公開日: 2016/06/30 (掲載号:No.175)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第27回】「デリバティブ」

筆者: 西田 友洋

【STEP4】ヘッジ会計の会計処理

ヘッジ会計とは、原則として、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる方法である(基準32)。この方法を「繰延ヘッジ」という。

具体的な会計処理は、以下のとおりである。

 

【時価ヘッジ(実務指針160)】

その他有価証券をヘッジ対象とするヘッジ取引の会計処理方法として、繰延ヘッジ以外にも「時価ヘッジ」という方法を選択することができる(実務指針160)。

時価ヘッジを採用する場合、へッジ対象たるその他有価証券の時価の変動要因のうち特定のリスク要素(金利、為替、信用等)のみをヘッジの目的としているときは、ヘッジ取引開始以後に生じたヘッジ対象(その他有価証券)の時価の変動のうち当該リスク要素の変動に係る時価の変動額を当期の純損益に計上し、その他のリスク要素の変動に係る時価の変動額は純資産の部に計上する。他方、ヘッジ手段の損益又は評価差額は発生時に当期の純損益に計上する。
その結果、ヘッジ手段から生ずる時価変動額とヘッジ対象の中のヘッジ目的とされたリスク要素から生ずる時価変動額が当期純損益の計算上、同期間に相殺されることになる。

具体的な会計処理は、以下のとおりである(ヘッジ対象の時価の変動は、特定のリスク要素のみの変動とした場合)。

時価ヘッジが認められるのは、現在では、「その他有価証券」のみである(実務指針185)。

ヘッジ取引とヘッジ会計をまとめると、以下のとおりである。

	公正価値ヘッジ	キャッシュ・フロー・ヘッジ 繰延ヘッジ	○	○ 時価ヘッジ	○ (その他有価証券のみ)	×

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第27回】

「デリバティブ」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、デリバティブの会計処理について解説する。デリバティブとは、以下のような特徴を有する金融商品をいう(会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針(以下、「実務指針」という)」6)。

(1)

その権利義務の価値が、特定の金利、有価証券価格、現物商品価格、外国為替相場、各種の価格・率の指数、信用格付・信用指数、又は類似する変数(これらは基礎数値と呼ばれる)の変化に反応して変化する①基礎数値を有し、かつ、②想定元本か固定若しくは決定可能な決済金額のいずれか又は想定元本と決済金額の両方を有する契約である。

(2)

当初純投資が不要であるか、又は市況の変動に類似の反応を示すその他の契約と比べ当初純投資をほとんど必要としない

(3)

その契約条項により純額(差金)決済を要求若しくは容認し、契約外の手段で純額決済が容易にでき、又は資産の引渡しを定めていてもその受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置く。

なお、本解説では、金利スワップの特例処理、振当処理等については、解説しない。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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