谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第8回】
「租税法律主義と実質主義との相克」
-税法上の目的論的事実認定の過形成①-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
「租税法律主義と実質主義との相克」について、前回は、税法の目的論的解釈の過形成①として、課税減免制度濫用の法理を取り上げたが、今回は、税法上の目的論的事実認定の過形成①として、私法上の法律構成による否認論(【73】以下=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)を取り上げることにする。
私法上の法律構成による否認論は、前回取り上げた外国税額控除余裕枠利用事件の下級審段階では課税減免規定の限定解釈による否認論と並んで課税庁側が主張したものであり、前回述べた租税法学会第32回総会(2003年10月19日・岡山大学)における「司法過程における租税回避否認の判断構造-外国税額控除余裕枠利用事件を主たる素材として-」と題する報告(租税法研究32号(2004年)53頁[拙著『租税回避論』(清文社・2014年)第1章第2節所収])では、まず後者を「租税回避と裁判官による法形成の限界」として、次に前者を「租税回避と裁判官による事実認定の限界」として、それぞれ検討したところである。
ただ、私法上の法律構成による否認論は事実認定による否認論あるいは契約解釈による否認論とも呼ばれるが、そのような考え方は、他の事件でも課税庁・国によって主張され、映画フィルムリース[パラツィーナ]事件・大阪高判平成12年1月18日訟月47巻12号3767頁、ガーンジー島法人所得税制事件・東京高判平成19年10月25日訟月54巻10号2419頁、住所国外移転[武富士]事件・東京高判平成20年1月23日訟月55巻2号244頁等では採用されたものと解される。これらのうち私法上の法律構成による否認論に関する代表的な判示としてしばしば引用・参照されるのが上記の大阪高判の次の判示である(下線筆者)。
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