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〔弁護士目線でみた〕実務に活かす国税通則法 【第2回】「改めて『税務調査とは何か』を理解する」

〔弁護士目線でみた〕 実務に活かす国税通則法 【第2回】 「改めて『税務調査とは何か』を理解する」   弁護士 下尾 裕   1 はじめに 「国税通則法は何を定める法律であるか」と問われた場合、本誌読者の皆様が最初に頭に浮かぶのは、おそらく税務調査であろう。 税務に絡む実務家の中で、税務調査に一切関わらないという方はごく少数と思われ、それだけ重要性の高い事柄である。 今回は、国税通則法における税務調査の定めについて取り上げてみたい。   2 税務調査(国税通則法における「調査」)を理解する意味 「税務調査」は、国税通則法においては「調査」という文言で表示されており、法的には「質問検査権の行使」と説明される。 この質問検査権は、納税者に受忍義務があり、正当な理由がなく応じなければ罰則等がある(国税通則法第128条)という意味では、実質的な強制力のあるものである。ただし、刑事事件における逮捕や捜索・差押とは異なり、納税者の同意なく調査資料等を取得することはできず、本当の意味での強制力が伴うものではない点に特徴がある。 国税通則法における「調査」を理解するにあたり、以下では2つの事例を取り上げてみたい。   3 国税通則法における「調査」の種類と行政指導との境界 上述のとおり、国税通則法においては、「調査」の一態様として「実地の調査」という概念が整理されている。 ご承知の読者も多いと思うが、一般に納税者の事業所等に臨場して行われる、いわゆる「税務調査」と呼ばれるものは、実は「実地の調査」であり、国税通則法における「調査」とは、この「実地の調査」のほか「税務署での内部検討」を含む広い概念として整理されている。 この整理を前提にする限り、上記事例Ⅰにおいては、課税庁側が一切の内部検討を行わずに更正処分等を行うことはありえないことから、国税通則法第24条との抵触は生じないという結論となる。 なお、「調査」においては、しばしば行政指導等の境界が問題とされるが、課税庁の説明に従って行為内容ごとに整理すると、以下のとおりとなる(調査関係通達1-2)。   4 「調査」の単位(範囲)と終了時期 (1) 「調査」の単位(範囲) 次に、1つの「調査」の単位(範囲)については、どのように把握すればよいのであろうか。 上記のとおり、国税通則法第74条の11第6項は、「実地の調査」が行われ、修正申告等があった場合でも、「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは」再調査ができるものと定めており、この反対解釈として、「実地の調査」実施後においては、新たに得られた情報に照らし非違がある場合以外の場合における再調査を制限する規定として解釈されている。 よって、「調査」の単位(範囲)は、再調査制限規定がどの範囲で効力を生じるのかを考える上で、非常に重要である。 結論からいえば、「調査」の単位(範囲)は、以下の各ファクターによって確定されることになる(調査関係通達4-1)。 この考え方を前提とすれば、事例Ⅱにおいては、実際の税務調査の論点がどこであったかにかかわらず、平成28年3月期~令和2年3月期までの5事業年度を対象として税務調査が実施されている以上、平成28年3月期の否認事項についても再調査制限規定の効力が及び、後は、再調査を許容する例外的事由が存在するかを検討することになる。 これに関連して、課税実務においては、課税庁が納税者から区分の同意を得た上で、上記①②③において確定される調査の単位(範囲)をさらに限定する運用がなされている(調査関係通達4-1(4))。 これは、例えば、移転価格調査については、①納税義務者の②法人税に関する③複数の事業年度にまたがって行われるので、本来は、移転価格以外の項目も含めて再調査制限の効力が及ぶはずであるが、実務的には移転価格関連の調査を実施するのが精一杯で他の項目までは調査できないことから、納税者の同意を得ることによって、移転価格以外の項目についての再調査の余地を残すための運用である。 この運用は、課税庁の立場から見れば一定の合理性があるとは思われるが、ここでの再調査制限効は本来的には行政手続に関する効力であり、納税義務者の同意のみに依拠して再調査を許容してよいのかは、やや疑問が残るところである。 (2) 「実地の調査」の終了時期 「実地の調査」の終了時期は、再調査制限の効力発生時点であるが、国税通則法上その正確な時期は明記されていない。 以下のフローチャートは、一般的な実地の調査の流れを示したものであるが、国税通則法第74条の11第1項~第3項は、「実地の調査」の終了に際して、調査結果を踏まえ、更正又は決定をすべきと認められない場合の通知又は調査結果の説明(当該説明に併せて修正申告等の勧奨を行うことができる)のいずれかを行うものと定めている。 こうした国税通則法の条文の構造だけを見れば、通知又は調査結果の説明が完了した時点で「実地の調査」が終了するものと整理するのが自然であるが、現状、課税庁は、否認事項がある場合における調査結果説明だけでは調査が終了せず、調査結果説明から修正申告勧奨までの間においては調査を続行しうるとの整理を行っているものと理解される(調査関連通達6-4)。 また、最近の実務では、再調査制限規定の効力発生を回避するため、調査終了前に修正申告を勧める税務調査官が多くなっており、税務調査の進行が妨げられているという指摘もあることに注意が必要である(品川芳宣『国税通則法の理論と実務』(ぎょうせい、2017年)P167~169)。   5 再調査制限規定を踏まえた調査の再開 一度「実地の調査」が終了した場合、調査の再開が認められるのは、以下の2つの場合に限られる。 実務上、問題となるのは②の場合であるが、ここでの「新たに得られた情報」とは、前回調査の担当調査官が、更正等をすべきとは認められない場合の通知又は調査結果説明を行った時点において有していた以外の情報(調査関連通達6-7)とされ、当該「情報に照らし非違があると認めるとき」とは、「新たに得られた情報に照らし非違があると直接的に認められる場合のみならず、新たに得られた情報が直接に非違に結びつかない場合であっても、新たに得られた情報とそれ以外の情報とを総合勘案した結果として非違があると合理的に推認される場合も含まれる」(調査関連通達6-8)とされている。 しかしながら、この解釈を前提とすると、納税者が再調査制限規定の効力を主張することのハードルは高いものと言わざるを得ない状況になっている。 すなわち、事例Ⅱについて、再調査制限の是非が問題となる典型的なケースとしては、前回調査終了後にX株式会社の取引先に対する税務調査において、平成28年3月期における否認事項が新たに課税庁の把握するところとなった場合であると想定されるが、課税庁側はこのような場合に再調査が認められるという見解を採っているものと理解される(志場喜徳郎他『国税通則法精解(第16版)』(大蔵財務協会、2019年)P979参照)。 また、課税庁は、守秘義務等に鑑み、税務争訟について争われない限り、「新たに得られた情報」の情報源を納税者に明らかにすることはないと思われる。そうすると、納税者としては、調査段階ではなぜ再調査になるか分からないまま調査手続の違法性を議論するかどうかを判断しなければならず、議論を断念せざるを得ないケースも多くなるものと思われる。 なお、仮に今後この点が争われる場合には、①課税庁が守秘義務との関係で更正処分等に際し「新たに得られた情報」の情報源を納税者に明らかにしない場合に、納税者側の手続保障との関係で課税庁側の再調査の適法性を認め得るか、②前回調査の調査資料から新たな情報を取得し得た場合(すなわち、前回調査で当該情報を取得できなかったことにつき課税庁に落ち度がある場合)に再調査制限規定が適用されるのか、といった点が問題となるものと考えられる。 私見では、①については、納税者側が当該情報を恣意的に課税庁に秘していたのかといった個別の事情も踏まえた判断になると思われるが、更正処分における理由附記との関係で、少なくとも当該新情報から認定される事実の内容については処分段階で明らかにされるであろうこと、及び、税務争訟においては、一定の資料開示がなされるであろうことを踏まえると、この点のみをもって調査の違法性を議論するのはハードルが高いのではないかと思われる。一方、②については、課税庁側の落ち度の程度にもよるものの、少なくとも新情報の内容が前回調査において収集された資料から明確に読み取れるようなケースについては、再調査制限規定に違反すると判断される可能性はあるように思われる。 (了)

