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内定・採用に関する「よくある質問」 【第2回】「採用内定者の研修に賃金の支払いは必要か」

内定・採用に関する「よくある質問」 【第2回】 「採用内定者の研修に賃金の支払いは必要か」   社会保険労務士 菅原 由紀   入社前研修について 使用者が内定者に対して、入社前に課題を与えたり、参加を義務づける研修を行うことがある。 これらの研修は、社会人として必要な社会常識の習得や、入社後に業務で必要となる知識を事前に習得させることを目的にする場合や、会社等の雰囲気やカラ―を理解し、会社等の一員として早く溶け込んでもらうことを目的にする場合など様々であろう。 さらに、使用者側が内定辞退防止を目的として、このような研修を実施するケースも多くあるであろう。   入社前研修の2つのタイプ 入社前研修には大別すると、次の2つのタイプがある。 しかし、使用者が入社前研修を行うことについては、その目的からして、現実的には、②のタイプは考えにくいと想像する。また、入社前研修を自由参加としていても、多かれ少なかれ内定者は拘束力を感ぜざるを得ないと思われる。   入社前研修は「労働」になるのか 一般的には、内定者が在学中の学生の場合、採用内定後入社日まで、当然の義務として研修への参加を課すことは適切ではないと考えられている。 したがって使用者は、内定者との間で別途個別の同意をすることで、入社前研修を命じているようである。 使用者が、内定者を広く研修に参加させたいのであれば、入社日を4月1日ではなく研修開始日にするとか、内定時の誓約書等において、内定者に対して入社前研修に参加することへの合意をとり、その合意のもとに行うことが必要である。 多くの使用者が入社前研修を実施しているが、任意参加の形式をとっているか、双方合意の上で実施しているのが実情のようである。 なお、「労働時間」について最高裁は との立場を明らかにしている。 つまり、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮監督下にある時間」とされ、指揮監督下にあるとは、使用者の作業指示等の指示命令を受け、従わなければならない場合をいう。 したがって、内定時の誓約書等において、内定者に対して入社前研修に参加することへの合意をとり、その合意のもとに行う研修が「研修」という名目であっても、実態として使用者の指揮監督下に行われるものであれば、それは「労働」ということになり、労働に対しては賃金が支払われなければならない。 一方、入社前研修に参加・不参加の自由があり、さらに参加した場合でも使用者の指示に対して諾否が言える自由があるような場合は「労働ではない」と考えられる。この場合には「労働ではない」ため、賃金の支払いは発生しない。 しかし、実務上は研修が労働か労働ではないか判断がつかないような場合もあり、そのような場合使用者は、研修自体を「アルバイト」(労働)として「研修手当」等の名目で日当を支払っていることもあるようである。 (了)

