谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第13回】
「租税法律主義と実質主義との相克」
-税法の目的論的解釈の過形成④-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
これまで税法の目的論的解釈の過形成として検討してきたのは、租税法規の趣旨・目的の法規範化論(第7回)や租税法規の趣旨・目的の措定論(前回)であったが、今回は、馬券払戻金(いわゆる競馬所得)の所得区分が争われた競馬事件を素材にして、文理解釈の「潜脱」による目的論的解釈の過形成を検討することにする。
競馬事件のうち大阪事件(最判平成27年3月10日刑集69巻2号434頁)と札幌事件(最判平成29年12月15日民集71巻10号2235頁)では最高裁の判断が示されたが、両判断の間に示された札幌事件の第一審・東京地判平成27年5月14日訟月62巻4号628頁は、大阪事件最判が示した文理解釈重視の判断を「潜脱」し、同最判が否定した検察官の主張にみられる一種の目的論的解釈によって、同最判とは「真逆」の結論を導き出した。
札幌事件東京地判について、筆者はこれを大阪事件最判に対する「面従腹背判決」とみて批判するものであるが、その意味するところを、以下では、大阪事件最判の判断枠組みと比較しながら、述べることにしたい。
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