#No. 375(掲載号)
#下尾 裕
2020/06/25

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例87(法人事業税)】 「外形標準課税の付加価値割の計算において、純支払賃借料の計算上、含めない事務所賃貸料に係る管理費を含めて計算し、報酬給与額の計算上、含めるべき現物給与及び出向者に係る給与負担金相当額を含めずに計算したため、トータルで過大納付となった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例87(法人事業税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆外形標準課税の課税標準(地法72の2) 外形標準課税とは、資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度であり、所得を基準とした課税(所得割)、法人の生み出した付加価値を基準とした課税(付加価値割)及び資本金等の金額を基準とした課税(資本割)を基準として事業税を課税するものであり、それぞれの課税標準は次のとおりである。 ◆純支払賃借料に係る共益費等(取扱通知4の4の9) 土地又は家屋の賃借権等に係る契約等において、水道光熱費、管理人費その他の維持費を共益費等として支払っており、賃借料と当該共益費等とが明確かつ合理的に区分されている場合には、当該共益費等は支払賃借料及び受取賃借料として取り扱わないものとする。 ◆報酬給与額に係る現物給与の取扱い(取扱通知4の2の6) 法人が役員又は使用人のために給付する金銭以外の物又は権利その他経済的利益の取扱いについては、所得税において給与所得又は退職所得として課税され、かつ、法人税の所得等の計算上損金の額に算入される場合に限り報酬給与額に含めるものとする。 ◆報酬給与額に係る出向者負担金(取扱通知4の2の14) 法人の役員又は使用人が他の法人に出向した場合において、当該出向した役員又は使用人の給与(退職給与その他これに類するものを除く)については、当該給与の実質的負担者の報酬給与額とし、出向者の退職給与その他これに類するものについては、当該退職給与その他これに類するものの形式的支払者の報酬給与額とする。 ◆出向者に係る給与負担金を出向先法人から収受せず寄附金認定された金額 出向者に係る給与負担金を出向先法人から受け取っておらず、当該受け取らないことについて合理的な理由が認められない場合、法人税においては、出向先法人に対する寄附金の支出があったものとされ、その全部又は一部が損金不算入となる。 この場合、本来受け取るべき給与負担金の額を益金としたうえで同額を寄附金として損金算入し、その上で所定の寄附金損金不算入額を計算する。ここで益金とされる給与負担金については、実際には出向元法人が受け取ったものではなく、これを受け取らなかったことに対する寄附金の支出を認定する過程の処理であるため、報酬給与額の計算上、給与負担金はなかったものと取り扱う。 また、当該寄附金認定(寄附金の損金不算入額)は、出向者に支払った給与等の額を損金不算入とするものではない。 したがって、当該給与負担金相当額は出向元法人の報酬給与額から控除することはできず、出向者に支払った給与等の額が出向元法人の報酬給与額となる。       (了)