#No. 61(掲載号)
#菅原 由紀
2014/03/20

〈中小企業も気をつけたい〉 産業廃棄物に関する企業対応と不正業者による不法投棄リスク

〈中小企業も気をつけたい〉 産業廃棄物に関する企業対応と 不正業者による不法投棄リスク   行政書士 石下 貴大   1 はじめに 数年前、大規模な産業廃棄物の不法投棄がニュースとなった。 その廃棄物の量は、実に約150万トン。廃棄物処理業者2社が首都圏などから運び込み、複数回にわたって不法投棄していたのだ。 2社は既に解散や破産しているが、不法投棄された自治体ではこれらの撤去や原状回復に数百億円かかっており、その費用に関して投棄を依頼した業者や関係者に請求する方針である。 *  *  * 例年、この時期になると、個人宅だけでなく企業でも引越しが増え、引越しの際には多くのゴミが出るだろう。 ゴミが出れば業者に委託して処理してもらうのが一般的だろうが、上記の事例のようにならないよう、以下では、企業がゴミの処理を委託するときの注意から、産業廃棄物の不法投棄のリスクについてお伝えさせていただきたい。   2 産業廃棄物とは? 産業廃棄物とは、会社や工場などの事業に直接関係する活動に伴って発生した廃棄物及び輸入された廃棄物であって、廃棄物処理法(正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」)に定められた21種類の廃棄物をいう。 【産業廃棄物の種類】(表をクリックすると別ウィンドウで拡大表示されます)  *は、特定の業種の事業所から排出されるものに限定される。 つまり、事業活動から出るゴミのすべてが産業廃棄物に該当するわけではない。 たとえばオフィスを引っ越す際、不要になった机や棚、椅子などが出てくるだろう。それらは法定されたもの以外は「産業廃棄物」ではなく、「一般廃棄物」となる。 廃棄物処理法では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。(第3条)」と規定し、これにより、排出事業者の処理責任が明確化されている。ゴミを出した会社自体が処分場に運搬することが規定されているのだが、実際には自分たちで処理をするのでなく、業者の方に処理を委託するだろう。 このとき、処理を委託する事業者についてはそれぞれ産業廃棄物収集運搬業、一般廃棄物収集運搬業の許可を取得していることが必要になる。具体的には、廃棄物についての管理ができる人員がいること、車両や容器など運搬するために必要な設備を備えていること、経営上問題ないとされる財産的要件を満たしていることなどの要件を満たし、許可を取得した業者のみが産業廃棄物や一般廃棄物を「業として」運搬することができる。 そしてゴミを出す側、排出事業者としては、その責任において適正な業者に委託することが求められている。   3 排出者責任とは 資源の枯渇、多くの環境問題が存在する中で、廃棄物の処理に伴う環境への負荷の低減に関し、排出者としても責任を負わなければならない。「排出者責任」とは、廃棄物等を排出する者が、その適正なリサイクルや処理に関する責任を負うべきであるとの考え方である。 具体的には、主に次の事項が法定されている。 廃棄物の排出者が廃棄物の処理に伴う環境への負荷の原因を作っているという考えにより、排出者が廃棄物の処理に伴う環境負荷低減の責任を負うこととされている。つまり、処理を委託した廃棄物が不法投棄や不法輸出などの不適正な処理がなされていた場合には、責任は処理業者だけでなく、廃棄物を排出した排出事業者もその責任を負うのだ。 たとえば自社の引越しから出た廃棄物の運搬を委託した業者が無許可業者であり、かつ、その廃棄物を不法投棄したとする。その後その業者が倒産をしてしまい、実質的に原状回復などが不可能になってしまった場合、排出者の責任として、代わりに廃棄物の撤去などを行わねばならない(これを「措置命令」という)。 処理の委託費用を払って廃棄物を持って行ってもらったにもかかわらず、膨大な出費のもとで原状回復費用も出さねばならない可能性があるのが排出者責任なのだ。さらには不適正な業者に委託したということで会社名を公表されるリスクまである。コンプライアンスへの意識がますます高まっている中で会社として違法行為が報道されれば、企業のイメージ・信用の失墜につながり、大きな経営問題に発展する可能性もあるだろう。 こうした規定はいうまでもなく、廃棄物が適正に処理されるように、排出者も責任を持って業者に委託しなければなないという趣旨である。 この排出者責任は法令の改正を重ね、近年さらに強化されている。 無許可業者に廃棄物の処理を委託した場合、廃棄物処理法では5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科と規定されている(第25条)。いかに委託先の違反であっても、排出者も同様に罰金だけでなく懲役までもが適用されている。それは不法投棄などだけでなく、書類の不備や保管違反までもが法律違反として重く見られているのである。その責任の重さからも、法の理解や廃棄物処理業者の選定などは重大な義務であり、また、経営面においても重要な事項と捉える必要があるだろう。 廃棄物を減らすのも排出者責任の大きな役割ではあるが、処理を委託する際にも廃棄物の適正処理のためにしっかりとした対応をしていくことが、これからの企業経営においてとても重要な位置づけとなる。 (了)

#No. 61(掲載号)
#石下 貴大
2014/03/20

女性会計士の奮闘記 【第15話】「大切なことはキーマンへ直接伝える」

女性会計士の奮闘記 【第15話】 「大切なことはキーマンへ直接伝える」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   ◆  ◆  ◆   〈ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算の不適用〉 -平成26年度税制改正- 生活に通常必要でない資産は、売却して損失が出ても、他の所得との損益通算ができませんが、その範囲が拡充されました。 「生活に通常必要でない資産」とは、 をいいますが、 ◆ワンポントアドバイス◆ お客様の経営に影響を与える税務・会計上の情報は、パンフレットや説明書きを渡すだけでなく、キーマンとなる担当の方にきちんと伝えることが必要です。 担当の方が不在でも、ちゃんと伝わったかどうか確認しましょう。「わかっていらっしゃるだろう」と思い込むことは危険です。 内容を間違いなく理解してもらって初めて「伝えた」ことになるのです。 (了)

