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谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第38回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-不当性要件と経済的合理性基準(4)-

筆者:谷口 勢津夫

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谷口教授と学ぶ

税法基礎理論

【第38回】

「租税法律主義と租税回避との相克と調和」

-不当性要件と経済的合理性基準(4)-

 

大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回は、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト)を素材にして不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討し、同判決は、不当性要件の趣旨解釈によって導き出した経済的合理性基準について、その新たな展開として、会社法における経営判断原則の「応用」により、相応性基準ともいうべき、会社による行為計算の選択に関する広範な裁量に基づく判断を尊重する判断基準(裁量尊重基準)を判示した旨の理解を示した。

今回は、前記東京地判に関するこのような理解の妥当性を検証する作業の一環として、会社法における経営判断原則についてその意義・根拠等を整理しておくことにしたい。経営判断原則については、会社法の領域で会社に対する取締役の責任、とりわけ取締役の善管注意義務(民法644条、会社法330条)に関して膨大な学説・判例の蓄積があるが、以下では、そのごく一端を筆者の問題関心に基づき紹介し概観するにすぎないことを予めお断りしておく。

 

Ⅱ 学説における経営判断原則

1 経営判断原則の意義と判断基準

会社法の分野では、取締役は、会社との関係では、委任に関する規定に従い(会社法330条)、善良な管理者の注意をもって職務を執行する義務(善管注意義務)を負い(民法644条)、これに違反した場合には、債務不履行責任を負い(民法415条)、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(会社法423条1項)。このような会社に対する取締役の善管注意義務違反の責任に関して、戦後、アメリカ法の研究を通じて、経営判断原則をめぐる議論が学説上展開されてきた(経営判断原則に関するわが国の学説の展開については、吉原和志「取締役の経営判断と株主代表訴訟」小林秀幸=近藤光男『新版・株主代表訴訟大系』(弘文堂・2002年)78頁、90頁以下、宮本航平「取締役の経営判断に関する注意義務違反の責任(一)」法学新報115巻5・6号(2008年)37頁、48頁以下参照)。


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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」

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筆者紹介

  • 谷口 勢津夫

    (たにぐち・せつお)

    大阪大学大学院高等司法研究科(法科大学院)教授

    1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授を経て2004年4月より現職。ほかに高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員、公益財団法人日本税務研究センター評議員・日税研究賞選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員など(一部現職。ほか歴任)。

    主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)、『基礎から学べる租税法〔第2版〕』(共著・弘文堂・2019年)など。

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