谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第29回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-租税回避否認の法的根拠-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
租税回避の否認について、前々回はその意義を、前回はそのアプローチをそれぞれ検討したが、今回はその法的根拠を検討することにする。
既に第20回において、実質主義の「真骨頂」を体現するものとして経済的実質主義の立場から、租税負担の公平を根拠にして租税回避を否認することを肯定する考え方(否認規定不要説)を説く学説(田中二郎『租税法〔第3版〕』(有斐閣・1990年)89頁。初版(1968年)では85頁)及び裁判例(大阪高判昭和39年9月24日行集15巻9号1716頁、東京地判昭和46年3月30日行集22巻3号399頁)をみたが、今回は、租税回避の否認に関する実定税法上の根拠の要否をめぐるその後の学説及び判例の展開を概観することにする。
Ⅱ 否認規定不要説と否認規定必要説
1 否認規定不要説の克服
前述のように、昭和40年代までは否認規定不要説も有力であったが、当時の状況の下で金子宏教授は次のとおり述べておられた(同「市民と租税」岩波講座『現代法8』(岩波書店・1966年)303頁、324頁。次の引用文の末尾の《》内は、同『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)3頁、23頁への収録時に加筆された部分。同40頁「コメント」も参照)。
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