#No. 61(掲載号)
#小長谷 敦子
2014/03/20

平成26年度税制改正に関する《速報解説》が期間限定で「一般会員の皆様」へご覧いただけます。

平成26年度税制改正に関する《速報解説》の 期間限定「一般会員公開」について ◆このたび下記の速報解説を期間限定で、一般会員の方もご覧いただけるようになりました。この機会にぜひご覧ください。 ◆ご登録のメールアドレスとパスワードを入力の上、ログインボタンを押していただくと、各記事をご覧いただけます。 ◆公開期間は、2014年3月17日から2014年3月31日までとさせていただきます。 ※公開は終了しました。

#Profession Journal 編集部
2014/03/17

4/15(火)開催:笹岡宏保氏セミナー【1日で理解するシリーズ】お申込み開始しました。

4/15(火)  笹岡宏保氏セミナー開催決定! TAC八重洲校にて4月15日(火)開催。 税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ。 今回は借地権に関して、基礎的な理解から実務において不可欠とされる『借地権の権利金の慣行』、『法人が介在する使用貸借』等の解釈確認までの重要項目についてを確認します。  ◆  ◆  ◆ 2014年3月24日(月)開催の下記セミナーもお申込みを受け付けていますので、ぜひご参加ください。

#Profession Journal 編集部
2014/03/14

Profession Journal No.60が公開されました!

