谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第4回】
「租税法律主義と要件裁量の結果的容認」
-租税債務関係説のパラドックス-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は、課税要件法の解釈の場面における要件裁量否定論について、租税債務関係説との結びつきによる租税法律主義の厳格さ(「他律的」厳格さ)の観点から、検討したが、今回は、課税処分取消訴訟の場面における租税法律主義(合法性の原則)及び租税債務関係説の意義に関する検討を通じて、同説が「要件裁量」(Ⅲ1参照)を結果的に容認する事態に至ることがあるいわば「租税債務関係説のパラドックス」ともいうべき現象(【65】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)を明らかにし、その克服の試みを検討することにしたい。
課税処分取消訴訟における審理の範囲・対象をめぐっては、同訴訟の訴訟物とも関連して、総額主義と争点主義との対立がみられる(【164】)。この対立が「租税債務関係説のパラドックス」の原因の1つであると考えるところであるが、そのパラドックスが何故あるいはどのような意味で「要件裁量」の結果的容認という事態に至ることになるのか。そのパラドックスはいかにして克服することができるか。これらが今回の検討課題である。
Ⅱ 総額主義と租税法律主義・租税債務関係説との調和
総額主義は、課税処分取消訴訟における審理の範囲は当該課税処分を根拠づける一切の理由に及び、課税標準等又は税額等の正当な総額がいくらであるかが、換言すれば、課税要件法に従って客観的に定まる税額との関係における、当該課税処分によって確定された税額の総額的適否が、審理の対象となる、という考え方である(【64】【164】)。
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