#No. 375(掲載号)
#齋藤 和助
2020/06/25

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第42回】「外国の会社からの株式分配は配当課税か否か」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第42回】 「外国の会社からの株式分配は配当課税か否か」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私が株式を保有する外国法人が、組織再編を行って株式分配を受けました。 この株式分配についての日本での課税関係はどうなるでしょうか。 なお、この株式分配は外国の税法上、適格組織再編に該当します。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷株式分配とは 株式分配とは、株主に対する剰余金の配当が現物分配であり、その現物分配が現物分配直前において現物分配法人が100%保有していた法人の株式の全部移転であるものをいう。 既存の会社の一部を切り出して別会社に譲渡し、その対価として取得した株式を既存の会社の株主に全部交付することにより、事業を分離独立させることができる。株式分配の結果、既存会社の株式は既存会社と、新会社の株式を保有することになる。   ▷株式分配に係るわが国の税制 株式分配に係る日本の税制は、平成29年度税制改正前までは非適格組織再編と考えられ、株式を取得した株主には配当課税された。他方、米国の連邦税制においては、以前から一定の条件を満たした場合は、課税上の優遇措置を受けることができた。 平成29年度税制改正で適格株式分配の制度が創設され、平成29年4月1日以後に行われた株式分配で適格株式分配の要件を満たした場合は、株主は新株式取得時に配当所得課税はなく、株式の譲渡損益も繰り延べられる。 適格株式分配は、次のような要件に該当する株式分配である。 今回は、米国において適格組織再編と認められたスキームにより米国法人の株式分配を受けた株主が、配当課税されたことについて審査請求をした事案を紹介する(令01-08-01公表裁決 TAINSコード:J116-2-02)。   ▷どういう事案か 米国のコンピューターサプライ関連の上場会社H社の株主である請求人は、平成27年11月に、H社の事業分割スキームによりH社のエンタープライス事業を引き継いだ100%子会社のM社の株式を取得した。この事業分割は米国連邦税制上、税制適格とされており、米国での課税関係は生じなかった。 そして請求人は日本における確定申告時に、H社から交付を受けたM社株式に係る所得を含めなかった。その後税務調査があり、配当に該当するとして更正処分をしたところ、その処分に不服な請求人が審査請求した。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   ▷争点と結論は 争点として、M社株式の交付は、所得税法第24条第1項に規定する配当等に該当するか否かというものがあった。請求人は、この事業分割は、改正所得税法の施行前に行われたものであるが、以前から非課税とされていた適格分割型分割による株式交付との公平の点や、企業再編に税法が合わせたもので改正法の立法事実は変わらないから、改正所得税法の趣旨に照らし所得税法を解釈すべき、つまり配当等に該当しないと主張した。 しかし、審判所は、請求人の主張は独自の見解というべきものだから採用できず、M社株式の交付は、株式分配が行われた時点で施行されていた所得税法24条第1項の規定にあてはめると配当等に該当するとして審査請求を棄却した。   ▷審判所は外国の組織再編をどのように考えたか この裁決における争点の1つとして、この事業分割が法人税法第2条12号の9に規定する分割型分割に該当するか否かというものがあった。 法人税法上の組織再編の規定は内国法人の組織再編だけでなく外国法人の組織再編についても適用が可能であるが、その場合は、外国での組織再編が日本の組織再編と同じようなものかということを検討しなければならない。 この裁決においては、次のように判断している。 日本の会社法上の分割では、分割対象とされた分割会社の権利義務は、個別に承継・移転されるものではなく、吸収分割契約や新設分割計画により一括して承継されるものである。他方、米国においては権利義務の一般承継のような会社分割制度は存在せず、本事案においても権利義務の一般承継という要素を欠いているから、会社法上の分割に相当すると認められない。よって、法人税法上の分割型分割にもあたらない。 外国法人の組織再編税制の適用に関する当局の判断基準として参考になる。   (了)

