公開日: 2014/03/27 (掲載号:No.62)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第3回】「貸倒引当金」

筆者: 西田 友洋

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【STEP2】一般債権

【STEP2】では、一般債権の貸倒引当金について検討する。

一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた「貸倒実績率法」により、貸倒引当金を算定する(基準28(1))。

貸倒実績率法とは、「債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する」方法をいう。

ここでは、貸倒実績率による貸倒引当金の算定について、解説する。

貸倒実績率法による貸倒引当金の算定において、具体的には、以下の検討が必要となる。

(1) 貸倒実績率の算定

① 債権残高の集計

② 貸倒損失額の集計

③ 貸倒実績率の算定

(2) 貸倒実績率による貸倒引当金の算定

 

(1) 貸倒実績率の算定

貸倒実績率の算定は、以下のからの順に算定する。

① 債権残高の集計

一般債権の対象となる債権を集計する。集計は会社の状況により、債権全体で行うか、勘定科目別(例えば、売上債権とその他)や発生原因別(例えば、営業債権と営業外債権)、その他の方法によるグルーピングにより行う

《留意点》
差入保証金や敷金等(以下「差入保証金等」という)の取引先については、売上債権等の取引先とは信用リスク、債権保有期間等、性質が明らかに異なることから、差入保証金等に係る貸倒実績率は、売上債権等の貸倒実績率とは別に集計することが考えられる。

貸倒実績率は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3期間に係る貸倒実績率の平均値で計算する(詳細は下記参照)。そのため、算定期間を決定した上で、その決定した期間に対応する債権残高を集計する必要がある(実務指針110)。

算定期間は、一般的に債権の平均回収期間とするのが妥当である(実務指針110)。例えば、平均回収期間が1年の場合、前期末の債権に対する貸倒損失額としては、当期に発生した貸倒損失額を集計することになる。

なお、債権の平均回収期間が1年を下回る場合には、1年とする(実務指針110)。例えば、下記で貸倒損失額を集計するときに平均回収期間が6ヶ月の場合、前期末の債権に対する貸倒損失額としては、当期の6ヶ月で発生した貸倒損失額ではなく、当期1年間に発生した貸倒損失額を集計することになる。

② 貸倒損失額の集計

貸倒損失額を債権全体又はグルーピングごとに集計する。貸倒損失額は上述した算定期間に発生した金額を集計する。

貸倒実績率は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3期間に係る貸倒実績率の平均値で計算するため(詳細は下記参照)、で決定した期間に対応する貸倒損失額を集計する必要がある(実務指針110)。

なお、貸倒損失額に個別引当金の金額(貸倒懸念債権及び破産更生債権等について計上した貸倒引当金繰入額)を含めるかどうかは、基準上、明確になっていない。しかし、専門家による評価など十分に精度の高い担保及び保証の回収見込額に基づいて引き当てられているものや、損失として早々に実現する可能性が高いものについては、より実態を表すため、個別引当金の金額を貸倒損失額に含めることは差し支えないと考えられる(金融商品会計に関するQ&A(以下「Q&A」という)41)。

③ 貸倒実績率の算定

貸倒実績率は、上記で集計した貸倒損失額をで集計した債権残高で除して算定する。また、算定は債権全体又はグルーピングごとに行う。

当期末に保有する債権について適用する貸倒実績率は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3期間(具体的にはで決定した期間)に係る貸倒実績率の平均値で求める(実務指針110)。

《設例1》

(前提条件)

  • 債権の平均回収期間は、3ヶ月である。
  • 貸倒実績率は3年平均で計算する。
  • 債権残高及び貸倒損失額は以下のとおりである。

なお、貸倒実績率の算定においては、以下の3つにも留意する必要がある。

(ⅰ) 一般債権においても個々の債権の信用リスクの程度には差があるため、与信管理目的で債務者の財政状態・経営成績等に基づいて債権の信用リスクのランク付け(内部格付)が行われている場合、当該信用リスクのランクごとに区分して過去の貸倒実績から貸倒実績率を算定する(実務指針110)。

(ⅱ) 企業の保有する一般債権の信用リスクが毎期同程度であれば、過去の貸倒実績率を用いることが最も適切であるが、期末日現在に保有する債権の信用リスクが、企業の債権に影響を与える外部環境等の変化により、過去に有していた債権の信用リスクと著しく異なる場合には、過去の貸倒実績率を補正することが必要である(実務指針111)。

(ⅲ) 企業が新規業態に進出した場合等、過去の貸倒実績率を用いることができない場合又は適切でない場合には、同業他社の引当率や経営上用いている合理的な貸倒見積高を採用することが必要となることもある(実務指針111)。

なお、貸倒実績率の算定対象期間中に貸倒実績がないからといって、安易に貸倒実績率をゼロと判断してはいけない。

貸倒実績率の算定対象期間中には貸倒れの実績はないものの、それより前に貸倒れの発生があった場合、当該貸倒れの相手先及び債権の内容、発生した当時における企業内の債権管理体制と外部経営環境等を、企業が現在有する債権及び企業の状況と比較して、期末に有する債権の回収期間内において貸倒れの発生がないものと合理的に予想される場合以外は、貸倒実績率をゼロとすることは認められないと考えられる。

この場合には、過去における貸倒実績率の推移等に基づいて、適用する貸倒実績率を算定しなければならない(Q&A40)。

 

(2) 貸倒実績率による貸倒引当金の算定

貸倒実績率により、貸倒引当金は以下のように算定する。

会計処理の例は以下のとおりである。

【会計処理】

また、前期に貸倒引当金を計上しており、「前期の貸倒引当金」>「当期の貸倒引当金」の場合、当期の貸倒引当金と前期貸倒引当金の差額を取り崩す(実務指針125)。

会計処理の例は以下のとおりである。

【会計処理】

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第3回】

「貸倒引当金」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

「貸倒引当金」とは、売掛金、受取手形、貸付金、未収入金、立替金、差入保証金、敷金等の債権に対する将来の取立不能見込額を見積もった金額をいう。

将来、貸倒れが発生する可能性が高いであろう事実が当期に発生しているにもかかわらず、実際に貸倒れ事実が発生した時に費用(損失)処理すると、費用(損失)が将来に計上されることになってしまう。そのため、期間損益が正しく表されないこととなる。

そこで、期間損益を正しく表すために、将来の取立不能見込額を見積もり、「貸倒引当金」を計上する必要がある。

貸倒引当金の算定は、以下の4つのステップに分けることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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