2014年3月13日(木)AM10:30、Profession Journal  No.60 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/03/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第15回】「土地譲渡に係る所得税と相続税との二重課税問題(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第15回】 「土地譲渡に係る所得税と相続税との二重課税問題(その3)」   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅵ 検討 1 所得税法60条によって非課税規定の適用は排除されるか 本件において、Xは、 と主張する。判決はこの主張を妥当ではないとしたが、この点はどうであろうか。 具体的な事例として、個人Aにとって生活に通常必要な動産である動産を、個人Bが生活に通常必要な動産として贈与を受けたとしよう。 さらに、この生活に通常必要な動産を個人Bが法人に譲渡した場合を考えてみたい。 個人Bは、所得税法59条1項1号の規定の適用を受け、みなし譲渡課税を受けることになる。 ところで、個人Bが譲渡所得の金額の計算を行うに当たっては、所得税法60条1項の規定の適用により、個人Aの取得価額を引き継ぐことになる。なぜなら、個人Bが「贈与」「により取得した前条第1項に規定する資産を譲渡した場合における・・・譲渡所得の金額・・・の計算については、その者〔筆者注:ここでは個人B〕が引き続きこれを所有していたものとみなす」からである(所法60①一)。そして、この資産を個人Bが法人に売却した際に取得価額以上の金額を得た場合においては、所得税法9条1項9号の規定の適用により非課税とされるのである。 このことは、次の設例を考えると分かりやすい。 一例として、この生活に通常必要な動産につき、個人Bは取得価額(3,000万円)以下の収入(2,000万円)しか得られなかった場合を想定してみたい。 中古の生活に通常必要な動産の譲渡によって利益を得られるケースなどは異例で、むしろ、赤字になることの方が通例であると思われるが、このような場合に、果たして、赤字の譲渡所得(2,000万円-3,000万円=△1,000万円)の申告が認められるのであろうか。 課税実務上は、贈与を受けた生活に通常必要な動産を他に譲渡して損失が生じたとしても、これを確定申告において損益通算できるとは扱っていないはずである。すなわち、課税実務においては、所得税法9条2項1号の規定が適用されているのである。 このような理解があるからこそ、生活に通常必要な動産を譲渡した場合には、黒字であれば、所得税法9条1項9号の規定の適用によって非課税となり、赤字であれば、同条2項1号の規定の適用により、「資産の譲渡による収入金額がその資産の第33条第3項に規定する取得費及びその譲渡に要した費用の合計額に満たない場合におけるその不足額」に該当することで、その赤字相当部分については、「ないものとみなされる」のである。 所得税法9条2項1号の対象たる資産の譲渡とは「前項第9号〔筆者注:所得税法9条1項9号〕に規定する資産の譲渡」にほかならないから、そもそも、譲渡対象資産がいかなる経緯で当該納税者の手元に存在するのかというひも付きを、法は問題とはしていないのである。 このように考えると、所得税法60条の規定の適用を受けることが、所得税法9条の適用を排除する根拠にはなり得ないことが判然とするのである。 したがって、本件東京地裁が、 という点は、法解釈上の誤りというほかない。 2 所得税法60条1項はおよそ適用の余地のない定めをわざわざ設けているのか この点について、少し検討を加える必要がありそうである。ここで、A氏からB氏に資産が相続・贈与・遺贈によって移転され、その後B氏がC氏に譲渡した場合のケースを下の《図表1》を用いて説明すると、点線で囲った丸がA氏が取得した際の取得価額を意味し、太線で囲った丸がB氏がA氏から資産移転を受けた際の市場価格(時価)を意味し、実線で囲った丸がB氏がC氏に譲渡した際の譲渡価額を意味するとする。なお、説明の都合上、この場合低額譲渡や資産譲渡の際に譲渡費用はなかったとしよう。 《図表1》 所得税法60条は、A氏が取得した取得資産をB氏が有していたものとみなすという規定であるから、《図表1》のケース(次第に資産価値が増大していくケース)では、実線と点線の差額がB氏における実現したキャピタル・ゲインとして譲渡所得の対象となることになる。したがって、斜線部分が課税対象となることになる。しかしながら、かかる資産が「生活に通常必要な動産」であったとすれば、所得税法9条1項9号に基づき斜線部分は非課税となるのである。 また、相続により取得したものとされた場合に、平成22年最判によれば、所得税法9条1項16号にいう というのであるから、斜線部分は所得税法9条1項16 号によって非課税となるように思われる。もっとも、同判決は、資産の運用益部分について所得税が課税されることは二重課税として非課税とされるものではないとしていることからすれば、相続税が課された太線部分とB氏が譲渡をした際の譲渡収入との差額部分(α)については所得税が課されるということになろう。 そこで、所得税法60条1項1号と同法9条1項16号との関係を整理すると次のようになるのではないかと思われる。 《図表2》のケースでは、B氏はA氏の取得価額を引き継ぐので、B氏がC氏に譲渡した際の譲渡所得の金額は、譲渡価額である実線部分と取得価額を引き継いだ点線部分との差額に相当することになる。 《図表2》 この場合は、所得税法9条1項16号によって非課税とされる二重課税部分は発生しないので、所得税法60条1項1号が適用されるのみである。ただし、かかる資産がB氏の生活に通常必要な動産であるとすれば、非課税となる(所法9①九)。 《図表3》は、A氏の取得価額よりもB氏が相続した際の時価の方が高かったものの、B氏がC氏に譲渡した際にはA氏の取得価額よりも下がっているケースである。 《図表3》 この場合にも、所得税法60条1項1号の規定の適用により、B氏が譲渡した資産はA氏の取得価額を引き継ぐことになるから、B氏の譲渡所得の金額の計算は、実線である譲渡収入から、取得価額としてA氏から引き継いだ点線部分を控除することになるわけであるが、この際、赤字となるため、譲渡所得はマイナスとなる。 そこで、平成22年最判がいうように「所得」についての二重課税を排除する非課税規定であると理解するのであれば、所得税法9条1項16号の規定の適用はないことになる。もっとも、この資産が生活に通常必要な動産であるとすると、所得税法9条2項1号の規定の適用を受けることになり、かかる損失部分(ドット部分)はないものとみなされることになる。 《図表4》のケースは、A氏の取得価額よりB氏が譲渡した際の時価が上回っている場合である。 《図表4》 この場合には、B氏における譲渡所得の金額は、所得税法60条1項1号の規定の適用によりA氏から引き継いだ取得価額をもとに計算することになるため、斜線部分が課税されることになるが、かかる資産が生活に通常必要な動産であるとすれば、同法9条1項9号の適用により非課税、生活に通常必要な動産ではなかったとしても、相続により取得した斜線部分の経済的価値は、同法9条1項16号の規定の適用により非課税とされることになる。 《図表5》及び《図表6》のケースは、A氏が資産を取得した際の取得価額より、B氏が資産をC氏に譲渡した際の譲渡価額の方が低い例である。 《図表5》 《図表6》   このような場合も、所得税法60条1項1号は、B氏の譲渡所得の金額の計算については、「その者〔筆者注:B氏〕が引き続きこれを所有していたものとみなす」とするのであるから、A氏の取得価額をそのまま引き継ぐことになる。すなわち、B氏の譲渡所得の金額は、譲渡価額である実線から、点線であるA氏の取得価額となるためドット部分のマイナスになる。 そこで、《図表3》と同様、平成22年最判がいうように「所得」 についての二重課税を排除する非課税規定であると理解するのであれば、所得税法9条1項16号の規定の適用はないことになる。もっとも、この資産が生活に通常必要な動産であるとすると、所得税法9条2項1号の規定の適用を受けることになり、かかる損失部分(ドット部分)はないものとみなされることになる。 *   *   * 上記のとおり、所得税法60条1項1号は、B氏における譲渡所得の金額の計算において、A氏からB氏に対して移転した資産をそもそもB氏が当初から所有していたものとみなすのであるから、そもそもB氏が当初取得(購入)したとみて課税関係を捉えることになるという点にその意義がある(太い点線で示した平行矢印線を引くことに意義がある)。 このようにみてくると、所得税法9条1項並びに2項と同法60条1項1号との関係が明らかになるのではなかろうか。 そして、上記6つのケースをつぶさにみれば、そのうち、所得税法9条1項16号によって同法60条1項1号の効果が減殺されてしまうのは、《図表1》のケースと《図表4》のケースのみである。それ以外のケースでは、同法60条1項1号の効力は同法9条1項16号によって減殺されるわけではないのであるから、本件東京地裁判決がいう「およそ適用の余地のない定めをあえて設けているということとなる」という点については、首肯し難いといわざるを得ない。 (了)

