暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第32回】
前回の必要経費の考察を踏まえると、暗号資産取引を行っている個人の方は、自身が行っている暗号資産の譲渡による所得が、業務に係る雑所得に該当するのか、それともその他雑所得に該当するのか、それはどのような基準で判断されるのかという点に関心を向けるであろう。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第32回】「移転価格税制と住民訴訟(地判平7.3.6、高判平8.3.28)(その1)」~旧日米租税条約11条、25条1項、租税条約実施特例法7条、8条、国税通則法23条2項3号、同施行令6条1項4号~
本件は、日本に移転価格税制が導入された直後に行われた合意や処分について、租税条約適合性や国税処分の適法性などが争われた事案である。上記図解に沿って事実関係を説明すると、米国の内国歳入庁は、日産及びトヨタ(以下、日産を「Z1」、トヨタを「Z2」、両社を「Zら」)が、米国に所在する各々の子会社への自動車の輸出につき、その販売価格を高めに設定することにより、親子会社を一体とみた場合の利益の配分割合をZらに多くし、反面、Zらの米国子会社の利益を不当に圧縮したとして、①昭和60年(1985年)3月、日本の移転価格税制に相当する内国歳入法典482条を適用し、増額更正の仮更正処分を行った。これを受けて、Zらは日米間における経済的二重課税を回避するため、②昭和61年(1986年)5月、日米租税条約(以下、「日米条約」)25条に基づく相互協議の申立てを行い、③昭和62年(1987年)6月、日米の課税当局間による合意が成立した。合意内容は、Z1の米国子会社は昭和50年(1975年)から昭和61年(1986年)までの12年間について、Z2の米国子会社は昭和52年(1977年)から昭和57年(1982年)までの6年間について所得を増額し、一方の日本の親会社であるZらは、これらに対応する所得を減額することであった(以下、「本件日米合意」)。本件日米合意に基づき、米国ではZらの子会社が上記期間の連邦所得税を追加納税し、④日本ではZらが国税当局に更正の請求を行い、⑤国税当局は、昭和61年4月から施行された租税条約実施特例法7条(以下、「特例法7条」)により減額更正処分を行い、Zらに約800億円の法人税を還付した(以下、「本件国税処分」)。
〈注記事項から見えた〉減損の深層 【第14回】「シェアオフィス事業が減損に至った経緯」-成長事業でも減損-
シェアオフィスというのは、脱炭素社会のニーズに適っています。企業がそれぞれ自前のオフィスを構えるよりも、他社とオフィスを共用する方が世の中全体としてのオフィスの供給量が少なくて済むからです。オフィスもまたモノであり、モノが少ないことは炭素の消費が少ないわけで、脱炭素の目標に貢献するという理屈です。
〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2023年11月】
2023年11月1日から11月30日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。
具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。
《速報解説》 金融庁、四半期報告書制度の廃止含む令和5年金商法等改正に係る政令・内閣府令案等を公表~第1種中間財務諸表等の基準は、ASBJの基準案の内容踏まえた修正の可能性あり~
令和5(2023)年12月8日、金融庁は、「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等」を公表し、意見募集を行っている。
《速報解説》 金融庁から電子決済手段に関する財規の改正案が公表される~キャッシュ・フロー計算書における「資金」の定義を改正~
令和5(2023)年12月7日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。
《速報解説》 令和6年の施行前に生前贈与制度の見直しに係る相続税関係の改正通達が公表される
令和5年度税制改正では生前贈与分の相続財産への加算期間が相続開始前3年以内から7年以内とされ(経過措置により段階的に延長)、相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が認められる等の見直しが行われ、令和6年1月1日以後の贈与から適用される。
monthly TAX views -No.130-「岸田減税が提起する地方税の諸問題」
岸田総理が決断した、所得税・住民税1人あたり4万円の減税と住民税非課税世帯への計10万円給付(以下、岸田減税)は、財政積極派からも財政再建派からも評判が悪い。何のための減税なのか趣旨が国民に伝わらないまま行われる。
筆者がここで取り上げたいのは、岸田減税が住民税の諸課題を浮き彫りにしたことだ。
まずは住民税非課税世帯とは何かということである。住民税非課税基準の問題点は、本連載のNo.123で述べたが、あまりにも大雑把な基準(筆者は「アナログ基準」と呼んでいる)で、必ずしも生活困窮者を切り取っていない。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例58】「パチンコ器及びスロットマシンの少額の減価償却資産該当性」
私は、近畿地方の県庁所在地に本社を置き、本社の所在地県及び近隣の府県一円において、パチンコ及びスロットマシンの遊技店を経営する株式会社Y(資本金10億円で3月決算)に勤務し、現在経理部長を務めております。少子高齢化はわが国の社会経済全般に様々な影響を及ぼしておりますが、エンターテインメント業界もその例外ではなく、人口減は端的に市場規模の縮小をもたらしているところであり、ここ数年、パチンコホールの倒産・民事再生手続の開始といったニュースも度々耳にするところです。