事例で検証する
最新コンプライアンス問題
【第38回】
「モーターメーカーの会計不正と、
経営トップによる内部通報制度の軽視」
弁護士 原 正雄
2025年7月、ND社は、子会社の内部監査部門から会計不正の疑いがあるとの報告を受けて調査を実施した。その結果、複数の会計不正の疑いが判明したことから、同年9月、第三者委員会を設置した。
2026年4月17日、ND社は第三者委員会からの最終報告書を公表した。「営業利益目標の達成に向けた強すぎるプレッシャー」を背景として、①売上の早期計上、②棚卸資産の評価損や固定資産の減損の回避、③資産の評価方法の変更、④コストの資産化など、多くの会計不正が発見され、純資産に1,607億円の「負の影響」が発生する、という内容であった。
同年9月4日、ND社は品質不正に関する調査報告書も公表した。重要事案60件を含む844件もの品質不正が発見されたとのことであった。
さらに同年10月20日には、役員責任調査委員会の調査報告書が公表された。そこでは創業者であるN氏をはじめとして元幹部9名に損害賠償責任ありと認定された。
こうした不正はなぜこれまで発見されなかったのか。内部通報制度は機能していなかったのか。会計不正を中心としつつ、ND社の内部通報制度について分析する。
1 内部通報制度は、一応機能していた
ND社は、法務コンプライアンス部が運用する内部通報窓口を設置していた。また、外部の法律事務所が受け付ける外部通報窓口なども設置していた。にもかかわらず、今回問題となった多数の会計不正は発見されなかった。この点を捉えると、内部通報制度が機能していなかったようにも思える。
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