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【STEP4】国庫補助金、工事負担金等
(1) 会計処理
国庫補助金、工事負担金等による圧縮記帳の場合、税務上、直接減額方式と圧縮記帳方式が認められている。
【STEP2】で解説したとおり、直接減額方式は、取得原価を減額するため、取得原価主義の考え方に照らして適切ではない。そのため、会計上は、積立金方式が望ましい。
しかし、国庫補助金、工事負担金等により取得した固定資産について、国庫補助金、工事負担金等に相当する金額をその取得価額から控除した場合(直接減額方式)も企業会計原則注解24の趣旨に照らして、監査上妥当なものとして取り扱う(43号一(注1))。
また、保険差益についても、保険金等で同一種類、同一用途の固定資産を取得した場合には、直接減額方式も監査上、妥当なものとして取り扱う(43号Ⅲ2)。
なお、国庫補助金、工事負担金等を受けた事業年度に圧縮対象資産を取得できなかった場合の圧縮記帳見込額は、未決算特別勘定等の適当な科目で貸借対照表の負債の部に計上する(43号一(注2))。
《設例3》
X1年度末に国庫補助金10,000を受領し、その事業年度内に建物を30,000で取得した。
- 圧縮限度額 ・・・ 10,000
- 法定実効税率は35%とする。
- 減価償却は10年、定額法とする。
(1) 国庫補助金の受領(X1年度)
(2) 固定資産の取得(X1年度)
(3) 圧縮記帳(X1年度)
① 積立金方式
(※1) 圧縮限度額10,000-(10,000×35%)
固定資産圧縮積立金は、建物の減価償却、売却等により取り崩す。
(※2) 圧縮限度額10,000×35%
会計上の建物の計上額は30,000である。一方、税務上の土地の計上額は、20,000である。
したがって、会計上の建物>税務上の建物のため、将来加算一時差異が生じる。
繰延税金負債は、減価償却、売却等により将来加算一時差異が解消された場合、取り崩す。
② 直接減額方式
(※3) 圧縮限度額10,000
会計上と税務上の建物の帳簿価額が一致しているため、税効果の計上はない。
(4) 減価償却(X2年度)
① 積立金方式
(※4) 6,500÷10年
(※5) 3,500÷10年
② 直接減額方式
(2) 表示
国庫補助金や工事負担金等についても、【STEP3】の交換取引に準ずるものと同様に本来なら、損益計算上、圧縮損と受入益とを相殺表示することが望ましいが、両建表示しても監査上妥当なものとして取り扱う(43号Ⅲ3)。
また、国庫補助金、工事負担金等について、貸借対照表の表示において取得原価が国庫補助金等に相当する金額を控除した残額のみを記載する場合、取得資産につき圧縮記帳を行った旨及び圧縮額を財務諸表に注記する(企業会計原則注24、43号Ⅲ5)。
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以上、4つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。
(了)
「フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 」は、毎月最終週に掲載されます。