#No. 60(掲載号)
#酒井 克彦
2014/03/13

〔過誤納に注意!〕印紙税・登録免許税の改正事項

〔過誤納に注意!〕 印紙税・登録免許税の改正事項   税理士 磯林 恵介   以下では、主に平成26年4月1日から適用される印紙税・登録免許税に係る改正事項と注意点についてまとめたので、実務の参考にしていただきたい。 (1) 領収書等に係る印紙税の非課税枠の拡大 〈領収書等の印紙税〉 領収書等(※)に係る印紙税ついては、記載金額が3万円未満については非課税となっているが、平成26年4月1日以降に作成される領収書等については、記載金額が5万円未満について非課税となる。 このため、誤って印紙税額を納めすぎないよう注意が必要である。 (※) 領収書等とは、領収書や受取書など、金銭を受領した事実を証明するために作成するものをいう。   過誤納となった場合の手続については下記を参照のこと。 なお、印紙税額に変更はないので、5万円以上のものについては従前の印紙税が必要となる。 〈領収書等に係る印紙税額〉 ※一覧表No.17より抜粋   (2) 消費税額等の取扱い 領収書等における消費税額等の取扱いについては、下記のいずれかの記載をしている場合は記載金額に消費税額等を含めないものとする。 平成26年4月1日以後は、消費税額は8%となるので、記載に注意が必要である。   (3) 登録免許税の税率の軽減措置の延長 現在軽減を受けている下記の登録免許税については、その適用期限が平成27年3月31日まで延長されている。 ① 土地の売買による所有権の移転登記等 ② 住宅用家屋の所有権の保存登記 ③ 住宅用家屋の所有権の移転登記 ④ 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記 (了)

#No. 60(掲載号)
#磯林 恵介
2014/03/13

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第22問】「2棟の建物が一の家屋と認められる場合」-一の家屋-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第22問】 「2棟の建物が一の家屋と認められる場合」 -一の家屋-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、18年前に家屋Aを建築し、その後引き続き居住の用に供してきましたが、子供も大きくなり家屋Aが手狭となったことから、4年前に家屋Bを新築し、子供(大学生、高校生)の勉強部屋及び寝室として使ってきました。 このほど、家屋A及び家屋B並びにその敷地全体を一括して売却しました。 この場合、Xの譲渡所得の全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができるでしょうか? A 家屋A及び家屋Bは、一構えの家屋として、一の家屋に該当するため、全部について「3,000万円の特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 この「特例」の対象となる家屋については、その者が居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限ると規定されているが(措令20の3②)、その者が二以上の家屋を有するかどうかは、必ずしも物理的に2棟の建物を有しているかどうかにより判定するものではないものと考える。 その有する2棟以上の建物が隣接しており、かつ、これらの建物の構造、設備若しくは規模、家族の構成若しくはその生計の状況等又はこれらの建物の使用状況等からみて、その2棟以上の建物が一体として一の機能を有する一構えの家屋と認められる場合には、その2棟以上の建物は、「一の家屋」に該当する。 (了)