#No. 375(掲載号)
#菅野 真美
2020/06/25

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第23回】「「公益目的事業の用に直接供される」の該当性」-ケーススタディ-

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第23回】 「「公益目的事業の用に直接供される」の該当性」 -ケーススタディ-   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 次のようなケースでは、当該寄附財産は受贈法人の「公益目的事業の用に直接供されている」とみなされ、租税特別措置法第40条の規定の適用を受けることができますか。   - 回 答 - ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 上記〈ケース1〉から〈ケース4〉は国税庁の質疑応答事例を元としたものであり(論末参照)、各回答について補足すると、以下のとおりです。   (了)

#No. 375(掲載号)
#中村 友理香
2020/06/25

税効果会計を学ぶ 【第7回】「繰延税金資産の回収可能性①」-定義を理解する-

税効果会計を学ぶ 【第7回】 「繰延税金資産の回収可能性①」 -定義を理解する-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 税効果適用指針8項(1)に規定されているように、繰延税金資産の回収可能性は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号。以下「回収可能性適用指針」という)に従って判断することになる。 今回は、回収可能性適用指針の定義に関するポイントについて解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 回収可能性適用指針を理解するために 回収可能性適用指針の開発に際しては、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)及び「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第70号)などのうち会計処理に関する部分について、基本的にその内容を適用指針に引き継いだ上で、必要と考えられる見直しを行ったことが記載されている(回収可能性適用指針54項)。 このため、回収可能性適用指針を読む場合には、次の3つのことに注意するとその趣旨を理解しやすくなるものと思われる。 また、回収可能性適用指針の定義に関しては、回収可能性適用指針3項(1)から(5)については、税効果会計基準における定義をそのまま引き継ぐか又は個別税効果実務指針もしくは監査委員会報告第66 号における記載を踏襲している(回収可能性適用指針56項)。 このため、定義に関しては、特に、スケジューリングに関連する用語、一時差異等加減算前課税所得、課税所得がポイントになると考えられる。   Ⅲ 定義 回収可能性適用指針の定義のうち、特に次の用語に注意が必要である。 1 スケジューリング 繰延税金資産又は繰延税金負債は、一時差異等に係る税金の額から将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を控除して計上しなければならないとされている(税効果会計基準 第二、二、1)。 このため、税効果会計においては、一時差異について税務上の益金又は損金の算入時期を検討する必要がある。 回収可能性適用指針は、次のように規定している(回収可能性適用指針3項(5)(6))。 2 一時差異等加減算前課税所得と課税所得 「一時差異等加減算前課税所得」と「課税所得」の定義は、次のとおりである(回収可能性適用指針3項(7)(9))。 これらの用語は、それを使用する場面の相違に注意する(回収可能性適用指針58項)。 また、回収可能性適用指針の「[設例1]一時差異等加減算前課税所得の算定方法」において、一時差異等加減算前課税所得の算定方法が例示されている。設例では、「課税所得」の見積額から「一時差異等加減算前課税所得」の見積額を算定するまでの調整の仕方を理解することがポイントになる。 (了)

