各ステップに移動する場合はこちらをクリック
【STEP1】リースの識別
IFRS16では、契約の開始時に契約がリースであるか又はリースを含んでいるかを、使用権の支配が借手に移転しているかどうかにより評価する(IFRS16.9)。この評価が見直されるのは、契約条件が変更された場合のみである(IFRS16.11)。
そこで、【STEP1】では、契約にリースが含まれているかどうかを検討するため、以下の5つを検討する。
(1) 特定された資産の有無
(2) 経済的便益を得る権利の有無
(3) 使用を指図する権利
(4) 適用単位の識別
(5) 適用単位への対価の配分
(1) 特定された資産の有無
契約上、明示的又は黙示的に資産が特定されている場合(IFRS16.B13)、以下の(2)を検討する。
特定されない場合は、契約にリースは含まれていないため、IFRS16の適用はないことから、以下の検討は不要である。
【補足POINT①】
資産が特定されていても、貸手が契約期間にわたって、他の資産に入れ替える実質的な権利を有する場合には、「特定された資産」に該当せず、「リース」に該当しない。他の資産に入れ替える実質的な権利を有する場合とは、以下の2つの要件を満たす場合をいう(IFRS16.B14)。
① 資産を使用する期間にわたって、貸手が対象資産を借手の同意を得ることなく代替資産に入れ替えることが実務的に可能である。
② 貸手が入れ替えコストを上回る便益を得る。
【補足POINT②】
リースの対象となる資産は、資産全体である必要はなく、ビルの特定のフロアのように、ある資産を物理的に区分できる場合、その区分できる部分は、「特定された資産」となる。一方、物理的に区分できないものは、借手が資産の利用から得られる経済的便益のほとんど全てを得る権利を有している場合を除き、「特定された資産」とはならない(IFRS16.B20)。
(2) 経済的便益を得る権利の有無
特定された資産の使用を支配するためには、借手が使用期間全体にわたり資産の使用からの経済的便益のほとんど全てを得る権利を有している必要がある(IFRS16.B21)。
借手が使用からの経済的便益を得る方法としては、資産の使用、保有、転リースなどがある(IFRS16.B21)。
資産の使用からの経済的便益のほとんど全てを得る権利を評価する際には、当該資産の使用から生じる経済的便益を契約において定められた範囲の中で考慮する(IFRS16.B22)。範囲を超える部分は考慮してはならない。
経済的便益のほとんど全てを得る権利を有している場合、(3)を検討する。有していない場合、契約にリースは含まれていないため、IFRS16の適用はないことから、以下の検討は不要である。
(3) 使用を指図する権利
借手は、使用期間を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有する場合(IFRS16.B24)、契約にリースを含んでいると判断する。使用期間を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有するかどうかを判断するため、以下を検討する。
① 使用期間全体を通じて資産の使用方法及び使用目的を指図する権利を有しているのは、誰か?
- 借手の場合:契約にリースを含む。次は、下記(4)を検討する(下記②及び③の検討は不要)。
- 貸手の場合:契約にリースを含まないため、 IFRS16の適用はないことから、以下の検討は不要である。
- どちらでもなく、借手の使用方法及び使用目的が事前に決められている場合:下記②を検討する。
② 借手が使用期間全体を通じて資産を稼動する権利を有していて、貸手にはそれらの稼動指示を変更する権利があるか?
- 貸手に権利がない場合:契約にリースを含む。次は、下記(4)を検討する(下記③の検討は不要)。
- 貸手に権利がある場合:下記③を検討する。
③ 借手が、当該資産を使用期間全体にわたる資産の使用方法及び使用目的を事前に決定する方法で設計しているか?
- 設計している場合:契約にリースを含む。次は、下記(4)を検討する。
- 設計していない場合:契約にリースを含まないため、 IFRS16の適用はないことから、以下の検討は不要である。
(4) 適用単位の識別
契約が複数要素から構成されているかどうかを検討する。契約が複数要素から構成され、その一部にリースが含まれている場合には、当該契約をリース要素と、非リース要素に分解して会計処理する。また、以下の両方の要件を満たす場合、各原資産を使用する権利は、独立のリース要素となる(IFRS16.B32)。
- 借手は、原資産単独、又は、借手が容易に入手可能な他の資源と組み合わせることにより、原資産の使用による便益を受けることができる。
(※) 容易に入手可能とは、貸手又は第三者により、別個に販売されたり、リースされたりするものであるか、又は、貸手から、あるいは他の取引・事象により、すでに借手が入手していることをいう。
- 原資産が契約の中の他の原資産への依存度が高くなく、相互関連性も高くない。
非リース要素には、IFRS16は適用しないで、他の適切な会計基準を適用して会計処理する。例えば、非リース要素部分は、リース料総額に含めずに、発生主義に基づき費用処理することが考えられる。
【補足POINT】
実務上の簡便法として、原資産の種類ごとに会計方針を選択し、リース要素部分と非リース要素部分を区分せずに、単一のリース要素部分として会計処理することができる(IFRS16.15)。しかし、非リース要素が重要な場合には、簡便法は採用することはできない。
(5) 適用単位への対価の配分
契約で合意した対価を、各リース要素の独立販売価格と、非リース要素の独立販売価格の総額の比率により按分する(IFRS16.13)。独立販売価格が容易に利用可能でない場合には、借手は、観察可能な情報を最大限利用し、独立販売価格を見積る(IFRS16.14)。