公開日: 2014/04/24 (掲載号:No.66)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第4回】「個別財務諸表における税効果会計」

筆者: 西田 友洋

(前ページ【STEP4】(2)へ戻る)

(3) 支払可能性の検討

将来加算一時差異は、将来の課税所得(税金)を増加させるものである。したがって、理論上は将来の税金の支払が見込まれる(支払可能性のある)将来加算一時差異に係る繰延税金負債のみを貸借対照表に計上するために、繰延税金負債について支払可能性の検討が必要である。

しかし、実務指針では、事業休止等により、会社が清算するまでに明らかに将来加算一時差異を上回る損失が発生し、課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合のみ支払可能性がないと判断することになっている(実務指針24)。

そのため、事業休止等の状況でない限り、支払可能性はあるとし、会社が事業を行っている状況では支払可能性を検討せずに、(スケジューリング不能な将来加算一時差異も含む(ただし、将来加算一時差異についてスケジューリングが常に不要なわけではない。【STEP4】(2)①なお書き参照))すべての将来加算一時差異に係る繰延税金負債を貸借対照表に計上する。

ここまでをまとめた設例は下記のとおりである。

《設例2》

(前提条件)

  • 会社区分は「3」である。
  • 法定実効税率は35%である。
  • 毎期の課税所得(将来減算一時差異及び将来加算一時差異の減算及び加算前)は300である。
  • X1年度末の将来減算一時差異は以下のとおりである。

  • X1年度末の将来加算一時差異は以下のとおりである。


※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第4回】

「個別財務諸表における税効果会計」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に対応した解説は【第35回】をご覧ください。

「税効果会計」とは、将来の税金を減少させる効果を繰延税金資産として計上し、将来の税金を増加させる効果を繰延税金負債として計上する会計処理である。

例えば、会計上は当期に費用計上するが、税務上は翌期以降に損金算入する場合、将来に損金算入されることにより将来の課税所得が減少し、将来の税金が減少する。この減少の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金資産(回収可能性ありの場合、詳細は【STEP4】参照)として計上する。

反対に、税務上は当期に損金算入するが、会計上は翌期以降に費用計上する場合、将来の当該費用計上額は税務上加算され、将来の課税所得は増加し、将来の税金が増加する。この増加の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金負債として計上する。

また、税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「個別財務諸表における税効果会計」について解説し、「連結財務諸表における税効果会計」は第5回で、「連結納税における税効果会計」は第6回で取り上げたい。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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