#No. 375(掲載号)
#阿部 光成
2020/06/25

社外取締役と〇〇 【第3回】「社外取締役と独立役員」

社外取締役と〇〇マルマル 【第3回】 「社外取締役と独立役員」   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 森田 多恵子   1 はじめに 社外取締役に関係が深い概念として、「独立役員」「独立社外取締役」との用語が用いられることがある。本稿では、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)や上場規則における「独立役員」「独立社外取締役」に関する規定、「独立性」と機関投資家の議決権行使基準との関係について概説する。   2 CGコード CGコードは、「独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと」を取締役会の主要な役割・責務の1つとし(基本原則4、原則4-3)、上場会社は、「取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保すべく、業務の執行には携わらない、業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用について検討すべきである」としている(原則4-6)。 この経営の監督と執行の分離を推進し、経営の監督における取締役会の独立性及び客観性を真に確保するためにも、経営陣から独立した社外取締役の活用を図ることが強く期待されており(※1)、CGコード原則4-7は、独立社外取締役の役割・責務について、以下のように規定している。 (※1) 油布志行ほか「『コーポレートガバナンス・コード原案』の解説〔Ⅳ・完〕」商事法務2065号47頁参照。 独立取締役の有効的な活用のために、CGコードは、「独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催するなど、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図るべき」(補充原則4-8①)、「例えば、互選により『筆頭独立社外取締役』を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る体制整備を図るべき」(補充原則4-8②)としているが、近時注目が集まっているのは、指名・報酬の検討における独立社外取締役の関与・助言(補充原則4-10①)である。 2018年のCGコード改訂に際しては、CEOをはじめとする経営陣幹部や取締役の指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たって、独立性・客観性ある手続を確立することが重要であるとの指摘を踏まえ、監査役会設置会社又は監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、任意の指名委員会・報酬委員会などの独立した諮問委員会を設置することが求められることとなった(補充原則4-10①)(※2)。 (※2) 田原泰雅ほか「コーポレートガバナンス・コードの改訂と『投資家と企業の対話ガイドライン』の解説」商事法務2171号10頁参照。 このような独立社外取締役は、経営陣からの独立性を有しているだけでなく、独立社外取締役に期待される役割・責務を果たせるだけの資質を兼ね備えていることが求められる(※3)。CGコード原則4-9は、取締役会は、「取締役会における率直・活発で建設的な検討への貢献が期待できる人物を独立社外取締役の候補者として選定するよう努めるべき」であるとし、「金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・開示すべきである」としている。 (※3) 油布ほか・前掲(※1)49頁参照。 また、独立社外取締役が、単に1名だけではなく、複数名存在すれば、有益な意見形成がなされる可能性が高まる上、その意見を取締役会に反映することも格段に容易になるとの考え方(※4)から、原則4-8は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすことのできる資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとしている。 (※4) 油布ほか・前掲(※1)47頁参照。 近年、独立社外取締役を3分の1以上選任すべきとの意見や、3分の1以上の独立社外取締役を実際に選任する企業も増えてきている。2018年のCGコード改訂では、独立取締役の複数選任に加え、「業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社」は、「十分な人数」の独立社外取締役を選任すべきとされた。   3 上場規則 上場会社は、一般株主保護のため、独立役員を1名以上確保することが義務付けられている(※5)。「独立役員」とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいい、必ずしも社外取締役に限られないが、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保することは上場会社の努力義務とされている(※6)。 (※5) 東京証券取引所有価証券上場規程436条の2。以下、上場規程の条文番号は、東京証券取引所有価証券上場規程の番号を指す。 (※6) 有価証券上場規程445条の4。 上場会社から取引所に提出される独立役員届出書は公衆縦覧に供される。また、独立役員の確保状況(社外役員のうち独立役員に指定されている人数や、属性情報等)は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載事項でもある。 取引所は、取引所が一般株主と利益相反の生じるおそれがあると判断する場合の判断要素(独立性基準)を定めているが、これは、全上場会社に適用されるミニマムスタンダードであり、独立性基準に抵触しない場合であっても、「一般株主と利益相反が生ずるおそれがない」とは言えない場合は、独立役員の要件を満たさない(※7)。また、過去に上場会社又はその子会社の業務執行者であった者や、上場会社の取引先の出身者等については、属性情報の開示が求められている(※8)。 (※7) 東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」(2020年2月改訂版)2~3頁参照。 (※8) 有価証券上場規程施行規則415条1項6号。 本年(2020年)2月には、上場子会社における独立した意思決定を確保し、少数株主の利益を保護する観点から、独立性基準が改定され、就任前10年以内に①上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役、②上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合)、③上場会社の兄弟会社の業務執行者及び④①~③(重要でない者を除く)の近親者のいずれかに該当した場合は、独立役員の要件を満たさないものとされた。   4 議決権行使基準 多くの機関投資家が議決権行使基準を策定・公表しているが、社外取締役の選任議案では、独立性の有無が争点となることが多い。もっとも、独立性の基準は投資家によって様々である。国内では、金融商品取引所に独立役員として届出されているか否かにより独立性を判断する機関投資家が増えてきているが、大株主や取引先との関係等から総合的に判断するとの議決権行使基準を有する投資家もいる。近年パッシブ運用が拡大する中、多くの機関投資家が参照する議決権行使助言会社の推奨方針においても、独自の独立性基準が設けられている。 非独立とされた候補者の選任議案への反対、取締役会全体として一定割合の独立性が確保されない場合のトップへの反対、取締役候補者全員への反対など、独立性がないと判断された場合の効果も様々である。 たとえば、大手議決権行使助言会社であるISSは、監査役会設置会社の社外取締役は非独立であることのみを理由に反対はしないが、非独立の監査役には反対する、監査等委員会設置会社で非独立の監査等委員である社外取締役には反対する、親会社や支配株主を持つ会社では、株主総会後の取締役会に占める独立社外取締役が2名未満又は3分の1未満の場合には経営トップに反対する、など、機関設計や株主構成によっても求められる独立役員の数・割合は異なっている。   5 おわりに 日本版スチュワードシップ・コード及びCGコードの附属文書として、機関投資家と企業との対話において重点的に議論することが期待される事項をとりまとめた「投資家と企業の対話ガイドライン」では、「独立社外取締役として、適切な資質を有する者が、十分な人数選任されているか」(3-8)、「独立社外取締役は、自らの役割・責務を認識し、経営陣に対し、経営課題に対応した適切な助言・監督を行っているか」(3-9)との項目が設けられている。 独立性の見方には様々なものがあるが、企業価値の向上に資する独立取締役が選任され、活かされるように、企業と投資家との建設的な対話がなされることが期待される。 (了)

