【STEP4】回収可能性の検討
そこで【STEP4】では、貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために「繰延税金資産の回収可能性」を検討する。また、繰延税金負債も例外的な場合に支払可能性の検討が必要な場合がある。
具体的には、以下の(1)~(3)の検討が必要である。
(1) 会社区分の決定
① 会社区分の決定
② 会社区分ごとの判断指針
(2) 回収可能性の検討
① 一時差異等の解消のスケジューリング
② 将来減算一時差異(一時差異に準ずるものを含む)と将来加算一時差異の解消年度ごとの相殺
③ 将来減算一時差異とその繰越期間内の将来加算一時差異との相殺
④ 将来の課税所得の見積額の算定
⑤ 将来減算一時差異と課税所得の解消年度ごとの相殺
⑥ 将来減算一時差異とその繰越期間内の課税所得との相殺
⑦ 回収可能性のある繰延税金資産及び回収可能性のない繰延税金資産(評価性引当額)の算定
(3) 支払可能性の検討
(1) 会社区分の決定
① 会社区分の決定
日本の税効果会計は、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、「66号」という)に定められている以下の6つの区分に会社を区分して、その区分ごとの一定の判断指針をもとに繰延税金資産の回収可能性を検討する(66号5)。
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そのため、繰延税金資産の回収可能性の検討では、まず会社区分を決定する。
会社区分は、以下の順に判断する(66号5(1))。
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② 会社区分ごとの判断指針
66号では、会社区分ごとに繰延税金資産の判断指針が設けられている。
会社区分によっては、【STEP4】(2)の全部又は一部の検討が不要である。
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(注) 「回収可能性あり」とは、将来の課税所得(税金)を減少させることから繰延税金資産を計上できるということである。「回収可能性なし」とは、将来の課税所得(税金)を減少させることができないため、繰延税金資産を計上できないということである。
(※1) スケジューリングとは、将来減算一時差異の解消時期を合理的に決めることをいう(【STEP4】(2)①参照)。
(※2) その他有価証券評価差額金に係る税効果については、原則、個々の銘柄ごとに判断するが、スケジューリング可能なものと不能なものに分類した上で、評価差額の純額で判断する容認処理が認められている。本解説では実務上よく使う容認処理の場合で解説している。
(※3) 解消時期が長期にわたる将来減算一時差異とは、スケジューリングの結果、一時差異の発生から解消までの期間が長期であるものをいう。例えば、退職給付引当金や建物の減価償却超過額が該当する(66号5(2))。なお、償却資産を減損し、税務上加算した場合、「会計上の簿価<税務上の簿価」となり、減損後の減価償却の際には、「会計上の減価償却費<税務上の減価償却費」となるが、この減価償却費の差額は「通常の」将来減算一時差異に該当する(監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(以下、「70号」という)Ⅱ 2(1))。