谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第11回】
「租税法律主義と実質主義との相克」
-税法上の目的論的事実認定の過形成③-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回はⅣの最後で、ヤフー事件・最判平成28年2月29日民集70巻2号242頁は法人税法132条の2(組織再編成に係る行為計算の否認規定)の不当性要件について制度濫用基準を定立し同基準を、同法132条1項(同族会社の行為計算の否認規定)の不当性要件について判例が確立してきた経済的合理性基準に「接合」すること(法人税法132条1項と同法132条の2における不当性要件の統一的解釈)を前提にして、国(税務官庁)と納税者に対して対等な攻撃防御の機会を保障する事実判断の構造を明確に示した、との理解を述べた。
これを受けて、今回は、IBM事件・東京高判平成27年3月25日訟月61巻11号1995頁を素材にして、同判決が法人税法132条1項の解釈適用において前記のような事実判断の構造を保障するものであるかどうかを検討することにする。その検討は、拙稿「租税回避否認規定に係る要件事実論」伊藤滋夫=岩﨑政明編『租税訴訟における要件事実論の展開』(青林書院・2016年)276頁、287頁以下をベースにして、行うことにする。
IBM事件では、関係会社間の自己株式取得に伴うみなし配当(益金不算入)に対応する譲渡損(による繰越欠損金)の連結納税への持込みによる連結法人税額の減少に対する法人税法132条1項の適用の可否が争われたが、訴訟段階では、不当性要件という規範的要件の評価根拠事実の内容及び位置づけが中心的な争点であった。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。