公開日: 2018/12/13 (掲載号:No.298)
文字サイズ

〈桃太郎で理解する〉収益認識に関する会計基準 【第1回】「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」

筆者: 石王丸 周夫

桃太郎で理解する〉

収益認識に関する会計基準

【第1回】

「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」

公認会計士 石王丸 周夫

 

この連載のねらい

これは単なる新会計基準ではありません。“これ”というのは、2018年3月に公表された「収益認識に関する会計基準」のことです(この連載では以下、収益認識会計基準と呼びます)。

収益認識会計基準は、新しい時代を見据えた、革新性の高い会計基準です。この会計基準には、これまでの日本の会計基準とは明らかに異なる点が1つあります。

それは、「製造業中心思考ではない」という点です。

従来の収益に関する会計ルールは、「出荷基準」という用語に見られるとおり、製造業を前提としていることを感じさせるものでしたが、収益認識会計基準では、「履行義務の充足」という抽象的な表現が中心になっており、製造業を強く感じさせるような表現は見当たりません。

これは、IFRS(国際財務報告基準)のルールをほぼそのまま取り入れたことにもよりますが、そもそもIFRSの収益認識ルールが、モノづくりの枠を超えた多種多様な経済を前提としているということも、背景として見逃すことができません。

そのため、従来の感覚でこの会計基準を読むと、「何を言おうとしているのかよくわからない」と感じてしまうのです。

この連載では、その難解な会計基準のエッセンスを、誰もが知っている『桃太郎』の話を引き合いにして、やさしく解説していきます。イヌ・サル・キジたちが桃太郎からもらった「きびだんご」を、イヌ・サル・キジにとっての「収益」とみなし、イヌ・サル・キジがその収益をどのように認識すればよいかということを考えていきます。

なお、この連載はエッセンスのみを取り上げていることから、収益認識会計基準の内容について割愛した部分が多くあります。それらについては他の解説書をご参照いただくようお願い申し上げます。

 

1 桃太郎とイヌ・サル・キジの契約

連載最初のテーマは「契約」です。

契約というのは、何も私たちの時代だけに限ったことではありません。それに似たことは、はるか昔からありました。どれくらい昔からかというと、少なくともこれくらい昔でも、契約みたいなものはありました。

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。

皆さん、おわかりでしょうか。あの『桃太郎』です。

このあと、おばあさんが家に持ち帰った桃から桃太郎が生まれ、大きくなった桃太郎は鬼退治に行くのでしたね。

そして、以下が「契約」の登場する場面です。

桃太郎は、おばあさんの作ったきびだんごを持って、鬼ヶ島にむけて出発しました。すると、その途中で、イヌがワンワンとやってきました。

「桃太郎さん、お腰につけたきびだんごを1つくださいな。」
「鬼退治に一緒について来るならあげましょう。」

こうして、きびだんごをもらったイヌは、桃太郎と一緒に歩いていきました。

これがなぜ契約だかわかりますか。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

桃太郎で理解する〉

収益認識に関する会計基準

【第1回】

「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」

公認会計士 石王丸 周夫

 

この連載のねらい

これは単なる新会計基準ではありません。“これ”というのは、2018年3月に公表された「収益認識に関する会計基準」のことです(この連載では以下、収益認識会計基準と呼びます)。

収益認識会計基準は、新しい時代を見据えた、革新性の高い会計基準です。この会計基準には、これまでの日本の会計基準とは明らかに異なる点が1つあります。

それは、「製造業中心思考ではない」という点です。

従来の収益に関する会計ルールは、「出荷基準」という用語に見られるとおり、製造業を前提としていることを感じさせるものでしたが、収益認識会計基準では、「履行義務の充足」という抽象的な表現が中心になっており、製造業を強く感じさせるような表現は見当たりません。

これは、IFRS(国際財務報告基準)のルールをほぼそのまま取り入れたことにもよりますが、そもそもIFRSの収益認識ルールが、モノづくりの枠を超えた多種多様な経済を前提としているということも、背景として見逃すことができません。

そのため、従来の感覚でこの会計基準を読むと、「何を言おうとしているのかよくわからない」と感じてしまうのです。

この連載では、その難解な会計基準のエッセンスを、誰もが知っている『桃太郎』の話を引き合いにして、やさしく解説していきます。イヌ・サル・キジたちが桃太郎からもらった「きびだんご」を、イヌ・サル・キジにとっての「収益」とみなし、イヌ・サル・キジがその収益をどのように認識すればよいかということを考えていきます。

なお、この連載はエッセンスのみを取り上げていることから、収益認識会計基準の内容について割愛した部分が多くあります。それらについては他の解説書をご参照いただくようお願い申し上げます。

 

1 桃太郎とイヌ・サル・キジの契約

連載最初のテーマは「契約」です。

契約というのは、何も私たちの時代だけに限ったことではありません。それに似たことは、はるか昔からありました。どれくらい昔からかというと、少なくともこれくらい昔でも、契約みたいなものはありました。

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。

皆さん、おわかりでしょうか。あの『桃太郎』です。

このあと、おばあさんが家に持ち帰った桃から桃太郎が生まれ、大きくなった桃太郎は鬼退治に行くのでしたね。

そして、以下が「契約」の登場する場面です。

桃太郎は、おばあさんの作ったきびだんごを持って、鬼ヶ島にむけて出発しました。すると、その途中で、イヌがワンワンとやってきました。

「桃太郎さん、お腰につけたきびだんごを1つくださいな。」
「鬼退治に一緒について来るならあげましょう。」

こうして、きびだんごをもらったイヌは、桃太郎と一緒に歩いていきました。

これがなぜ契約だかわかりますか。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

桃太郎で理解する〉
収益認識に関する会計基準

〔番外編〕

筆者紹介

石王丸 周夫

(いしおうまる・のりお)

公認会計士
石王丸公認会計士事務所

1968年生まれ。
1991年、慶応義塾大学商学部卒業。
1990年から2004年まで、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて会計監査実務に従事し、多くの企業を担当。
2004年に石王丸公認会計士事務所開業。現在は、監査や上場企業へのディスクロージャー・コンサルティングを中心に活動している。

【主な著作】
・『気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩
・『経理財務担当者、士業のための 最短で導き出す分配可能額
・『パターン別 計算書類作成「うっかりミス」の防ぎ方
・『会社の姿が浮かびあがるカンタン経営分析 決算書あぶり出し分析法』(以上、清文社)

   

関連書籍

演習法人税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

【電子書籍版】法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

事例で解説 法人税の損金経理

税理士 安部和彦 著

法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

【電子書籍版】会計税務便覧

日本公認会計士協会東京会 編

会計税務便覧

日本公認会計士協会東京会 編

法人税申告の実務

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

ソフトウェア会計実務Q&A

EY新日本有限責任監査法人 ソフトウェアセクターナレッジ 編著

キャッシュレス決済のしくみと会計実務

EY新日本有限責任監査法人 編

奇跡の通達改正

公認会計士 山本史枝 著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#