事例で検証する最新コンプライアンス問題
【第3回】
「エアバッグの『リコール』事件」
弁護士 原 正雄
大手部品メーカーT社が製造したエアバッグの「欠陥問題」で、日本国内はもとより、全世界で自動車のリコールが広がっている。
2014年12月18日時点で、全世界で、リコール対象が累計2,000万台に達している。国内だけでも、リコール対象は319台にのぼり、そのうち150万台が未改修とのことである。
本件は、なぜここまで問題が拡大したのか。
報道など公表情報をもとに、分析を試みる。
1 T社の沿革
T社は、1933年、織物製造の会社として創業した会社である。1960年、日本初の2点式シートベルトの製造販売を開始し、以来、チャイルドシートなど自動車安全部品の開発、製造、販売に取り組み、1990年には、エアバッグの製造販売を開始している。
T社は、1983年に米国に生産拠点を設けて以来、海外に多数の拠点を設け、積極的に世界展開している。T社は、現在、世界のエアバッグ市場で第2位、約2割のシェアを有しており、多くの自動車メーカーにエアバッグを供給している。
2 発生事故の内容
報道によれば、不具合が発生しているのは「インフレーター(膨張装置)」という名称の部品である。インフレ―ターは、内部にガス発生剤(火薬)を備え、ガスを発生させる。衝突を検知するセンサーからの情報で、ガス発生剤に着火し、瞬時にガスを発生してエアバッグを膨らませる。
本件では、ガス発生剤の着火時に異常燃焼が起こり、インフレ―ターの金属容器が破裂して金属片が飛び散る、という事故が報告されている。2014年12月16日までに、米国とマレーシアで5件の死亡事故があったと報道されており、T社はそのうち3件について謝罪している。また、日本国内でも、4件の異常破裂事故や、廃車作業中の異常破裂が報告されている。
3 本件の原因
T社は、リコール対象2,000万台のうち約6割について、欠陥の存在を認めている。T社の説明によれば「生産の立ち上がり期の不具合」とのことである。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。