公開日: 2014/07/31 (掲載号:No.80)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第7回】「連結会計」

筆者: 西田 友洋

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【STEP7】取引・債権債務の相殺

親会社と連結子会社間の取引、連結子会社間の取引(以下「企業グループ間の取引」という)は、企業グループ内の内部取引に過ぎないため、連結財務諸表上は相殺消去する必要がある(連結基準35)。また、連結決算日に貸借対照表に計上されている企業グループ間の取引によって生じた債権債務も相殺消去する必要がある(連結基準31)。

(1) 取引の相殺

(2) 債権債務の相殺

※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。

 

(1) 取引の相殺

取引の相殺とは、親会社と連結子会社、連結子会社間の取引を相殺消去することである。連結修正仕訳として消去する必要がある取引としては、例えば、以下のようなものがある。

 

なお、直接的な企業グループ間の取引のみならず、形式的には企業グループ間の取引ではなくても、実質的には企業グループ間の取引と考えられる間接取引についても消去する必要がある(連結基準注12)。

ここでは、以下の取引の相殺について解説する。

① 売上高と仕入高の相殺

② 売上高と販売費及び一般管理費の相殺

③ 未達取引における相殺

① 売上高と仕入高の相殺

親会社から連結子会社への売上、連結子会社からの親会社への売上、連結子会社Aから連結子会社Bへの売上の場合で、相手が仕入として計上している場合、企業グループ間の取引であるため、売上高と売上原価を相殺する。

損益計算書を単純合算する時に、仕入高ではなく、売上原価として合算するため、売上高と消去する勘定科目は売上原価となる。

② 売上高と販売費及び一般管理費の相殺

企業グループ間の取引において、売上側が売上高として計上していても、相手先が仕入高として計上しているとは限らない。相手先が販売費及び一般管理費として計上することもある。このような場合、売上高と販売費及び一般管理費を相殺する。

ただし、売上高と販売費及び一般管理費を相殺すると、売上総利益が大きく減少する。そのため、企業グループの実態に合った損益計算書になるように、相殺した売上高に相当する売上原価を販売費及び一般管理費に振り替える必要がある。

《設例10》

(前提条件)

  • 商品を販売している親会社が運送会社である子会社Aに商品の運送を委託している。
  • 子会社Aでは、親会社からの運送委託料100を売上高として計上(売上原価90)している。一方、親会社では運送委託料100を販売費及び一般管理費で計上している。

ただし、子会社Aの売上高に対応する費用90は売上原価に計上している。しかし、企業グループで見た場合、当該費用は、販売費及び一般管理費に計上するのが妥当である。

したがって、子会社で計上した売上原価90を販売費及び一般管理費に振り替える必要がある。

③ 未達取引における相殺

一方の会社では売上高を計上しているが、他方の会社では、未達のため仕入高を計上していない場合がある。

このような場合、何にも追加で会計処理しないと、売上高と仕入高を相殺することができない。そのため、未達取引について追加で会計処理をする必要がある。

未達取引については、2つの考え方があり、どちらかの考え方に基づいて会計処理する。なお、どちらの考え方でも会計処理後の連結財務諸表は同一となる。

(ⅰ) 売上を計上した会社の売上がなかったとする考え方

(ⅱ) 未計上である仕入を計上するという考え方

《設例11》

(前提条件)

  • 親会社が3月31日に連結子会社に商品を100で売り上げた(この商品の売上原価は90である)。ただし、連結子会社に商品が到達したのは、4月2日であった。
  • 連結決算日は3月31日である。
この場合の会計処理は以下のとおりである。

(ⅰ)  売上を計上した会社の売上がなかったとする考え方

この考え方の場合、親会社の売上がなかったものとする。
そのため、親会社で計上していた売上高と売掛金を消去する。

また、商品に係る売上原価を消去し、その分、在庫を増加させる。

(ⅱ)  未計上である仕入を計上するという考え方

この考え方の場合、連結子会社で仕入があったものとする。
そのため、仕入(売上原価)と買掛金を計上し、また、仕入(売上原価)は連結子会社の在庫になるので、在庫を増加させる。

次に親会社の売上高と連結子会社の仕入高を相殺する。
また、売掛金と買掛金も相殺する(下記(2)参照)。さらに、連結子会社の保有している在庫には、親会社が計上した利益が含まれているので、未実現利益の消去(【STEP8】参照)が必要となる。


連結子会社の在庫金額100-親会社の売上原価90=10

 

(2) 債権債務の相殺

債権債務の相殺とは、親会社と連結子会社、連結子会社間での取引により生じた債権債務を相殺消去することである。

連結修正仕訳として消去する必要がある取引としては、例えば、以下のようなものがある。

また、債権に対して個別財務諸表で貸倒引当金を計上している場合、債権債務の相殺消去により、債権がなくなるので、貸倒引当金も修正する必要がある。

ここでは、以下の連結修正仕訳について解説する。

① 売掛金と買掛金の相殺

② 貸付金と借入金の相殺

③ 貸倒引当金の修正

① 売掛金と買掛金の相殺

企業グループ内で売上取引を行ったことにより発生した売掛金と買掛金は、企業グループ間の取引で発生したものであり、企業グループ外への債権及び債務ではない。したがって、当該取引で発生した売掛金と買掛金は相殺する。

② 貸付金と借入金の相殺

企業グループ内で資金の貸付を行ったことにより発生した貸付金と借入金は、企業グループ間の取引で発生したものであり、企業グループ外への債権及び債務ではない。したがって、当該取引で発生した貸付金と借入金は相殺する。また、受取利息と支払利息も相殺する(経過勘定も含む)。

③ 貸倒引当金の修正

上記のように相殺した債権に個別財務諸表で貸倒引当金を計上していた場合、債権が相殺されているため、それに対する貸倒引当金を修正する必要がある。

《設例12》

(前提条件)

  • 親会社が3月31日に連結子会社に商品を100で売り上げた。
  • 連結決算日は3月31日であり、連結決算日時点で債権債務の決済は行われていない。
  • また、親会社はこの取引による売掛金に貸倒引当金を10計上している。

この場合の会計処理は以下のとおりである。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第7回】

「連結会計」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

昨今では、1社単独ではなく、複数の企業を一体とした企業グループにより経営活動を行うことが多い。このような状況では、企業グループ間で様々な取引を行っており、個別財務諸表だけでは、企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を経済的実態に沿って開示することはできない。

例えば、同じ企業グループ内でA社からB社へ製品の販売を行い、B社が消費者へその製品を販売する場合、個別財務諸表においては、A社及びB社ともに売上が計上される。しかし、企業グループとしてはB社の消費者への販売のみが売上に該当し、A社のB社への売上は企業グループ内の内部取引にすぎない。したがって、個別財務諸表だけでは、企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を正しく開示することはできない。

そのため、企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を経済的実態に沿って、適切に開示するために「連結財務諸表」が必要となる。

 

連結会計は、以下の9つのステップに分けることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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