#No. 375(掲載号)
#森田 多恵子
2020/06/25

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例48】株式会社テイン「(訂正)『公認会計士等の異動に関するお知らせ』の一部訂正に関するお知らせ」(2020.6.1)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例48】 株式会社テイン 「(訂正)『公認会計士等の異動に関するお知らせ』の一部訂正に関するお知らせ」 (2020.6.1)   公認会計士/事業創造大学院大学准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社テイン(以下、「テイン」という)が2020年6月1日に開示した「(訂正)『公認会計士等の異動に関するお知らせ』の一部訂正に関するお知らせ」である。同社が2020年5月28日に開示した「公認会計士等の異動に関するお知らせ」の一部を訂正するという内容である。 訂正したのは「6.異動の決定または異動に至った理由および経緯」であり、その訂正前の記載は次のとおりである。下線を付した箇所を訂正することになる。   2 どう訂正したのか? 訂正後の記載は次のとおりである。加筆修正された文字数はごく僅かだが、読み手の捉え方は、訂正前後で大きく異なるはずである。 訂正前の記載を読んだ方の多くは、「継続監査年数が長期に渡っていることを踏まえて、新たな視点での監査が必要と考えたのだな」と肯定的に捉えたはずである。しかし、訂正後の記載を読んで、捉え方は一変しただろう。「なんだ、継続監査年数が問題というより、監査報酬を上げると言われたからじゃないか」と否定的に捉えるようになったのではないだろうか。   3 なぜ訂正したのか? 結果として読み手から否定的な捉え方をされることになったかもしれないが、自社の事業規模を踏まえて、監査報酬が低い監査法人へと替えるのは、何ら悪いことではない。問題は、なぜこうした訂正が生じたのかである。「監査報酬の増額改定の提示を受けたこと」の記載が漏れてしまったのだろうか、それとも、それを意図的に記載しなかったのだろうか。 記載漏れだったとしたら、開示体制に重大な不備があることになる。「監査報酬の増額改定の提示を受けたこと」という、異動理由の核となる情報が開示資料作成者に伝えられないまま、記載漏れのある開示資料が作成され、それが、経営陣の確認を受けることなく、そのまま開示されてしまったのである。 「監査報酬の増額改定の提示を受けたこと」を意図的に記載しなかったのだとしたら、経営陣の資質に重大な問題があることになる。そうだとしたら、2020年5月28日に開示した「公認会計士等の異動に関するお知らせ」は虚偽開示である。理由はともかく、真実を隠すために、虚偽の開示を行ったことになる。 今回の開示に、訂正した理由に関する記載は一切ない。そこにも、この会社の開示に対する姿勢が表れている。   4 監査人が異動する本当の理由 テインが訂正したのは、監査人の異動に関する開示の中の異動理由である。以前であれば、そこには本当の理由が記載されず、「任期満了」と記載されて終わっていた。テインの開示であれば、第1段落の記載だけで済まされていたのである。 しかし、監査人の異動理由は、投資家にとって重要な情報であるため、昨年の1月、東京証券取引所が「会社情報適時開示ガイドブック」を改訂し、「公認会計士等が退任する実質的な理由及び経緯を記載する」こととされた。 そうして、監査人の異動に関する開示において、監査人が異動する(おそらく)本当の理由が記載されるようになった。しかし、テインのような事例は論外だが、本当の理由が分からない開示がまだ見受けられる。 次の記載は、株式会社レノバが2020年5月26日に開示した「会計監査人の異動に関するお知らせ」の「6.異動の決定又は異動に至った理由及び経緯」だが、これを読んでも、本当の理由は分からない。 「上記3.の理由により」と記載されているが、その「3.2.(1)に記載する者を会計監査人の候補とした理由」の記載は、次のとおりである。ここに記載されているのは、「有限責任あずさ監査法人を会計監査人の候補者とした理由」であり、本当に必要なPwCあらた有限責任監査法人の退任理由は、全く記載されていない(読みようによっては、PwCあらた有限責任監査法人にIFRS対応能力がないと読めてしまうかもしれないが、そんなはずはないだろう)。   5 中にはこんな会社も もちろんこうした事例ばかりではない。ほとんどの開示では、理由が分かる記載がなされており、中には次のような事例もある。次の記載は、平和不動産株式会社が2020年5月15日に開示した「公認会計士等の異動に関するお知らせ」の「6.異動の決定又は異動に至った理由及び経緯」である。 なお、この開示では、いわゆる準大手監査法人からいわゆる大手監査法人へと異動するとされている。大手監査法人から準大手監査法人や中小監査法人への異動は多いが、その逆はほとんどなく、稀な事例である。 (了)