#No. 60(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/03/13

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第17回】 「その他の相続財産の取扱い」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第17回】 「その他の相続財産の取扱い」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   第6回以降、土地・建物、預貯金、上場株式・公社債・投資信託、非上場株式、死亡保険金・死亡退職金、生前贈与財産、と相続税申告にあたっての評価を中心に見てきた。 相続税申告業務にあたっては、上記の範囲で大半はカバーされていると思われるが、今回は、前回まで見てきた財産以外のその他財産について、説明する。   1 未収金(高額療養費) 他界する前、入院している場合、医療費が高額となることが多い。その場合、公的医療保険に申請を行うと、支払った医療費のうち一定額が、高額療養費として還付される。他界する前の直前数ヶ月分の医療費に関する高額療養費は、他界後に還付されることが多く、この未収金(高額療養費)は相続財産として相続税の対象となる。   2 未収金(所得税) 他界した人が所得税申告の必要がある場合、他界後4ヶ月以内に所得税準確定申告を行う必要がある。この所得税準確定申告において還付となる場合があり、その場合の還付金は、相続財産となる。 他界時には未収金であるため、未収金(還付所得税)として相続税の対象となる。   3 未収金(公的年金) 他界した人が公的年金を受給しており、他界日において存命中の期間に対応する公的年金が、他界日において未支給となっていることがある。ただし、この場合の未収年金は相続財産ではなく、相続税の対象とはならない。 相続人が未収年金を受け取った場合、受け取った相続人の所得税(一時所得)の課税対象となることとされている。   4 損害保険契約 他界した人の自宅建物などに、他界した人が契約者(保険料支払者)となって損害保険契約を締結していることがある。この場合の損害保険契約は相続財産であり、相続税の対象となる。 この損害保険契約を、相続税の計算上、どのように評価するか明記されたものはないが、一般的には、他界日における解約返戻金で評価すると考えられている。これは、建物更生共済契約は解約返戻金相当額で評価することになっており(国税庁質疑応答事例「建物更生共済契約に係る課税関係」)、損害保険契約は建物更生共済契約に類似しているため、建物更生共済契約に準じて、実務上は、解約返戻金相当額で評価されている。   5 ゴルフ会員権 ゴルフ会員権は、取引相場のあるものについては、取引相場の70%で評価することとなっている(財産評価基本通達211)。取引相場は課税時期(通常は他界日)のものであるため、ゴルフ会員権仲介業者などから、課税時期の取引相場を入手する必要がある。   6 リゾート会員権 リゾート会員権については、財産評価基本通達に明記されていないが、国税庁公表の質疑応答事例「不動産所有権付リゾート会員権の評価」があり、取引相場のあるゴルフ会員権に準じて、課税時期の取引相場の70%で評価することとされている。したがって、リゾート会員権仲介業者などから、課税時期の取引相場を入手する必要がある。 リゾート会員権の権利内容は様々なものがあり、上記の取扱いとなるのは、不動産所有権と施設利用権が分離して譲渡できないものであるので、この点は留意が必要である。   7 出資金 信用組合、信用金庫、全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)などに預金取引・共済取引を行っている場合、それらに対する出資金を有している可能性がある。金額は大きくないかもしれないが、預金残高証明書、解約返戻金証明書などを入手する際に、出資金の有無、及び出資金がある場合には、その残高証明書を入手する。   8 外貨建財産 その他財産ではないが、外貨建預金などは、課税時期の外貨額に、対顧客直物電信買相場(TTB)の為替レートを乗じて、相続税の計算上の評価額(円)を計算する(財産評価基本通達4-3)。 なお、外貨建債務の場合には、課税時期の外貨額に、対顧客直物電信売相場(TTS)の為替レートを乗じて、相続税の計算上の評価額(円)を計算する(財産評価基本通達4-3(注))。 (了)

#No. 60(掲載号)
#根岸 二良
2014/03/13
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