。その減税した理由は、台湾の多くの富裕層が税逃れのため海外に逃避したからだといわれている・・・しかし、一旦、海外に出て行った人は、減税をしても、簡単には台湾に戻ってこないだろう・・・」 田中統括官の言葉に谷垣調査官はうなずく。 「そりゃそうですよね。」 さらに谷垣調査官は不安そうな顔で、田中統括官に尋ねた。 「しかし・・・日本は本当に大丈夫でしょうか? 相続税の課税を強化し、おまけに国外転出時課税制度を創って、国外転出する居住者に対して有価証券等のキャピタルゲインの課税をするなど、世界の潮流と逆行しているように思えるのですが・・・」 「そうだなあ・・・」 谷垣調査官の話を聞いていた田中統括官も曇り顔になった。 (つづく)
《速報解説》 「中小企業会計指針」が改正(2016.1.26) ~重要性の原則の適用、固定資産の減損損失等に係る取扱いを明確化~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年2月2日(改正は平成28 年1月26 日付)、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会は、「中小企業の会計に関する指針」の改正について公表した。 これにより、平成27年10月2日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 以下の改正が行われている。 (了) ↓お薦め連載記事↓
プロフェッションネットワーク主催の税理士 笹岡 宏保氏による『資産税研修会』。 3月19日(土)開催のお申込み受付を開始しました! 今回から、1月に発刊されたばかりの笹岡氏の新刊書『ケーススタディ 相続税財産評価の税務判断』が特別割引でご購入いただけるお得なセットお申込みプランがございます! また平成28年度の資産税研修会(全7回)の日程を公開しておりますので、こちらからご覧下さい。 ★セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
《速報解説》 パブコメを経て「要約財務諸表に関する報告業務」が確定 ~国際監査基準に合わせ監査人の実施事項等を整備~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年1月26日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これは、国際監査基準において整備されている要約財務諸表に関する報告業務について、わが国の実務上の指針として整備し適用するためのものである。 監査基準委員会報告書810及び保証業務実務指針2400「財務諸表のレビュー業務」の公表に伴って、監査基準委員会報告書(序)「監査基準委員会報告書の体系及び用語」について一部改正が行われている。 これにより、平成27年8月14日(ホームページ掲載日)から意見募集していた公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 範囲 本報告書が対象としているのは、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した監査人が、監査済財務諸表を基礎として作成された要約財務諸表に関して報告業務を行う場合である(1項)。 2 定義 次の定義が規定されている(3項)。 3 業務契約の締結 業務契約の締結を行うかどうかに際しては、次のことに注意が必要である。 また、監査人は、要約財務諸表に関する報告業務の契約の締結前に、以下の事項を実施しなければならないとされている(5項)。 4 監査人の手続 監査人は、要約財務諸表において、監査済財務諸表が特定され、当該財務諸表から要約されたものであることが適切に開示されているかどうかを評価すること、要約財務諸表が、監査済財務諸表上の関連する情報と一致するか、又はそれらの関連する情報から再計算が可能かどうかを判断するため、要約財務諸表を監査済財務諸表上の関連する情報と比較することなどの手続を実施する(7項)。 5 経営者確認書 監査人は、一定の事項について記載した経営者確認書を提出するように経営者に要請しなければならない(8項)。 6 意見の様式 監査人が要約財務諸表に対して無限定意見が適切であると判断した場合、監査人の意見としては、次の表現を使用しなければならない(10項)。 要約財務諸表に対する報告書に記載する事項として、独立監査人の報告書であることを明瞭に示す表題、宛先、報告の対象(監査人が報告を行う要約財務諸表など)、監査人の意見などが規定されている(13項)。 監査済財務諸表に対する監査報告書における除外事項付意見、強調事項区分又はその他の事項区分(16項)、要約財務諸表に対する否定的意見(18項)についても規定されている。 付録として、「要約財務諸表に対する報告書の文例」(文例1~7)が示されている。 7 その他 本報告書では、次の事項なども詳細に規定されているので、実際の業務を行う場合には、注意が必要である。 Ⅲ 適用時期等 適用時期は次のとおりである。 (了)