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#鈴木 広樹
2020/06/25

《速報解説》 法務局における自筆証書遺言書保管制度、来週7月1日(水)から申請の予約受付開始~各種手続は原則として即日処理のため予約が必須~

《速報解説》 法務局における自筆証書遺言書保管制度、来週7月1日(水)から申請の予約受付開始 ~各種手続は原則として即日処理のため予約が必須~   Profession Journal編集部   7月10日から制度が開始される「法務局における自筆証書遺言書保管制度」については、既報のとおり本年3月には保管申請等に係る手数料を定めた政令も公表され制度開始を待つのみとなっているが、法務省は6月24日付で新たなページ(「予約について」)を公表、7月1日より申請等手続の予約を受け付けることが明らかとなった。 新制度では遺言書の保管申請の他、保管された遺言書の閲覧(モニター又は原本)や遺言書情報証明書(遺言者の相続人、受遺者等が、遺言者の死亡後に交付を受けられる遺言書の写し)の交付請求などができるが、各種登記等の手続と異なり原則として即日処理となるため(書類の不備等の場合を除く)、これらすべての手続について予約が必要とされている。 予約の方法は、専用ホームページでの予約(24時間365日受付可)か、遺言書保管所(法務局)への電話又は窓口での受付(平日8:30~17:15まで(土・日・祝日・年末年始を除く))となる。 (※) 予約専用HPについて、URL(https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/)は公表されているものの、本稿公開時点で閲覧はできない。 なお、遺言書保管所には管轄があるため、各種手続の予約の際は手続を行う遺言書保管所(法務局)を決める必要がある。「保管の申請」は遺言者の住所地、本籍地又は所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所に対して行うこととされているが、「モニターによる遺言書の閲覧」はすべての遺言書保管所で可能など手続によって選択可能な場所が異なるため注意が必要だ(「全国の法務局(遺言書保管所)一覧」)。 その他、法務省ホームページでは予約に関する注意事項として、予約は手続を行う本人が行うこととしているほか、下記の点が示されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

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#Profession Journal 編集部
2020/06/24

