公開日: 2020/12/24 (掲載号:No.400)
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谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第50回】「現代国家と租税法律主義」-租税国家における「税法の世界」-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基礎理論

【第50回】
(最終回)

「現代国家と租税法律主義」

-租税国家における「税法の世界」-

 

大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

2018年8月から約2年半にわたって当初は月1回、翌年4月(第9回)からは月2回のペースで「税法の基礎理論」を連載してきたが、今回をもって連載を一先ず擱筆することとする。

この連載では、「税法の基礎理論」という言葉は、「税法の基礎にある考え方」あるいは(もう少し厳密にいえば)「実定税法の体系及び諸規定を支える基本原則」というような意味で用いているが、「税法の基礎理論」のこのような意味・用語法は、拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の「第1編 税法の基礎理論」のそれと同じである(第1回参照)。

上記の拙著を執筆するに先立って、筆者は、「税法の基礎理論-租税憲法論序説-」と題する研究ノートを執筆し、日本税法学会の機関誌「税法学」の第555号(2006年)299頁以下で公表した。この研究ノートが、上記拙著の「第1編 税法の基礎理論」のベースとなっているのであるが、その冒頭で「法律学における税法学の位置づけを簡単に図示する」(300頁)として、税法学の全体像を図示しようと試みた。それは、教科書を執筆することになった暁には、そのような図を通じて「読者には、『森を見ながら、木を見る』ような学習を心がけてもらいたい」(谷口勢津夫=一高龍司=野一色直人=木山泰嗣『基礎から学べる租税法〔第2版〕』(弘文堂・2019年)初版はしがき)とのメッセージを伝えたいと考えていたからである。

「森を見ながら、木を見る」は、筆者が税法を研究する際の「座右の銘」としてきたものであるが、上記の研究ノートの公表後研究を進めていく中で、「森を見ながら、木を見る」を「法律学における税法学の位置づけ」よりもっと広い視野から捉えるべきではないかと考えるようになり、「現代国家における税法の位置づけ」を図示しようと検討を重ねてきた。

しかし、前記の拙著『税法基本講義』の初版(2010年)以降、「現代国家における税法の位置づけ」に関する構想を内容的には部分的に解説の中に盛り込みつつも、それを示す図それ自体はなかなか盛り込むことはできなかった。そのような図を「租税国家における『税法の世界』」として盛り込むことができたのは、第6版(2018年)においてであった。

今回は、「租税国家における『税法の世界』」を「図解」すること(ここでは通常の意味とは異なり「図を解読すること」)をもって、この連載を一先ず擱筆することにしたい。

 

Ⅱ 租税国家における「税法の世界」

「国家なくして租税なし」とはいえるとしても、「租税なくして国家なし」とは必ずしもいえない。理念型・理想型としての社会主義国家には租税は存在しないからである(後記Ⅲ3参照)。とはいえ、近代以降、歴史的実在としての自由主義国家においては、租税はその収入源としての重要性を増してきた。今日では、「租税なくして国家なし」といっても、すなわち、現代国家は租税国家(運営資金を租税により調達する国家)であるといっても過言ではないのである(以上について前掲・拙著【2】参照)。

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谷口教授と学ぶ

税法基礎理論

【第50回】
(最終回)

「現代国家と租税法律主義」

-租税国家における「税法の世界」-

 

大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

2018年8月から約2年半にわたって当初は月1回、翌年4月(第9回)からは月2回のペースで「税法の基礎理論」を連載してきたが、今回をもって連載を一先ず擱筆することとする。

この連載では、「税法の基礎理論」という言葉は、「税法の基礎にある考え方」あるいは(もう少し厳密にいえば)「実定税法の体系及び諸規定を支える基本原則」というような意味で用いているが、「税法の基礎理論」のこのような意味・用語法は、拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の「第1編 税法の基礎理論」のそれと同じである(第1回参照)。

上記の拙著を執筆するに先立って、筆者は、「税法の基礎理論-租税憲法論序説-」と題する研究ノートを執筆し、日本税法学会の機関誌「税法学」の第555号(2006年)299頁以下で公表した。この研究ノートが、上記拙著の「第1編 税法の基礎理論」のベースとなっているのであるが、その冒頭で「法律学における税法学の位置づけを簡単に図示する」(300頁)として、税法学の全体像を図示しようと試みた。それは、教科書を執筆することになった暁には、そのような図を通じて「読者には、『森を見ながら、木を見る』ような学習を心がけてもらいたい」(谷口勢津夫=一高龍司=野一色直人=木山泰嗣『基礎から学べる租税法〔第2版〕』(弘文堂・2019年)初版はしがき)とのメッセージを伝えたいと考えていたからである。

「森を見ながら、木を見る」は、筆者が税法を研究する際の「座右の銘」としてきたものであるが、上記の研究ノートの公表後研究を進めていく中で、「森を見ながら、木を見る」を「法律学における税法学の位置づけ」よりもっと広い視野から捉えるべきではないかと考えるようになり、「現代国家における税法の位置づけ」を図示しようと検討を重ねてきた。

しかし、前記の拙著『税法基本講義』の初版(2010年)以降、「現代国家における税法の位置づけ」に関する構想を内容的には部分的に解説の中に盛り込みつつも、それを示す図それ自体はなかなか盛り込むことはできなかった。そのような図を「租税国家における『税法の世界』」として盛り込むことができたのは、第6版(2018年)においてであった。

今回は、「租税国家における『税法の世界』」を「図解」すること(ここでは通常の意味とは異なり「図を解読すること」)をもって、この連載を一先ず擱筆することにしたい。

 

Ⅱ 租税国家における「税法の世界」

「国家なくして租税なし」とはいえるとしても、「租税なくして国家なし」とは必ずしもいえない。理念型・理想型としての社会主義国家には租税は存在しないからである(後記Ⅲ3参照)。とはいえ、近代以降、歴史的実在としての自由主義国家においては、租税はその収入源としての重要性を増してきた。今日では、「租税なくして国家なし」といっても、すなわち、現代国家は租税国家(運営資金を租税により調達する国家)であるといっても過言ではないのである(以上について前掲・拙著【2】参照)。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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