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和元年10月~12月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和元年10月~12月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2020(令和2)年6月17日、「令和元年10月から令和元年12月までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加された裁決は表のとおり、国税通則法が4件のほか、所得税法及び相続税法が各1件の、合わせて6件となっており、最近の公表裁決事例としてはかなり少ない件数となっている。 今回の公表裁決では、6件すべてが、国税不服審判所によって課税処分等の全部又は一部が取り消されている。 【表:公表裁決事例令和元年10月~12月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された6件の裁決事例のうち、原処分庁が重加算税の賦課決定処分を行い、国税不服審判所がその処分を取り消す判断を示した裁決4件について、 における、それぞれの判断のポイントを中心に紹介したい。 なお、複数の争点がある裁決についても、その一部を割愛して、重加算税の賦課決定処分の可否に争点を絞らせていただいたことを、あらかじめお断りしておきたい。   1 相続財産の一部について、相続人が存在を認識しながら申告しなかった事例・・・① 本件は、審査請求人の母が、原処分庁による調査の結果に基づいて、請求人の亡兄の相続に係る相続税の修正申告をしたところ、原処分庁が、申告漏れ相続財産のうち、母が関与税理士に伝えなかった預金については、母がこれを隠蔽し、相続財産として申告しなかったとして重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、母は当該預金を隠蔽したものではないなどとして、母の死亡に伴い納税義務を承継した請求人が原処分の一部の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 預金の申告漏れについて、請求人の母に、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠蔽又は仮装の行為があったか否か。 (2) 原処分庁による主張 請求人の母は、平成27年5月15日に、H銀行〇〇支店において請求人の亡兄名義の預金を解約して同支店の同人名義の口座に預け入れ、相続の開始日において預金があることを知っていたにもかかわらず、税理士に預金の存在を伝えることなく、相続税の申告において本件預金を被相続人の相続財産に含めなかった。このことは、通則法第68条第1項に規定する事実の隠蔽、又は仮装したところに基づいて故意に脱漏したと評価することができる。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、原処分庁の主張の根拠である、税理士の申述内容からは、請求人の母が、本件預金の存在を過失により伝えなかったのか、意図的に伝えなかったのかということまでは判別できず、あえて本件預金の存在を伝えなかったという意図まで読み取ることは到底できないと判断して、当初から相続財産を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたうえ、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないと結論づけ、重加算税の賦課決定処分を取り消す旨の裁決を行った。   2 従業員が行った金員の詐取を目的とした仮装行為の事例・・・② 本件は、建物の総合管理の請負を目的とする法人である審査請求人が、損金の額に算入した外注費のうち、下請業者への工事発注業務等を担当していた請求人の従業員が親族名義の口座に振り込ませた金員について、原処分庁が、架空外注費であり、従業員による行為は納税者による隠蔽又は仮装に該当するとして、法人税、地方法人税及び消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、従業員による行為は納税者による隠蔽又は仮装に該当しないことなどを理由として、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 (2) 原処分庁による主張 原処分庁は、法人の従業員による課税標準等の隠蔽又は仮装行為については、従業員の業務に関連する行為は、法人の活動領域内の行為として自己の行為の一部分とみることができるから、従業員の行為が納税者の行為と同視できないといえるような特段の事情がない限り、原則として、当該法人は適正な申告をすべき義務を自ら怠ったものとみて、重加算税の適用対象となるというべきであると主張した。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、法人の従業員など納税者以外の者が隠蔽又は仮装する行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができる場合には、納税者本人に対して重加算税を賦課することができると解するのが相当であるとして、原処分庁の主張を認めたものの、従業員の行為を納税者本人の行為と同視できるか否かについては、①その従業員の地位・権限、②その従業員の行為態様、③その従業員に対する管理・監督の程度等を総合考慮して判断するのが相当であるとして、従業員の行為をすべて同視できるものではないと判示した。 そのうえで、本件行為は、請求人の業務の一環として行われたものではなく、従業員が私的費用を請求人から詐取するために独断で行ったものと認められること、従業員は、請求人の経営に参画することや、経理業務に関与することのない一使用人であったと認められることなどその他の事情も含めて総合考慮すれば、本件行為は通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当するものの、従業員による本件行為を納税者たる請求人の行為と同視することはできないことから、請求人に通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められないと結論づけ、重加算税の賦課決定処分を取り消す旨の裁決を行った。   3 法定申告期限までに申告書の提出が必要であったことを認識しながら、申告をしなかった事例・・・③ 本件は、農場、山林及び果樹園の経営等を目的とする有限会社である審査請求人が、法人税等の確定申告書を提出しなかったところ、原処分庁が、請求人が所有する山林の売却により生じた所得に係る法人税等の決定処分等をしたのに対し、請求人が、原処分において損金の額として認められた費用等とは別に損金の額に算入されるべきものがあるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 (2) 原処分庁による主張 原処分庁は、以下の事実から、請求人は、本件事業年度の法人税等について、申告すべき所得金額及び納付すべき税額が生ずることを明確に認識していながら、確定的な意思に基づいて無申告を貫いたものと認められ、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められることから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことは、通則法第68条第2項に規定する事実の隠蔽又は仮装に該当すると主張した。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、請求人代表者について、調査担当職員が、平成29年3月14日、自宅に臨場した際には、売買契約書及び預金口座に係る通帳を提示し、契約に係る売買代金の決済方法等について説明しており、また、請求人は、本件事業年度の法人税等の調査当初から、事業に関連する支出の存在を主張し、さらに、再調査審理庁及び当審判所に対し、支出に関する証拠書類を提出したことからすると、その支出が、法人税法第22条第3項各号の規定により本件事業年度の損金の額に算入することができるか否かは別として、請求人は本件譲渡による所得が生じていないと認識していた可能性も否定できないことから、原処分庁による調査への協力要請に応じなかったことをもって明確な無申告の意図に基づく行為であったと評価することはできないと判断した。 そのうえで、請求人は、本件事業年度の法人税等について、法定申告期限までに確定申告書の提出が必要であったことを認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、無申告行為そのものとは別に、請求人が、当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとはいい難いと結論づけ、重加算税の賦課決定処分を取り消す旨の裁決を行った。   4 法定申告期限までに相続税の申告をしなかった事例・・・④ 本件は、審査請求人が、原処分庁の職員による調査を受けて相続税に係る期限後申告書を提出したところ、原処分庁が、請求人が法定申告期限までに相続税に係る申告書を提出していなかったことにつき、国税通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして、重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該賦課要件を満たさないとして、当該賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったことにつき、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。 (2) 原処分庁の主張 原処分庁は、平成29年5月10日付で、請求人に対して発送した「相続税の申告等についての御案内」と題する文書及び「相続についてのお尋ね」と題する文書(以下「お尋ね文書」という)について、請求人は、相続税の申告をしなければいけないと認識しており、提出前に、税理士無料相談会において、記載すべき内容等の説明を受けたはずであるにもかかわらず、請求人取得財産及び本件姉取得財産を記載しなかったことが認められるとしたうえで、お尋ね文書は、課税庁が調査の要否等の判断の資料とするために、対象となる納税者に任意の提出を求めるものであり、納税者がそれに虚偽の内容を記載した場合には、課税庁の当該判断を誤らせるおそれがあるから、納税者が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出した場合には、通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったといえると主張した。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、まず、お尋ね文書について、次のように判示した。 そのうえで、請求人は、申告期限前、姉に対して、自ら相続税を申告する意思を示していたと認められること、調査の初日に、調査担当職員に対し、請求人及び姉が相続により取得した財産を記載した一覧表を提出していること、その後の調査の結果、相続財産一覧表に記載された財産以外に、請求人及び本件姉が本件相続により取得した財産は確認されなかったなど、請求人が当初から本件相続税を申告しない意図があり、かつ、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとされる事情は見当たらないことから、請求人が、当初から相続税を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたうえ、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったような場合に該当するとはいえないと結論づけ、重加算税の賦課決定処分を取り消す旨の裁決を行った。 (了)

#No. 374(掲載号)
#米澤 勝
2020/06/22

プロフェッションジャーナル No.374が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年6月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.374を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/06/18
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